公開日:2018年11月06日
最終更新日:2024年02月10日
「今は、会社の規模が小さいから」「売上が少ないから」といった理由で、顧問税理士と契約を結ぶ必要性を感じていない方もいらっしゃるかと思います。
そして、このような方に「どのくらいの規模になったら顧問税理士に依頼するつもりか」と訊くと、それはそれで明確なイメージを持っていないものです。
しかし、税理士に依頼できるのは決算業務だけではありません。
会社の規模が小さくても、売上が少なくても、顧問税理士のメリットは多々あります。
この記事では、顧問税理士に依頼できる業務や顧問税理士のメリットについてご紹介します。
顧問税理士の基本
税理士と顧問契約を結ぶメリットは、会社経営に関する情報をすべて把握している税理士に、現状の課題や起こりうるリスクを指摘してもらいながら経営判断ができるという点です。
また、税理士は他士業と連携していることが多く、弁護士や司法書士、社会保険労務士などを紹介してもらえることもあります。また、税理士の幅広いネットワークを生かし、業務提携のパートナーを紹介してもらうケースもあります。経営者が顧問税理士を活用することで、事業を拡大することも可能なのです。
顧問税理士とは、顧問契約を締結した「税理士」のことです。
具体的な業務は顧問契約の内容によりますが、税務処理や税務申告はもちろん、節税対策や事業計画に対してのアドバイスをしてもらうこともできます。経営者の知識や経験だけでは不足している税務・財務の分野を補ってくれるのが、顧問税理士ということです。
顧問税理士に依頼できる業務は、個々の顧問契約の内容によって異なります。
記帳業務の代行、経理指導、税務申告などの業務のほか、資金繰りなど経営の根幹に関わる課題を相談することもできます。そこで、税理士を経営のパートナーとして事業を支えてくれる存在と考える経営者も多いようです。
経理指導・経理代行
会社を経営していくうえでは、経理業務は欠かせません。
経理業務の内容は会社によって異なりますが、事業を行ううえでは、売上請求書、会計データの記録、給与明細など、最低限行わなければならない業務は多々あります。
顧問税理士がいれば、これらの経理業務について指導してくれるほか、顧問契約の内容によっては、アウトソーシング(経理代行)することも可能です。
なお、経理業務については、その重要性がコロナ禍で再認識されました。
新型コロナウイルス感染症関連の補助金などの救済策では、さまざまな書類の提出が求められましたが、普段経理業務をおろそかにしていて必要な書類がそろわず、補助金などを受けることができなかった…というケースもあったようです。
このように、有事になると経理業務を大切にしていないこと自体が死活問題となってしまいます。
税理士に経理業務全般を依頼していれば、有事にスムーズに救済策を受けることができます。
決算書の作成・申告業務
決算申告、法定調書、償却資産税などの申告業務は、税理士の独占業務です。
最近は、「freee会計」で、日々の加池尾首都への入力は自社で行い、会計データのチェックと税務処理、事業計画についてのアドバイスを税士事務所に依頼する会社も増えてきています。
なお、決算書の作成を税理士に依頼し、税理士法第33条の2第1項の書面を添付することで、決算書の信用力を高めることができ、税務調査の対象となる可能性が減少するというメリットもあります。
給与計算業務
税理士事務所によっては、給与計算業務まで請け負ってくれる事務所もあります。
年に1度の年末調整(社員の年間給与をもとに、所得税額を確定させる作業)について、サポートしてもらうことができます。
また、社会保険労務士と連携して労務業務全般についてサポートしてくれる税理士事務所もあります。
資金調達のアドバイス
銀行から融資を受ける際には、直近の損益計算書が必要であり、事業部門別にどのような戦略で展開しどのように集積を上げていくかを見通した事業計画書が必要です。
資金調達に精通した税理士であれば、銀行から融資を受ける際に必要な書類の作成などのサポートを受けることができます。
また、事業に有益な補助金・助成金の情報を提供してもらい、補助金・申請するための必要な手続きをサポートを受けることもできます。
事業承継のアドバイス
税理士には、事業承継するのか、M&Aを検討するのか、自分の代で事業をたたむのかといったことも相談することができます。
事業承継をするのと自分の代で事業をたたむ場合では、決算の組み方や節税対策がまったく違ってきます。
事業承継やM&Aでは、株価算定業務が必要ですし、事業をたたむ場合には中長期の節税対策が必要です。
顧問税理士は、経営者の痛みに共感してくれる
経営者とは、実に孤独なものです。
サラリーマンであれば、会社で自分の仕事さえきっちり行っていれば良かったものが、起業をすると事業以外の事務作業が大変多く、支払や納税といった資金繰りの悩みも増えます。
しかし、「資金繰りが厳しい」「売上が減っている」という経営上の悩みは、なかなか社内の人間には相談できないものです。
それが社内に知れ渡ってしまったら、貴重な人材が流出してしまうリスクがあるからです。
