仕掛品とは?半製品との違いは?仕訳方法・計算方法は?

公開日:2021年12月13日
最終更新日:2024年05月30日

この記事のポイント

  • 仕掛品(しかかりひん)とは、製造の途中にある中間品のこと。
  • 仕掛品は、業種によって「未成工事支出金」など、名称が変わる。
  • 仕掛品の取得原価は、原価計算によって計算する。

 

仕掛品(しかかりひん)とは、製造の途中にある中間品で、そのままの状態ではまだ売れる状態にはないものを処理する時の勘定科目です。
この記事では、仕掛品に関する原価計算や、仕掛品と半製品との違い、ソフトウェア開発における仕掛品の処理などについてご紹介します。
 

仕掛品の豆知識

仕掛品とは、工場などの製造現場で製造過程の途中段階にある物品などです。仕掛品は単独で販売することができないもので、これに対して中間製品として販売できるものを半製品といいます。
仕掛品の評価額は、原価計算によって計算します。期中は材料費、労務費、経費をそれぞれ発生ベースで計上し、原価計算によって求められた仕掛品原価を仕掛品に計上します。
材料費とは、製品をつくるために投入された原料や材料で、労務費とは製品を作っている従業員やバートの給与や賞与です。経費は、材料費、労務費以外の経費すべてです。
また、仕掛品は、原材料や製品との区別が重要です。
たとえば、倉庫から工場に払い出された時点では仕掛品として処理し、工場から倉庫に受け入れられた時点で製品とするなど、税理士に相談して処理基準を決めておくようにしましょう。

仕掛品とは

仕掛品(しかかりひん)とは、製造過程の途中段階にある中間品のことで、そのままの状態ではまだ売れる状態にはないものを処理する時の勘定科目です。
どのような製品でも、かならず一旦は「仕掛品」という状態を通過して完成するものであり、製造途中の未完成品があるのが通常です。

なお、仕掛品は、業種によってその科目の名称が変わります。
たとえば、建設業では「未成工事支出金」と呼ばれ、造船業では「半成工事」と呼ばれます。
また、制作途中のソフトウェアにかかる費用は「ソフトウェア仮勘定」といった勘定科目で、無形固定資産に計上します。

(1)「仕掛品」と「半製品」の違い

「仕掛品」と「半製品」は同意義で使われることもありますが、一般的には「それ自体で単独で販売、貯蔵をすることができるか」という点で区別します。
「仕掛品」はこれ自体では単独で販売や貯蔵をすることができない状態にあるものをいいますが、「半製品」は、中間的製品としてすでに加工が終わり、現に貯蔵中で販売できる状態にあるものをいいます。
ただし、実際には仕掛品と半製品の区別は相対的なものですから、経理規程などで「貯蔵のための入庫の時点から仕掛品」など、具体的に決める必要があります。

(2)仕掛品の取得原価

仕掛品の取得原価は、原価計算によって計算します。
原価計算には「個別原価計算」や「総合原価計算」などがあります。個別原価計算は、製品ごとに原価計算を行います。これは、船舶や航空機など個別受注生産する際に採用されています。
一方、総合原価計算は、製品の平均原価を計算します。同一製品を反復継続的に大量生産する企業で広く採用されています。

(3)仕掛品の製造費用の計算

製品の製造費用には、大きく①製品の材料費、②工場などで働く人に支払う労務費、③工場などの電気、ガス、水道、減価償却費、賃借料、その他の経費の3種類に分けられます。この原価の3要素の金額を、原価計算を通じて「仕掛品」に振り替えますが、①材料費を計算する際には、以下の点に注意が必要です。

仕掛品の材料費の計算
総合原価製品では、製造原価を直接材料費と加工費に分けます。
仕掛品の材料費の計算は、期首仕掛品単価と当期製造費用から「総製造費用」を求め、完成品原価と期末仕掛品原価を評価して、単位原価を求めて計算します。

