ソフトウエアの会計処理|耐用年数・勘定科目

公開日:2022年06月27日
最終更新日:2022年07月11日

この記事のポイント

  • ソフトウェアは、受注制作のソフトウェア、自社利用のソフトウェア、市場販売目的のソフトウェアと、制作目的から大きく3分類に区分される。
  • ソフトウェアの製作費が研究開発に該当する場合には、「研究開発費」として費用処理をする。
  • 自社利用のソフトウェアで一定の要件に該当するときは「無形固定資産」に計上する。

 

ソフトウェアは、受注制作のソフトウェア、自社利用のソフトウェア、市場販売目的のソフトウェアと、制作目的から大きく3分類に区分され、それぞれ会計処理が異なります。

ソフトウェアとは

ソフトウェアとは、ITシステム、販売ソフト、経理ソフト、ウィルスソフト、インフラネット構築費、ファイアーウォール費など、コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム、システム仕様書やフローチャート等の関連文書をいいます。

(1)ソフトウェアの勘定科目

ソフトウェアの製作費が研究開発に該当する場合には、「研究開発費」として処理をします。
研究開発に該当しないソフトウェアについては、以下のとおりとなります。

受注制作のソフトウェア
受注制作のソフトウェアは、ユーザーの要望に従って制作します。
受注制作のソフトウェアは、工事契約会計基準が適用されます(中小企業)。
「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」が適用される場合には、5つのステップにあてはめ、収益の認識がなされます。

自社利用のソフトウェア
そのソフトウェアの利用によって、将来の収益獲得または費用削減が確実であると認められる場合には、「無形固定資産」として処理をします。
収益獲得または費用削減が確実でない場合や認められない場合は、費用処理します。
自社利用のソフトウェアの償却は一般的には定額法です。耐用年数はソフトウェアの利用可能期間ですが、実務上は税務に合わせ5年です。

市場販売目的のソフトウェア
市場販売目的のソフトウェアは、不特定多数のユーザー向けに販売するために、汎用性を持たせ開発されたものですから、「ソフトウェア=製品」です。
したがって、ソフトウェア制作の研究開発の終了時点は、製品番号を付すなどして販売の意思が明らかにされた製品マスタ完成時点です。この時点までの制作活動は、研究開発であると考えられるので、ここまでに支出した費用は開発段階の費用として「研究開発費」として費用処理し、製品マスタ完成後の支出は無形固定資産として処理します。

(2)ソフトウェアの取得価額

ソフトウェアの取得価額は、購入対価(自社制作の場合は、製作に要した原価)に事業の用に供するために直接要した費用を加えたものです。

ソフトウェアの取得価額=購入対価+事業の用に供するために直接要した費用

この場合、そのソフトウェアの導入に必要とされる導入のための設定料、カスタマイズ料等の費用も取得原価とされます。
データのコンバート料やソフトウェアの操作のためのトレーニング料は、「支払手数料」で処理をします。

(3)ソフトウェア導入の途中で中間金を支払うときは

ソフトウェアの導入の際に、途中段階で中間金を支払うことがあります。
この支払いについては、無形固定資産の「ソフトウェア仮勘定」として処理をします。その後で、引渡し(検収)をもって「ソフトウェア」に振り替えます。

(4)ソフトウェアを除却するとき

今使用しているソフトウェアから他のソフトウェアに切り替える場合には、過去のデータと後日参照できるように、今使っているソフトウェアを除却、廃棄、消滅させないことがあります。
しかし、以下のような場合で今後ソフトウェアを業務で使用しないことが明らかであれば「固定資産除却損」として処理することができます。

①自社で利用するソフトウェアについて、そのデータ処理の対象となる業務が廃止された場合、またはハードウェアやOSの変更などによって、ほかのソフトウェアを利用することになった場合

②自社で開発した複写して販売するための原本となるソフトウェアについて、新製品の出現、バージョンアップなどによって、今後販売を行わないことが、社内稟議書、販売流通業者への通知などから明らかである場合

