公開日:2023年01月25日
最終更新日:2023年11月28日
課税所得金額とは、法人税や所得税などの計算を行うときに、税率を掛ける対象となる所得をいいます。課税所得は、収入から必要経費を差し引いた所得から、さらに特別に認められる控除を差し引いて求めます。
したがって、所得と課税所得は異なります。
特別に認められる控除を差し引かずに、所得に税率を掛けてしまうと、本来納めるべき税額より増えてしまいますので、注意が必要です。
所得税とは、個人の所得に対して国がかける税金のことです。
収入から必要経費を差し引いた「所得」から各種の所得控除を差し引いた残りの額である「課税所得金額」に、決められた税率を適用して税額を決定します。
収入・所得・課税所得の違いは、所得税の計算方法を見ると、よりイメージすることができます。
所得税(および復興特別所得税)の計算は、以下のような順番で行われます。
①収入-必要経費=所得 ②所得-所得控除=課税所得金額 ③課税所得金額(A)×税率(B)-控除額(C)=基準所得税額 ④基準所得税額×2.1%=復興特別所得税額 ⑤上記④+⑤=所得税および復興特別所得税の額
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所得の種類は10種類あり(※後述)、それぞれの所得の種類によって所得の計算方法は変わりますが、基本的には収入から必要経費を差し引いたものが「所得」であり、その「所得」からさらに各種控除を差し引いたものが「課税所得」です。
所得の種類は10種類あり、どのようにその所得を得たかで税負担が調整されます。たとえば退職所得は、長年の働きに感謝するという意味合いや、その後の生活を保障する意味合いがあることから、税負担が軽減される措置がとられています。
所得の種類 | 所得金額の計算方法 | |
1 | 事業所得 | 事業所得の金額=収入金額-必要経費 |
2 | 給与所得 | 給与所得の金額=給与収入-給与所得控除 |
3 | 譲渡所得 | 譲渡所得の金額=総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額 |
4 | 不動産所得 | 不動産所得の金額=収入金額-必要経費 |
5 | 一時所得 | 一時所得の金額={収入金額-収入を得るための費用-特別控除額50万円}×1/2 |
6 | 退職所得 | 退職所得の金額={退職金収入-退職所得控除}×1/2 ※一定の制限あり |
7 | 利子所得 | 利子所得の金額=利子収入 |
8 | 配当所得 | 配当所得の金額=収入金額-元本を取得するために借りた借入金の利息 |
9 | 山林所得 | 山林所得の金額=収入金額-必要経費ー特別控除額50万円 |
10 | 雑所得 | 雑所得(公的・退職年金)の金額=年金収入-公的年金等控除 雑所得(その他)の金額=収入金額-必要経費 |
なお、ほとんどの種類の所得は合算して総合課税となりますが、株の売却益にかかる所得税や、退職所得にかかる税金など、原則としてほかの所得と分けて課税される「分離課税」というものもあります。
所得控除とは、扶養家族の人数や多額の医療費が掛かったなど、個人の事情によって税負担が配慮される制度のことで、全部で15種類あります。適用される所得控除の数が多ければ多いほど、差し引ける額が大きくなります。
所得控除の種類 | 所得控除額の計算方法 | |
1 | 基礎控除 | 0~48万円 |
2 | 配偶者控除 | 70歳未満:0~38万円 70歳以上:0~48万円 |
3 | 配偶者特別控除 | 1~38万円 |
4 | 扶養控除 | 0歳~15歳:0万円 16歳~18歳:38万円 19歳~22歳:63万円 23歳~69歳:38万円 70歳以上:48万円 |
5 | 障がい者控除 | 1人27万円、特別障がい者40万円 |
6 | ひとり親控除 | 一定のひとり親:35万円 |
7 | 寡婦控除 | 一定の寡婦:27万円 |
8 | 勤労学生控除 | 27万円 |
9 | 医療費控除 | (支払医療費-補填金額)-(10万円と所得の5%のどちらか少ない方) |
10 | 社会保険料控除 | 支払った全額 |
11 | 小規模企業共済等掛金控除 | 支払った全額 |
12 | 生命保険料控除 | 最高12万円 |
13 | 地震保険料控除 | 最高5万円 |
14 | 寄附金控除 | (支払額と所得の40%のどちらか少ない額)-2,000円 |
15 | 雑損控除 | (損失額-所得の10%) (損失額のうち、災害関連支出日-5万円) のどちらか多い方 |
所得を計算し、所得から所得控除を差し引いて「課税所得金額」を計算したら、決められた税率を掛けて納める税額を計算します。
