セクハラ加害者の責任と会社の責任

公開日:2019年07月03日
最終更新日:2019年10月11日

目次

  1. セクハラとは
    • セクハラの類型
    • 職場は「会社」だけではない
    • 男女ともに加害者・被害者になる
    • セクハラの範囲は広い
  2. セクハラ加害者の責任
    • 民事上の責任
    • 刑事上の責任
    • 会社も責任を負う
  3. セクハラを防ぐためには
    • 就業規則の作成
    • セミナーの実施
  4. まとめ

セクハラの相談件数は年々増加傾向にあり、都道府県労働局雇用均等室に寄せられる相談のなかでも最も多いのがセクハラに関する相談です。

この記事では、セクハラの意味やセクハラ加害者と会社の責任、セクハラ被害を防止するための対策方法などを紹介します。

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セクハラとは

セクハラとは、正式にはセクシャルハラスメントといい、性的な言動や行為などで、労働者に不快感を与えて職場の環境を悪化させたり、性的な要求を拒まれたとして労働者に一定の不利益(解雇、減給、降格等)を与えたりする行為のことをいいます。

内閣府男女共同参画室のデータによると、都道府県労働局雇用均等室に寄せられた職場におけるセクハラの相談件数は、平成19年をピークに多少減少傾向がみられますが、依然として高い数値で推移していることが分かります。

引用:内閣府男女共同参画室「都道府県労働局雇用均等室に寄せられた職場におけるセクシュアルハラスメントの相談件数」

また、「平成29年度都道府県労働局雇用環境・均等部(室)での法施行状況」のデータによると、都道府県労働局雇用均等室に寄せられた職場におけるセクハラの相談件数が6,808件にものぼることが示されています。

「平成29年度に、雇用環境・均等部(室)に寄せられた男女雇用機会均等法に関する相談は、19,187件であった。相談内容別にみると、「セクシュアルハラスメント(第11条関係)」が最も多く6,808件(35.5%)、次いで「婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い(第9条関係)」が4,434件(23.1%)となっている。」

引用:平成29年度都道府県労働局雇用環境・均等部(室)での法施行状況

日本の労働者は過労死やブラック企業の問題など、さまざまな労働問題に直面していますが、そのなかでもハラスメント問題は大きな比重を占めていることが分かります。
これらのセクハラ被害を実効的に解決するためには、会社がセクハラ独自の規制制度や判断基準持つことが大変重要です。

セクハラの類型

セクハラは、大きく「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の2つの類型に分類されます。

対価型セクハラ
セクハラを拒むことにより、解雇や減給などの不利益を受けるものを指します。
例えば「性的な関係を求めたが、断られたので腹いせとして降格させる」「愛人になるよう要求したが、断られたのでプロジェクトから外す」などの行為は、対価型セクハラに当たります。

環境型セクハラ
性的な言動により、就業環境が害されるものを指します。
また、環境型セクハラは、さらに「視覚型セクハラ」「発言型セクハラ」「身体接触型セクハラ」に類型化されています。

①視覚型セクハラ ②発言型セクハラ ③身体接触型セクハラ
・わいせつな雑誌などを目に見える場所で見る ・恋人がいないか、執拗に尋ねる ・上司が通りすがりに胸や腰を触る
・宴会で裸踊りをするなど ・食事・デートに執拗に誘う ・飲み会で肩を組むなど
・不倫をしているという噂を流すなど

職場は「会社」だけではない

男女雇用機会均等法11条では、職場のセクハラについて定義しています。
この「職場」の概念は広く解釈されていて、職場とは、物理的に日頃勤務している場所だけでなく、客先での打ち合わせ場所やカラオケボックス、出張先なども含まれます。
実際、仕事が終わった後の飲み会におけるセクハラ事案は非常に多く、過去の裁判事例でも、飲み会の席でのセクハラについて加害者だけでなく会社の責任も肯定し、会社の損賠賠償責任を認めています。

男女雇用機会均等法11条1項
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

男女ともに加害者・被害者になる

セクハラというと男性が加害者で、女性が被害者というイメージが強いのではないでしょうか。実際、都道府県労働局などの相談室に寄せられるセクハラの相談は、圧倒的に女性からの相談が多いものです。

しかし、セクハラは男性が女性に行うものだけでなく、女性による男性へのセクハラも当然あります。
たとえば、女性の上司が「男らしくない」「男のくせに、こんなこともできないの」などと発言することは、セクハラ行為に該当します。男性であるということだけで非難されれば、男性は不快に感じるからです。

