公開日:2019年11月19日
最終更新日:2024年02月16日
税理士というと、「税金の計算をして、税務署に申告をする専門家」というイメージを持つ人が多いですが、実際はそれだけでなく相続対策や起業支援、海外進出サポートといった多くの業務を依頼することができます。なかには、経営コンサルタント業務を主にして、補足的に税理士業務を行なう税理士も増えています。
この記事では、税理士の仕事内容や依頼できる業務、税理士と顧問契約を結ぶメリットなどについてご紹介します。
税理士選びの豆知識
「今はまだ、そんなに売上がないから」「起業したばかりだから」と税理士との顧問契約を先延ばしにするケースがあります。しかし顧問税理士は、中小企業や個人事業主、起業したばかりの会社にこそ必要な存在です。中小企業や個人事業主の場合には、経営の基盤が不安定なため、ほんの少しの景気の変動や外部環境の変化で、あっという間に経営不振に陥ってしまいます。
顧問税理士がいれば、経営悪化の兆候をすぐに察知し必要な対策をアドバイスしてくれます。資金調達が必要な場合には、そのサポートもしてくれます。活用できる補助金や助成金の情報を提供してくれることもあります。
そういう意味では、小さな事業だからこそ顧問税理士が必要といえます。顧問税理士と契約してしっかりと会計管理を行うことは、将来への備えを万全にするためのひとつの手段なのです。
税理士とは、税理士法という法律によって付与された国家資格であり、税務代理業務や税務書類の作成などを行う専門家です。
税理士法では、税理士でなければできない「税理士の独占業務」として、①税務代理業務、②税務書類の作成業務、③税務相談業務の3つを規定しています。
税理士について、「公認会計士との違いが分からない」という人も多いようです。
税理士も公認会計士も、どちらも「お金に関する専門家」というイメージで、両者の違いはよく分からないということなのでしょう。
まず税理士と公認会計士は、「独占業務」が違います。
税理士の独占業務は①税務代理業務、②税務書類の作成業務、③税務相談業務ですが、公認会計士の独占業務は「監査業務」です。
監査業務とは、会社の決算書が正しく作成されているかをチェックして監査報告書を発行し、監査意見を表明する業務です。
上場企業や一部の大企業については、決算書を作成して公認会計士の監査を受けることが義務づけられています。
なお、公認会計士は税理士登録をすることもできるので、公認会計士・税理士という肩書きで会計事務所を経営しているケースもあります。一方税理士は、公認会計士に合格しない限り、公認会計士業務を行うことはできません。
税理士と公認会計士の違い
公認会計士 | 税理士 | |
専門分野 | 会計 | 税務 |
独占業務 | 会計監査 | 税務関連 |
登録の要件 | ・公認会計士試験に合格し一定の実務経験を積んだ人 | ・税理士試験に合格し一定の実務経験を積んだ人 ・公認会計士 ・弁護士 ・税務署で一定期間勤務した人 |
得意分野 | ・財務分析・会計コンサルティング ・デューディリジェンス業務 |
・税務相談、税務申告書作成業務 ・経営コンサルティング、資金調達コンサルティング ・中小企業の顧問 |
税理士になる方法として最もオーソドックスなのは、税理士試験に合格することですが、法的に税理士資格が付与されることで、税理士業務を行える人もいます。
①税理士試験合格者
年に1度実施される税理士試験に合格すると、税理士資格を取得することができます。
1度に全科目(5科目)を受験して一括合格する必要はなく、1科目あたり60%以上の点数を取れればその科目は合格となり、合格した科目を積み上げ最終的に5科目合格となった時点で最終合格となります。
②試験免除タイプ(大学院出身)
大学院で修士課程を修了し、かつ税法に属する研究論文で国税審議会の認定を受けた場合には、税法科目3科目のうち2科目が免除されます。
また、会計学に属する研究論文で、国税審議会の認定を受けた場合には、会計学科目2科目のうち1科目が免除されます。
③試験免除タイプ(国税職員など)
税務官公署職員で一定の勤続年数がある場合には、税法に属する科目などが免除されます。
④弁護士タイプ
弁護士は、弁護士業務以外の税理士の業務を行うこともできます。
⑤公認会計士タイプ
公認会計士が税理士会に登録すると、税理士業務を行うことができます。
税理士選びの豆知識
顧問税理士の報酬形態には、さまざまなものがありますが、一般的には以下の3つに分類されます。
