マタハラとは|定義・裁判例・法令等の改正

公開日:2019年05月02日
最終更新日:2022年07月13日

この記事のポイント

  • マタハラとは、妊娠・出産等に関するハラスメントのこと。
  • マタハラ行為とは、妊娠・出産等をしたことを理由とした嫌がらせ、解雇、配置転換などを指す。
  • マタハラの行為者は、男性だけでなく女性も相当程度高い割合で存在する。

 

マタハラ被害者のなかには「職を失った」「体調を崩した」など、重大な被害を受けた人も多く、社会的にも大きな問題として注目されています。
会社側としても、マタハラ被害が起きることがないよう、従業員にその旨の周知を行ったり社内規定などの整備を行ったりといった措置が必要です。

この記事では、マタハラの内容や禁止されている行為、マタハラの事例や裁判例についてご紹介します。

マタハラとは

マタハラとは、「マタニティ・ハラスメント」の略称で、妊娠や出産、育児(マタニティ)を理由として、肉体的・精神的な嫌がらせなどを行う行為です。
妊娠や出産は、女性特有の問題(ただし、育児については男性従業員も含まれます)であり、これまで通りの業務が困難となることもあります。そして、このような業務の遂行が困難となる事態について、法律は一定程度の保護規定を設けています。
会社としては、マタハラと指摘されるような対応を行わないよう従業員に指導することはもちろん、就業規則等について今一度見直し、問題があると思われる場合には改善策を講じる必要があります。

マタハラは、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法において禁止されています。均等法、育介方が改正されたことで、①マタハラの防止に関する事業主および労働者の責務が明確化されました。さらに②事業主には、マタハラに関する相談を行った労働者等に対して不利益な取り扱いを行うことが禁止されました。
たとえば、妊娠・出産・育児休業を取得したことなどを理由として、解雇・雇い止め・降格などの「不利益取扱い」をした場合、その行為は無効となります。
また、女性労働者の結婚・妊娠・出産退職制、女性労働者の結婚を理由とする解雇規定などを作成することも禁止されています。

また、③事業主は自社の労働者が他社の労働者にマタハラを行って、他社が実施する雇用管理上の措置(事実確認等)に協力を求められた場合には、これに応じなければならないことも規定されています。

(1)マタハラに関する調査結果

労働政策研究・研修機構が平成28年に発表した調査結果によれば、妊娠等を経験した女性の21.4%がマタハラを受けた経験をしています。これは、企業規模が大きくなる程高くなるという調査結果もあります。
つまり、妊娠等を経験した女性の5人に1人が、マタハラ被害を受けていることになります。

引用:労働政策研究・研修機構「「妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査」結果(概要) 」

(2)マタハラの行為者は男性が55%、女性が38%

マタハラというと、男性が女性に対して行うものとイメージする人が多いと思いますが、女性が女性に対して行うマタハラも数多く報告されています。
先ほどの労働政策研究・研修機構の調査によれば、マタハラの行為者は男性が55.9%、女性が38.1%となっています。
また、マタハラ行為者と被害者の関係でみると、「職場の直属上司」が最も多く29.9%、次いで「直属上司よりも上位の上司、役員」が20.8%)となっています。

引用:労働政策研究・研修機構「「妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査」結果(概要) 」

(3)マタハラの類型は大きく2つ

マタハラは大きく①制度等を利用することへの嫌がらせ、②状態への嫌がらせの2つに分類されます。

①制度等を利用することへの嫌がらせ
・解雇、その他不利益な取り扱いを示唆するもの
・制度等への利用の請求等または制度等の利用を阻害するもの
・制度等を利用したことによって嫌がらせをするもの

②状態への嫌がらせ
・解雇その他不利益な取り扱いを示唆するもの
・妊娠等したことによって嫌がらせをするもの

(4)マタハラとセクハラの違い

セクハラとマタハラについて混同して理解しているケースもありますが、セクハラは性的な言動または行動による加害行為であるのに対して、マタハラは、妊娠・出産・産前産後休業又は育児休業等の申出をしたこと、または育休を取得したこと等を理由に不利益な処分を受ける行為であるという点で異なります。

「職場のセクハラ|セクハラが企業に及ぼす影響とは」を読む

(5)マタハラとパタハラの違い

パタハラ(パタニティ(=父性)・ハラスメント)とは、男性の育休取得や育児参加することに対して、職場の上司や同僚から嫌がらせをされることです。
たとえば、出産をきっかけとして休業を申請した男性に「戻った時は、お前の席はないと思え」と言ったり、子供の病気のために早退しようとした男性に「男のくせに、子どもの病気くらいで休業するな」と言ったりする行為はパタハラにあたり、ハラスメントのひとつです。
パタハラはマタハラに比べて表沙汰になることが少ないですが、同僚と比較して出世に影響が出るなど職場で不利益な扱いをされるなどの深刻なケースも多く、年々相談事例が増えています。

