電子申告とは|義務化対象法人は?開始届は必要?

公開日:2021年12月06日
最終更新日:2022年03月29日

2020年4月以降、中小企業に先行して大法人の電子申告義務化がスタートしました。
あわせて、年末調整の簡便化、スマートフォンによる電子申告、e-Tax利用手続きの簡便化など、税務データの電子化に対する改正や見直しが頻繁に行われています。

電子申告の「義務化」というと、企業にとっては負担増となるイメージを持つかもしれませんが、電子申告をすでに実施している企業のなかには、かえって作業効率化によるメリットを享受しているケースが多く見られます。

電子申告とは

電子申告とは、所得税、法人税、贈与税、地方法人税、消費税などの税務申告について、インターネット等を利用して電子的に手続を行うことができるシステムです。
電子申告は、これまでの書面を税務署に持参する方法、または送付による提出方法に加えて導入されました。

さらに、平成30年度税制改正では 「電子情報処理組織による申告の特例」が創設され、一定の法人が行う法人税等の申告については、電子申告による方法で提出しなければならないこととされました。

(1)電子申告の義務化対象法人

電子申告の義務化対象法人は、内国法人のうちその事業年度開始の時において「資本金の額等が1億円を超える株式会社等、公益法人等、および協同組合等」と「資本金の額にかかわらず、相互会社、投資法人および特定目的会社」です。受託法人(法人課税信託の受託者である法人)、人格のない社団等および外国法人は義務化の対象外となります。

法人の区分 電子申告義務
法人税等
住民税等
消費税等
内国法人 株式会社等、公益法人等、協同組合等 資本金の額等が1億円超
資本金の額等が1億円以下 × ×
相互会社、投資法人、特定目的会社
公共法人 資本金の額等が1億円超
資本金の額等が1億円以下 ×
受託法人(法人課税信託) × ×
人格のない社団等 × ×
外国法人 × ×

参照:国税庁「電子申告の義務化の対象法人一覧表(概要)」

(2)中小企業の電子申告は?

資本金の額等が1億円以上の法人に義務づけられている電子申告ですが、中小法人の電子申告の利用率も著しく向上しています。その理由としては、税理士等の代理送信が普及したこと、法人税申告ソフト等の利便性の向上など上げることができます。

法人が電子申告を行う場合には、原則として法人代表者による電子証明書によって送信する必要がありましたが、2007年1月以降は税理士が会社に代わって電子申告を行う場合には、申告データに税理士等の電子証明書により電子署名を付与して送信すれば、法人代表者の電子署名が省略できるようになりました。

また、中小企業の申告書類は従来から顧問税理士等が作成して提出するケースがほとんどでしたが、それに加えて「クラウド会計ソフト freee会計」「freee申告」を活用すれば、日々入力した帳簿の内容が自動で申告書に反映され、経営者自身が法人税の申告書を作成することが可能となることから、中小企業の電子申告が大幅に増加したわけです。

なお、個人納税者のe-Taxの利用手続きもより簡便化されており、こちらの利用者数も大幅に増加しています。

所得税 法人税 消費税
(個人)
消費税
(法人)
令和2年度 13,381,884 2,424,547 822,110 1,749,338
令和1年度 10,937,729 2,368,882 669,481 1,725,177
平成30年度 11,472,798 2,268,473 770,681 1,655,396
平成29年度 10,430,168 2,128,054 745,056 1,624,911

 
参照:e-Tax「e-Taxの利用件数」

(3)電子申告の義務化の対象となる書類

電子申告の際には、申告書だけでなく法人税法等において申告書に添付しなければならないとされている書類(財務諸表、勘定科目内訳明細書、租税特別措置の適用に必要な書類など)も含まれ、これらの書類と申告書をあわせて電子申告によって提出する必要があります。

なお、連結法人が提出する「個別帰属額等の届出書」は、電子申告の義務化の対象とはなりません。一方、この「個別帰属額等の届出書」は、連結法人の法人税申告の添付書類として提出する必要があり、連結法人が電子申告の義務化の対象となる場合には、各連結法人の「個別帰属額等の届出書」を含めてe-Taxにより提出する必要があります。

参照:e-Tax「電子申告の義務化の対象となる書類には、連結子法人が所轄税務署に提出する「個別帰属額等の届出書」も含まれますか。」

(4)e-Taxでできる手続き

e-Tax(イータックス)とは、国税に関する申告・申請・納税等の各種手続きについて、インターネットを利用して電子的に手続きを行う「国税電子申告・納税システム」です。

e-Taxでは、以下の手続きを行うことができます。

①申告手続き
・所得税確定申告等
・相続税申告
・贈与税申告
・法人税確定申告等
・消費税確定申告等
・復興特別法人税申告等
・酒税納税申告
・間接諸税申告

②納税手続き
全税目にかかる納税(源泉所得税等の納付や納税証明書の交付手数料の納付を含む)

