労災保険とは|加入手続きと労災の認定基準

公開日:2019年07月04日
最終更新日:2019年07月04日

目次

  1. 労災保険とは
    • 加入しなければならない事業所
    • 社長や役員に対する補償はない
    • 被保険者となる人
  2. 労災保険の加入手続きと計算
    • 加入手続きの際に必要となる書類
    • 労災保険料の計算
  3. 労災保険給付の種類
    • 療養(補償)給付
    • 休業(補償)給付
    • 傷病(補償)給付
    • 障害(補償)給付
    • 介護給付
    • 遺族(補償)給付
    • 葬祭料
    • 二次健康診断等給付
  4. 労災の判断基準
    • 業務上の災害の判断基準
    • 通勤途上の災害の判断基準
  5. 労災保険に関する手続き
    • 従業員の入退社時の手続きはない
    • 労災保険の給付手続き
  6. まとめ

この記事のポイント

  • 労災保険とは、仕事中や通勤途中のケガなどについて迅速に必要な保障を行うことを目的とした保険制度。
  • 保険料は全額事業主が負担する。
  • 原則として従業員を1人で雇用する場合には、会社は「強制適用事業所」となり、加入が義務づけられる。

 

労災保険とは、仕事中や通勤途中のケガなどについて迅速に必要な保障を行うことを目的とした保険制度です。従業員が仕事中や通勤途中で事故などに遭って病気やケガをした時には、労災保険から治療費などの給付を受けることができます。

この記事では、労災保険に加入しなければならない事業所の要件や、加入手続き、労災保険料の計算や、労災保険給付の種類などについてご紹介します。

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労災保険とは

仕事中のケガや病気などを保障する「労災保険」と失業手当の給付などを行うことを目的とする「雇用保険」を合わせて「労働保険」といいます。

労災保険は、業務上または通勤途中の病気、ケガ、障害、死亡などの事故に対して迅速かつ公平に必要な給付を行うことを目的とした保険制度です。

したがって、仕事に関係のない日常生活の病気やケガの場合には健康保険を適用し、仕事中や通勤途中など仕事に関係のある病気やケガの場合には、労災保険を適用するというように、目的別に社会保険を適用することになります。

なお、労災保険は、労働基準法で定められている労働災害に対する補償責任を事業主に変わって果たすための保険制度なので、保険料は全額事業主が負担します。

加入しなければならない事業所

労働保険は、従業員を1人で雇用する場合には、会社は「強制適用事業所」となり、加入が義務づけられます。
労災保険が強制適用されないのは、「個人経営の労働者数5人未満の農林水産業」の事業所です。

ただし、これらの事業所の場合でも、業務災害の発生のおそれが多いとして厚生労働大臣が定めた以下の事業所については、労災保険が強制適用されます。

① 林業で、常時労働者を使用するもの、または1年以内の期間において使用労働者延人員300人以上のもの
② 総トン数5t以上の漁船による水産動植物の採捕の事業(ただし、河川、湖沼または特定水面(東京湾など)において操業する事業は任意適用)
③ 特定の危険または有害な作業を主として行う事業で、常時労働者を使用するもの

社長や役員に対する補償はない

労災保険は従業員のための保険制度なので、社長が1人でやっている会社の場合には、健康保険や厚生年金保険と異なり、雇用保険に加入することはできませんし労災保険についても特別な事業を除いては加入することができません。
つまり、社長や役員の仕事中の事故は、どこからも補償されない場合があるのです。

そこで、検討したいのが「特別加入」という制度です。
特別加入とは、労災保険の適用が除外されている中小企業の社長や役員、海外出向者、海外転勤者、大工、個人タクシー運転手などが自ら加入申請し、労災保険に加入する制度です。
特別加入の制度に加入すれば、一般の従業員と同じ保険の給付を受けることができます。ただし、特別加入の制度は、社会保険労務士または労働保険事務組合を通して申請を行わなければなりませんので、該当する人は早めに社会保険労務士や労働保険事務組合に相談することをおすすめします。