そんな時に相談できるのが、顧問税理士です。実際、経営者のなかには、「腹を割って相談できるのは、経営全体を理解している税理士だけ」という人もいるほどです。税理士は、顧問契約を締結した契約関係にありますが、経営に深く関わる課題を経営者と共有しており、経営者の痛みを理解してもらうことができる数少ない存在といえます。
顧問税理士は、有効な節税対策を提案してくれる
前述したとおり、「freee会計」を導入すれば、日々の記帳業務はそれほど煩雑なことはありません。ただし、自社にとって有効な節税対策を行うことができているかは、別問題です。
会社が払わなければならない税金は、法人税、事業税、消費税など多々ありますが、上手に対策を講じれば、これらの税負担はかなり抑えることができます。
税金は、会社がみずから申告した内容にもとづいて税金を納付しますが、この時せっかくある節税の制度を使わなかったからといって、税務署が「税金を払い過ぎですよ」「この制度を活用すれば、もっと節税することができます」などと教えてくれるわけではありません。
有効な節税対策を行うためには、税制に習熟している税理士に相談してアドバイスを受けることが非常に重要といえます。
顧問税理士は、資金繰りについてアドバイスしてくれる
会社を経営していくうえで最も大きな問題のひとつが、資金繰りです。
取引先への支払い、従業員への給与の支払い、税金の納付など行うなかでは、資金繰りが厳しい時もあるでしょう。
また、事業を拡大させるために仕事をアウトソースするなどした場合には、一時的に利幅が減る可能性があり、場合によっては、早めに資金調達を検討しておいた方がよいこともあります。
資金調達の方法としては、金融機関からの融資、ベンチャー・キャピタルからの出資、助成金・補助金の活用などさまざまな方法がありますが、顧問税理士がいれば、自社の事情に最も最適な資金調達の方法についてアドバイスをしてもらうことができます。
さらに税理士からの紹介案件については、金融機関側からしても決算書が企業実態を適正に示しているものと判断することができるため、安心して融資をしてくれる可能性が高くなります。また、融資に必要な試算表や資金繰り表などの資料の作成についてすぐに対応してくれるなどのメリットがあるので、税理士からの顧客紹介については積極的に対応してくれることが多いのです。
顧問料はデメリットか
顧問税理士のデメリットといえば顧問料は発生することですが、顧問料を毎月支払うことと、財務専門の人間を雇用することを比較すれば、人を雇用するよりやすく優秀なCFOを雇うことになるのではないでしょうか。
さらに優秀な税理士は、弁護士や社会保険労務士といった他士業とのネットワークも持っているので、税務だけでなく労務や法務と言ったトータルサービスを提供してもらうこともできます。
弁護士や社会保険労務士を探して面談をする労力を考えれば、すぐに他士業を紹介してくれる税理士の存在は非常に助かるはずです。
経営者の仕事は、実に煩雑です。
本業であるサービスや商品開発はもちろん、営業活動が必要なうえに、経理作業も行わなければなりません。
特に会社が軌道に乗れば、個人事業主の時とは比べものにならないほど経理事務の作業は大変になります。
日々の記帳業務だけであれば、「freee会計」を導入すれば、作業はそれほど煩雑ではないでしょう。
しかし経理業務の本来の目的は、その会計ソフトに記録されたデータを分析して、経営の指針にすることなのです。
顧問税理士がいれば、会計データのチェックと適切な税務処理を任せることができ、事業計画に対して適切なアドバイスを受けることができるため、経営者は経営業に専念することができます。
顧問税理士に客観的な視点から、事業全体を見てもらうことで、改めて会社の強みに気づき、その強みを活かした経営ができるようになり、決断のスピードが速くなっていきます。
強みを活かした経営は、レバレッジが利くので利益体質が強化され、経営が上向く要因となります。
また、経営者は常に決断することを迫られる立場です。
正解が何か分からない状態で決断しなければならないことも多く、大きな不安を抱えることも少なくありません。
しかし決断しなければ機会損失につながってしまうのではないかという焦りから、税理士なら見えるのに経営者には見えないという状況で、間違った判断をしてしまうこともあります。
そういった場合にも、顧問税理士の力を借りれば、正しい状況を把握することができ、結果的に最善の選択をできる可能性が高くなります。
経営者には、「自分でなければできないことに集中し、自分でなくてもできることは他の人に任せよう」という決断も必要なのです。
顧問税理士の報酬については、2002年(平成14年)の税理士法改正によって、税理士会の報酬規程が廃止され、現在は税理士が独自に決めた報酬規定が作成されています。
しかし、現在も法改定前の顧問報酬を参考にしている税理士も多いようです。
そこで、ここでは税理士法改定前の顧問報酬についてご紹介します。
顧問報酬(月額)
[期首資本金等基準] | [年取引金額基準] | |
