会社分割とは|吸収分割と新設分割の違いとは

公開日:2019年11月26日
最終更新日:2022年06月17日

この記事のポイント

  • 会社分割とは、1つの会社を2つ以上の会社に分けること。
  • 会社分割には、吸収分割と新設分割がある。
  • 会社分割は、倒産から救う、事業再編できるなどのメリットがある。

 

会社分割とは、その名のとおり1つの会社を2つ以上の会社に分ける方法です。
M&Aによる事業承継といえば株式譲渡が主流ですが、最近は会社分割による事業承継の方法も、検討されることが多くなってきました。

会社分割とは

会社分割とは、会社の事業を切り分けて別の会社に移すことで、平成12年旧商法改正で導入された会社組織再編を目的とした制度です。
会社組織再編のための方法はいくつかありますが、従来は複数の組織を合わせるものばかりで、1つの組織を「分ける」といった手法は確立されていませんでした。

つまり、会社を分けたいと思った場合にはまず空っぽの子会社を新規に設立して、そこに切り出したい事業を譲渡する手続きをとる必要がありました。
そこで登場したのが、会社分割という手法です。

会社分割には、吸収分割と新設分割の2つの方法があります。

(1)会社分割①吸収分割

吸収分割とは、会社が切り分けた事業を既存の他の会社に承継させる方法です。

吸収分割では、株式を対価とすることが一般的ですが、株主の代わりに金銭を支払うこともできます。

(2)会社分割②新設分割

新設分割とは、新設した会社に事業を承継させる方法です。
承継した会社は、事業を譲り渡した対価である株式等を、分割会社に交付します。

なお会社分割は比較的新しい制度ではありますが、実質的な内容は従来からある合併や営業譲渡、現物出資と同じです。

たとえば吸収分割で営業の全部を既存会社から承継して分割会社が解散すれば、合併と同じ効果を持ちます。

(3)会社分割の手続き

会社分割を行うためには、吸収分割の場合には「会社分割契約書」、新設分割の場合には「会社分割計画書」を作成する必要があります。
吸収分割を行う場合には、法定記載事項が決められており、記載漏れがあると、会社分割は法的に無効となってしまいますので、注意が必要です。

会社分割契約書(吸収分割)、会社分割契約書(新設分割)を策定したら、利害関係者の承認を得る必要があります。
また、会社分割の効力が発生する前日までに株主総会の特別決議による承認を受け、関連資料を総会開催の2週間前から、効力が発生する日まで、閲覧できる状態にしておかなければなりません。
さらに、会社分割においては債権者保護も必要です。
会社分割によって不利益を受けるリスクのある債権者は、異議を申し立てることができます。

なお、会社分割では、従業員も承継の対象となりますので、会社分割をする前絵の協議については書面通知交付などが義務づけられているほか、一定の従業員には、会社分割に対する異議申し立ての権利があります。

これらの手続きを経たうえで、当期を申請します。
吸収分割では、分割会社と承継会社の双方について変更登記を申請します。
新設分割では、分割会社の変更登記と、新設する会社の設立付を申請します。

会社分割のメリット

会社分割は、会社を倒産から救うための手段や、事業再編のための手段として活用することができます。
また、株式等を交付する場合には、譲渡対価として金銭の交付が不要であるというメリットもあります。

(1)会社を倒産から救うことができる

会社分割をすることで、承継会社から受け取る金銭や株式を資金として、分割会社の経営を立て直すことが期待できます。また、有望な事業を新会社に移して再起を図ることもできます。

(2)事業再生で活用できる

会社分割によって、不採算事業を切り分けることで、事業再生を図ることができます。たとえば、既存の会社を不良債権だけを持つ会社と優良資産を持つ会社に分割します。そして、借入金を持つ会社が分割会社になり、優良資産を持つ会社が承継会社となります。
優良資産しかもっていない承継会社は、不良債権を持っていないため、投資や融資を受けやすくなります。
不良債権を持つ分割会社は、破産や特別清算などによってっ清算することになります。

(3)株式等を交付する場合は金銭交付が不要

会社分割を利用する場合に、株式等を交付する場合には、譲渡対価としての金銭の交付が不要になるというメリットもあります。
自牛譲渡の場合には、譲渡を受ける会社は対価として金銭の交付が必要となるケースがほとんどですが、会社分割の場合には、事業を承継する会社は、株式などの財産を分割会社に交付しますので、金銭に限られないというメリットがあります。

(4)M&Aで会社分割を活用できる

M&Aとしては、株式譲渡による方法で行うのが主流ですが、株式譲渡が困難な場合には事業譲渡や会社分割という方法も検討できます。

M&Aにおいて、業績の良い部門だけを分割して別の会社としたうえで、分割した会社の株式だけを他の会社に買い取ってもらうのです。

一方事業譲渡とは、ある特定の事業部門だけを他の会社に売り渡す方法です。車や不動産、資産のみならず取引先(いわゆる「のれん」)なども一緒に譲渡することができます。業績のよい事業部門がある場合には、できるだけ従業員の雇用を確保し清算前に会社を身軽にするという意味では事業譲渡を検討するのもよいでしょう。
会社分割は、事業譲渡と比較すると税金の面で負担が軽くなるというメリットがあります。

なぜなら、事業譲渡は単に株式を譲渡する方法で事業承継して金銭を得た場合と税金の計算が異なるからです。ただし、手続きとしては事業譲渡も会社分割も煩雑となりますので、税理士に相談して十分に検討する必要があるでしょう。

まとめ

以上、会社分割の意味や方法、メリットなどについてご紹介しました。
会社分割は、会社の一部の売買ともいえるので、今後は事業譲渡と同じように会社間の通常の売買取引の一種というスタンスになっていくものとみられています。
ただし、会社分割の手続き自体は非常に煩雑になることから、会社分割をする際には、顧問税理士や会社分割の税務上の取り扱いに精通している税理士とともに十分に検討することをおすすめします。

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