①あらかじめ想定した業務量を軸に報酬金額を固定しておく契約形態
②作業量に応じて報酬金額が変動する契約形態
③固定額が決まっていて、別途事業規模などに応じた額が加算される契約形態
事案によって、特に調査研究が必要になったり外部の専門家の協力が必要になったりする場合には、それだけ報酬額が加算されることもあります。
税理士は、実際にはもっと幅広い業務を行っていますが、3つの独占業務があります。
①税務代理業務
税務署などに法律で定められた書類を期限までに提出する必要がある場合に、この税務関係の書類を納税者に代わって、税理士が代理で提出することができます。
②税務書類の作成業務
所得税や消費税、法人税などの確定申告書類や、年末調整、法定調書の作成など、税務書類の作成支援代理を行います。
③税務相談業務
税金を計算するために、納税者から税法の相談を受ける業務も、税理士でないと行うことができません。
これらの3つの業務は、税理士法第2条で掲げられていて、税理士資格を登録した人しか行えない独占業務とされています。したがって、これらの業務を無資格の人がたとえ無償で行ったといても、それは法律違反ということになります。
税理士の独占業務は、前述したとおり①税務代理業務、②税務書類の作成業務、③税務相談業務ですが、実際には実に幅広い業務を行っています。
ここでは、税理士が行っているさまざまな仕事のうち、主な12個の仕事内容についてご紹介します。
月次顧問業務は、税理士の中心ともいえる業務です。顧問契約を締結し、会社や個人事業主の経営全般に関するさまざまな相談にのります。
記帳代行業務から引き受けて、経理全般業務をすべて行うこともありますし、経理体制の構築サポートや事業計画の策定まで担う税理士もいます。
事業計画策定とは、会社の今後の事業計画を経営者とともに作成する業務です。
事業計画を作成する時には、未来の達成可能な利益と経費の金額を計算する必要がありますが、この時には、決算書の各数字を税理士と経営者で詳細に検討する必要があります。
経営者だけで作成した事業計画は、会社への思い入れや理想の高さから、どうしても数字が曖昧で抽象的になってしまいがちです。
一方、税理士は社外の人間ですから、決算書を分析しながら客観的にアドバイスをすることができます。
中小企業の場合には、顧問税理士が毎月の経営会議に出席して、経理面の指摘や損益状況、資金繰りなどについて報告を行うこともあります。また、投資計画や財務計画を確認し、経営計画を修正、チェックすることもあります。
なお、株式公開を準備している会社の場合には、内部の経営管理能力を強化するために、経営部門が日々の経理処理を行えるようサポートしたり、経営企画部門が予算管理を行うという仕組みを構築したりといったサポートを行うこともあります。
税理士選びの豆知識
ひとくちに月次顧問業務といっても、取引先の規模や経理スタッフの数などによって、実際の業務内容は異なります。顧問税理士と契約する際には、契約書の明細と価格をしっかり確認することが大切です。
月額顧問料:30,000円
と記載されているだけで業務内容が書かれていないと、記帳代行や経営指導まで行ってもらえるか分かりません。
したがって、契約書に
記帳代行料:15,000円
経営指導料:10,000円
その他諸経費:5,000円
といったように、求めるサービス内容が明記されており、個別の料金設定がされているかどうかを確認するようにしましょう。
法人の決算申告・相続申告・年末調整・法定調書・償却資産税などの申告業務は、税理士の独占業務でもあります。
決算書の数字を分析することで、会社の強み・弱み、これから目指す方向性などを読み取ることができます。税理士が税務申告の際に作成する決算書を分析し、アドバイスを行うことがあります。
具体的には、前期から繰り越された資産と負債を見て、その会社がどのような事業活動を行い、効率よく稼げているのか、返済能力など資金繰りに問題はないかなどについて分析します。
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個人は、その年の1月1日から12月31日までの所得を確定し、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告を行い納税する必要があります。
この確定申告をサポートするのも税理士の仕事です。
電子申告制度の普及で、税務申告や各種届出、納税などを電子データで行うことができるようになり、税務申告業務は大幅に省力化されることになりましたが、この時期は12月決算の会社の決算業務などが重なるので、税理士にとっては、毎年2月16日から3月15日が1年でもっとも忙しい時期となります。