200万円未満 | 2,000万円未満 | 30,000円 |
300万円未満 | 3,000万円未満 | 35,000円 |
500万円未満 | 5,000万円未満 | 50,000円 |
1,000万円未満 | 1億円未満 | 70,000円 |
3,000万円未満 | 3億円未満 | 85,000円 |
5,000万円未満 | 5億円未満 | 100,000円 |
1億円未満 | 10億円未満 | 130,000円 |
3億円未満 | 30億円未満 | 160,000円 |
5億円未満 | 50億円未満 | 190,000円 |
5億円以上 | 50億円以上 | 220,000円 |
2億円増すごとに | 20億円増すごとに | 3万円を加算 |
税務代理報酬
[所得金額基準] | [年取引金額基準] | |
100万円未満 | 2,000万円未満 | 60,000円 |
150万円未満 | 3,000万円未満 | 80,000円 |
200万円未満 | 5,000万円未満 | 100,000円 |
400万円未満 | 1億円未満 | 170,000円 |
1,200万円未満 | 3億円未満 | 300,000円 |
2,000万円未満 | 5億円未満 | 400,000円 |
4,000万円未満 | 10億円未満 | 550,000円 |
1.2億円未満 | 30億円未満 | 700,000円 |
2億円未満 | 50億円未満 | 800,000円 |
2億円以上 | 50億円以上 | 900,000円 |
1億円増すごとに | 25億円増すごとに | 10万円を加算 |
税理士を探すときには、まず「どんな税理士と、どのような顧問契約を結びたいのか」を明確にすることが大切です。
まずは税務申告だけ依頼したいのか、経営の相談もしたいのか、節税のアドバイスを積極的にしてほしいのかを明らかにします。
この点を明らかにしないと、「何となく不満がある」「こちらから質問しないと、教えてくれない」といった、漠然とした不満を持ちながら、顧問税理士と付き合わなければならなくなります。
なお、freee税理士検索では、全国の税理士事務所の中からさまざまな検索条件で税理士を探し、気になる税理士がいれば簡単に問い合わせをすることができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので無理なく自分に合った税理士を探すことができます。
また、freee税理士コーディネーターでは、税理士紹介専任担当が自社に合う税理士事務所を直接ご紹介します。
利用料は無料で、効率的に税理士を探したい人におすすめのサービスです。
顧問税理士の豆知識
コロナ禍は、さまざまな企業に大きなダメージを与えました。
しかし景気が悪化し始めたのは、実はコロナ禍だけが原因ではありません。コロナ禍が景気悪化に拍車をかけたのは事実ですが、実は2008年に起こったリーマンショックから回復しきれていない企業も数多くあったのです。
今後は、ますます企業経営に進化が求められるでしょう。そのためには、技術革新や販売方法の変化なども必要となると思いますが、もっとも大切なのは財務戦略です。
顧問税理士がいれば、さまざまな財務戦略上の対策を講じることができます。
以上、顧問税理士の意味や顧問税理士のメリットについてご紹介してきました。
顧問税理士と顧問契約を締結すれば、顧問料がかかるうえに、他にも記帳の代行費や申告費が必要になることもあります。
しかし、相性の合う税理士との顧問契約には、これらの報酬以上の価値があります。
良い税理士との出会いは、事業を無理なく確実に成長させてくれるきっかけになるでしょう。
\ 顧問税理士を検索 /
・顧問税理士の検討中。最適なタイミングはいつでしょうか。 「顧問税理士さんをお願いするタイミングについてご相談があります。 一般的には売り上げ1000万以上になったらとよく聞きますので、2022年の売り上げはその基準が未達でしたのでお願いしていないのですが、2023年は現在の案件のペースだとその基準を超えてくると思われるので…」 |
・【ご相談】顧問税理士がfreeeを把握していない場合はどうすれば良い? 「今の登録データの確認と処理の仕方、経理やったことがないのでサポートしてほしいです。 今の税理士、FREEEいじれないためあんまり相談しにくいです。…」 |
・会社設立に際して税理士に相談すべきこと・相談するタイミングを教えてください 「2023年1月に法人成り(合同会社設立)を検討しています。(現在サラリーマン兼個人事業主) freee会社設立やfree会計、独学で学んだ会計知識をもとに、顧問税理士を付けずに会社を経営していこうと考えています。とはいえわからないこともゼロではないので、税理士に一度相談すべきか検討中なんですが、どのタイミングで相談するのが一番良いのか…」 |
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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