公開日:2021年09月07日
最終更新日:2024年03月12日
配当所得とは、会社から受ける剰余金・利益の配当、剰余金の分配等、公募株式投資信託の収益の分配等による所得をいいます。
配当所得の課税には、総合課税、申告分離課税、申告不要(源泉徴収)制度があります。
確定申告をした方がよいケースは、取引で損失が出たケースと、課税所得が695万円以下で取引で損失が出ていないケースです。
配当所得とは、株主や出資者が、会社から受ける利益、剰余金の配当などの所得をいいます。
①法人から受ける利益、剰余金の配当(中間配当、決算配当など) ②剰余金の分配 ③基金利息(相互保険会社の基金利息など) ④投資信託の収益の分配 ※公社債投資信託、公募公社債等運用投資信託をのぞきます ⑤特定受益証券発行信託 など |
配当所得は、通常は他の所得と総合して課税されます。なお、上場株式等の配当所得(発行済株式総数3%以上を保有する株主をのぞく)については、確定申告をする場合に、総合課税のほかに申告分離課税を選択することができます。
申告分離課税を選択した場合には、申告する上場株式等の配当等に係る配当所得の全額についてしなければなりません。また、申告分離課税を選択した上場株式等の配当等に係る配当所得については、配当控除は適用されなくなります。
なお、特例として上場株式等の配当については確定申告しなくてもよいこととなっていますが、確定申告をした方が有利となる場合もあります(※後述)。>
本来の配当所得ではなくても、税法上配当所得として取り扱われる「みなし配当」があります。
①法人の合併 ②法人の分割型分割 ③資本の払戻し、または残余財産の分配 ④法人の自己株式または出資の取得(一定のものを除きます) ⑤退社による持ち分の払戻し など |
協同組合の剰余金の分配については、事業所得となるものがあります。また、株主優待券は、配当所得ではなく雑所得となります。
これらの区別について、分かりにくいものについては以下にまとめましたので、参考にしてください。
配当所得 | ①農事組合法人などの従事分量配当(組合員に給与を支給する時) ※支給しない時は事業所得 ②企業組合因果受ける従事分配配当金 ③協業組合員が定款に基づき、出資口数に応じないで受ける分配金 など |
事業所得 | ①協同組合因果取り扱った者の数量、価額など、組合を利用した分量に応じて分配を受ける事業分量配当 ②農事組合法人などの従事分量配当(組合員に給与を支給しない時) など |
雑所得 | ①株主優待乗車券 ②株主優待入場券 ③株主優待施設利用券 など |
配当所得は、収入金額から株式などを取得するための借入金の利子を引いて計算します。
配当所得 = 収入金額 - 株式などを取得するための借入金の利子 |
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配当所得の収入計上時期は、配当の種類によって異なります。
また、配当所得を計算する場合には、配当所得の特例等に注意する必要があります。
収入金額とは、所得税などを源泉徴収される前の「税込」の金額です。
配当所得の収入時期は、配当の種類によって以下の通り異なります。
種類 | 収入計上時期 |
通常配当 (剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、基金利息) |
利益処分等について、株主総会その他正当な権限を有する機関の決議があった日 |
中間配当 | 取締役会において決議があった日 ただし、取締役会の決議で特に中間配当の請求権に関してその効力発生の日を定めた場合には、その効力発生日 |
無記名株式などの配当 | 現実に配当金を受けた日 |
投資信託などの収益の分配 | ①信託期間中のものは、収益計算満了の日 ②信託の終了、一部の解約によるものは、その終了の日または解散の日 |
みなし配当 | 資本の払戻、残余財産の分配、退社、脱退などのあった日 法人の合併または分割の場合は、それぞれの登記の日 |
総合課税を選択した内国法人の配当所得(申告分離課税を選択した場合をのぞく)については、一定の金額を所得から控除することができます。
課税総所得金額 | 配当控除額 |
1,000万円以下の場合 | 配当所得の金額×10/100 |
1,000万円超の場合 | 配当所得の金額のうち、課税総所得金額から1,000万円を差し引いた金額に達するまでの部分の金額(A)×5/100×配当所得の金額のうち(A)以外の部分の金額×10/100 |