被保険者となる人

労災保険の適用を受ける労働者は、「適用事業所で使用される人で賃金を支払われる人」です。したがって、正社員、パート、アルバイトなど雇用形態に関係なく労災保険の適用を受けることができます。
また、前述した特別加入の制度に加入している場合には、中小企業の社長や役員、海外出向者なども労災保険の適用を受けることができるようになります。

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労災保険の加入手続きと計算

労災保険の加入手続きは労働基準監督署、雇用保険の加入手続きは、ハローワーク、と別々の場所で行いますが、保険料の申告・納付は一本化するのが基本です。これを「一元適用事業所」といいます。一方、農林、畜産、養蚕、水産の事業・建設の事業・港湾労働法2条2項に規定する港湾運送の事業を「二元適用事業所」といい、労災保険と雇用保険を別個に取り扱います。


いずれも従業員を雇い入れた日から10日以内に手続きをする必要があります。

参照:厚生労働省「労働保険の成立手続」

加入手続きの際に必要となる書類

労災保険に加入するためには、「労働保険関係成立届」「労働保険概算保険料申告書」を作成し、労働基準監督署に提出する必要があります。
また、加入手続きの際には、以下の書類を添付する必要があります。
法人事業の場合…法人(商業)登記簿謄本(60日以内発行の原本)
個人事業の場合…営業許可書・賃貸契約書などの所在地を確認できるもの
法人、個人事業所にかかわらず両方とも共通…賃貸契約書・不動産登記簿謄本のコピー(事業所の所在地が登記と異なる場合)

・労働保険関係成立届
原則として保険関係が成立した日の翌日から10日以内に、所轄の労働基準監督署に届け出ます。この用紙は3枚複写になっていて、このうち1枚にその事業所の労働保険番号を付して返却されます。雇用保険の「適用事業所設置届」を提出する場合には、この控えが必要です。

・労働保険概算保険料申告書
労働保険概算保険料申告書は、保険関係が成立した日から、保険年度の末日(3月31日)までの全従業員の賃金の見込総額を算出して、その金額(1000円未満切り捨て)に、その事業に該当する労災保険料率および雇用保険料率を乗じて、概算保険料を算出します。
そして、保険関係が成立した日の翌日から50日以内に申告・納付します。

労災保険料の計算

労災保険料を計算するためには、まず従業員に支払う4月1日から保険年度の最終日(3月31日)までの給与額を算出する必要があります。

労災保険料は、賃金総額に労災保険料率を乗じて算出します。

労災保険料=従業員の賃金総額(1,000円未満切り捨て)×労災保険料率

労災保険料率は、業種によって異なりますので、労災保険料表で確認します。
保険料率は、危険度が高い業種ほど高く、危険度が低い業種ほど低く設定されています。
参照:厚生労働省「労働保険年度更新に係るお知らせ」

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労災保険給付の種類

労災保険の給付は、療養(補償)給付、休業(補償)給付などがありますが、いずれも被災した本人か遺族が給付申請を行います。その際、会社(事業主)は、請求の申請書類の欄に事故などの事実を証明する必要があります。
※業務災害の場合には、○○補償給付、通勤災害の場合には○○給付となります。

これは、業務災害の場合は、労働基準法によって事業主の補償義務があるのに対して、通勤災害の場合には、事業主に補償義務がないからです。

療養(補償)給付

業務上または通勤途中に病気やケガをして、治療を受けた場合に給付されます。
必要な療養の費用の全額が支給されます。
請求の時効は2年です。

休業(補償)給付

労働者が療養のために会社を休まなければならない時に、生活費として休業給付が支給されます。4日目以降の休業から平均賃金の60%相当額が支給されます。
ただし、業務上災害の休業補償給付の場合には、労災保険から給付されない休業第1日~第3日分について、事業主の労働基準法上の補償義務(平均賃金の60%)が生じます。
通勤災害の場合には、事業主の補償義務はありません。
また、業務災害で4日以上の休業が必要となる場合には、給付請求に関係なく、災害発生時の状況を説明する「労働者死傷病報告」を労働基準監督署に提出する必要があります
請求の時効は2年です。

傷病(補償)給付

社員が療養を始めてから1年6か月経ってもケガや病気が治らず、症状が重いと判断された時には、年金として支給されます。
傷病(補償)給付については、請求の時効はありません。

