中小企業経営強化税制はいつまで?(2023年最新版)

公開日:2022年12月25日
最終更新日:2023年07月18日

この記事のポイント

  • 中小企業経営強化税制は、中小企業者等が新品の特定経営力向上設備を取得等したときに適用される制度。
  • 中小企業者とは、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下の法人で、要件に該当する法人。
  • 中小企業経営強化税制は、特別償却と税額控除を選択して適用できる制度。

 

中小企業経営強化税制とは、中小企業者が新品の特定経営力向上設備等を取得して、これを国内にあるその中小企業者等が事業を行ううえで使用した場合に、その事業年度において特別償却と税額控除を選択して適用できる制度です。適用を受けるためには、経営力向上計画の策定が必要ですが、この計画申請については、経営革新等支援機関や税理士のサポートを受けることができます。

参照:中小企業庁「中小企業税制(令和4年度版)」

中小企業経営強化税制とは

中小企業経営強化税制とは、中小企業の生産性を向上させ、稼ぐ力を向上させる取り組みを支援するために、中小企業等経営強化法の認定を受けた計画に基づく投資について、特別償却または税額控除のいずれかを認める制度です。
令和3年度の税制改正によって、M&Aの効果を高める設備として「経営資源集約化設備(D型)」が追加され、令和5年3月31日までの間に事業を行うために使用した資産に適用されるとされていましたが、令和5年度の改正によって、適用期限を2年間延長され、令和7年(2025年)3月31日までとなりました。
参照:経済産業省「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について」

(1)対象となる中小企業者等とは?

中小企業経営強化税制の適用対象となる法人は、中小企業者等です。
この「中小企業者等」とは、青色申告を提出する法人のうち、以下に該当する法人です。

・資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
・資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
ただし、以下の法人を除きます。

①その発行済株式または出資(その有する自己の株式または出資を除く)の総数または総数の2分の1以上が、同一の大規模法人(※)の所有に属している法人

②上記①のほか、その発行済株式または出資の総数または総数の3分の2以上が大規模法人(※)の所有に属している法人

※大規模法人とは、資本金の額もしくは出資金の額が1億円を超える法人、資本金もしくは出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1000人を超える法人または次の法人をいいます(中小企業投資育成株式会社を除く)。

①大法人(資本金等が5億以上など)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人

②普通法人との間に完全支配関係があるすべての大法人が有する株式および出資の全部をそのすべての大法人のうち、いずれか一の法人が有するものとみなした場合に、そのいずれか一の法人による完全支配関係がある場合の普通法人

(2)中小企業経営強化税制はいつまで?

中小企業経営強化税制は、令和5年3月31日までの間に事業を行うために使用した資産に適用されることとなっていました。
中小企業経営強化税制は、生産性向上設備(A類型)、収益力強化設備(B類型)、デジタル化設備(C類型)がありましたが、令和3年度の税制改正によって、M&Aの効果を高める設備として「経営資源集約化設備(D型)」が追加され、適用期限が2年間延長されました。
さらに、令和5年度の税制改正によって、適用期限を2年間延長され、令和7年(2025年)3月31日までとなりました。
参照:経済産業省「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について」

(3)中小企業経営強化税制の手続き

中小企業経営強化税制の適用を受けるためには、経営力向上のための人材育成や財務管理、設備投資などの取り組みを記載した経営力向上計画を主務大臣に提出して、その経営力向上計画が適当である旨の認定を受けなければなりません。

さらに、中小企業経営強化税制の適用を受けるためには、原則として設備を取得する前に経営力向上計画の認定を受ける必要がありますので、早めに手続きを進める必要があります。
なお、原則に従うことができない場合でも、設備取得日から60日以内に経営力向上計画が受理されれば適用されることは可能です。計画申請については、経営革新等支援機関や税理士、公認会計士のサポートを受けることができますので、早めに手続きを進めることをおすすめします。

中小企業経営強化税制の4類型

中小企業経営強化税制は、A類型からD類型まで4つの類型があります。
D類型の「経営資源集約化設備」は、令和3年度に新設されました。

類型 A B C D
生産性向上設備 収益化向上設備 デジタル化設備 経営資源集約化設備
要件 生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備 投資収益が年平均5%以上の投資計画に係る設備 遠隔操作、可視化、自動制御のいずれかに該当する設備 修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定以上上昇する設備
確認者 工業会等 経済産業局 経済産業局 経済産業局
対象設備 ・機械装置(160万円以上)
・工具(30万円以上)
※A類型は測定工具及び検査工具に限る
・器具備品(30万円以上)
・建物付属設備(60万円以上)
・ソフトウェア(70万円以上)
(A類型の場合、設備の稼働状況等に係る情報機能及び分析・指示機能を有するものに限る)
その他要件 生産等設備を構成するもの
・事務用器具備品・本店・寄宿舎等に係る建物付属設備、福利厚生施設に係るものは該当しない
・国内への投資であること
・中古資産・貸付資産でないこと 等
・発電用の機械装置・建物付属設備については、発電量のうち、販売することが見込まれる電気の量が占める割合が1/2を超える発電設備を除く。
・医療保険業を行う事業者が取得または製作をする器具備品(医療機器に限る)、建物付属設備を除く。
・ソフトウェアについては、複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSなど一定のものは除く。
・その管理のおおむね全部を他の者に委託する資産で、コインランドリー業または暗号資産マイニング業(中小企業者等の主要な事業として行うものを除く)の用に供するものを除く(令和5年度改正による)。

