不動産の売却時にかかる税金

公開日:2019年04月12日
最終更新日:2022年06月15日

この記事のポイント

  • 5年を超えて持っていた不動産を売却した場合は、税金は安い。
  • マイホームを売却した時は、3,000万円まで無税となる。
  • 所有期間10年超のマイホームを売却した場合は、税金が安い。

 

不動産(土地や建物)を売った場合の譲渡所得には、所得税や住民税が課せられます。ただし、自分が居住するための土地や建物を譲渡した場合には3,000万円の特別控除を受けることができますので、3,000万円までは無税です。

また、マイホームを譲渡して損失が出た場合には、その損失をほかの所得から差し引くことができる制度があります。この特例を使うと、損失額をその年の所得等から控除することができるので、サラリーマン等で源泉徴収されている所得税があれば、税金が戻ってくることもあります。

不動産売却時の税金

資産を売った時の所得である「譲渡所得」には、所得税や住民税が課せられます。譲渡所得とは、簡単にいえば資産の譲渡による所得のことをいいます。
この譲渡とは、通常の売買による譲渡だけでなく、交換、競売、代物弁済、贈与などによる譲渡も含まれます。

(1)不動産売却益には所得税がかかる

土地や建物などの譲渡による所得のことを「譲渡所得」といいます。
土地や建物を譲渡した場合の譲渡所得には、他の所得とは区別して特別な税率を適用する特例が設けられています。これを分離課税といいます。

譲渡所得は、毎年必ず発生する所得ではなく臨時的に発生する所得なので、他の所得(サラリーマンの給与所得など)とは切り離して特別な税率が適用されるというわけです。

一方、不動産の賃貸収入は不動産所得で総合課税(他の所得と合算して税金を計算する)となりますので、間違えないようにしましょう。

(2)取得費と譲渡費用は収入から引ける

譲渡所得は、譲渡による総収入から取得費と譲渡費用を差し引いたものであり、この部分に税金がかかります。

譲渡所得の金額 = 譲渡による総収入金額 - 土地、建物などの取得費 - 譲渡費用

① 取得費
取得費とは、購入時に直接支出した費用です。
購入時の仲介手数料、印紙代、登録免許税、不動産取得税、登記費用、資金借入の際の公正証書作成費用、抵当権設定登記費用、取得の際にその土地建物を使用していた人に支払った立退料などをいいます。
ずっと以前に取得したため取得費が分からないという場合には、収入金額の5%とします。

② 譲渡費用
譲渡費用とは、資産を譲渡するために直接支出した費用です。売却のための仲介手数料、印紙代、測量費、広告料、借家人を立ち退かせるために支払った立退料などです。

つまり、不動産を売った金額からその不動産を買った時の金額(取得費)と、売るためにかかった費用(譲渡費用)を差し引いたものが不動産の譲渡所得となります。
したがって、所得を少なくするためには、取得費と譲渡費用をできるだけ多く計上することが節税のコツということになります。

(3)不動産売却時の税金は長期・短期で区分される

不動産譲渡所得は、譲渡した年の1月1日時点で、その不動産を所有していた期間が5年以下であれば、「短期譲渡所得」、5年を超えていれば「長期譲渡所得」となります。
短期譲渡所得の場合には、税率は39%(所得税30%+住民税9%)、長期譲渡所得の場合には税率は20%(所得税15%+住民税5%)となります。

譲渡所得 所有期間 所得税 住民税
短期譲渡所得 所有期間5年以下 課税短期譲渡所得金額×30% 課税短期譲渡所得金額×9%
長期譲渡所得 所有期間5年超 課税短期譲渡所得金額×15% 課税短期譲渡所得金額×5%

譲渡した資産が長期譲渡所得となるか短期譲渡所得となるかによって、税負担が大きく違ってきますので、所有期間の判定は重要です。税金を少なくするための最大のポイントは、所有期間を5年超とすることだからです。
この所有期間の判定は、譲渡した年の1月1日現在で計算しますので、令和4年中に譲渡したものであれば、平成28年12月31日以前に取得したものは「所有期間が5年を超える長期譲渡所得」となります。

したがって、判定のもとになる「取得の日」や「譲渡所得の日」は、できるだけ有利な日を選ぶようにします。
なお、税法上は譲渡や取得の日は原則として「引渡日」とされていますが「契約の効力が発生する日」としてもよいとされています。

・取得の日(他から購入した資産の場合)
原則:その資産の引き渡しを受けた日
特例:納税者が売買契約締結の日をその資産の取得の日として確定申告をした場合、その申告は認められます。