①期首仕掛品原価+当期製造費用=総製造費用

期首仕掛品原価と完成品原価に区分する

完成品原価÷完成品数量=単位原価

そして、期首仕掛品単価と当期製造費用を直接材料費と加工費に分け、直接材料費は按分し、加工費については完成品原価と期首仕掛品原価に区分して計算します。

②期首仕掛品原価&当期製造費用を直接材料費と加工費に区分する
・直接材料費:数量で按分=完成品原価
・加工費:完成品の換算量で按分=期首仕掛品原価

以下、①と②について詳しく説明します。

①期首仕掛品原価+当期製造費用=総製造費用を求める

原価計算では、原価計算期間ごとに原価計算表を作成して当期製造費用を集計しますが、この原価計算期間は製造過程を考慮せず、強制的に期間を区切っているものです。したがって、月初には前月の仕掛品が製造ラインに残っていますし、月末には当月の仕掛品が残ることになります。
そこでまずは、月初の仕掛品の棚卸をして「期首仕掛品原価」を求め「当期製造費用」に加え「総製造費用」を計算します。この「総製造費用」は、月初の仕掛品の原価が含まれていることになります。

期首仕掛品原価+当期製造費用(直接材料費+加工費)=総製造費用

期末仕掛品原価を総製造費用から差し引く

総製造費用を計算したら、次に月末の「期末仕掛品原価」を求め、これを総製造費用から差し引きます。

当月完成品単価=当月製造費用-期末仕掛品原価

総製造費用から差し引いて残ったものは、「完成品原価」ですから、完成品原価を完成品数量で割れば、単位ごとの原価が計算されます。

完成品原価÷完成品数量=単位原価
②加工費は仕掛品原価と完成品原価を分けて考える

材料費については、総製造費用を完成品と仕掛品の数量で按分すれば問題ありません。しかし、加工費まで数量で分けてしまうと問題が生じます。加工まで済んでいない仕掛品と加工が完了した完成品に、同じ加工費を掛けることになってしまうからです。
そこでここでは、「仕掛品の加工進捗度(進み具合)」を加味して、完成品換算量に置き換えます。たとえば加工真直度25%の仕掛品が4個あれば、25%×4=100%として、完成品換算量は1個とします。

ここまでは、期首仕掛品の原価は計算してきました。
月初の仕掛品(前月末時点での未完成の繰り越し分)がない状態であれば、ここまでで仕掛品の計算は終了です。

しかし実際には、月初に前月の仕掛品というものが存在するものです。
そこで、月初の仕掛品にかかっている原価を、完成品または月末の仕掛品のどちらに配分すればよいのか、つまり期首仕掛品原価と当期製造費用のどちらを期末仕掛品原価とするかという問題があります。
そこで、期首仕掛品原価と当期製造費用について、どちらが期末仕掛品原価になっているかを評価します。この評価方法としては「平均法」「先入先出法」「後入先出法」があります

材料費=消費量×A※
※Aの計算方法
「平均法」:期首仕掛品原価と当期製造費用を平均して計算
「先入先出法」:期首仕掛品原価を先から払い出すとして計算
「後入先出法」:後から仕入れた方が先に消費すると考え計算

「先入先出法」は、先に着手したものから先に完成すると仮定し月初仕掛品原価をすべて完成品へと振り分ける方法で、実際の物の流れに即した評価方法となります。
「平均法」は、月初仕掛品原価と当月着手した当月製造費用を合算し、平均原価で完成品と月末仕掛品原価を集計する方法で、毎月の業績の格差を少なくできるというメリットがあります。
「後入先出法」は、後に着手したものから先に完成すると仮定する方法で、原材料費がインフレで高騰しているような時には、高くなった後の原価を売上原価としやすく費用を多く計上でき、利益の圧縮につながるというメリットがあります。

いずれの評価御方法を採用するかについては、個々の状況に応じて判断し自社に適した方法を採用することになります。

(4)ソフトウェアの「仕掛品」

仕掛品は、形のあるものだけではありません。
たとえば、ソフトウェア会社が販売目的で開発しているプログラム等のソフトウェアのうち、開発途中のものも「仕掛品」として処理をします。
ソフトウェア制作費は、制作目的によって大きく3つに区分され、その目的別に会計処理方法が異なります。

①受注制作のソフトウェア

請負工事の会計処理に準じて、工事進行基準または工事完成基準によって会計処理します。
工事完成基準においては、受注制作ソフトウェアが完成し、顧客への引き渡しが完了した時点で売上高が計上されます。
プロジェクトが長期にわたる場合には、完成した年度のみで売上高に計上します。決算日前に引き渡しをした場合も、検収が翌期になった場合にも、売上計上は翌期になります。
一方、コストについては発生した時点で仕掛品として計上します。