所得税の税率は、稼いでいる人ほど税金が高くなる累進課税税制です。
また、復興特別所得税も課税されます(2037年までの予定)。
課税所得金額(A)×税率(B)-控除額(C)=基準所得税額 |
課税される所得金額(A) | 税率(B) | 控除額(C) | 税額(A)×(B)-(C) |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 | (A)×5%-0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 | (A)×10%-97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 | (A)×20%-427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 | (A)×23%-636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 | (A)×33%-1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 | (A)×40%-2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 | (A)×45%-4,796,000円 |
たとえば、課税所得金額が650万円の場合は、上記の所得税の速算表で見ると所得税率は20%、控除額は42万7,500円となります。
この基準所得税額に2.1%を掛けたものが、復興特別所得税額です。
①+②が、所得税および復興特別所得税額となります。
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最終的に計算された税額から一定額を差し引ける税額控除という制度もあります。所得控除と税額控除は、どちらも税金を安くできる制度ですが、税額控除は納税額から差し引くことができるため、節税効果は絶大です。
適用される税額控除がある場合には、かならず適用を受けるようにしましょう。
主な税額控除としては、以下のようなものがあります。
住宅ローン控除 | 新築や購入だけでなく中古や増改築でも対象となる場合がある |
外国税額控除 | 一定の計算式による |
配当控除 | 課税所得が1000万円以下のとき、配当所得の10% |
これまでご紹介した所得税額の計算方法をまとめると、以下のようになります。
①所得を計算する 所得の種類は10種類あるため、稼いだ方法によって所得を特定して計算します。 たとえば事業所得なら、「収入金額-必要経費」で所得金額を計算します。 ②所得控除を差し引いて課税所得金額を求める
③基準所得税額を求める
④復興特別所得税額を求める
⑤適用される税額控除を差し引く |
会計上の利益は、収益から費用を差し引くことによって計算しますが、税務上の利益である「課税所得」は、益金から損金を差し引いて計算します。
ここで注意が必要なのが、収益=益金ではなく、費用=損金ではないという点です。
会計上の利益計算と課税所得金額の計算は、その目的が異なるため、収益と益金の範囲は一部異なりますし、費用と損金の範囲も一部異なります。
したがって、結果的に会計上の利益=課税所得とはなりません。
会社の利益は、「収益-費用」で計算しますが、所得金額は「益金-損金」で計算します。
益金=収益、損金=費用であれば、利益と所得は一致することになりますが、法人税の課税所得は、会計上の利益を基礎として、収益と益金、費用と損金の相違金額を会計上の利益に加算・減算(申告調整)することによって行われます。
つまり、収益に計上しても益金に計上しない(益金不算入)があったり、費用に計上しても損金に計上しない(損金不算入)があったりするのです。
たとえば、全額が損金とならないものとしては、法人税・住民税がありますし、一定の限度を超えた部分が損金とならないものとしては、寄附金、交際費、過大役員給与などがあります。
法人税の計算は、課税の公平さや国の税務政策を優先とするため、会社が費用と考えるものでも、税法上は損金とならないといったことが起こるのです。
収益に計上 | 費用に計上 | |||
している | していない | している | していない | |
↓ | ↓ | ↓ | ↓ | |
益金に計上 | 損金に計上 | |||
しない | する | しない | する | |
↓ | ↓ | ↓ | ↓ | |
益金不算入 | 益金算入 | 損金不算入 | 損金算入 |