上場株式等の配当所得について申告分離課税を選択した場合、配当控除を適用することはできません。しかし、その年分に生じた上場株式等の譲渡損失の金額と損益通算することができます。
また、通算後の配当所得の金額から、前年以前3年以内に生じた上場株式等の譲渡損失を、繰越控除することができます。
配当所得は課税される所得が695万円以下か上場株式等の譲渡損がある場合には、確定申告をすることで、税金の還付を受けることができる可能性があります。
「695万円以下」が損得のラインとなる理由は、確定申告をすると配当所得を申告書にも計上しなければならず、所得が多い人ほど所得税率が高くなってしまうからです。
源泉徴収であれば、税率20%(所得税率15%+住民税率5%)で済んでいた人でも、確定申告をすると所得に配当所得が加算されるため、税率が高くなる可能性があります。
したがって、配当所得を加算したことで税率20%を超える場合には、確定申告をすると損をしてしまいます。
以上から、所得が695万円以下で税率が20%以下の人は基本的に確定申告をする方が有利になります。
ただし、695万円以下の人でも申告することで、所得税の源泉徴収分は還付されますが、住民税率は配当所得控除適用後でも2.2%高くなり、次年度の住民税で徴収されることになります。
課税所得金額 | 源泉徴収の税率 | 総合課税の税率 | 判断 |
195万円以下 | 20% (所得税15% + 住民税5%) |
7.2%(所得税0%+住民税7.2%) | 源泉徴収税率の合計20%より税率が低いので、確定申告をすると税金が還付される |
330万円以下 | 7.2%(所得税0%+住民税7.2%) | ||
695万円以下 | 17.2%(所得税10%+住民税7.2%) | ||
900万円以下 | 20.2%(所得税13%+住民税7.2%) | 税率が20%を超えるので、確定申告をすると損をする | |
1,000万円以下 | 30.2%(所得税23%+住民税7.2%) | ||
1,800万円以下 | 36.6%(所得税28%+住民税8.6%) |
※この損得ラインは、昨年までは「900万円以下」だったので、この点は注意が必要です(所得税と住民税を別々に選択できなくなったため。※後述)
確定申告をする場合、2022年分の申告までは、所得税と住民税で違う課税方式を選択することができました。
たとえば、所得税は総合課税、住民税は源泉徴収と違う方式を選択できました。
しかし、2023年分の申告からは、所得税で選ぶ課税方式が住民税にも適用されることとなり、所得税で総合課税を選択すると、住民税も総合課税となることとなりました。
2022年分の申告までは… | → | 2023年分の申告からは… |
所得税は総合課税(税率10%) 住民税は源泉徴収(税率5%) 所得税と住民税で違う課税方式を選択できた |
所得税は総合課税(税率10%) 住民税は総合課税(税率7.2%) 所得税で選ぶ課税方式が住民税にも適用されるようになった |
※前述した「20.2%(所得税13%+住民税7.2%)」のラインは、この改正によるものです。
株式や株式投資信託の取引において、損失が出ている場合には他の所得と分離して課税する申告分離課税を選択すれば、譲渡損失・繰越損失と、配当所得での損益の通算ができます。確定申告をすれば、源泉徴収されている税金を取り戻すことができます。ただし、配当控除を受けることはできません。
なお、特定口座(源泉徴収あり)を選択している場合には、この損益通算は証券会社が口座内でおこなうので、確定申告をする必要はありません。
配当所得は、法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、協同組合等から受ける剰余金の分配などに関する所得です。
配当所得は、原則として支払いを受ける際に配当等の収入金額に一律20.42%の所得税率を掛けた金額が源泉徴収されています。また上場株式等の配当および公募型の株式投資信託の収益分配金の源泉徴収税率は、20.315%です。
上場株式等の配当所得は原則として確定申告する必要はありませんが、申告することで節税になるケースがあります。
ただし、確定申告を行うことで節税になるメリットがある一方、配偶者控除から外れたり国民健康保険料が増額したりするなど、デメリットもあります。したがって、総合的に判断して有利な方法を選ぶことが大切です。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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