公開日:2021年09月09日
最終更新日:2024年06月28日
利益準備金とは利益剰余金の一項目で、会社の利益に関する活動に対して積み立てられる準備金のことです。
利益準備金は、貸借対照表の「純資産の部」のうち「株主資本」に表示されます。
利益準備金の豆知識
利益準備金は、資本準備金と合わせて法定準備金と呼ばれます。法定準備金は、債権者を保護するために会社法により企業に積み立てが義務付けられている準備金です。
企業が剰余金を株主に配当する際には、法務省令で定められた会社計算規則に基づいて計算された一定の額を利益準備金として積み立てることが義務となっています。この積み立ては、剰余金の配当を行うたびに行われる必要があります。企業は資本準備金と利益準備金を合わせて、資本金の4分の1に達するまで利益準備金を積み立てる必要があります。利益準備金が資本金の4分の1を超えると、超過分は株主総会の決議により利益剰余金として取り扱うことができます。
利益準備金とは、貸借対照表の純資産の部の勘定科目であり、利益剰余金の1つです。
そもそも準備金とは、貸借対照表の「純資産の部」の項目のうちの株主資本項目です。
準備金は、株式会社の財政的基礎を確保して債権者を保護する目的から、取り崩しには一定の要件が設けられています。
利益準備金は、このような準備金のうち会社の利益に関する活動に対して積み立てられる準備金であり、資本準備金と同様に、債権者保護のために社内に留保されるものです。
利益準備金は、貸借対照表の「純資産の部」において、利益剰余金(利益の内部留保の部分)の一項目として表示されます。
純資産の部の勘定科目
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先程ご紹介した「純資産の部」の勘定科目でも示したとおり、準備金には、資本準備金と利益準備金があります。
利益準備金と資本準備金は、ともに株主資本を構成する剰余金の一部であるという点や剰余金の配当時に法律に基づいて積立が強制されるという点など共通点があります。
しかし、資本準備金は、払込資本から積み立てられる準備金で、資本剰余金の一項目です。
一方、利益準備金は、企業活動の成果である留保利益が積み立てられる準備金であり、利益剰余金の一項目であるという点で異なります。
つまり、株主資本のうち、資本金、資本剰余金(資本準備金、その他資本剰余金)は「払込資本」であり、利益剰余金(利益準備金、その他利益剰余金)は、「留保利益」であるという点で大きく異なります。
準備金 | 利益準備金 | 利益としての性質を有する 利益剰余金の一項目 |
---|---|---|
資本準備金 |
資本としての性質を有する 資本剰余金の一項目 |
なお、利益準備金、資本準備金には、それぞれ以下の場合による積立によって構成されます。
利益準備金
①その他利益剰余金を減少させて準備金を計上する場合 |
資本準備金
①株主から払い込まれた金額のうち、資本金として計上しない株式払込剰余金が発生した場合 |
利益剰余金とは、利益の蓄積、つまり利益の内部留保としての性格をもつ部分です。
利益準備金は、この利益剰余金の一項目であり、利益剰余金は、①利益準備金と②その他利益剰余金に区分されます。
利益剰余金 | ①利益準備金 |
企業の利益のうち社内に内部留保すべきと規定されているもの |
---|---|---|
②その他利益剰余金 |
・○○積立金: 社外流出を防ぐために会社で任意に積み立てた金額 ・繰越利益剰余金: |
準備金の積立てについては、積立原資について、払込資本と留保利益の区別を厳密に区分することが必要になります。つまり、利益準備金は株主から払い込まれたものではないため、資本金に振り替えることはできません。
たとえば、設立時や増資時に株主から払い込まれた株式の発行価額のうち、2分の1までは資本金として計上しないことが認められますが、資本金として計上されなかった金額は、資本準備金として計上することが強制され、利益準備金に計上することはできません。
また、繰越利益剰余金を配当によって減少させる場合には、減少する剰余金の額の10分の1の額を資本準備金または利益準備金として、準備金合計額が資本金の4分の1に達するまで積立てを行う必要があります。
利益準備金は、株主総会の普通決議によって、取り崩すことができます。
しかし、債権者保護の観点から、減少する場合には債権者保護手続きとして債権者に対して公告および催告を行って、債権者が利益準備金の減少に対して、異議を申し立てる機会を与えなければなりません。
ただし、欠損てん補に充てるなどの事情があり、債権者保護の必要性がない場合には、必要ありません。
なお、利益準備金を積み立てるケースとは、以下のとおりです。
①その他利益剰余金からの振り替えによる積立て ②その他利益剰余金(繰越利益剰余金)の配当に伴う積立て |
その他利益剰余金とその他利益剰余金から配当された場合の資本準備金と利益準備金は、配当原資の割合に応じて計上します。
会社法においては、資本準備金と利益準備金については、株主総会の決議によって、剰余金の額を減少して準備金の額を増加させることができるとしています。ただし、利益剰余金の増加額はその他利益剰余金からの振替によるものに限定されています。
なお、剰余金の減少に伴って準備金が増加した場合については、株主総会決議により定めた効力発生日に効力が生じます。
A社は、令和3年6月の株主総会において、その他利益剰余金100を準備金に組み入れること、および効力発生日を令和3年6月30日とすることを決議した。
【令和3年6月30日】
※その他利益剰余金100を利益準備金に組み入れ、会計処理を行います。 |
配当に伴う準備金の積立ては、利益準備金についても資本準備金と同じように行われます。配当という会社財産の流出に伴う準備金であっても、払込資本と留保利益を明確に区分することが求められます。
なお、資本剰余金からの配当による資本準備金の積立て、利益剰余金からの配当である利益準備金の積立てのいずれにおいても、その限度額は資本金の4分の1とされていて、当該限度額を超過しないように注意する必要があります。
A社は、令和3年6月の株主総会において、以下の配当決議を行った。 ・その他資本剰余金からの配当額 200 ・繰越利益剰余金からの配当額 800 ・配当の効力発生日は令和3年6月30日とする。 ・配当を決議した期の資本金および準備金の金額は、資本金:1,000、資本準備金;100、利益準備金100とする。 【令和3年6月29日】
なお、各準備金の積立て額は、以下のとおり計算します。 250-資本準備金100-利益準備金100=50(※B) 積立限度額は、AとBの金額のうち低い方をとるため、50となります。 ・各準備金積立額の計算 |
以上、利益準備金の意味や資本準備金との違い、利益準備金の手続き・仕訳などについてご紹介しました。
利益準備金と資本準備金は、ともに純資産の部を構成する項目であり剰余金の一部でありますが、利益準備金が利益に属するものであり、資本準備金は資本に属するものであるため、明確に区別されます。
利益準備金は、会社が獲得した留保利益を原資とし、資本準備金は、株主からの払込資本を原資とする点で大きく異なります。
また、利益準備金を取り崩す時には、株主総会における決議や債権者保護手続きが必要になります。
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