障害(補償)給付

後遺症が残ってしまった時に、年金または一時金として支給されます。
請求の時効は5年です。

介護給付

ケガや病気が重く、介護を受けた時に、介護の状態に応じて介護費用が給付さ増す。
請求の時効は5年です。

遺族(補償)給付

労働者が亡くなった時に、残されたご遺族に年金または一時金として支給されます。
請求の時効は5年です。

葬祭料

労働者が亡くなり葬儀が行われた時に、一時金として支給されます。
請求の時効は2年です。

二次健康診断等給付

業務上災害のみの保険給付です。
一時健康診断において、血圧検査、血液検査等業務上の事由による脳血管・心臓疾患等の検査で異常と診断された時に支給されます。
脳血管・尊像疾患の発生の予防を図るために、面接による医師・保健師による保健指導を行います。

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労災の判断基準

労災保険給付が行われるためには、業務上の災害もしくは通勤途上の災害であることが要件となります。判断する際には、その傷病との間に相当因果関係があることが必要です。

業務上の災害の判断基準

業務上災害となるのは、災害に遭った労働者と、その傷病との間に相当因果関係があることが必要で、この因果関係のことを「業務起因性」といいます。
業務起因性が認められる行為には、本来の業務のほか業務に付随する行為や、生理的に必要な行為(トイレに行くなど)や反射的な行為も含まれます。
実際には災害の原因を証明するのは困難であるケースが多く、また労災か否については、個々の状況から労働基準監督署が判断をすることになります。

通勤途上の災害の判断基準

通勤災害は業務上の災害ではありませんが、業務災害に準じて労働者が保護されます。通勤災害とは、通勤途中に労働者がケガをしたり、病気になったり、障害または死亡したりすることをいいます。
通勤災害と認定されると、労災保険の保険給付の対象となりますので、労働者は治療費や生活費の支給を受けることができます。
通勤災害と認定されるためにも、いくつかの要件が必要です。
なお、労災保険法第7条では、通勤災害と認定されるための要件として以下を規定しています。

【労災保険法第7条第2項】
通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
一 住居と就業の場所との間の往復
二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

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労災保険に関する手続き

労災保険の加入手続きについては前述したとおりですが、労災保険については、その他にもさまざまな手続きが必要となります。

従業員の入退社時の手続きはない

労災保険は、労働者が適用事業所に雇用されたことで、労災保険から補償が受けられる制度です。したがって、従業員を新規に採用した時や従業員が退職した時に、個人ごとの労災保険の手続きは行う必要はありません。

なお、仮にその事業所が労災保険に加入手続きをしていない場合でも、業務上の災害については、事業主に労働基準法上の補償義務が発生しているので、その肩代わりの役目をする労災保険から補償を受けられることになります。

労災保険の給付手続き

業務上や通勤途中の病気やケガなどについて、労災保険の申請が必要となったときは、原則として罹災した労働者やその家族が労働基準監督署に対して病院等を経由して給付請求を出すことになります。

提出書類の種類は個々のケースによって異なります。
ここでは、ケース別に必要となる主な書類をご紹介しますが、必要な書類については、もれがないよう、事前に労働基準監督署に確認しておきましょう。

病院で診察を受けるだけの時
療養補償給付たる療養の給付請求書
療養補償給付たる療養の費用請求書
療養補償給付たる療養の費用請求書(交通(移送)費用証明書)

病院を変更する時
療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届
療養補償給付たる療養の費用請求書(転院先が労災指定病院でない時)

通院する時
療養補償給付たる療養の費用請求書
療養補償給付たる療養の費用請求書(交通(移送)費用証明書)

会社を4日以上休む時
労働者死傷病報告
休業補償給付支給請求書・休業特別支給金支給申請書

休業補償給付を受給中に亡くなった時
未支給の保険給付支給申請書・未支給の特別支給金支給申請書

338労災の手続き|給付を受けるための申請方法と必要書類

まとめ

以上、労災保険の概要や加入手続き、労災の認定基準や、給付の種類などについてご紹介しました。
労災保険は、従業員を1人でも雇用したら原則として必ず加入しなければなりません。また、給付を受ける場合にはさまざまな手続きが必要となります。
手続き上の不明点や疑問点は、早めに社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

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