マタハラの具体例

前述したとおり、マタハラとは、妊娠・出産・産前産後休業を申し出たり、育児休業等を申し出たり、育休を取得したことなどを理由に解雇・退職の共用・嫌がらせなどを行うことです。
ここでは、マタハラの具体的な事例について、詳しくご紹介します。

(1)解雇された

女性労働者について、妊娠や出産等を理由に解雇することは、マタハラに該当します。
そして、事業主が、その解雇が妊娠等を理由とする解雇ではないことを証明しない限り、その解雇は無効となります。

(主な相談例)
・妊娠や出産を理由に解雇された。契約を打ち切られた。
・妊娠を理由とする休業を申し出たところ、解雇を通達された。
・妊娠や出産について相談できる職場環境ではなく、妊娠・出産したら辞めるのが暗黙の了解となっていた。

(2)契約の更新されなかった

期間を定めて雇用される者について、妊娠や出産を理由として契約の更新をしなかったり、あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されているにもかかわらず、その回数を引き下げたりすることはマタハラに該当します。

(主な相談例)
・「妊娠して休みをとるなら、契約更新をしない」と言われた。
・1年契約で更新されてきたが、妊娠を伝えたら「次の契約更新はしない」と言われた。

(3)労働契約内容の変更の強要された

正社員の労働者に対して、パートタイム労働者等の非正規社員となるように労働契約内容の変更の強要を行った場合、それはマタハラに該当する可能性があります。

(主な相談例)
・ 正社員だったが、出産後はパートとして勤めるように言われた。

(4)降格された・就業環境を害された

つわりや切迫流産で仕事を休んだり、子どもが病気になり、看護休暇を取ったことを理由に嫌がらせを言ったりした場合、それが女性の就労環境を害している言動といえる場合には、マタハラに該当します。

(主な相談例)
・「妊婦は足手まといだから、出社しないでいい」と言われた。
・妊娠したことについて「迷惑だ」「いつでもやめていいよ」「妊娠は病気じゃないんだから、しっかり働け」などの心ない言葉を言われた。
・同僚や上司が「出産したからといって早く帰れるから、うらやましいよ。俺たちはその分、残業だよ」と嫌味を言われた。
・「妊娠したからといって、職場に迷惑をかけないでくれよ」などと言われた。
・4人目の妊娠を報告したところ、上司から「入社して以来、妊娠している姿しか見たことがない」と言われた。

(5)減給や不利益な評価を受けた

実際には労働能力の低下など生じていないにも関わらず、妊娠・出産し、または産前休業の請求・取得をしたことで、妊娠をしていない者よりも不利な査定をしたり、これまでの事情から考えてありえないような配置転換をしたりするなどの行為は、マタハラに該当する可能性があります。

(主な相談例)
・ 妊娠中・産休明けなどに、残業をさせられた。重労働などを強いられる職場に異動になった。
・ 元々副主任のポストに就いていたが、妊娠時に負担の軽い業務への配属替えを希望したことによって、副主任の任務を解任された。

マタハラの過去の裁判事例

マタハラについては、これまで泣き寝入りしていた女性労働者が労働局などに訴えるケースが増加し、なかには訴訟に至ったケースもあります。

(1)マタハラ裁判①:軽易業務への転換「C生協病院事件」

理学療法士Aが、第二子妊娠を理由として軽易な業務への異動を申し出たところ、その後は軽易な業務に従事することが許されたものの、副主任のポストは解任された事件です(最高裁・平成26年10月23日)。

女性労働者が自らの意思で経緯業務を承諾した場合は例外ですが、そうでない場合には、軽易な業務への異動は原則として許されず、それに伴い降格などの影響があった場合には、男女雇用機会均等法9条3項の不利益な取り扱いに該当するとして、違法・無効と評価されました。裁判では、勤務先には賠償を行うことが命じられました。

(2)マタハラ裁判②:労働条件の変更「医療法人I病院事件」

男性看護師Bが3カ月の育児休業を取得したところ、この3か月の不就労を理由として、翌年の職能給を昇給されず、昇格試験の受験機会も与えなかったことについて、裁判では、これらの行為は育児・介護休業法10条に定める「不利益取り扱い」に該当し、さらに公序良俗(民法90条)にも反する行為と認定されました。
裁判では、昇給させない行為を無効と判断し、勤務先には併せて慰謝料の支払いを行うことが命じられました(大阪高裁 平成26年7月18日)。

