公開日:2024年07月23日
最終更新日:2024年07月23日
従来、売上割戻しは売上取引の修正として扱い、売上から直接控除していました。しかし、収益認識に関する会計基準では、商品の販売時に予測される売上割戻し額を「返金負債」として計上し、その残額を「売上」として計上する方法が求められます。
返金負債は、顧客から対価を受け取っているものの、その対価の一部または全部を顧客に返金する可能性がある場合に認識されるものです。
従来は、返品が見込まれる場合には過去の返品実積率などに基づいて「返品調整引当金」が計上されていました。しかし、収益認識に関する会計基準においては、返品権のついた商品や製品、返金条件付で提供されるサービスを販売する場合には、その予想返金額を「返金負債」として処理し、予測される返金額を差し引いた額が売上として計上されます。
収益認識に関する会計基準(以下「収益認識基準」)とは、企業が収益をどのように認識し、報告するかを定めた基準です。国際的な基準としては、国際財務報告基準(IFRS)があります。これに基づき、企業は収益を5つのステップで認識します。まず、①顧客との契約を識別し、次に②契約内の履行義務を識別します。その後、③取引価格を決定し、④履行義務に対して取引価格を配分します。最後に、⑤履行義務を満たすごとに収益を認識します。
収益認識基準においては、返品権のついた商品や製品、返金条件付で提供するサービスについては、以下のような会計処理を行います。
①収益の計上 返品されると見込まれる商品の対価を除いた金額で収益を計上します。 ②返金負債の計上 ③資産の認識 |
返金負債に該当するものとしては、以下のようなものがあります。
・売上割戻しの予想計上 ・売上割戻しの取消 ・リベートの予想計上 ・リベートの取消 ・売上割戻しの実施 ・リベートの実施 |
返金負債と契約負債は、共に企業の負債項目ですが、性質や計上基準には違いがあります。返金負債は、顧客に対する将来の返金義務を示すもので、契約負債は、たとえば顧客から前受金を受け取ったが、まだ提供していない商品やサービスに対する義務を示します(前払いで受け取ったサブスクリプション料金や、将来提供予定のサービスに対する前受金など)。つまり、契約負債は将来的に収益として認識される予定の金額であり、企業が履行すべき義務を反映しています。返金負債は顧客に返金する義務を示し、契約負債は将来的な履行義務を示す点で異なります。
返品権付取引を行ったときは、収益認識基準では、以下のような処理仕訳を行います。
「商品100個を1個1万円(原価6,000円)で販売した。2週間以内であれば返品に応じ全額返金に応じることとしている。100個のうち5個は返品されるものと見込んでいる。」
①売上計上時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 1,100,000 | 売上 | 950,000 |
返金負債 | 50,000 | ||
仮受消費税等 | 100,000 |
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売上原価 | 570,000 | 商品 | 600,000 |
返品資産 | 30,000 |
②4個返品があった場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
返品負債 | 40,000 | 現金 | 44,000 |
仮受消費税等 | 4,000 |
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売上原価 | 24,000 | 返品資産 | 24,000 |
③見込んでいた5個の返品のうち、1個は返品されなかった場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
返金負債 | 10,000 | 売上 | 10,000 |
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売上原価 | 6,000 | 返金資産 | 6,000 |
出展:勘定科目の実務処理ハンドブック(セルバ出版)P190
返金負債とは、顧客から受け取った前受金等に対して、将来的に返金義務が生じる可能性がある負債のことを指します。返金負債は企業の財務状況に影響を与えるため、正確に計上し管理することが重要であり、企業のキャッシュフローや資金繰りに影響を与える可能性があります。
税理士に相談すれば返金負債を正確に計上し、財務諸表が正確に作成されるようサポートしてくれるので、企業の財務状況が正確に反映されます。返金負債の管理は企業のキャッシュフローに影響を与えるため、税理士のアドバイスを受けることで、適切な資金管理や経営判断が行いやすくなります。
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