パワハラ加害者の責任と会社の責任

公開日:2019年07月03日
最終更新日:2019年07月03日

目次

  1. パワハラとは
    • パワハラのリスク
  2. パワハラ加害者の責任
    • 民事上の責任
    • 刑事上の責任
    • 会社の懲戒処分
  3. 会社の責任
  4. パワハラ被害を起こさないためには
    • パワハラ度チェック
  5. まとめ

この記事のポイント

  • パワハラは、加害者はもちろん会社も損害賠償請求をされることがある。
  • 加害者に刑事上の責任が発生することもある。
  • パワハラ被害を起こさないためには、何がパワハラなのかを認識することが大切。

 

パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場でのいじめ、嫌がらせ、暴力などのことで、法的には不法行為に当たり、加害者はもちろん会社も損害賠償請求をされる可能性もあります。

パワハラの原因や内容はさまざまで、主に上司から部下へのいじめ・嫌がらせをイメージすることが多いと思いますが、部下から上司へのいじめや、同僚間でのいじめなどもパワハラとなることがあります。

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パワハラとは

厚生労働省は、平成24年(2012年)に「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を「パワハラ」と定義しました。

「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ報告」では、職場のパワハラが起こる背景には、「企業間競争の激化による社員への圧力の高まり、職場のコミュニケーションの希薄化や問題解決機能の低下、上司のマネジメントスキルの低下、上司の価値観と部下の価値観の相違の拡大など多様な要因が指摘される」としています。

また、パワハラ行為を①身体的な攻撃(暴行・傷害)②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)③人間関係からの切り離し(隔離・仲間はずし・無視)④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)の6つの類型に区分されるとしています。

引用:厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議について」

したがってパワハラは、上司から部下への行為に限らず、同僚間や、部下から上司への行為がパワハラになることもあります。また、暴力や暴言だけでなく相手を無視したり、業務とは関係のない私的な用事を命じたりすることが、パワハラとなる場合もあります。

パワハラのリスク

パワハラの被害者は心の健康を害することがあります。そして、ついには自殺を招く深刻な状態を引き起こすこともあります。
また、パワハラが行われるような職場では、被害者だけでなく周りの従業員の士気も低下させます。その結果、職場全体の業務効率が低下し、業務に停滞が生じたり人材が流出したりするなど、会社にとっても大きなダメージとなります。
また、パワハラの加害者が損害賠償として慰謝料を請求されることがありますし、加害者だけでなく会社が損害賠償責任を負うこともあります。

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パワハラ加害者の責任

パワハラの加害者は、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになります。パワハラによって被害者が精神疾患などに罹患し休業した場合には、その治療費を支払う必要がありますし、慰謝料を支払う義務を負います。また、パワハラの加害者は、会社に懲戒処分を受ける可能性があります。

民事上の責任

パワハラの加害者は、不法行為の責任を負います。パワハラ行為は、加害者の故意過失にもとづく違法性のある行為なので、被害者が被った損害について賠償責任が発生するのです。
少なくとも慰謝料の支払いが必要になりますし、被害者がうつ病になって働けなくなったら治療費や休業損害も補償しなければなりません。
さらにパワハラによって被害者が休業・退職をすることになり収入が減少した場合には、減少した額の給料を損害賠償として支払う必要があります。
被害者が自殺するなどの事態を招いたりした場合には、逸失利益や慰謝料の額が極めて高額になります。

音更町農業協同組合事件(釧路地裁帯広支部 平成21年2月2日)では、長時間労働が継続して疲弊した従業員に厳しく叱責をしたところ、その従業員が自殺したという事案について、逸失利益として7200万円強、死亡慰謝料として3000万円、その他の損害を含め合計1億398万円あまりの損害賠償を認定しています。

刑事上の責任

暴力や暴言などのパワハラ行為の違法性が強い場合には、加害者に刑事上の責任が発生するケースもあります。
たとえば、上司が部下に対し、胸ぐらをつかんだり殴ったりしたら暴行罪や傷害罪になりますし、名誉を傷つけるような発言があった場合には、侮辱罪や名誉毀損罪が成立します。
また、被害者は告訴することが可能であり、検察が加害者の行為が犯罪になると考えれば、加害者は起訴されて刑事訴訟となり有罪判決を受けるケースもあります。

