公開日:2019年07月08日
最終更新日:2024年02月21日
税理士というと、「税務署に提出する書類を作成したり、申告書を作成したりする専門家」というイメージを持つ人が多いと思います。
そのイメージから、「うちは、まだまだ会社の規模も小さいから税理士に依頼しないで、自分で申告書を作成しよう」「経営相談するほど売上が上がってないから、税理士は必要ない」という人もいるでしょう。
しかし税理士には、税務署に提出する書類や申告書を作成する業務の他に、節税対策や資金繰り、経理システムの構築、相続税対策など、さまざまな相談をすることができます。
この記事では、税理士が必要となるケース、必要ないケース、顧問税理士がいるメリット・デメリットについてご紹介します。
税理士とは、納税者の相談相手となって、納税者に代わって税務署に提出する書類を作成したり、申告書を作成したりする専門家です。
税理士になるためには、税理士試験に合格するか、税務署出身者(23年以上勤務し、指定条件を満たす必要がある)であるか、弁護士や公認会計士の試験に合格する(一定の要件あり)必要があります。
税理士には独占業務があり、税務代理、税務書類の作成、税務相談については、有償・無償を問わず、税理士または税理士法人以外の者が行うことはできません。
税理士は主に中小企業や個人事業主を相手に税務業務を行う専門家です。一方、公認会計士とは、大企業を相手に監査業務を行う専門家です。
公認会計士の独占業務が、財務諸表監査であるのに対して、税理士の独占業務は、税務代理・税務書類の作成・税務相談でクライアントの納税義務をサポートします。
公認会計士が、監査法人である程度経験を積んでから、税理士として開業するケースがあります。
公認会計士は税理士としても登録することができるので、専門知識を生かしてコンサルティング業務などを行うこともあります。
税理士の独占業務は、税務代理・税務書類の作成・税務相談ですが、その他にもいろいろな相談をすることができます。
ここでは、税理士が必要なケース、税理士に相談した方がよいケースについてご紹介します。
会社設立・起業時に節税したい・有利な融資制度を活用したい
会社の設立時には、税金のことまで考えない人がほとんどですが、実は設立時だからこそ可能な節税対策もあります。たとえば、決算期や資本金の額は会社設立後の納税額に大きな影響を与えます。
また、創業時しか利用できない補助金や融資制度もあり、税理士に補助金の申請、融資制度の利用まで相談することができます。
会社の設立時に相談した税理士は、会社設立後においても経営者のブレーンとして事業を会計・税務の面からサポートしてくれるだけでなく、時には不安要素について経営者と一緒に考え、その不安を解消する提案をしてくれるでしょう。
法人決算をスムーズに行いたい
法人決算とは、法人が行う法人税等の確定申告です。
個人の確定申告であれば、何とか自力で行うことができますが、法人の決算業務や申告はかなり難解で、専門知識も必要になります。
そして、法人決算・申告業務を適切に、かつスムーズに行いたい場合には、税理士に依頼するのがおすすめです。
顧問税理士なら、日々の経理・記帳業務から決算までトータルでサポートしてくれるケースがほとんどですが、決算・申告業務のみを行うプランを用意している税理士もいます。ただ、可能な限り早めに相談することで、節税対策や金融機関対応などを踏まえたサポートを受けることができます。
経理システムを構築したい
会社の「お金の流れ」はよく、人間の身体の「血液の流れ」に例えられます。
帳簿上は黒字でもお金の流れが止まってしまえば、会社はあっという間に倒産してしまうからです。
そして、この「お金の流れ」を止めないためのポイントが、経理・記帳業務を通じて「入金」「出金」をしっかり管理することです。
具体的には、売上を増やし、そのなかから仕入れ費用や人件費などの経費を支払い、売上債権、設備投資、棚卸資産など姿を変えながら、最後に「現金預金」という形で大きくなって戻ってくるように管理することです。
そして、この管理を適切に行うために必要不可欠なのが経理・記帳業務です。
経理・記帳業務が適切に行われていないと、いくら売上が上がっても、会社にお金が全く残らない…という状況にもなりかねません。
税理士に経理システムの構築をサポートしてもらえば、スムーズな経理業務が可能になるだけでなく、いかに支出を減らし、お金をできるだけ多く社内に残すための施策を提案してもらうこともできます。「今、起きている問題は何か」「この問題を解決するためには、どのような対応をとるべきか」など、タイムリーなアドバイスをもらうことができます。
融資・資金調達のサポートをしてほしい
税理士には、融資や補助金申請などの資金調達についてサポートをしてもらうことができます。