つまり、会社の計算する利益と税法の所得は一致せず、会社の利益に益金不算入をマイナス・益金算入をプラスし、損金不算入をプラス・損金算入をマイナスして、課税所得金額を計算します。
法人税額は課税所得金額に税率を掛けて計算しますが、その税率については所得税が稼いでいる人ほど税金が高くなる累進課税税制であるのに対して、法人税は所得の大きさに関わらず一定の比率税率です。
税率は以下のとおりで、中小企業については税負担を軽減するため、資本金1億円以下の法人などは所得金額のうち年800万円以下の部分について19%となっています。
さらに、この800万円の部分に対する税率についても「中小企業者等の法人税率の特例」があり、15%となっています。
区分 | 税率 | ||
資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% |
適用除外事業者 | 19% | ||
年800万円超の部分 | 23.2% | ||
上記以外の普通法人 |
参照:国税庁「法人税の税率」
法人税額は、所得金額に税率を掛けて計算し、それに特別な税金をプラスします。
3グループ以下の株主が保有する株式の合計数が、発行済株式総数の50%を超える会社は、法人税法上同族会社といい、この同族会社には税法の特別規定が適用されます。これは、同族会社では、少数の株主が会社を支配するために、法人税を軽減する操作などが行われやすいためです。
たとえば、法人税法上、同族会社が行っている行為を認めると法人税の負担が不当に少なくなると判断されるものがあると、たとえ脱税する意思がなくても税務署は否認されてしまいます。
また、会社が土地を売却した場合には、その売却益について他の利益を合算して所得金額が計算され、それに対して法人税がかかりますが、その売却益についてさらに別枠で特別な税金がかかります(土地重課)。
法人税額に特別かかる税金をプラスしたあと、法人税も所得税のように税額控除を差し引くことができます。
法人税で受けられる主な税額控除としては、源泉徴収所得税の税額控除、外国税額控除、その他租税特別措置による税額控除があります。
租税特別措置による税額控除としては、以下のようなものがあります。
①試験研究を行なった場合の税額控除 ②中小企業者等が機械等を取得した場合の税額控除 ③国家戦略特別区域で機械等を取得した場合の税額控除 ④特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の税額控除 ⑤給与等の引き上げおよび設備投資を行った場合の税額控除 |
中小法人には、多くの税額控除が認められていて、なかには特別償却と税額控除を選択できる制度もあります。
特別償却は課税繰り延べ措置ですが、税額控除は、算出税額から控除することができる永久免税措置ですから、大きな節税効果があります。
これまでご紹介した法人税額の計算方法をまとめると、以下のようになります。
①課税所得金額を計算する 会社の利益に益金不算入をマイナス・益金算入をプラスし、損金不算入をプラス・損金算入をマイナスして、課税所得金額を計算します。 ②法人税額を計算する
③法人税額に特別な税金をプラスする
④適用される税額控除を差し引く
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課税所得金額とは、税率を掛ける対象となる所得をいい、所得税や法人税で課税所得金額の計算方法は異なります。
また、所得税の場合には、まず自身の所得が何に該当するのかを確認しなければなりませんし、適用される所得控除があるのに適用が漏れてしまうと、所得税を納め過ぎてしまいます。
また、法人税についても、収益と益金、費用と損金の相違金額を会計上の利益に加算・減算(申告調整)して課税所得金額を計算しなければなりませんし、法人税申告書の様式は非常に複雑です。
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・源泉所得税を徴収する必要がある場合、ない場合についての質問 「現在、個人事業を営んでおりアルバイトを雇っています。 源泉所得税を徴収する必要があるのか確認したいと思い質問させていただきます。…」 |
・確定申告により扶養から外れることのデメリットについて 「妻が株式売買にて令和3年に500万円の損失を計上し、同年確定申告にて繰越を計上。令和4年は同額の500万円の利益を計上したため、損失の繰越控除により所得税・住民税の還付を受けるべく、確定申告の準備を進めています。…」 |
・年金所得の確定申告について 「少額ですが公的年金がありそれを110万円以下で控除され所得にすると0円です。…」 |
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