消費税の届出書の一覧|届出書の意味・メリットもあわせて解説

公開日:2018年11月07日
最終更新日:2022年06月22日

この記事のポイント

  • 消費税には、納税者のが選択できる部分が多くある。
  • 消費税の各種届出をタイミングよく提出すれば、節税できることもある。
  • 消費税の各種届出は、メリットをよく検討して届け出ることが大切。

 

消費税については、納税者となることを選択したり、簡易課税を選択したり、納税者でなくなった旨を届け出たりと、納税者が選択できる部分が多くあります。
これらの消費税の各種届出書は、タイミングよく提出することで節税できるケースもあります。

この記事では、消費税の各種届出書についてご紹介します。

消費税の各種届出

消費税については、納税者の選択に委ねられている部分が多くあります。
消費税の納税義務者になることをあえて選択したり、簡易課税を選択したりするためには、届出書を提出する必要があります。
これらの届出書は、タイミングよく提出すれば節税効果が期待できるものも多いため、内容を理解し適切な時期に提出することを検討することが大切です。

(1)消費税課税事業者届出書(基準期間用)

消費税課税事業者届出書(基準期間用)とは、基準期間における課税売上高が1000万円を超え課税事業者となる場合の手続きとして、提出する届出書です。

設立間もない会社や、事業を開始したばかりの個人事業主は、原則として消費税の免税事業者です。
その後も課税売上高が1000万円以下であれば、消費税の納税義務は免除されたままですが、ある事業年度において課税売上高が1000万円を超えた場合には、原則として翌々年は消費税の課税事業者となります(納税義務が免除されないこととなります)。

そして、翌々年に課税事業者になる旨を届け出る書面が、「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」です。

なお、この「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」は自ら進んで課税事業者となることを選択する届出書ではありません。
自ら進んで課税事業者となることを選択する場合には「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要がありますので、混同しないように注意しましょう。

参照:国税庁「[手続名]消費税課税事業者届出手続(基準期間用)」

(2)消費税課税事業者届出書(特定期間用)

基準期間の課税売上高が1000万円以下であっても、特定期間の課税売上高が1000万円を超えた場合には、その年または事業年度の納税義務は免除されません。

特定期間とは、個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6カ月の期間をいいます。
ただし、新たに設立した法人で決算期変更を行った法人など、その法人の設立日や決算期変更の時期がいつであるかにより特定期間が異なる場合があります。

この特定期間における課税売上高が1000万円を超えた場合には、消費税課税事業者となります。このときには、「消費税課税事業者届出書(特定期間用)」を提出する必要があります。

特定期間の課税売上高が1000万円を超えているか否かを判定する際には、実際の課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額によって判定することもできます。

参照:国税庁「[手続名]消費税課税事業者届出手続(特定期間用)」

(3)消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書

基準期間における課税売上高が1000万円以下となった場合には、事業者は納税義務を免除されます。
たとえば、それまで基準期間の課税売上高が1000万円を超えていたため課税事業者であったところが、ある事業年度において課税売上高が1000万円以下となった場合には、原則として翌々年は消費税の納税義務が免除されます。
そして、翌々年に納税義務が免除されることになる旨の届出書が「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」です。
なお、この「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」は、自ら進んで課税事業者となることを選択したことをやめるときの届出書ではありません。
「消費税課税事業者選択届出書」を提出していた事業者が、課税事業者という選択をやめる場合には「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出します。

参照:国税庁「[手続名]消費税の納税義務者でなくなった旨の届出手続」

(4)消費税課税事業者選択届出書

基準期間における課税売上高が1000万円以下の場合には、原則として消費税免税事業者となります。
納税義務が免除されるというと、お得な感じもしますが、実は課税売上高を課税仕入れ高が上回る場合には、消費税等の還付を受けることができます。
しかし、免税事業者の場合には還付を受けることができません。
そこで、ある課税期間において消費税等の還付が予想される場合には、免税事業者であっても、あらかじめ「消費税課税事業者選択届出書」を提出し課税事業者となることを選択しておくと、消費税の還付を受けることができます。
「消費税課税事業者選択届出書」は、提出した日の属する課税期間の翌課税期間から効力が生じるため、還付を受けようとする課税期間が開始するまでに提出しなければなりません。

参照:国税庁「[手続名]消費税課税事業者選択届出手続」

(5)消費税課税事業者選択不適用届出書

前述したとおり、基準期間の課税売上高が1000万円以下であっても、還付を受けることを目的として「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば、課税事業者を選択することができます。
その後、還付を受けるなどして課税事業者を選択する目的を達成した場合には、免税事業者に戻った方が有利なこともあります。
その場合には、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出し、課税事業者の選択をやめるための手続きを行います。

「消費税課税事業者選択不適用届出書」は、提出した日の属する課税期間の翌課税期間から、届出書の効力が生じますので、選択をやめようとする課税期間が始まるまでに提出しなければならない点に注意が必要です。

なお、この届出書は、消費税課税事業者選択届出書の効力が生じた日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以降でなければ提出することはできません(事業を廃止した場合を除く)。