最近は、税理士の繁忙期を考慮して、決算月を5月や7月などにずれす会社も増えています。
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経営状態をリアルタイムで把握し経営分析を行うためには、経理作業は税務署に丸投げするのではなく、自計化することが必要です。
この経理体制の構築や自計化の指導を行う際に、あわせてクラウド会計などのIT導入サポートを依頼できることもあります。従来の会計ソフトでは通帳を1行ずつ確認し、勘定科目や日付などを入力する必要がありましたが、クラウド会計を導入すれば、銀行やクレジットカードの明細が反映されるので、これらの作業をほぼ自動化することが可能になり、人件費などのコストダウンを図ることが可能です。
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税理士が、給与計算業務や年末調整を請け負うケースはよくあります。
給与計算や年末調整は、会社の経理処理でも重要な部分であり、個人情報に関わることもあるので、社内の従業員に任せるよりも、一括して外注することを選択する場合が多いのです。給与計算は、締め日から支給日までの間に給与計算を終わらせ、その数値を会社に通知します。なかには、振込まで税理士が担当することもあります。
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税務調査とは、申告納税制度で税金を納めることになっている所得税・法人税・相続税などの確認を行う調査です。
この税務調査の立ち会いも税理士の大切な業務のひとつです。
税務調査は大体3年から5年に1度の割合で行われますが、毎年税務調査の対象となる会社もありますし、10年間一度も税務調査の対象とならないこともあります。
調査の対象となるのは会社がほとんどですが、個人事業主の所得税や相続税の申告についても規模が大きい場合には、税務調査の対象となることもあります。
税務調査の結果に不服がある場合には、「不服申し立て」という裁判制度を利用することもできます。
この不服申立制度を利用する場合には代理人として弁護士に依頼することになりますが、税法は頻繁に改正されるので弁護士だけでは対応が難しいという理由から、税理士に対して「補佐人」という資格が与えられることになりました。
補佐人となった税理士は、訴訟代理人である弁護士とともに裁判に参加することになります。
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平成27年に相続税が増税になる改正が行われ、相続税の課税対象者が増えたことから、相続税は今まで以上に身近な税金となりました。
相続税を節税し財産の円滑な承継を実現するためには、高い専門知識をもとに早期の準備が必須であり、相続税の節税対策や納税資金の準備についてサポートを行うことも税理士の業務のひとつです。
また相続税申告は、相続が発生した翌日から10カ月以内に行う必要があり、その期間内で必要となる手続きが民法や相続税法などに定められています。税理士は、これらの手続きについてのサポートも行います。
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個人事業主として開業する場合には、税務署に開業届や青色申告承認申請書などを提出すればいいだけなので、開業手続きまで税理士に依頼する必要はありませんが、会社を設立する場合には、税理士に依頼した方がスピーディに手続きを行うことができます。
ひとくちに起業支援といってもさまざまな分野がありますが、税理士が行うのは設立手続きサポートや、各種届出のサポート、事業計画の策定や金融機関からの開業資金の調達支援、起業時の経理事務支援などです。
会社を設立する際には、定款の作成・認証、登記などさまざまな手続きを行う必要がある他、「資本金はいくらにすればよいのか」「事業目的はどのように決めればよいのか」「決算期はいつにすればよいのか」などを検討する必要があります。
この資本金の額や決算期によって、会社設立後の税負担が大きく変わることがあります。また、最初から会社を設立するのではなく個人事業主としてスタートして、売上が伸びてから会社を設立した方が、メリットがあるケースもあります。また、役員報酬をいくらに設定するべきかも、税額に大きく影響します。
