覚書に印紙は必要?印紙税額を節約する書き方は?

公開日:2019年12月11日
最終更新日:2024年03月27日

この記事のポイント

  • 覚書は、後々契約条件が変更する場合などに作成されることがある。
  • 覚書の内容から契約書であると判断されれば、覚書も契約書の1つということになり法的効力を持つ。
  • 覚書でも、内容が契約書となる場合には印紙が必要となる。

 

契約書には、決まった種類や様式、決まりがあるわけではありません。
また、契約書とは別に「覚書」を作成することもあります。
覚書は、文書のタイトルが「契約書」ではないことから、印紙を貼るか否かが問題となります。

この記事では、覚書の意味や内容、印紙が必要となるケースや印紙税額を節税する方法などについてご紹介します。
 

覚書の豆知識

覚書とは、当事者間の合意事項を文書にしたものです。ビジネスの現場では、覚書や合意書を作成するケースはよくあるもので、契約締結に至るまでの合意事項を確認する場合などに利用されます。たとえば、「業務の範囲は別途協議する」と覚書を作成しておいて、仕事を始めて業務全体の範囲や工数が見えてきて報酬額が見積れる段階になったところで、契約書を締結するケースです。
しかしタイトルが「覚書」でも、内容によっては契約書と同様に法的効果が認められますし証拠書類としても機能します。当然、注意しなければならない項目もあります。
たとえば、契約関係を解消するという内容の覚書を作成した場合には「合意解約する」という内容しか記載されていないことがありますが、「相互に債権債務がないことを確認する」という内容を盛り込んでおかないと、後日相手から損害賠償請求をされるなどのトラブルに発展することもあります。
したがって、タイトルが覚書であっても、その文書には契約書としての効力が認められるものであるということを理解しておきましょう。

覚書とは

覚書(おぼえがき)は、その内容に特に定義があるわけでもなく、法律上規定されている文書でもありません。しかし一般的には「当事者が合意した契約内容を、文書化した書類」とされています。

覚書は、ビジネスの現場では契約締結後に契約条件が確定する場合や、契約締結後に契約条件が変更する場合に作成されるケースが多いようです。

「覚書」というタイトルの文書であることから、メモ程度の文書というイメージが強く正式な契約書ではないと思う人もいますが、契約書か否かは、文書のタイトルではなく文書の内容から判断されますので、覚書の内容から契約書であると判断されれば、覚書も契約書であり法的効力を持つこともありますし、印紙税の課税文書となることもあります。

(1)契約条件が契約締結後に確定する時

請負契約では、請け負った業務が開始しないと、実際の工数等が分からないということがよくあります。請け負った業務が開始した後に、当初見積もっていた業務全体の範囲や工数が変わることがありますし、報酬額も当初見積もっていた額より増えたり減ったりすることがあります。

そこで契約締結前に、覚書として「業務の範囲や工数、報酬額は別途協議のうえで定めるものとする」として、業務が開始して業務全体の範囲や工数が見えてきて報酬額の見積もりができるようになってから、業務全体の範囲や工数、報酬額について契約書を締結することがあります。
つまり、契約条件が契約締結後に確定する場合には、請負契約書とは別に「覚書」という契約書を作成するケースがあるということです。
このようなケースでは、業務の範囲や工数がどのように増減したのか、そしてそれによって報酬額が増えたのか減ったのかを文書で確認しておく必要があります。

(2)契約条件を契約締結後に変更する時

請負契約では、請け負った業務が開始した後に、当初見積もっていた業務全体の範囲や工数が変更されるケースがあります。そして、範囲や工数が変更によって報酬額も当初見積もっていた額より、増えたり減ったりすることがあります。
このような場合には、業務の範囲や工数がどのように増減したのか、そしてそれによって報酬額が増えたのか減ったのかを当事者間で文書を交わし確認しておく必要があります。
このように、契約条件を契約締結後に変更する場合にも、請負契約書とは別に「覚書」という契約書を作成することがあります。

覚書に印紙は必要か

これまでご紹介してきたように、覚書は文書のタイトルそのものは「契約書」ではありませんが、内容に「契約を申し込む意思表示」とそれに対する「承諾の意思表示」が記載されていて、当事者間でそれを確認し合っている内容になっていれば契約書となり、覚書の内容が「印紙税法」による「課税文書」となる場合には、印紙が必要となります。

(1)覚書が非課税文書なら印紙は不要

覚書の内容が委任契約であり、覚書の中に金額の記載がない場合には、その覚書は非課税文書となり、印紙は不要です。
また、文書の内容が「課税文書」である場合にも、記載された契約金額が1万円以下なら、印紙は不要です。