参照:国税庁「[手続名]消費税課税事業者選択不適用届出手続」

(6)消費税課税期間特例選択・変更届出書

「消費税課税期間特例選択・変更届出書」は、課税期間の特例の適用を受けようとするときに提出する届出書です。
輸出業者など、免税売上高の多い事業者では、毎期継続して消費税の還付を受けることがあります。
このような事業者にとっては、できるだけ早期に還付を受けることができれば、資金繰りが安定します。
そこで、課税期間を1カ月または3カ月ごとにできるとされており、この課税期間の特例の適用を受けようとするときに提出するのが、この「消費税課税期間特例選択・変更届出書」です。

また、1カ月ごとにした課税期間を3カ月ごとに変更する場合、3カ月ごとにした課税期間を1カ月ごとに変更する場合にも、この「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出します。
「消費税課税期間特例選択・変更届出書」は、特例を受けようとする(あるいは変更しようとする)課税期間の初日の前日までに提出しなければなりません。

参照:国税庁「[手続名]消費税課税期間特例選択・変更届出手続」

(7)消費税課税期間特例選択不適用届出書

課税期間の特例を受けることで、消費税の還付を毎月(あるいは3カ月に1度)受けられるメリットがなくなった場合には、課税期間の特例の適用をやめることができます。
課税期間の特例を受けていると、頻繁に消費税の確定申告書を提出する必要があり、事務処理が煩雑となるため、課税期間を短縮するメリットがなくなったときには、「消費税課税期間特例選択不適用届出書」を提出し、課税期間の特例の適用をやめることが一般的です。
「消費税課税期間特例選択不適用届出書」の効力は、提出した日の属する課税期間の翌課税期間から生じますから、選択をやめようとする課税期間が始まるまでに提出します。

ただし、この届出書は、「消費税課税期間特例選択・変更届出書」の効力が生じる日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出することができません(事業を廃止した場合を除く)。

参照:国税庁「[手続名]消費税課税期間特例選択不適用届出手続」

(8)消費税簡易課税制度選択届出書

「簡易課税」とは、預かった消費税額に業種ごとに決められた「みなし仕入率」を掛けた金額を支払った消費税額とみなして、納税額を計算する方法で、個人事業主や中小企業に認められている、消費税の計算を簡単に行うことができる制度です。
この簡易課税制度の適用を受けるためには、基準期間の課税売上高が5000万円以下でなければならないという条件があります。
さらに、簡易課税制度を選択した場合は、2年間継続した後でなければ、簡易課税制度の選択をやめることはできません(事業を廃止した場合を除く)。

したがって、1期だけ簡易課税制度の適用を受け、その次の課税期間は巨額の設備投資などの理由で還付が見込まれるため、一般課税を選択したいという場合には、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すべか否か、納税額を緻密に計算し、有利不利を判断することが大切です。

「消費税簡易課税制度選択届出書」は、提出した日の属する課税期間の翌課税期間から効力を生じますので、適用を受けようとする課税期間が開始するまでに提出する必要があります。

参照:国税庁「[手続名]消費税簡易課税制度選択届出手続」

(9)消費税簡易課税制度選択不適用届出書

「簡易課税制度」は、消費税の計算を簡単に行うことができ、一般課税より有利な納税額が計算されるケースも多いものですが、巨額の設備投資を行う課税期間においては、課税売上高にかかる消費税額より課税仕入高にかかる消費税額の方が多いことがあります。
このような場合には、簡易課税制度を選択していると還付を受けることができないため、一般課税による申告を行う必要があります。

このように、簡易課税制度の適用を受けている事業者が、簡易課税制度の適用をやめようとするときに必要となるのが、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」です。

「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」の効力は、提出した日の属する課税期間の翌課税期間から生じますから、選択をやめようとする課税期間が開始するまでに提出する必要があります。

なお、この「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」は、簡易課税制度の適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出することはできません(事業を廃止した場合を除く)。

参照:国税庁「[手続名]消費税簡易課税制度選択不適用届出手続」

(10)適格請求書発行事業者の登録申請書

令和5年(2023年)10月1日から、適格請求書等保存方式が導入されます。
適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者に限定され、さらに適格請求書発行事業者は消費税の課税事業者に限定され、免税事業者は発行できません。
「適格請求書発行事業者の登録申請書」とは、適格請求書の交付をしようとする国内事業者が提出する申請書です。
登録申請は、e-Taxで行うこともできますし、個人事業者はスマートフォンでも手続きが可能です。

参照:国税庁「[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」

▶ 適格請求書発行事業者|登録申請は?メリットは?

まとめ

消費税は、納税義務者となるか、簡易課税制度を選択するか、簡易課税制度の適用をやめるかなど、納税者が選択できる部分が数多くあります。
これらの選択のメリット・デメリットについて理解し、シミュレーションを行い、タイミングよく届出を提出することで、節税できるケースは多々あります。自社の事業を把握している税理士とよく相談して、適切に届出を行うようにしたいものです。

消費税の届出について相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、消費税の各種届出について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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