公開日:2021年08月09日
最終更新日:2024年03月08日
売上が増えれば利益も増える気がしますが、実は売上高と利益の両方が多い会社もあれば、売上高は多いけど利益が少ないという会社もあります。
なかには、売上高が増えても利益が赤字になることもあります。
会社を最終的に判断するのはどれだけ稼げているか(利益が増えているか)であり、「売上高が多いこと」ではありませんから、売上高が多いのに利益が増えていない会社は、「効率よく稼げていない=収益性の低い会社」ということになります。
売上高営業利益率は、売上高に占める営業利益の割合を見て、「効率よく稼げているか」を見極めるための指標です。
売上高営業利益率の豆知識
売上高営業利益率とは、企業の本来の営業活動による利益を稼ぎ出す力を表す指標です。売上高営業利益率を同業他社と比較することで、販売活動などの効率性をチェックすることができます。この数値は、商品を販売する際に経費を使い過ぎていると、悪くなる傾向があります。
売上高営業利益率の目安は、業種によって異なります。
学術研究,専門・技術サービス業や情報通信業などでは高くなる傾向があり、運輸業,郵便業や小売業などでは低くなる傾向があります。
売上高営業利益率を高めるためには、まずは売上原価を下げて売上総利益を確保することが基本です。
そして、販管費の中身を検討して負担率の高い科目については削減を検討します。
ただし、過度のコストカットは避けるべきでしょう。原価を下げ過ぎると不良品の発生率が高くなるリスクがありますし、人件費を削減するとサービス低下につながるリスクがあります。
売上高営業利益率とは、損益計算書の5つの利益のうちでも、会社の本業からあげた利益である「営業利益」の売上高に対する割合を見るための指標です。
売上高営業利益率は、会社の収益性分析においてよく使われる指標で、高いほどよいとされています。
売上高営業利益率の「営業利益」とは、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益で、営業活動における「稼ぐ力」が分かる利益です。
※損益計算書とは 損益計算書とは、決算書のひとつで「1年間でどれだけ売上を上げて、どれだけ仕入れて経費がどれくらいかかったのか」が分かる書類です。 どのように利益をあげたのか計算するために、①売上総利益、②営業利益、③経常利益、④税引前当期純利益、⑤当期純利益の5つに分けて記載されており、5つの売上高利益率を計算できます。 営業利益は、この5つの利益のうちでも重視される利益で、「売上総利益-販売費及び一般管理費」で計算します。
この営業利益を見ることで、「本業でどれだけ儲けたのか」が分かります。 |
先ほどご紹介したように、営業利益は損益計算書の5つの利益のうち、「会社の本業からあげた利益」ですから、売上高営業利益率を計算すると、本業での営業活動における「稼ぐ力」が分かります。
売上高営業利益率は、以下の計算式で算出します。
売上高営業利益率 = 営業利益売上高 × 100 |
---|
たとえば、同業のA社、B社ともに売上高が10億円あり、営業利益はA社が1億円、B社が5,000万円とすると、A社の売上高営業利益率は10%、B社の売上高営業利益率は5%ということになります。
A社:1億円(営業利益)÷10億円(売上高)=10%(売上高営業利益率)
B社:5,000万円÷10億円(売上高)=5%(売上高営業利益率) |
このように同社とも売上高が同じではありますが、実際はA社の方が2倍効率よく稼げていることになります。
売上高営業利益率は、高ければ高いほどよいとされていますが、同業他社や業種別平均と比較したり、自社の前々年、前年の売上高営業利益率と比較したりすることで、営業活動の問題点が分かります。
もし、同業他社と比較して売上高営業利益率が低いならば、販売費及び一般管理費の中身を見直してコストカットを検討する必要があります。
※売上高営業利益率は業種によって異なるので、比較する際には同業他社と比較する必要があります。
業種 | 売上高営業利益率 |
---|---|
建設業 | 4.4% |
製造業 | 4.0% |
情報通信業 | 6.5% |
運輸業,郵便業 | 0.9% |
卸売業 | 2.0% |
小売業 | 1.9% |
不動産業・物品賃貸業 | 9.6% |
学術研究,専門・技術サービス業 | 12.7% |
宿泊業・飲食サービス業 | -0.2% |
生活関連サービス業,娯楽業 | 2.1% |
サービス業(他に分類されないもの) | 4.1% |
引用:政府統計の総合窓口(e-Stat)中小企業実態調査「令和4年速報(令和3年度決算実績)」
自社の前々年、前年の売上高営業利益率と比較して、売上高営業利益率が低下傾向にあるなら、販売費及び一般管理費の負担が増大している可能性があります。これは先ほどご紹介したように、営業利益が「売上総利益-販売費及び一般管理費」で計算されるからです。
したがって、販売費及び一般管理費の中身を確認して、前年、前々年と比較して広告宣伝費、交際費などが急増しているようなことはないかなど、勘定科目ごとに細かくチェックすることが大切です。
先ほど、損益計算書には5つの利益があり、5つの売上高利益率を計算できるとご紹介しました。
売上高総利益率は、損益計算書の1番上に出てくる利益「売上総利益」の売上高に占める割合を見る指標です。
売上高営業利益率を求める式の営業利益を、売上総利益に変えることによって、売上高総利益率を求めることができます。
売上高総利益率 = 売上高総利益売上高 × 100 |