(2)覚書が電子契約なら印紙は不要

印紙税は、印紙税法に規定する課税文書の「作成」とは、「課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使すること」をいいます。したがって、電子メールに添付したPDFファイルやFAXによる契約書、電子契約書の取り交わしは「課税文書となるべき用紙等」に該当しないことから、印紙税は非課税です。
同様に、電子契約における電子ファイル(電子データ)での契約についても、「課税文書となるべき用紙等」ではないので、印紙税は非課税になります。

引用:国税庁「文書回答事例(別紙)」

(3)覚書が第1号文書に該当する場合の印紙税額

覚書の内容が、不動産の売買等に関する内容のもの、不動産の賃貸借契約の内容のもの、金銭の借用に関するもの、運送に関する契約のものである場合には、第1文書に該当し、金額に応じて印紙税の課税対象文書となります。

項目 内容
不動産の売買等に関する内容 不動産売買契約書
不動産交換契約書
不動産売渡証書など
不動産の賃貸借契約の内容 土地賃貸借契約書
土地賃料変更契約書など
金銭の借用に関する内容 金銭借用証書
金銭消費貸借契約書など
運送に関する契約のもの 運送契約書
貨物運送引受書など
記載された契約金額 税額
1万円未満のもの 非課税
10万円以下 200円
10万円を超え50万円以下のもの 400円
50万円を超え100万円以下のもの 1,000円
100万円を超え500万円以下のもの 2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの 2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの 6万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

参照:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」

(4)覚書が第2号文書に該当する場合の印紙税額

覚書の内容が、請負契約である場合には印紙税の課税文書となります。
請負契約は、印紙税の課税文書のうち「2号文書」にあたりますので、記載されている金額に応じて、印紙が必要となります。

項目 内容
工事の請負等に関する内容 工事請負契約書
工事注文請書

(注) 請負には、職業野球の選手、映画(演劇)の俳優(監督・演出家・プロデューサー)、プロボクサー、プロレスラー、音楽家、舞踊家、テレビジョン放送の演技者(演出家、プロデューサー)が、その者としての役務の提供を約することを内容とする契約など

物品加工に関する内容 物品加工注文請書など
広告、演劇等に関する内容 広告契約書
映画俳優専属契約書など
※請負には、職業野球の選手、映画(演劇)の俳優(監督・演出家・プロデューサー)、プロボクサー、プロレスラー、音楽家、舞踊家、テレビジョン放送の演技者(演出家、プロデューサー)が、その者としての役務の提供を約することを内容とする契約を含む。
請負金額変更に関する内容 請負金額変更契約書など
記載された契約金額 税額
1万円未満のもの 非課税
1万円以上100万円以下のもの 200円
100万円を超え200万円以下のもの 400円
200万円を超え300万円以下のもの 1,000円
300万円を超え500万円以下のもの 2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの 2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの 6万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

参照:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」

なお、印紙税は、課税文書に印紙を貼り消印をすることで完了します。

印紙を貼っていてもそれに消印がない場合には、印紙の額面相当額の過怠税がかかってしまいますので、必ず消印を行なうようにしましょう。
また、覚書の内容が請負契約等であるにもかかわらず印紙を貼らないと、その印紙税額とその額の2倍との合計金額の過怠税がかかってしまいますので、あわせて注意するようにしましょう。

(5)覚書の印紙税額を節税する方法

覚書には、そこに記載される契約金額に応じて印紙を貼ることになりますが、その時増加額や減少額が分かるように記載すると、印紙税を節税することができます。

・増加する場合
契約金額が増加する場合には、いくら増加したのかが明確に分かるような記載をすれば、その増加額が覚書の契約金額とみなされますので、それに応じた印紙を貼ることになります。
たとえば、増加額が2,000,000円であれば、印紙税は400円となります。

・減少する場合
契約金額が減少する場合には、「記載金額なし」とみなされて、印紙税額は200円で済みます。

※注意点
この時、増加した額、減少した額だけ記載をしてしまうと、その金額が契約金額となって、その額に応じた印紙が必要となってしまいます。
たとえば、「原契約書に定める報酬額を1,000万円に増加する」などと記載しても、「原契約」が何かの特定もありませんし、いくら増加したのかも分かりませんので、1,000万円が契約金額とみなされ、印紙税は1万円になってしまいます.

また、同じように減少する場合にも「原契約書に定める報酬を1,000万に減少する」と記載しても、1,000万円がまるまる契約金額とみなされますので、この場合も印紙税は1万円となってしまいますので、印紙代を節約したい時には注意しましょう。

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まとめ

以上、覚書の意味や、印紙が必要な理由、印紙税を節税する方法などについてご紹介しました。印紙税を納付する(収入印紙を貼る)ことが必要な文書は、契約書や領収書など印紙税額一覧表にまとめられていますが、文書のタイトルが契約書や領収書ではない場合でも、その文書の内容が契約書や領収書などである場合には、印紙を貼って消印して印紙税を納付しなければなりません。
後々のトラブルを避けるためにも、どの文書が課税文書なのかについては理解しておくようにしましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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