自社利用のソフトウェア

自社利用のソフトウェアを資産計上するためには、一定の条件があります。
これは、ソフトウェアが無形固定資産であり直接目で見えないことから、そのすべてを資産として計上するだけの価値があるかどうかを、明確に判断することができないからです。

そこで、自社利用のソフトウェアを資産計上できるのは、そのソフトウェアを利用することで「将来の収益獲得または費用削減が確実である」と認められるときに限られます。
将来の収益獲得または費用削減が確実であると認められない時は、資産計上できず費用処理を行います。

資産計上できる場合

借方 貸方
ソフトウェア 200,000 現金預金 200,000

資産計上できない場合

借方 貸方
開発費 200,000 現金預金 200,000

(1)自社利用のソフトウェアの取得

ソフトウェアを導入した際には、導入したままでは使うことができず、追加の設定作業が必要となるケースがよくあります。このような設定費用を外部業者に委託すると、本体価額以外に追加費用が必要となります。この追加費用はソフトウェアの取得価額に含めることとされています(ただし、これらの費用について重要性が乏しい時は、費用処理することができます)。

また、自社で過去に制作したソフトウェアを大幅に仕様変更して、新しいソフトウェアを制作することがあります。
このような大幅な変更の費用は、将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合には、購入ソフトウェアの価額と変更費用を合算して、無形固定資産として資産計上します。

一方、将来の収益獲得または費用削減が確実と認められない場合には、費用処理します。

「自社利用の販売ソフトを設定費用含め、220万円で導入した。」

借方 貸方
ソフトウェア 2,000,000 未払金 2,200,000
仮払消費税等 200,000

(2)自社利用のソフトウェアの償却

自社利用目的のソフトウェアの償却は、一般的には定額法によります。
耐用年数は、ソフトウェアの利用可能期間ですが、実務上は税務に合わせて5年です。

「自社利用のソフトウェア200万円を5年で償却する。」

借方 貸方
減価償却費 400,000 ソフトウェア 400,000

市場販売目的のソフトウェア

市場目的のソフトウェアを開発している会社にとっては、ソフトウェアが製品となります。
そして、ソフトウェア制作の研究開発が終わるのは、製品番号を付すなど、「販売の意思が明らかにされた製品マスタが完成した時点」です。
したがって、その時点までの制作活動は、研究開発と考えられるため、市場販売目的のソフトウェアは、開発段階の費用は「研究開発費」として費用処理します。
市場販売目的のソフトウェアを資産計上するには「将来お金を獲得できる」と言える段階、つまり「製品番号を付すなどして販売製品化の目途が立った」段階に至った時から、資産計上が認められます。

(1)市場販売目的のソフトウェアの開発

市場販売目的のソフトウェアは、販売の製品化の目途が立った段階から資産計上が認められ、それ以前の費用については、その投資が無事に実るとは限りませんので、研究開発段階の費用(研究開発費)として、発生時に費用処理します。
つまり、市場販売目的のソフトウェアは、プロセスの進行とともに資産性が高まることになります。

「市場販売目的でソフトウェアを開発し、1,320万円を支出した。このうち製品マスタの完成後の支出は220万円である。」

①開発段階

借方 貸方
研究開発費 10,000,000 未払金 11,000,000
仮払消費税等 1,000,000

②資産計上

借方 貸方
ソフトウェア 2,000,000 未払金 2,200,000
仮払消費税等 200,000

③償却

借方 貸方
減価償却費 666,667 ソフトウェア 666,667

(2)市場販売目的のソフトウェアの償却

製品マスタ完成後の支出は無形固定資産として処理して、見込販売数量に基づく償却方法その他合理的な方法で処理します。法人税法の定める償却方法(定額法・3年償却)を採用することもできます。
資産計上した金額は、減価償却を通じて製造原価となります。

「市場販売目的でソフトウェアを開発し、1,320万円を支出した。このうち製品マスタの完成後の支出は200万円である。定額法・耐用年数3年を採用し、償却する。」

借方 貸方
減価償却費 666,667 ソフトウェア 666,667

受注制作のソフトウェア

受注制作のソフトウェアは、ユーザーの要望に従って制作しますから、工事契約の会計処理に準じて処理をします。
工事契約というと、マンション工事などの建設業をイメージする人が多いと思いますが、「特定の顧客から注文を受け、その注文に従って制作して納品する」という受注制作のソフトウェアの特徴から、工事契約に準じるとされていたのです。