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売上高総利益は、当期中に売り上げた売上高から売上原価を差し引いた利益です。そして売上高総利益率は、売上高に占める売上総利益の割合です。したがって、売上総利益率が高いということは、高い商品でも売れているということであり、商品力の高さをあらわします。
この売上高総利益率は、売上高営業利益率と組み合あわせて分析することができます。
①売上高総利益率が高いのに売上高営業利益率が低い場合 …人件費などの経費がかかり過ぎている可能性があります。 ②売上高総利益率は高くないのに売上高営業利益率が高い場合 |
経常利益は、営業利益の次に計算される利益で、営業利益に受取利息、雑収入などの収益や支払利息などの費用をプラスマイナスして計算されます。
売上高経常利益率は、この経常利益が売上高に占める割合です。
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売上高経常利益率が高いということは、資金運用や資金調達といった資金管理も含めて会社がうまく回っているということを表します。
売上高経常利益率も業種によって差はありますが、最低でも3%、できれば5%を目指したいところです。
「たった5%?」と思われるかもしれませんが、これだけの利益を計上し続けている会社は、実は大変優秀な会社といえるのです。
なお、営業利益は、経常利益より手前で計算される利益です。したがって、通常は売上高営業利益率の方が、売上高経常利益率より高くなります。したがって、もし売上高経常利益率の方が高かったら、本業以外の営業外収益で利益をあげているということになります。
たとえ儲かる商品を取り扱っていても、販売費及び一般管理費の管理が甘くムダ遣いの多い会社は営業利益を残せません。
したがって、営業利益をアップさせ売上高営業利益率を高めるには、売上総利益を確保するとともに、販売費及び一般管理費の中身を科目ごとに管理するという地道な作業が必要となります。
売上総利益は、「売上高-売上原価」ですから、売上総利益を確保するためには売上原価を下げることを検討します。
売上高をどんなにアップさせても、売上原価が高いと売上総利益は伸ばせないからです。
小売店なら仕入れた商品の代金、製造業なら製造にかかった費用など、売上のもとになるモノやサービスの代金を下げることができないか、よく検討してみましょう。
営業利益は、「売上総利益-販売費及び一般管理費」ですから、売上高営業利益率を高めるには、販売費及び一般管理費の中身を管理する必要があります。
売上高に対する販売費及び一般管理費の割合を、勘定科目ごとに計算して、100円の売上を稼ぐために何円の経費を費やしたのか、各科目の金額は前期と比較してどのくらい増減したのかといった増減率をみます。
そのうえで、売上高に対する負担率が高い科目については、売上獲得に貢献しているのか、縮小することはできないのかなど、検討します。
販売費の負担率を下げる努力 ・広告宣伝費、交際費などは過剰ではないか ・荷造運賃は下げることはできないか ・旅費にムダはないか ・通信費は適切か 一般管理費の負担率を下げる努力 |
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先ほど、「売上高営業利益率を高めるには、売上原価や販売費及び一般管理費などのコストを検討する必要がある」と説明しましたが、過度なコストカットは別のコストが上がることがあるため、注意が必要です。
たとえば、原材料費を削減するために安い原材料を使用すると、不良品の発生率が高まるリスクが生じます。
また、人件費を抑えようと人件費の安い未経験者などの比率を高めれば、ミスの発生が増えたり時間が余計にかかったりして、トラブル対応などでコストアップにつながる可能性があります。
さらに、過度なコストカットは製品やサービスの品質の低下につながるリスクもあります。
したがって、コストカットを検討する際には、「トータルとして、本当にコストダウンにつながるか」を検討して対策を講じることが重要です。
以上、売上高営業利益率の意味や計算式、売上高総利益率や売上高経常利益率との違い売上高営業利益率を高める方法などについてご紹介しました。
売上高営業利益率は、自社の前々年、前年の数値と比較したり同業他社の数値と比較したりして分析することが大切です。
そして数値に問題があると判断した場合には、販売費及び一般管理費の中身を勘定科目ごとに管理しコスト削減を検討します。
ただし、過度なコスト削減は製品やサービスの品質の低下につながるリスクなどがあることから、トータルとしてコストダウンにつながるための施策を実行することが大切です。
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・事業を続けるべきかやめるべきかについて 「コロナの影響もあり2020年から今期まで赤字が続き累積で4200万ほどになります。しかし、2015年から2019年までの累積利益が1.3億ほどありるので、私としてはその累積利益が無くならない範囲までは収益構造改善を図りつつ、別の収益性が高く安定したビジネスモデルを構築出来るように努めながら今のこの事業を続けるのもアリだと思っているのですが、経営者は最近の赤字が続く状況だけを見て、「赤字やったらやる意味がない」との考えです。私とは見てるスパンが違うと思います。…」 |
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