(3)マタハラ裁判③:賃金の不利益な取り扱い「K社事件」

女性従業員Cが、育児休業明けに担当業務を変更され、会社による役員報酬を引き下げられたことについて、裁判では労働者にとって最も重要な賃金額を不利益に変更することについて、就業規則などに明示的な根拠もなく許されないと判断されました(東京高裁 平成23年12月27日)。

マタハラを防止するために求められる措置

事業主には男女雇用機会均等法により、母性健康管理に関するさまざまな措置を講じる義務があります。また、労働基準法にも母性保護のための規定があり、妊婦が業務上請求できる権利などが定められています。

たとえば、厚生労働省は、男女雇用機会均等法、育児・介護法を改正し、上司・同僚などによる就業環境を害する行為を防止するために、社内に相談窓口を設けたり上司らに研修を受けさせたりするなどの防止措置を、事業主に義務づけることになりました。

参照:厚生労働省「改正育児・介護休業法及び改正男女雇用機会均等法の概要」

さらに平成28年4月1日から女性活躍推進法が施行され、労働者301人以上の大企業については、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定などが新たに義務づけられることになりました。

・女性の活躍推進に向けた行動計画の策定とは
自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析し、その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表、自社の女性の活躍に関する情報の公表を行わなければならないとするもので、仕事と子育て等の両立のための環境の整備や、復職後の環境整備等が義務付けられることになりました。

参照:厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」

(1)マタハラに関する就業規則の作成

育児・介護休業法は、企業や事業所の規模や業種を問わず適用されます。
また、育児・介護休業、子の看護休暇、介護休暇、時間外労働、深夜業の制限、所定外労働の制限、所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度)については、就業規則等に制度を定めておく必要があります。さらに、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントの禁止についても、明文化することが重要です。

(妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントの禁止)
第14条  妊娠・出産等に関する言動及び妊娠・出産・育児・介護等に関する制度又は措置の利用に関する言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

厚生労働省「モデル就業規則」

(2)マタハラに関する周知・啓蒙

マタハラやセクハラ、パワハラなどのハラスメントを防止するためには、何がハラスメントに該当するかについて、研修会やポスターで啓発活動を行うなどの措置が重要です。
ポスターや研修会では、何がハラスメントとなるのか、注意喚起する他、被害者となった場合の対処法、職場に与える影響などについて具体例を示しながら、従業員がそれぞれ「マタハラを予防しよう」とする意識づけをすることにつながるよう、指導する必要があります。

(3)マタハラに関する相談窓口の設置

会社に設置されている相談窓口では、マタハラの問題が発生した場合に、中立・公正な立場で事実関係を確認し、できるだけ初期の段階で適切に対応し解決するように、体制を整備しておく必要があります。

なお、マタハラについて相談した労働者に対して会社が不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。また、会社による相談対応に協力した際に、労働者が事実を述べることを理由に、解雇その他の不利益な取り扱いをすることも禁止されています。

(4)マタハラへ被害者への適切な対応

相談があった際には、相談者や相談内容の事実確認に協力した人が不利益な取扱いを受けることがないよう、相談窓口の担当者や専門の産業医、カウンセラーなどが人事部門と連携し、マニュアルに沿って調査、聴取などを行ったうえで、解決手段を提示します。

①事情聴取
まず、マタハラ行為について事情聴取が行ないます。
本人だけでなく、マタハラ行為を行った上司、同僚などからも事情を聞きます。

②事実確認
マタハラの事実を特定し、不利益な取扱いを受けた事実関係を明確にします。

③解決手段の提示及び再発防止措置
マタハラが事実であると判断された場合には、人事担当部門役員などによる協議が行います。その結果、解雇や降格などについて妥当かどうか判断します。
なお、マタハラ行為を行ったのが上司や同僚である場合には、配置転換、メンタルケアなどの解決手段についても検討します。

まとめ

以上、マタハラの意味や職場のマタハラの相談事例、過去の裁判例、会社で行うべき措置などについてご紹介しました。
これまでご紹介したように、マタハラは法律で禁止された行為であり、会社はマタハラ被害が起きないように就業規則の作成や研修会の実施など、さまざまな措置を講じる義務があります。就業規則の内容や研修会の実施については、社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けることで、被害を未然に防止するための具体的な措置を講じることが求められます。

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監修:「クラウドfreee人事労務」

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