融資を受ける際には、決算書や事業計画書などさまざまな書類を提出するよう要求され、これらの書類の内容で融資を受けることができるか否か、利率はどのように設定するかなどが判断されます。
したがって、有利な条件で融資を受けたい場合には、資金調達に精通した税理士に相談する方がメリットがあります。
税理士のサポートを受けながら書類を作成することで、事業資金を確保できるか否かが変わるといっても過言ではないのです。
ただし、すべての税理士は資金調達のサポート業務を行っているわけではありませんので、資金調達について相談する際には、資金調達に精通している税理士に相談することをおすすめします。
税務調査に立ち会ってほしい
事業を行っていくうえで、避けては通れないのが税務調査です。
調査官が何をチェックするのか事前に把握したうえで、それらに対する万全の対応策をとっておけば、税務調査は特に恐れるものではありません。
しかし、説明を求められた時に適切な証拠をすぐに提出できるように準備し、答えにくいことを質問された場合には、税理士がいるか否かで税務調査の結果が大きく変わることもあります。
顧問税理士がいない場合でも、税務調査だけ対応してくれる税理士もいますので、税務調査の連絡がきたら、すぐに税理士に連絡をとりサポートを求めましょう。
相続など個人の税務相談をしたい
税理士というと「会社の顧問税理士」をイメージする人が多いようですが、個人の確定申告や相続税申告・相続税対策についても、税理士に相談することができます。
特に相続税対策は、適切な対策を行うか否かで納税額が何百万・何千万と変わることもあります
早めに税理士に相談して、中長期で相続税対策を行うことで、税負担を大きく減らすことができますので、相続対策を検討したい人は税理士に相談する方がよいでしょう。
税理士が必要ないケースは、たとえば個人事業主としてスタートしたばかりといったケースです。
今は、「freee会計」を活用すれば、簿記の知識もそれほど必要なく経理作業を行うことができますし、売上もそれほどない場合には、そもそも税理士に相談する余裕もないといったケースもあるでしょう。
ただ、個人事業主となると確定申告が必要となりますし、節税対策を行うか否かで納税額は大きく変わります。また、売上規模によっては会社を設立した方が、節税できることもあります。
したがって、事業が順調に成長してきて「有効な節税対策を行いたい」「会社を設立するべきか知りたい」といった場合には、やはり税理士に相談すべきでしょう。
前述したとおり、税理士にはさまざまな税務相談・税務代理業務を依頼することができますが、税理士に依頼するメリットは、「税に関する相談ができること」です。
税理士に早めに相談することができれば、適切な節税対策を提案してもらうことができ、決算・税務申告をスムーズに行うことができます。
税理士は、経理のプロです。
会計ソフトへのデータ入力、試算表の作成、貸借対照表・損益計算書などの作成、給与計算と給与明細書の作成、決算申告などの業務は、すべて税理士に依頼することができます。
簿記や税務知識のない人が何日もかけて行うような業務を、経理のプロなら数時間程度で終わらせることができ、当然ミスもありません。
時間と労力が大幅に削減されるだけでなく、あわせて節税面のサポートまでしてもらうことができます。
ビジネスを行う以上、税務調査を受ける可能性は誰にでもあります。
税務署は、担当地域のすべての法人の決算書に目を通しています。
しかし、決算書に税理士の印鑑がある場合には「この会社は、顧問税理士がついているから脱税はしないだろう」という印象を、税務署に与えることができます。
ところが、税理士の印鑑がない決算書があると、「この会社は、正確な経理処理ができていないのでは」と疑われてしまう可能性があるのです。
また、税務調査の対象となった時にも、顧問税理士がいるかいないかでは結果が大きく変わることがあります。
税務調査のためにどのような準備を行わなければならないのか、必要な書類は何かといった事前のアドバイスはもちろん、調査当日も納税者の味方となって毅然として税務署に対応してもらうことができます。
税理士法1条には「税理士は、税務に関する専門家として、納税義務者の信頼にこたえ」と明記されています。つまり、税理士は、納税者の味方として業務を行わなければならないと法律で規定されているのです。
決算・税務申告の作業は、非常に煩雑です。
帳簿のモレやミスを確認し、年末に残った在庫の数を確認しなければなりません。
そして、日々の経理作業の最終目的として決算書を作成して申告書類を作成する必要があります。
税理士に依頼すると、これらの税務に関するあらゆる書類を作成してもらうことができます。そして、申告書を作成する際に税金の計算について相談に乗ってもらうこともできますし、節税のための意見をもらうこともできます。
依頼する内容や作業量によって料金は大きく異なりますが、決算作業だけ依頼する場合には、その分報酬を安く済ませることができます。