会社の懲戒処分

パワハラの加害者は、会社によって懲戒処分を受ける可能性があります。
具体的な処分内容は就業規則に定められていますが、最悪の場合には懲戒解雇となります。

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会社の責任

社内でパワハラが起こった時には、加害者の従業員だけではなく会社にも責任が及ぶ可能性があります。
会社は、従業員との雇用契約において適切な就業環境を従業員に提供すべき義務を負います。つまり、会社としては働く従業員に対して「安全で働きやすい職場環境を作る義務」があるにもかかわらず、環境整備を怠ったとして、加害者だけでなく会社にも損害賠償責任を問われる可能性があるのです。

パワハラが行われるような職場は一般的には快適な職場環境といえず、それにも関わらず適切な対応を行わずに、会社がパワハラ問題を放置して、結果として従業員がうつ病になってしまった場合などには、債務不履行に基づく損害賠償責任を負います。
会社の債務不履行責任が認められた場合には、被害者である従業員から企業に対する損害賠償請求も行われる可能性があります。

パワハラ被害を起こさないためには

パワハラ被害を起こさないためには、どのような行為がパワハラに該当するのかしっかり認識することが大切です。
たとえば、「自分も以前は上司から厳しく指導を受け、成長してきたのだから同じように指導したい」などの考えを持っている人は、そのような指導方法が今は通用しないこと、職場に合わせてマネジメント方法を変えなければならないことをしっかり意識することが大切です。

パワハラ度チェック

パワハラの加害者のなかには、自分ではパワハラなど行っていないと思い込んでいて、「それはパワハラだ」と指摘されて初めて意識するケースが多々あります。
無意識にパワハラ行為を行うことがないようにするためにも、社内の研修などでパワハラ度チェックを行うことが大切です。

① 最近、パワハラについて世間が騒ぎ過ぎだと思う。自分はもっと厳しく指導された。
→「自分が体験してきた方法が絶対正しい」という考えは通用しません。職場は、いろいろな考えを持つ人間が集まっているのです。一律なマネジメント方法が通用する時代ではありません。

② 部下のなかに何度注意しても成長しない者がいる。もっと厳しく指導すべきだと感じている。
→確かに指導の内容をすぐに理解できず、なかなか成長しない従業員もいるでしょう。しかし、厳しく指導するということは、感情に任せて暴言を吐くことではありません。「問題点は何なのか」「何を改善すべきなのか」を明確にして、従業員それぞれの理解度に合わせて指導するよう心がけることが大切です。

③自分の指導を理解してくれる部下がいることは嬉しいことだ。
→自分の指導を理解し想定以上に働いてくれる部下を持つことは、上司としては嬉しいことでしょう。しかし、一方で「理解してくれない部下」に対しては、相対的に不満を感じてしまうものです。そして、そのような感情がパワハラにつながってしまうことがあります。管理職といえども人間であり、人に対する好き嫌いの感情を持つのは当たり前のことですが、自らコントロールしたうえで適切かつ合理的な指導を行うことが大切です。

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まとめ

以上、パワハラの加害者の責任や会社の責任についてご紹介しました。
ここでご紹介したような民事上の責任や刑事上の責任だけでなく、パワハラを放置することは企業のイメージダウンにもつながります。
上司が有罪になったなどと報道されたら、会社に対する社会の信用は地に落ちてそれがそのまま業績悪化に直結することもあります。
職場のパワハラは、加害者と被害者の個人的な問題では済まない問題であり、企業にも重大なダメージが及びものだということをしっかり認識することが大切です。

「職場のパワハラ(パワーハラスメント)の意味と種類」を読む

効果的にパワハラを予防し、対策をするためには、専門家である弁護士や社会保険労務士社労士などに相談し、必要な対策などについてアドバイスを受けることをおすすめします。
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