自分で会社設立手続きを行うことはできますが、なかには「青色の申請をしていなかったために、欠損の繰越など、税制上のメリットを享受できなかった」といった例もあります。
あらかじめ税理士に相談すれば、設立後の税負担も含視野に入れたうえでアドバイスをもらうことができますから、起業する前に税理士のアドバイスを受ける方が、設立後の税負担を軽減させることができます。
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補助金や助成金の申請に関するアドバイスや、銀行などの金融機関からの融資、ベンチャーキャピタルなどからの出資など、自社の状況に応じた資金調達についても、税理士に相談することができます。
補助金や助成金は、国や自治体が事業者に対して、原則として返済不要なお金を支給してくれる制度です。一定の条件や申請手続き、審査等が必要になりますが、この申請の際に「売上が前年同月比より50%減少していること」などの財務数値や事業計画書の作成が必要になることがあります。この財務数値の算出や事業計画書の作成について、税理士のサポートを受けることができます。
また、銀行から融資を受ける際やベンチャーキャピタルから出資を受ける際には、決算書や資金繰り表、試算表などさまざまな書類の提出が求められます。
これらの書類の作成も、税理士に相談することができます。
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平成24年に「中小企業経営力強化支援法」が施行され、そのなかで経営不振企業の経営サポートを行う専門家の認定する仕組みが導入されました。これが「経営革新等支援機関」制度です。
この「経営革新等支援機関」に登録すると、税理士は中小企業を支援するために必要なさまざまな知識を活用して、中小企業の事業再生業務を行うことになります。また、金融支援や創業支援、ものづくり企業の支援などを行うこともあります。
最近は、中小企業が海外に進出するケースが増えてきました。なかでも特にASEAN諸国への進出が活発ですが、その進出する際の全般のサポートをする税理士も増えています。
海外進出の際には、進出先の国の税務を検討するのはもちろん、資金面や人材面でさまざまな検討が必要です。
たとえば資金面でいえば、日本政策金融公庫の「海外展開資金」の制度を使えないか経営者と一緒に検討したり、JETRO(日本貿易振興機構)が行っている支援サービスを受けることを検討したりします。
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経営者の高齢化が進み、事業を次世代の経営者に承継させられないケースが増えています。
政府もさまざまな支援策を打ち出してはいますが、まだ取り組んでいない経営者が多いのも事実です。しかし事業承継対策を行わずに、経営者に万が一のことがあれば、相続トラブルが起こったり、会社経営に影響を及ぼしたりするリスクがあります。したがって、事業承継時の会社経営については、早めに税理士にアドバイスを受け、中長期計画を立てて準備しておく必要があります。
M&Aというと一方的に会社が乗っ取られるというイメージを持つ人もいますが、中小企業のM&Aはほとんどが友好的M&Aです。
M&Aの際には、事業内容や財務状況、市場価値の査定などを行う必要がありますが、この査定方法を誤ると結果的に会社を安売りしてしまうというリスクがあります。
しかし、税理士が客観性や確実性を前提とした税務上の時価に基づいて査定を行えば、将来的な価値を見越して査定することができるので、適正なM&Aを実現することができます。
このM&Aを専門に扱い税理士も、最近は増加傾向にあります。
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以上、税理士の仕事内容や税理士になる方法、公認会計士との違いなどについてご紹介しました。
税理士は、税務書類の作成や税務申告を行う専門家ですが、実際は事業計画やM&Aサポートなど、幅広い業務を行っていて、さまざまな視点から経営者などをサポートしてくれる存在です。
自身の相談内容や依頼したい内容にあわせて、ベストな税理士を見つける際の参考にしていただけたらと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
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