ずさんな税務申告を行なうと、税務調査の対象となりペナルティを受けることもありますので、その意味でも税理士に依頼するメリットは大きいと言えるでしょう。
金融機関から融資を受ける際に重視されるのが、事業計画書です。
事業計画書とは、簡単にいえば「事業の中身を理解させるための書類」で、中長期目標や数値計画、実行・管理態勢の表明などを記載します。
この事業計画書の中身がずさんだったり、数値計画に現実味がなかったりすると、とたんに融資を受けるのは厳しくなってしまいます。
資金調達に精通している税理士であれば、金融機関がどの点を重視するのか熟知していますので、「融資を受けやすい事業計画書」を作成してもらうことができます。
最近は、税理士が金融機関から経営計画の策定を依頼されるケースも増えています。これは、債務超過や2期連続経営が赤字といった企業であっても、ある一定の要件を事業計画であれば、追加の融資を受けたり返済条件の変更を行ったりするために必要とされます。
また、税理士には、各種補助金の申請、資金調達や融資を引き出すための支援を依頼することもできます。
補助金は期限が決められているものが多く、申請のタイミングが非常に重要です。
たとえば、デジタル技術を活用した企業変革(DX)を推進する措置として新商品の開発や新生産方式、販売方式の導入によって新需要開拓や生産性向上に取り組む企業が提出する「事業適応計画」が産業競争力強化法で創設されました。また、2050年カーボンニュートラルという目標に向け、企業の投資を促進する税制が創設されます。
また、株式対価M&Aを促進するための措置も創設されました。
「こんな有利な補助金や特例があったのか」と後々後悔することがないよう、是非早めに税理士に問い合わせをすることをおすすめします。
税理士は、損益計算や資金繰りの観点から、企業が抱える潜在的なリスクをいち早く発見することができます。そしてこれが顕在化した場合の損害と予防するための改善策を提示してもらうことができます。
もし今、あなたの会社が以下の3つのうち1つでも当てはまる状況にあれば、今すぐに改善が必要です。可能な限り早く税理士に相談することをおすすめします。
①2期連続経営赤字が発生している。
②手元資金が平均月商の1カ月分をきっている。
③実態債務超過÷(直前の決算時の税引後利益+減価償却)<5
もし顧問税理士がいれば、このような状態になる前に経営者にリスクを知らせ、改善策を提示してくれるはずです。
税理士に依頼することは、多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットがあることも事実です。
ここでは、税理士がいることのデメリットについてご紹介します。
税理士に依頼すると、顧問料を支払わなければなりません。
依頼内容や作業量によって料金は大きく異なりますが、一般的には月に数万円というケースが多いようです。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
「税理士と相性が合わない」「業界のことを知らないので、適切なアドバイスをもらうことができない」という声もあります。
なかには「親の代からお世話になっている税理士で、年もかなり上なので、自分の意見を言えない」というケースもあるようです。しかし、これでは税理士に依頼する意味がなくなってしまうのではないでしょうか。
これまでご紹介してきたように、税理士は税務申告を代行してくれる専門家というだけではありません。
どんなことでも相談することができ、経理作業を通して適切な節税対策を提案してもらい、税務調査際には、経営者の味方となって税務署に対処してくれるのが、税理士なのです。
税理士は、まさに、「経営のパートナー」「税金について親身に相談に乗ってくれるパートナー」「会社のホームドクター」というべき存在なのです。
したがって、税理士を選ぶ時には「自分の意見をしっかり伝えることができる」「会社のことを包み隠さず相談できる」と思えるような税理士を選ぶことが大切です。
以上、税理士はなぜ必要なのか、税理士がいることのメリット・デメリットは何かについてご紹介しました。
ここでご紹介したほかにも税理士に相談できることは多々あります。
日本税理士会連合会の「やさしい税金教室」では、「個人事業を法人にしたい」「子どもに住宅資金を出してやりたい」「株式を売却して損が出た」「離婚で財産分与をする」といった内容でも気軽に税理士を利用してほしいと紹介しています。
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税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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