(1)A類型「生産性向上設備」

A類型の「生産性向上設備」とは、一定期間内に販売されたモデルであり、経営力の向上に資するものの指標が、旧モデルと比較して年平均1%以上向上している設備をいいます。
たとえば、その設備を製造しているメーカーの一代前のモデルと比較して、単位時間当たりの生産量が年平均1%以上向上しているなどの状況が必要となります。
ただし、生産量が0.5%、エネルギー効率が0.5%で合計して1%以上向上したというような場合は、単一の指標とは言えず、対象外となってしまいますので注意が必要です。

さらに、生産性向上設備は設備の種類ごとに取得価額や販売開始時期が定められています。
ただし、設備取得費から60日以内に経営力向上計画が受理される場合には、適用を受けることができます。また、新型コロナ感染症の影響に考慮し、一定の柔軟な取扱いも認められています。

設備の種類 取得価額
(単位ごとの最低価額)
販売開始時期
機械および装置 160万円以上 10年以内
工具
(測定工具、検査工具)
30万円以上 5年以内
器具備品 30万円以上 6年以内
建物付属設備 60万円以上 14年以内
ソフトウェア 70万円以上 5年以内

A類型(生産性向上設備)は、工業会証明書を取得し、A類型に関する経営力向上計画の認定を受けてから一定の設備を取得し、事業を行ううえで使用した場合に適用されます。

①事業者は、設備を生産したメーカーに証明書の発行を依頼します。
②依頼を受けたメーカーは、証明書、チェックシートに必要事項を記入し、工業会等の確認を受けます。
③工業会等は、記入内容を確認したうえで、証明書を発行します。
④工業会等の証明書の発行を受けたメーカーは、事業者に証明書を転送します。
⑤事業者は、確認を受けた設備について経営力向上計画に記載し、計画申請書と写し、工業会証明書の写しを添付して、主務大臣に計画申請し、主務大臣から計画認定書と計画申請書の写しの交付を受けます。
⑥確定申告書には、工業会証明書、計画申請書、計画認定書の写しを添付する必要があります。

(2)B類型「収益力強化設備」

B類型の「収益力強化設備」とは、一定の機械および装置、工具器具備品、建物付属設備、ソフトウェアで、年平均の投資利益率(ROI)が5%以上となることが認められることについて、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載されているものをいいます。

年平均の投資利益率(ROI)は、以下の計算式で計算します。

(営業利益 + 減価償却費)の増加額 / 設備投資額 ≧ 5%

(営業利益 + 減価償却費)の増加額とは、設備の取得等をする年度の翌年度以降3年度の平均額によって計算します。

収益力強化設備は設備の種類ごとに取得価額が定められています。
ただしA類型と同様に、設備取得費から60日以内に経営力向上計画が受理される場合には、適用を受けることができますし、新型コロナ感染症の影響に考慮し、一定の柔軟な取扱いも認められています。

設備の種類 取得価額
(単位ごとの最低価額)
機械および装置 160万円以上
工具、器具備品 30万円以上
建物付属設備 60万円以上
ソフトウェア 70万円以上

B類型(収益力強化設備)は、経済産業局確認書を取得して、経営力向上計画(B類型)の認定を受けたうえで一定の設備等を取得し、事業を行ううえで使用した場合に限られます。

①申請者は、申請書に必要事項を記入して、裏付けとなる必要書類を添付して、公認会計士または税理士の事前確認を受けます。
②公認会計士または税理士は、資料を確認したうえで事前確認書を発行します。
③申請者は、本社所在地を管轄する経済産業局の担当者に説明を行います。
④経済産業局は、経営力向上設備等の投資計画が適切である場合には、経済局確認書を発行します。
⑤申請者は、経営力向上計画に記載した設備について認定を受けることができます。
⑥税務申告については、申請書や認定書の写しが必要です。
⑦申請者は、申請書の計画期間内(設備の取得等をする年度の翌年以降3年間)について、投資計画実施書を、経済産業局に提出しなければなりません。

(3)C類型「デジタル化設備」

C類型の「デジタル化設備」とは、一定の機械および装置、工具器具備品、建物付属設備、ソフトウェアで、事業プロセスの遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかを可能にする設備であり、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載された設備です。大規模なテレワーク設備等は、このC類型の対象となります。

