公開日:2024年04月24日
最終更新日:2024年04月24日
信用取引が中心の事業の場合には、「売上代金を回収できるかどうか」は、会社の運転資金を確保するうえで重要なテーマです。代金が回収できなければ、いくら利益が出ていても会社自体の運営ができなくなり、最悪の場合には、黒字倒産をしてしまうリスクもありからです。
代金を確実に回収し、貸倒れを回避するためには、取引先の信用状態をよく検討し、支払能力の有無を確認してから取引を開始することが大切です。
どうしても信用に不安がある会社と取引をしなければならないときは、常に相手の状況に留意して限度額を設定し、取引条件どおりに確実に回収されているかを常にチェックします。
そして、少しでも不安な状態があれば、直ちに取引額を減らすか取引を中止して、取引先の倒産に備えるなどの施策も必要です。
与信管理の豆知識
与信管理は、すべての取引先を対象に行います。そして不安のある取引先とは、信用取引は行わないのが原則です。
しかし実際は、どうしても不安のある取引先とも信用取引をしなければならないケースも多いでしょう。その場合には、貸倒れを少しでも抑えるために与信限度制度を活用しましょう。
与信限度制度は、個々の会社の状況に応じて策定する必要がありますので、詳細については顧問税理士に相談することをおすすめします。
与信管理とは、取引先から確実に代金を回収し、貸倒れを最低限に抑え込むために行う管理で、大きく信用管理と回収管理に区分されます。
具体的には、すべての取引先を対象に信用調査を行い限度枠の設定をしてから取引を開始するようにします。
取引を開始した後も、情報収集や債権管理を行いながら取引先をチェックし、信用状態に変化があれば限度額を減額したり、取引条件を改善したりといった措置を講じます。
そして、状況に応じて適切な回収手段で回収を行います。
与信管理の目的は、「代金を確実に回収すること」です。
したがって、そもそも不安な取引先とは取引をしないと決めることも大切です。つまり、代金を確実に支払ってくれる相手とだけ取引をするということです。
しかし、なかには信用に不安のある相手とも取引をしなければならないというケースもあるでしょう。その場合には与信限度枠を活用し、貸倒れを最低限に抑えるために対策を講じます。
一見不安がないように見える会社でも、実は粉飾を行っているというケースも見受けられます。したがって、決算書だけでなくさまざまな視点から調査を行うことが大切です。
取引先の債務不履行や入金遅延は、そのまま利益の減少につながります。
売上は、売上債権を回収してはじめて利益計上が確実になるからです。回収できなければ、貸倒れとなり利益が減少します。
その損失を取り戻すためにはさらに多くの売上が必要となります。
しかし、損失を取り戻すために売上をアップさせることは相当に大変ですし、最悪の場合には、取引先の債務不履行がそのまま倒産につながることもあるのです。
経営セーフティ共済とは、独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営する制度です。 取引先が倒産してしまった際に巻き込まれて連鎖倒産したり、経営難になったりすることを防ぐことを目的としています。 万が一取引先企業が倒産した場合には、すぐに借入ができるので連鎖倒産を防ぐことができます。 さらに、掛金を損金(個人事業主は必要経費)に算入することができるので、節税効果があります。 |
与信管理は、取引先の信用管理と回収管理に区分されます。
信用管理とは、取引先との取引開始の前に取引先の業績や財政状態を調査することです。
業績が落ち込んでいないか、将来にわたり確実に代金を支払ってくれるかを確認します。
この調査を疎かにしたために、取引開始後にすぐに相手先が支払い不能に陥り、貸倒れ状態になることもあります。
与信管理は、一般的に契約前、取引時、回収時の3段階に分けて行います。
契約前 | 取引時 | 回収時 |
信用調査 | 与信枠の設定 | 債権保全 |
信用取引の相手としてふさわしいかどうか財務諸表やIR情報、ホームページや調査会社の格付けなどから調査する。 | 取引はいくらまでできるか、担保能力や希望与信額について調査する。 | 回収できなくなった場合に、どう補填するか検討する。 具体的には、保証機関の利用や手付金の受取、担保の設定などについて検討する。 |
調査会社に調査を依頼して調査報告書を入手する方法が主ですが、自社である程度の調査を行なうこともできます。
取引先を実際に訪問して、関係者と直接面談する機会をつくれれば、職場の雰囲気や経営者の動きなどを直接観察することができます。
ただし、取引先の期限を損ねるようなことは聞きづらいものですし、やはり観察するだけでは限界があります。
そこで、決算書調査を併せて行ないます。
業績が上がっているか、財政状態は堅実かなどを読みとります。そして、内容を分析したら、取引先ごとの与信限度額を設定して、常時限度額をオーバーしていなかチェックします。
また、各種財務比率を分析して、変化を読みとることも大切です。
なかには、粉飾によって資力があるように見せかけるケースもありますが、粉飾企業はかならずどこかに歪みが生じます。この歪みを見逃さずに実態を見抜くことが大切です。