また、同性同士のセクハラもあります。例えば、女性が同僚の女性について「あの人は不倫をしている」などの噂を流す行為は、セクハラとなります。

セクハラの範囲は広い

「どのような言動や行為がセクハラにあたるのか」といったセクハラの範囲は非常に幅広く、「早く結婚すればいいのに」「足がきれいだね」など、世間話のつもりでかけた言葉や自分では褒めているつもりの言葉でも、セクハラとなることがあります。

また、部下の女性を「〇〇ちゃん」と呼んだりニックネームで呼んだりする行為も同じです。
自分では職場の雰囲気を少しでも良くしようとして、親しみを込めて呼んでいるつもりでも、相手にとっては不快に感じることがあります。
つまり、わいせつな言葉でなくても性的な嫌がらせにつながれば、セクハラと判断される可能性があるということになります。

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セクハラ加害者の責任

セクハラの加害者は、民事上は不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任も負い、被害者が被った損害を賠償する必要もあります。

民事上の責任

セクハラの加害者には民事上の責任が発生する可能性があります。
この場合の民事上の責任とは不法行為に基づく損害賠償責任です。
少なくとも慰謝料が発生しますし、被害者がうつ病などになったら治療関係費や休業損害も請求されます。被害者が退職を余儀なくされたら、逸失利益も請求される可能性もあります。

刑事上の責任

セクハラの加害者は、刑事上の責任を負う可能性があります。
加害者のセクハラ行為が悪質で、強制わいせつ罪や強制性交等罪(昔の強姦罪)が成立するケースなどでは加害者に刑事責任が発生します。
つまり、セクハラの加害者となると、警察に逮捕されて刑事裁判にかけられて、有罪判決を受ける可能性があるということです。

被害者が反抗できないような暴力や脅迫行為を用いて性的行為を強要した場合、加害者には強姦罪(刑法177条)が成立します。また、被害者に対して、いやらしい行為をした場合には、強制わいせつ罪(刑法176条)が成立します。女性が嫌がっているにもかかわらず、無理やり胸を触る行為も、やはり強制わいせつ罪に当たります。
また「あの人は不倫をしている」「あの人の異性関係は派手だ」などと噂をすれば、名誉棄損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)が成立します。

会社も責任を負う

セクハラ被害が起こった際に責任を負うのは、加害者本人だけではありません。
会社が不適切な管理をしていた場合には、会社自身にも債務不履行責任や不法行為責任などの法的責任が発生する可能性があります。

会社は従業員との雇用契約により、従業員に適切な就労環境を提供すべき義務を負っています。セクハラが横行している環境を放置することはこの義務に反することになり、契約違反となって損害賠償義務を負うのです。
また、企業が社内の悪質なセクハラを放置して被害者が精神的苦痛を受けた場合には、企業は故意または過失によって被害者に損害を与えたと言えるので、不法行為も成立する余地があります。
このように、企業に法的責任が発生するケースでは、会社は被害者に対し、損害賠償金を支払わなければなりません。

なお、基本的に会社自身には強制わいせつ罪などの刑事罰は下りませんが、従業員が悪質なセクハラ行為で逮捕されて有罪判決を受けたということになると、企業への社会的な信用が一気に低下して大きなダメージにつながる可能性もあります。

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セクハラを防ぐためには

職場におけるセクハラを防ぐためには、日頃から社内で「どのような行為がセクハラに該当するのか」を周知し「セクハラ行為が行われた時には、厳しく対処する」という会社の方針をしっかり示すことが必要です。

就業規則の作成

就業規則とは、労働者が安心して働ける職場づくりのために労働時間や賃金、人事・服務規律・労働条件や待遇基準などを明記した会社のルールブックです。
常時10人以上の従業員を雇用している場合には、必ず就業規則を作成しなければなりません。

厚生労働省「モデル就業規則」でも、「性的言動により、他の労働者に不利益や快感を与えたり、就業環境を害するようなことをしたりしてはない。」とセクハラの禁止に関する条文を記載すべきと指導しています。

参照:厚生労働省「モデル就業規則」

セミナーの実施

セクハラ防止を目的としたセミナーを、定期的に行うことも効果的です。
セミナーでは、どのような行為がNGなのか、セクハラ加害者が厳重に処罰されることをしっかり認識させることはもちろん、セクハラ被害者にも真摯に対応するということもあわせて主張することが大切です。

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まとめ

  • セクハラ加害者は、不法行為に基づく損害賠償責任を負う
  • セクハラ加害者は、刑事上の責任を問われることもある
  • 加害者だけではなく、会社も責任を問われることがある

現代社会では、企業がセクハラ対策を行うことが必須ですし、万一セクハラ被害が発生したときのための対応策を練っておく必要もあります。就業規則や対応指針、マニュアル作成などの具体的な対応方法で迷われた時には、社会保険労務士に相談してみると良いでしょう。

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