C類型は、非対面・非接触ビジネスの推進等のための設備を対象としていることから、遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかに該当することについて、経済産業局の確認を受ける必要があります。

・遠隔操作
デジタル技術を用いて、遠隔操作をすること

・可視化
データの集約・分析について、デジタル技術を用いて行うことなど

・自動制御化
デジタル技術を用いて、状況に応じて自動的に指令を行うことができるようにすることなど

デジタル化設備も、設備の種類ごとに取得価額が定められています。

設備の種類 取得価額
(単位ごとの最低価額)
機械および装置 160万円以上
工具、器具備品 30万円以上
建物付属設備 60万円以上
ソフトウェア 70万円以上

C類型(デジタル化設備)は、経済産業局確認書を取得して、経営力向上計画(B類型)の認定を受けたうえで一定の設備等を取得し、事業を行ううえで使用した場合に適用されます。

①申請者は、申請書に必要事項を記入して、裏付けとなる必要書類を添付して、認定経営革新等支援機関の事前確認を受けます。
②認定経営革新等支援機関は、資料を確認したうえで事前確認書を発行します。
③申請者は、本社所在地を管轄する経済産業局に確認申請書を郵送します。
④経済産業局は、経営力向上設備等の投資計画が適切である場合には、経済局確認書を発行します。
⑤申請者は、経営力向上計画に記載した設備について認定を受けることができます。
⑥税務申告については、申請書や認定書の写しが必要です。

(4)D類型「経営資源集約化設備」

D類型(経営資源集約化設備)とは、一定の機械および装置、工具器具備品、建物付属設備、ソフトウェアで、計画終了年次の修正総資産利益率(ROA)または有形固定資産回転率が、一定の要件を満たすことが見込まれているものであり、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載された設備です。

修正総資産利益率(ROA)または有形固定資産回転率が満たすべき一定の要件は以下のとおりです。

計画期間 修正総資産利益率(ROA) 有形固定資産回転率
3年 +2% +0.3%ポイント
4年 +2.5% +0.4%ポイント
5年 +3% +0.5%ポイント

修正総資産利益率(ROA)、有形固定資産回転率は、以下の計算式で計算します。

修正総資産利益率(ROA)=
{(計画終了時における営業利益+減価償却費+研究開発費)/(計画終了年度における総資産)}-{(基準年度における営業利益+減価償却費+研究開発費)/(基準年度における総資産)}
有形固定資産回転率(変化率)=
{(計画終了時における売上高)/(計画終了年度における有形固定資産)-(基準年度における売上高)}/(基準年度における有形固定資産)}/{基準年度における売上高/基準年度における有形固定資産)}

経営資源集約化設備も、設備の種類ごとに取得価額が定められています。

設備の種類 取得価額
(単位ごとの最低価額)
機械および装置 160万円以上
工具、器具備品 30万円以上
建物付属設備 60万円以上
ソフトウェア 70万円以上

D類型(経営資源集約化設備)は、経済産業局確認書を取得して、経営力向上計画(D類型)の認定を受けたうえで一定の設備等を取得し、事業を行ううえで使用した場合に適用されます。D類型は、ほかの類型と異なり、経営力向上計画の実施期間中に事業承継等状況報告を行う必要があります。

①申請者は、申請書に必要事項を記入して、裏付けとなる必要書類を添付して、公認会計士または税理士の事前確認を受けます。
②公認会計士または税理士は、資料を確認したうえで事前確認書を発行します。
③申請者は、本社所在地を管轄する経済産業局に確認申請書を郵送します。
④経済産業局は、経営力向上設備等の投資計画が適切である場合には、経済局確認書を発行します。
⑤申請者は、経営力向上計画に記載した設備について認定を受けることができます。
⑥税務申告については、申請書や認定書の写しが必要です。
⑦申請者は、申請書の計画期間内について、事業承継等状況報告書を、認定を受けた主務大臣に提出する必要があります。
事業承継等状況報告書は、初回の提出期限は、M&Aを行った事業年度の翌事業年度終了後4カ月以内で、以降計画期間に応じて3~5年間報告が必要です。

まとめ

中小企業経営強化税制は、中小企業等の経営力向上を図る企業の設備投資を強く後押しすることを目的として、中小企業者等が新品の特定経営力向上設備等を取得し、一定の要件に該当するときには、税制措置で優遇する制度です。
このような租税特別措置は、中小企業経営強化税制のほかにも研究開発税制や中小企業投資促進税制など数多くあり、それぞれの制度が適用要件を変えて推進されることも多々あります。
申請手続きは煩雑ですが、税理士や公認会計士、経営革新等支援機関のサポートを受けることができますので、早めに相談して手続きの準備を進めることをおすすめします。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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