財務分析や粉飾の判断については、売上債権や棚卸資産の回転期間などにも注意する必要があることから、細かい点については顧問税理士と相談のうえで基準や項目を決定する方が効率的です。
与信管理規程とは、個別の売掛金管理についての社内規程です。与信管理の方針や基準、手続きなどを記載します。
赤字や債務超過など、判断基準はいろいろですが、要は与信不安先をふるいにかけるための社内のルールを設けるということです。取引先の内容に不安な兆候があると判断した場合には、社内全体で情報共有ができるようにしておくことが大切です。
とくに、取引先と接触している営業マンからは、状況を判断できる情報が得られる場合も多いため、スムーズに情報共有できるような体制を整備しておきましょう。
与信管理規程は、売掛金のリスクを減らしたうえで効率的に管理することが重要で、かつ個々の企業の業種や体制、規模によって定める内容は異なります。したがって、与信管理規程は、与信管理システムや運用システムの構築とあわせて、顧問税理士に相談することをおすすめします。
売掛金の回収を行うためには、代金回収の手段や手順についてあらかじめ決めておくことが大切です。
期日をどれくらい過ぎたら催促するのか、次回の納品をどうするかなどを決めて、社内に周知します。
まずはメールで簡易な督促状を通知し、それでも回収できない場合には、債務残高確認書を郵送します。
これは、相手に債務があることを知らせる書面ですが同時に時効を中断させる催告の役割も果たします。
それでも相手が反応しない場合には、配達証明付き内容証明郵便で、催告状を送付します。
これらの手段をとったうえで、支払が2カ月以上遅れるようであれば、訴訟や支払督促などの法的手段を検討します。
取引先とのトラブルを避けるためには、基本契約書を締結することが重要です。契約書に、不払いなどの事態が起こった時の対処を定めておけば、どのような対策をとればよいのかすぐに判断することができます。
契約解除条項や相殺予約、期限の利益喪失、遅延損害金の条項、保証人の条項を入れることで、債権回収を実現できるようにしておきます。
しかし、なかには「古くからの取引先で、今さら契約書を締結したいと言いづらい」というケースもあるようです。
その場合には、注文書と注文請書に、代金や支払方法、納入場所、納入方法などを詳細に記載し、請書の裏面に代金回収を保障する項目を入れた取引約款を印刷しておきます。
注文書以外の証拠としては、売掛台帳の会計帳簿や会議の内容を記載した議事録などにも証拠能力が認められます。
債権を回収する方法としては、債権譲渡という方法もあります。
たとえば、AがBに債権を持っており、BがCに債権を持っているとします。
このとき、BがCから返済を受けたとしても、BがそれをAへの返済に充てるとは限りません。そこで、AはBから「BのCに対する債権」を譲り受けることで、Cから直接返済を受けることがきるというものです。
ただ、この債権譲渡についてはいくつかの要件を満たす必要があり、さらに債権が二重に譲渡された場合には、確定日付のある証書による通知によって決まるなど、注意すべき点が多々ありますので、詳細については弁護士に相談しましょう。
取引先の経営破たん等で不良債権が発生した場合には、早期に財務内容の健全化を図るとともに、対外的な信用を確保するために、不良債権に対する適切な処理を行う必要があります。
処理の方法としては、貸倒損失の計上、債権の譲渡などの方法が考えられます。
①貸倒損失の計上 債務者の法的手続き等によって、債権の全部または一部の切捨て等が行われた場合、もしくは事実上回収不能となった場合などは、いわゆる貸倒れ処理を行います。 ②債権の譲渡 |
いずれの処理を行う場合にも、タックスプランニング上その効果を最大限生かすためには、損金算入して無税処理とすることを意識する必要があります。
貸倒損失の計上が認められるためには、一定の要件を満たさなければなりません。
また、積極的に寄附金処理、損金に算入しない処理の方が適切であるケースもあります。早めに税理士に相談したうえで、それぞれのメリット・デメリットを比較したうえで、効果を最大限とするための処理について検討しましょう。
与信管理は、取引の相手先がどのような会社か調査を行い、規模や支払能力、過去の経営成績などを分析し、取引の与信限度額を設けて、無謀な取引を回避するための管理です。
与信管理は、営業部とは独立してけん制し合うような部門が担当するなどの工夫も必要です。なぜなら、営業部は業績を重視する傾向があり、多少の問題には目をつぶり、取引を続行させてしまう傾向があるからです。
また、決算書など財務内容を判断できる情報は定期的に入手し、税理士に確認してもらえるよう依頼してみましょう。調査会社を利用する方法もありますが、自社の状況を把握している税理士の方が柔軟に判断してくれるというメリットがあります。
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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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