②市場販売目的のソフトウェア

最初に製品化された製品マスター、または購入したソフトウェアの機能を改良・強化した制作活動の費用は、原則として資産に計上します。ただし、著しい改良の場合には、改良が終了するまで研究開発費として処理をします。

製品マスターについては、適正な原価計算によって取得原価を計算し、仕掛品については、ソフトウェア仮勘定として、完成品はソフトウェア勘定として、いずれも無形固定資産に計上します。無形固定資産の表示では仕掛品と完成品を区別せず、ソフトウェアと表示しますが、仕掛品に重要性がある場合には、区分表示が望ましいでしょう。

・製品マスターの制作原価は、製造原価として計上し、仕掛品と完成品を無形固定資産に振り替えます。
・製品としてのソフトウェアで販売されなかったものおよび制作途上のものについては、棚卸資産の仕掛品として計上します。

③自社利用のソフトウェア

将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合には、無形固定資産に計上し、確実と認められない場合には費用として処理をします。
自社利用のソフトウェアには、将来の収益獲得または費用削減が確実であると認められる状況になった時に、立証できる証憑に基づいて資産計上を開始します。

仕掛品のよくある仕訳

製品の製造過程の途中段階にある製品は、材料費、労務費、製造経費について、原価計算を通じて仕掛品に振り替えます。
ここでは、仕掛品のよくある仕訳例についてご紹介します。

(1)製造のための原材料を出庫した

「製品の製造のために原材料50万円を出庫した。」
製造のための原材料を出庫した場合には、仕掛品で処理をします。

借方 貸方
仕掛品 500,000 原材料 500,000

(2)製造のための労務費と製造経費を費消した

「製品の製造のための労務費200万円と製造経費50万円を費消した。」
仕掛品の原価計算には、材料費、労務費、製造経費を含めます。

借方 貸方
仕掛品 2,500,000 労務費 2,000,000
製造経費 500,000

(3)製品が完成した

「製品が完成し、仕掛品から製品に振り替えた。なお、製造原価は200万円であった。」

借方 貸方
製品 2,000,000 仕掛品 2,000,000

(4)受注制作のソフトウェアを3年後に引き渡した

「工事収益総額200,000円、工事原価総額150,000円のソフトウェア開発において、初年度の原価発生額は、30,000円、2年目は75,000円、3年目は45,000円であった。3年後に完成、引渡を行い検収が完了した。」

【初年度】「初年度の原価発生額30,000円を仕掛品の勘定に計上した。」

借方 貸方
仕掛品 30,000 現金預金 30,000

【2年度】「2年度の原価発生額75,000円を仕掛品の勘定に計上した。」

借方 貸方
仕掛品 75,000 現金預金 75,000

【3年度】
「3年度の原価発生額75,000円を仕掛品の勘定に計上した。」

借方 貸方
仕掛品 45,000 現金預金 45,000

「完成・引き渡し時に売上高・売上原価に計上した。」
売上高:工事収益総額200,000円
売上原価:30,000円+75,000円+45,000円

借方 貸方
工事未収入金 200,000 売上高 200,000
売上原価 150,000 仕掛品 150,000

(5)制作途中の市場販売目的ソフトウェアを棚卸資産の仕掛品として計上した。

「製品としてソフトウェアで販売されなかったものの、制作途中のものについては、棚卸資産の仕掛品として計上した。なお、製造経費は75,000円であった。」

借方 貸方
仕掛品 75,000 棚卸資産 75,000

まとめ

以上、仕掛品の意味や半製品との違い、仕掛品の原価計算の方法や仕訳処理についてご紹介しました。
仕掛品の取得価額は、原価計算によって算出しますが、原価計算には個別原価計算や総合原価計算などがあり、月初に前月の仕掛品が存在している場合には、期首仕掛品原価と当期製造費用のどちらを期末仕掛品原価とするか評価しなければなりません。そしてこの評価方法には、「平均法」「先入先出法」「後入先出法」があり、自社に適した方法を採用することになります。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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