収益認識基準の適用によって、工事契約に関する会計基準は廃止されましたが、会計処理自体は大きく変わりません。
また、中小企業については、従来どおり企業会計原則等による会計処理が認められることとされています。

対象となる業務は、たとえばユーザーの業務プロセスの分析など成果物の提供と一体と見られるコンサルティング業務や、システム仕様書の作成、フローチャート等の関連文書の作成です。

(1)受注制作のソフトウェアの工事進行基準

工事の進捗部分について成果の確実性が認められる場合には「工事進行基準」が採用されます。
「成果の確実性が認められる場合」とは、以下の3要素について信頼性をもって見積もることができるものをいいます。

①工事収益総額 工事契約によって定められた、施行者が受け取る対価の総額
②工事原価総額 工事契約によって定められた、施行者の義務を果たすために支出した総額
③決算日における工事進捗度 決算日までに実施した工事について発生した工事原価が、工事原価総額に占める割合をもって決算日における工事進捗度とする方法として、「原価比例法」がある。

工事進行基準においては、工事進捗度に応じて売上高を計上します。
原価比例法では、まず決算日までに発生したコスト累計を把握し、工事原価総額の見積が変更になっていないかを検討します。
次に、これらから工事進捗度を算定して工事収益総額に乗じて、売上高を算定します。
プロジェクトの途中段階で売上高が計上されるという点が工事完成基準と大きく異なる点ですが、工事進行基準を適用した場合でも、売上高・売上原価の累積額は工事完成基準を適用した場合と一致することになります。

工事進行基準のプロジェクト損益計算書イメージ

1年目 2年目 3年目 合計
売上高 50 100 50 200
売上原価 30 75 45 150
利益 10 25 15 50

(2)受注制作のソフトウェアの工事完成基準

工事完成基準では、受注制作のソフトウェアが完成し、顧客への引渡しが完了した時点で売上高が計上されます。
コストについては、発生した時点で仕掛品として計上します。

工事完成基準のプロジェクト損益計算書イメージ

1年目 2年目 3年目 合計
売上高 0 0 0 200
売上原価 0 0 0 150
利益 0 0 0 50

(3)受注制作のソフトウェアの収益認識会計基準

収益認識会計基準では、まず「履行義務がいつ充足されるのか(収益が徐々に認識されるべきなのか、もしくは一時点で認識されるべきなのか)」を判定し、次に「履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができるか」を判定します。
そして、履行義務が一定の期間にわたって充足され、かつその進捗度を合理的に見積ることができる場合は、工事進行基準にあたる会計処理を行います。
履行義務が一時点と判定されると、工事完成基準にあたる会計処理を行います。

一定期間と判定された者の、進捗度を合理的に見積ることができない場合は、進捗度を合理的に見積ることができる時まで制作にかかった費用のうち回収できる額を収益として計上します。

たとえば、受注制作のソフトウェアの履行義務が一定の期間にわたると判断され、義務を果たした部分について、対価を受取る強制力があるという特約を締結していれば、進捗に伴い収益をするということになり、義務の履行を完了した部分については、代金を請求できると解釈されます。

まとめ

ソフトウェアは、、制作目的から「受注制作のソフトウェア」「自社利用のソフトウェア」「市場販売のソフトウェア」と3分類に区分され、それぞれ会計処理が定められています。また、「受注制作のソフトウェア」については、工事完成基準と工事進行基準があり、収益認識会計基準の適用に伴い、工事契約会計基準が廃止され、履行義務の充足をどう捉えるかがポイントとなります。
中小企業の会計処理については、従来どおり企業会計原則等による会計処理が認められることとされていますが、今後中小企業にも適用されることになったら、自社においてどのような影響が出るかについては、早めに税理士等に確認することをおすすめします。

参照:国税庁「「収益認識に関する会計基準」への対応について」

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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