顧問契約とは?税理士の顧問契約のひな形からポイントを解説

公開日:2024年05月10日
最終更新日:2024年05月10日

この記事のポイント

  • 顧問契約とは、決められた範囲の業務を委託すること。
  • 顧問契約には、契約期間や報酬の額、支払時期などを記載する。
  • 委託した業務の範囲については、十分確認することが大切。

 

顧問契約とは、ある一定の範囲の業務を委託することです。
税理士との顧問契約は、ある程度ひな形が決まっていますが、業務の範囲や報酬の額、支払方法などチェックすべきポイントがいくつかあります。
この記事では、顧問契約の意味やメリット、報酬の相場などについてご紹介します。

顧問契約とは

顧問契約は、法律上は委任契約または準委任契約に含まれることとなります。
税理士と顧問契約を結ぶときは、業務の範囲や報酬についてしっかりと確認することが、後々のトラブルを防ぎます。

(1)税理士の顧問契約のひな形

①契約の成立要件です。
契約の成立要件とは、申し込みと承諾の意思表示の合致のことで、意思表示が外形的に存在しない場合には、不成立となります。
なお、日本ではまだこのように甲、乙という表記が圧倒的に多いですが、英文契約では固有名詞の略語で置き換えるのが一般的です。

②業務の範囲は契約書内に記載されることもありますが、別紙記載とすることもあります(例では、別紙記載としています)。
別紙に記載されている業務内容については、税理士に細かく確認しましょう。
また、別紙記載以外の業務内容については、その都度協議して決定することとされていますが、この点についてもどのような業務について協議できるのか、あわせて確認しましょう。

③契約期間の自動更条項です。
当事者間で当初合意した契約期間が満了しても、いずれかの当事者から更新を拒絶する旨の意思表示がない限り、自動的に契約が更新されていく条項です。
自動更新条項は、長期間にわたって継続的な契約関係を維持したい場合に、契約の管理に必要なコストを削減でき、さらに更新の手間を省くなどのメリットがあるため、継続的契約においては自動更新とするのが一般的です。契約書によっては、「契約期間終了の1か月前まで」が「3か月前まで」とされていることもあります。解約の意思表示の時期に関わりますので十分に検討しましょう。

なお、契約の終了に関する事項としては、①契約の期間に関する条項、②契約の更新に関する条項、③契約の中途解約申し入れに関する条項、④契約の解除に関する条項と分けて記載されることもあります。

④資料を提供すべき責任があることが明記されています。
「速やかに」は、できるだけ早くという意味であり、訓示的な意味で使われます。
※「直ちに」は、一切の遅れが許されないという意味であり、「遅滞なく」は、事情の許す限り最も早くという意味です。

直ちに>速やかに>遅滞なく
(左が最も時間的即時性が強いことを意味します)

⑤税務処理においては、複数の処理方法が存在する場合があります。そこで、複数の処理方法が存在する場合には、事前に両者で検討・説明したうえで承諾を得るものと記載されています。

⑥設備投資に関しては、消費税計算などに影響を及ぼす可能性が考えられるため、顧問税理士にその情報を事前に提供すべきとされます。

⑦解約に関する通知の期限です。解約時や顧問税理士の変更時のトラブルを防ぐためにも、期限についてはしっかりと確認しましょう。

⑧暴力団排除条項です。これは、暴力団等の反社会的勢力を取引から排除するために設けられた条項で、実務上は契約類型を問わずに規定されているのが通常です。
表明保証とは、一方の当事者が相手方当事者に対して、一定の時点において一定の事項が正確かつ真実であることを表明し保証することです。
表明保証は、法定責任ではなく、あくまで当事者間の合意に基づく契約の取り決めであり、裁判例では「表明保証の機能には、リスク分配機能があり表明保証をした契約当事者は、表明保証をした事実について責任を負う一方で、それ以外の事実については責任を負わないとすることで、契約当事者の責任を明確にする機能がある」としています。

