企業会計原則|知っておきたい7つの基本ルール

公開日:2022年05月09日
最終更新日:2022年05月09日

この記事のポイント

  • 企業会計原則には、7つの一般原則が定められている。
  • 7つの一般原則は、会計処理にあたっての基本的な原則。
  • まずはこの7つの一般原則を理解した上で、その他の会計処理のルールを理解することが大切である。

 

企業会計原則には、①真実性の原則、②正規の簿記の原則、③資本取引・損益取引区分の原則、④明瞭性の原則、⑤継続性の原則、⑥保守主義の原則、⑦単一性の原則7つの一般原則が定められています。

企業会計原則の7つの原則

企業会計原則とは、企業会計の実務を行ううえでの慣習が発展したもののうち、一般的に公正妥当と認められたルールを要約し、財務諸表が適正かどうかを判断するための基準とするものをいいます。
これらの会計基準によって財務会計が行われることで、財務会計の世界に秩序が形成され、その結果、企業ごとに財務諸表を比較することが可能となります。

この企業会計原則には、下記の7つの一般原則が定められています。

①真実性の原則 真実の報告を提供しなければならない
②正規の簿記の原則 正確な会計帳簿を作成しなければならない
③資本取引・損益取引区分の原則 資本剰余金、利益剰余金は区分しなければならない
④明瞭性の原則 会計事実は明瞭に表示しなければならない
⑤継続性の原則 会計方針は継続適用しなければならない
⑥保守主義の原則 企業の健全性を高めるために会計は保守的に行わなければならない
⑦単一性の原則 異なる目的で財務諸表を作成する場合も、単一の会計記録に基づいて作成しなければならない

(1)真実性の原則

真実性の原則とは、「企業の財政状態および経営成績については、真実の報告を提供するものでなければならない」というルールであり、企業会計の最高規範ともいえます。
真実性の原則において求められる正しい報告によることで、真実性の原則以外の一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則を遵守することによって確保されます。

なお、真実性には「真実は1つである」という絶対的真実と、「真実は相対的である」という相対的真実という考え方がありますが、ここでいう「真実性」とは、「真実は相対的である」という相対的真実をあらわすと言われています。
なぜなら、会計処理においては複数の会計処理の選択が容認されていて、その選択によって違いが出てくることがあるからです。

(2)正規の簿記の原則

正規の簿記の原則とは、「すべての取引について、正確な会計帳簿を作成しなければならない」というルールです。
正規の簿記の原則は、一般的に網羅性、検証可能性、秩序性の3要件を満たすことを求めていると言われます。
網羅性とは、すべての取引がもれなく記録されていること、検証可能性とは、すべての帳簿記録が何らかの証票資料によって裏づけられていること、秩序性とは、帳簿記録が一定の規則によって配列され、相互に連携していることをいいます。
つまり、一定の要件に従った正確な会計帳簿を作成すること、かつこの正確な会計帳簿に基づき財務諸表を作成することが要請されているものと考えられ、この「一定の要件を備えた会計帳簿」とは、一般的には複式簿記による会計帳簿をいいます。

(3)資本取引・損益取引区分の原則

資本取引・損益取引区分の原則とは、資本取引と損益取引を明確に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金は混同してはならないというルールです。

・資本剰余金
資本取引により発生した金額のうち、資本金とならない金額。

・利益剰余金
資本取引ではなく会社の事業の運営により獲得できた利益のうち、配当などで支出されず企業内に残っている利益。

資本剰余金は、資本取引から生じた剰余金であり、利益剰余金は、損益取引から生じた剰余金、つまり利益の留保であることから、両者が混同されると企業の財政状態、経営成績が適正に示されないことになることから求められる原則です。

(4)明瞭性の原則

明瞭性の原則とは、財務諸表によって利害関係者に必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状態に関する判断を誤らせないようにしなければならないというルールです。
投資家などの企業の利害関係者は、財務諸表を意思決定の判断材料とします。
したがって、財務諸表は明瞭に開示、報告することが求められます。

明瞭正の原則は、貸借対照表および損益計算書の適切な記載だけでなく、重要な会計方針の開示、重要な後発事象の開示、注記事項の記載方法についても要求されます。

(5)継続性の原則

継続性の原則とは、処理の原則および手続きは毎期継続して適用し、みだりに変更してはならないというルールです。
この「継続性」については、1つの会計事実について2つ以上の会計処理の方法や手続きの選択適用が認められている時に問題となります。
たとえば、棚卸資産の評価方法は、平均法、先入先出法のように同一の会計事実について複数の会計処理が認められていて、そのなかから企業の実態に最も適した方法を選択することになっています。

つまり、企業が一度採用した会計処理の原則および手続きを毎期継続して適用しないと、同じ会計事実について異なる利益額が算出されることがあるということです。
処理方法を好きなように変更すると、財務諸表の期間比較が困難となりますし、利害関係者が正しい意思決定を行うことができなくなってしまいます。

そこで、一度選択した会計処理方法は毎期継続して適用することが強制され、正当な理由がある場合を除いては、変更することが認められないこととされています。
したがって、会計処理の原則および手続きを変更するときには、正当な理由が求められますし一定の基準が設けられています。

(6)保守主義の原則

保守主義の原則とは、企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適切に健全な会計処理をしなければならないというルールです。
利益はできるだけ慎重に計上し、損失が予想される場合には、可能な限り早くもらさず計上することが求められます。
すなわち、収益は確実なものだけ計上し、費用は早めに計上し、利益についてできるだけ控えめに計上しようという意味です。これは、企業の健全性を高めるうえで求められる会計処理です。

ただし、当然のことではありますが、利益を過少に表示するなど、過度に保守的な会計処理を行うことは、真実性の原則に反し認められません。

(7)単一性の原則

単一性の原則とは、株主総会提出や公告、融資を受けるために金融機関に提出するなど、さまざまな目的によって異なる形式の財務諸表を作成しなければならない場合には、信頼できる会計記録に基づいて作成されたものでなければならず、政策的な目的で表示をゆがめてはならないというルールです。
つまり、利用目的によって異なる形式で財務諸表を作成するときでも、内容は正規の簿記の原則に従って作成された単一の会計記録に基づかなければならないという原則であり、具体的には二重帳簿などの作成を禁止するものといえます。

まとめ

企業会計原則に規定されている会計上の7つの基本ルールは、会計処理におけるさまざまなルールの大原則となるものです。
法的拘束力を持つものではありませんが、企業会計原則を理解するうえでは必ず知っておかなければならないルールですから、まずはこの7つのルールを把握したうえで、その他の会計処理についてのルールを学んでいくことが大切です。

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