③申請・届出等手続き
法人設立届出、青色申告の承認申請、納税地の異動届、納税証明書の交付請求など

参照:eTax「利用可能手続一覧」

(5)eLTAXでできる手続き

eLTAX(エルタックス)とは、地方税に関する申告・申請・納税等の各種手続きについて、インターネットを利用して電子的に手続きを行う「地方税ポータルシステム」です。
実際に利用できる手続きは自治体によって異なりますが、主に以下の手続きを行うことができます。

①申告手続き
・法人都道府県民税、法人事業税、地方法人特別税
・法人市町村民税
・固定資産税(償却資産)
・個人住民税
・事業所税

②納税手続き
上記①に関する納税(固定資産税以外)

③申請・届出等手続き
法人設立・設置届、異動届など

電子申告の流れ

はじめて電子申告をするためには、「そのデータの作成者が誰であるのか」および「送信されたデータが改ざんされていないこと」を確認するための本人確認の役割を果たすものとして、電子証明書を取得する必要があります。
また、e-Tax利用前には事前準備として、開始届出書を提出し「利用者識別番号」を取得する必要があります。

①電子証明書の取得

税理士等による代理送信の場合をのぞき、利用者は「電子申告で利用可能な電子証明書」を取得する必要があります。

参照:e-Tax「電子証明書とは」

②e-Taxの事前準備

・開始届出書の提出
利用者固有IDを取得します。
e-Taxの場合には、事前に「電子申告・納税等開始届出書(以下開始届出書)」を提出して、利用者識別番号を取得します。

参照:e-Tax「e-Taxの開始(変更等)届出書とは」

参照:国税庁「電子申告・納税等開始(変更等)の届出」

③手続を行うソフト・コーナーを選ぶ

法人税、消費税等の電子申告等を行うためには、専用ソフトをインストールする必要があります。
e-Taxには「e-Taxソフト(WEB版)」もあり、一部の申請・届出は行うことができますが申告をすることはできません。「e-Taxソフト(SP版)」も同様です。
一方、「e-Taxソフト」をインストールすると、すべての法定調書を作成・提出することができます。

税理士等が納税者の申告等データを作成して送信する場合は、税理士等の電子署名の付与及び電子証明書の添付のみで送信することができますので、以下は法人が送信する場合と税理士が代理で送信する場合の2パターンに分けて、電子申告の流れをご紹介します。

(1)電子申告の流れ(法人が送信する場合)

前述した電子証明書の取得、e-Taxの事前準備が完了したら、電子申告が可能となります。

①税務申告作成ソフトで法人税・法人住民税等の申告書、添付書類を作成

法人が送信する場合には、「freee申告」を利用すれば、日々の取引を会計情報としてまとめ、法人税の申告書を作成することができます。

②電子申告対応ソフトによって送信可能なデータ形式に変換

「freee申告アプリ」をインストールして利用者識別番号・利用者IDをfreee内に登録し、電子申告データを準備します。

③e-Tax、eLTAXにログインして署名済データを送信

e-Tax、eLTAXにログインして、署名済データを送信します。
送信結果を確認し、エラー情報がないことを確認します。

▶ freee取引入力ナビ「法人がパソコンで電子申告を行う」

(2)電子申告の流れ(税理士等が代理送信する場合)

税理士等に代理送信を依頼する場合には、税理士が法人税および法人住民税等の申告書、添付書類を作成し、データ形式に変換して、税理士の署名押印を付与します。税理士に申告業務を委託することで、申告書作成作業をまるごと依頼することができ、申告のミスなどのリスクを減らすことができます。

①税理士が法人税・法人住民税等の申告書、添付書類を作成

税理士が、法人税・法人住民税等の申告書、添付書類を作成します。

①税理士が作成した申告データを送信可能なデータ形式に変換

税理士が申告データを、送信可能なデータ形式に変換し、税理士等の電子署名を付与します。

③e-Tax、eLTAXにログインして署名済データを送信

e-Tax、eLTAXにログインして、署名済データを送信します。
送信結果を確認し、エラー情報がないことを確認します。

自社で自ら送信を行うか、税理士による代理送信を行うか、どちらの方法で電子申告を行うべきか迷っている方は、「自分にぴったりの申告方法が30秒でわかる!税務申告診断」でご確認いただくことをおすすめします。

まとめ

電子申告は、事前に電子証明書の取得や開始届出書の提出が必要です。
また、電子申告以前に法人税の申告書を作成するためには、複雑な書類を作成しなければなりません。
税理士による代理送信を依頼すれば、複雑な申告書の作成から納税額の計算、申告手続きまでトータルでサポートしてもらうことができます。
小規模の法人であれば、設立から会計、申告まですべてfreee内で完結することができますが、freeeの導入から活用方法までは、税理士のサポートを受けることをおすすめします。

電子申告について相談できる税理士をさがす

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、電子申告について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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