⑨契約に関してトラブルが生じた場合に、いずれの裁判所で訴訟を提起することができるかを定めた条項です
当事者間で管轄について契約に定めなかった場合には、民事訴訟法の規定に従い、被告の普通裁判籍の所在地または民事訴訟法に定める地を管轄する裁判所に訴訟を提起することになります。
なお、当事者は第一審に限り合意によって管轄裁判所を定めることもできます。

⑩会社が当事者となる場合には、契約書にサインをする者が当該会社を代表して契約を締結する権限を持っていることが必要です。
会社が定款等により代表取締役を定めている場合には、代表取締役には会社を代表する権限が付与されていることから、当該会社の代表取締役が契約書末尾の署名権者としてサインするのが一般的です。
ただし、取締役以外の部長などの従業員の場合も、会社から対外的に代表権を与えられているケースであれば、有効に契約を締結することができます。

(2)顧問契約のメリット

顧問税理士がいるだけで、ビジネスが大きく変わります。
会計作業を税理士に任せることで、経営者は本業に専念することができますし、効率的な経理システムの構築や有効な節税対策を提案してもらうことができますし、資金繰りの解決策も提示してもらうことができます。
また、スモールビジネスの場合は特にマーケティングやプロモーションに力を入れる傾向があり、会計作業まで手が回らないケースが多いものですが、会計作業を疎かにしていては、事業を存続させることはできません。事業を成長させるためには、正確に数字を把握することが大切だからです。
顧問税理士に決算カウンセリングを依頼すれば、自社の事業の状況を正確に把握することができ、改善策を検討することができます。
さらに、顧問税理士がいることで税務調査の対象となりにくいというメリットもあります。決算書に税理士の押印がある場合、税務署から「この会社は、税理士が顧問だから問題ないだろう」というイメージを持たれるのです。

(3)税理士の顧問料の相場は

税理士の顧問契約の相場は、事業の規模や所得金額によって異なります。
個人の場合、所得金額が300万円以下であれば顧問料は2万円程度、決算料は10万円程度というケースが多いようです。
法人の場合は、所得金額が300万円以下であれば顧問料は3万円程度、決算料は20万程度というケースが多いようです。
最初は規模が小さくあまり手間がかからなかったものの、規模がだんだんと大きくなり作業が増えた場合には、顧問料の値上げを提案されることもあります。
いずれにしても、報酬額は双方が納得できる額であることが大切です。
業務内容とあわせて、きちんと説明を受けるようにしましょう。

(4)顧問契約を解約するときは

税理士を変更したいと考えたら、まずは次の税理士を見つけることが大切です。先に顧問契約を解約してしまい次の税理士が見つからなかったら、決算時に大変なことになってしまいます。
また、税理士とは円満に契約を解約することも大切です。
解約する場合には、「契約期間終了の1か月前までに通知する」と規定されていることがあるので、契約書の内容もきちんと確認しましょう。

(5)その他注意すべきこととは

税理士を選ぶ際に最も大切なのは、顧問料でも事務所の規模でもなく、相性です。
税理士と経営者は、結局のところは人間同士の付き合いとなるのですから、相性は非常に大切です。相性が悪いと、不明点があっても質問できなくなって本来スムーズに進むべき仕事が滞ってしまうこともあります。
税理士と1時間程度話せば、相性の善し悪しはある程度判断できるものなので、ぜひ直接話してみることをおすすめします。
また、分かりやすい説明をしてくれるかも重要なチェックポイントです。
税務や会計の世界では、難解な専門用語が数多くあります。
専門用語を分かるようにかみ砕いて話してくれるか、他の用語に置き換えて説明してくれるかをチェックしてみましょう。

まとめ

会社が成長すればするほど、税務は複雑になっていきます。
顧問税理士がいれば、複雑な申告に時間をとられることはありませんし、経理担当の従業員を雇用するより顧問税理士と契約する方がお得です。さらに顧問税理士がいれば、経営や税務の相談をすることもできます。
なお税理士を選ぶ時には、顧問料ではなく、個々のニーズに沿った税理士を選ぶことが大切です。
「記帳は自社で行い、チェックだけ依頼する」「節税のアドバイスを受けたい」など、まずは自社のニーズを明確にしてから、税理士を選ぶことが大切です。

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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
 

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