・譲渡の日
原則:その資産を相手方に引き渡した日
特例:納税者が譲渡契約締結の日を、その資産の譲渡の日として確定申告した場合には、その申告は認められます。

たとえば、令和2年中に譲渡契約をしたものの、引き渡しが令和3年になった場合には、その引き渡しの日を譲渡の日として所有期間を計算することもできます。

不動産売却時の税金を節税する方法

不動産売却時の税金には、さまざまな特例が設けられています。
たとえば、自宅の売却益は3,000万円特別控除を受けることができるので、3,000万円までは課税されません。また、特定の居住用財産の譲渡損失については、繰越控除制度が設けられています。
これらの特例を受けるためには、確定申告が必要です。忘れずに申告して節税をするようにしましょう。

(1)損益通算と繰越控除を活用

土地、建物を譲渡して損失が生じた場合、その損失の金額については、土地、建物等の譲渡による所得以外の所得との損益通算はできません。また、翌年以降の損失の繰越もできません。しかし、自宅を売却してもローンを返済できない人や買換えができずに賃貸住宅に住み替える人もいます。それらの人を支援するために特定の居住用財産の譲渡損失については、繰越控除制度があります。
令和3年(2021年)12月31日までの間に5年を超えて所有していた居住用家屋または土地を譲渡した場合で(親族への譲渡をのぞく)、契約締結の前日にその譲渡資産に関する一定の住宅ローン残高があり、その年に譲渡資産に関する譲渡損失の金額がある時には、その年と以後3年間は損益通算と繰越控除ができます。

ただし、合計所得金額が3,000万円を超える年がある場合は、その年のみ適用できません。

参照:国税庁「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」

(2)自宅売却益は3,000万円まで無税!

一定の条件を満たした自宅を売却した時には、その譲渡所得の金額から3,000万円を限度として、特別控除を受けることができます。つまり、マイホームを売却した時には3,000万円までは無税ということです。
この特別控除は長期譲渡、短期譲渡を問わずに譲渡所得から3,000万円を控除できます。ただし、この3,000万円を控除した後の譲渡所得がゼロになったとしても、必ず確定申告が必要です。
なお、土地・家屋とも夫婦の共有名義となっている場合には、それぞれから3,000万円控除を受けることができるので、最高6,000万円の控除を受けることができます。

参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例」

(3)自宅の買換えは特例がある

「子どもが大きくなったし、そろそろ広いマンションに買い換えたい」というケースは多いでしょう。このような時、今の自宅の売却代金よりも高い物件を購入すれば、その譲渡益には税金はかかりません。

たとえば、今まで住んでいた自宅を5,000万円で売却し、引っ越し先の住居を6,000万円で購入した場合は、1,000万円のマイナスが生じます。この時には、「居住用に財産の譲渡による収入金額が、買換資産の取得した価格以下」であれば、その譲渡はなかったものとみなされ、課税されません。

ただし、今まで住んでいた自宅を5,000万円で売却し、引っ越し先の住居を4,000万円で購入した場合には、1,000万円のプラスが生じますので、この1,000万円には課税されます。

参照:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」

(4)所有期間10年超の自宅は税金が安い

10年を超えて所有していたマイホームを譲渡した場合には、前述した3,000万円の特別控除に加え、3,000万円控除後の金額のうち、6,000万円以下の部分は所得税等10.21%(+ 住民税4%)、6,000万円を超える部分は所得税等15.315%(+ 住民税5%)となり、6,000万円以下の部分の税率が優遇されます。

(5)特定の土地の長期譲渡所得は1,000万円まで無税!

不動産所得、事業所得または山林所得が生じる業務を行う個人が、平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合(所有期間5年超のものに限る)には、1,000万円の特別控除が適用されます。
※ただし、土地等が棚卸資産である場合には、対象とはなりません。

(6)不動産売却時の税金を節税するためには確定申告が必要

これまで述べてきたように、土地や建物などの不動産を売却して利益が出た場合には、その利益は譲渡所得として税金が課税されます。この所得は他の所得とは合算せずに分離課税となります。
確定申告書では、他の所得とは別に第三表に記載して税額を計算します。

譲渡した不動産の所有期間(長期か短期か)、利用状況(居住用か事業用か)、譲渡内容(通常の譲渡、収用、交換等)などによって、税率や特別控除の額などが異なりますので、注意が必要です。

なお、要件を満たす譲渡であっても、譲渡の相手が配偶者・直系血族・同一生計の親族・同族会社などである場合には、居住用財産の譲渡の特例の適用は受けることはできませんので、その点についても注意しましょう。

まとめ

以上、土地や建物などの不動産を売却した時に課税される税金やその計算の仕方、適用できる特例などについてご紹介しました。
これまでご紹介してきたように、不動産は、所有していた年数によって税率が異なりますし、特例を適用する場合も、それぞれの特例によって複雑で厳しい要件が必要です。
確定申告を行なう前には、税理士や税務署に相談して、しっかり確認することをおすすめします。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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