公開日:2019年11月26日
最終更新日:2023年09月22日
合名会社、合資会社、合同会社の3つを総称して「持分会社」といいます。
株式会社と持分会社の最大の違いは、「出資者と経営者の関係」にあります。
株式会社は、株主が経営者を選任するのに対して、持分会社は出資者を「社員」と呼び、社員が自ら会社の経営を行います。
持分会社は、会社法で新たに設けられた名称で、合名会社、合資会社、合同会社の3つの種類の会社の総称です。
会社法以前の商法では、会社の類型は、株式会社、合名会社、合資会社だけが定められていました(有限会社は、有限会社法)。
その後、会社法で合同会社という形態が新設され、この合同会社と合名会社、合資会社を合わせて「持分会社」と呼ぶようになりました。
持分会社に該当するのは、合名会社、合資会社、合同会社です。
合名会社 会社の債権者に対して直接連帯・無限の責任を負う社員(無限責任社員)だけからなる会社です。 合資会社 合同会社 |
合名会社 | 合資会社 | 合同会社 | |
無限責任 | 〇 | 〇 | 有限責任 | 〇 | 〇 |
持分会社の設立手続きは非常に簡略で、社員になろうとする人が定款を作成して本店所在地で登記をすると成立します。1人会社も認められますし(合資会社は2人以上)、法人も社員となることができます。
まず持分会社の定款の絶対的記載事項は、以下の6つです。
株式会社と違い、公証人による認証は不要です。
①目的 ②商号 ③本店の所在地 ④社員の氏名または名称および住所 ⑤社員が無限責任社員または有限責任社員のいずれであるか(合名会社は全員が無限責任社員、合同会社は全員が有限責任社員と記載) ⑥社員の出資の目的およびその価額またはその評価の標準 |
また、設立の登記事項については、目的、商号、本店・支店の所在地などがあります。そのうえで、合名・合資会社については社員の氏名または名称及び住所があり(合資会社のみ社員の有限責任・無限責任を登記する)、合同会社では資本金等の額も挙げられます。
持分会社には、「無限責任」の社員がいる場合があります。
無限社員とは、会社の債務を会社の資産で返済しきれない場合には、個人の資産で返済しなければならないという重い責任のことです。
株式会社の株主には、このような重い責任はなく、会社にもし多額の借金があっても、株主は出資額を超えて返済する義務はありません。
しかし、合資会社には無限責任の社員と出資した分だけ責任を持つ有限責任の社員の両方が存在しますし、合名会社は、個人の資産まで無限責任を持つ社員だけです。
合同会社は、株式会社と同様、有限責任の出資者=社員です。
持分会社の社員はすべて持分を有していますが、持分には①社員たる資格・地位と②会社財産について有する分け前という意味の持分の2つの意味があります。社員は、その持分の一部または全部を譲渡することができますが、一定の手続きが必要になります。
なお、持分会社は持分の一部譲渡によって新しい社員を加入することができるほか、新たに社員を加入させることもできます。
社員は、定款の絶対的記載事項であり、その変動があった場合には定款を変更する必要があります。また、入社するためには総社員の同意が必要です。
一方、退社とは、会社存立中に社員がその持分を絶対的に喪失することをいいます。退社には「任意退社」と「法定退社」があります。
任意退社においては、6カ月の予告等が求められ、法定退社においては定款所定の事由、総社員の同意、死亡、破産手続開始決定、後見開始の審判、除名等によって行われます。
株式会社は出資者と経営者が別人でもOKですが、持分会社は出資者が「社員」となります。
そして、持分会社は、社員の多数決により意思決定をします。
株式会社の株主が、保有する株式の数に応じて株主総会の議決権を与えられるのに対して、持分会社は持分に関係なく、社員の頭数で意思決定を行い、社員が複数いる場合には、原則として過半数で決定を行います。
利益や損失の分配は、各社員の出資額に応じて決めますが、定款で定めれば、自由に変更することもできます。
つまり、持分会社は、会社設立時の定款の内容も、出資者である社員が決めることができ、経営も原則的に社員が行いますので、社員の意思を反映しやすいというのがメリットです。
互いに信頼関係がある少人数が集まって設立・運営する会社が、持分会社のイメージです。
一方、株式会社はお金を出す人(株主)と、経営を行う人(役員)が別であるため、経営の小回りが利かないという面があります(ただし株式会社も、株主と役員が同じ人がなることはできます)。
①内部関係が自由で、定款自治(会社の意思決定の機関設計、重要事項の決定方法、手続など)が広く許容されています。
②株式会社と比較して設立手続きが簡単で設立手続きも安価に抑えることができます(株式会社の設立費用:24万円~、合同会社の設立費用:6万円~)。 ③「人的信頼関係と社員の個性」が重視されるので、持分の譲渡が厳しく制限されています。 |
持分会社は、内部関係が比較的自由で、株式会社と比較すると設立手続きが簡単であるなどのメリットがある反面、株式や新株予約権などの発行ができない、信用力に劣るなどのデメリットがあります。
持分会社は、小規模の事業を行う場合には向いていますが、株式や新株予約権を発行することができないので、株式会社と比較すると、将来的に役員を増やしたり事業を拡大したりしづらいというデメリットがあります。
①持分会社は、株式や新株予約などの発行ができません(社債は可能)。
②決算報告の必要がないので情報開示が弱く、チェック・コントロール機能が乏しいため信用力に劣る側面があります。 |
持分会社は、所有と経営が一致している会社のことで、合名会社、合資会社、合同会社のことです。
持分会社は、出資者がお金を出すだけでなく業務も行います。
ただ、この3つの会社の社員は有限責任を負うか、無限責任を負うかという違いがあります。
持分会社のひとつである「合名会社」は、出資者全員が無限責任を負います。
合名会社の出資者のことを無限責任社員といい、万が一、会社が破産などをすると債権者に対して個人の全財産を投げ打ち、会社の借金を支払わなければなりません。
過去の判例によると、無限責任社員の借金の弁済責任は、会社の債務が消滅しない限り事項も成立しないという大変厳しいものとなっています。
合名会社は、これだけ厳しい責任を負うのですから、会社の経営を他人に任せておくことはできません。したがって、合名会社の出資者は全員が会社の業務を執行する代表者になります。
合資会社には、無限責任社員と有限責任社員があり、合名会社と比べると、より会社の所有と経営の分離が進んでいるといえます。
無限責任社員は、中心となって会社を興した人がなり、合名会社と同じ責任を負い会社の業務を執行します。したがって、会社が破産すれば債権者に対して個人の全財産を投げ打ってでも、会社の借金を支払う必要があります。
有限責任社員は、スポンサーとして資金提供をする人で、会社が資本金以上の損失を出した場合でも、自分が出資した金額以上の責任は負う必要はありません。つまり、会社の債権者に対しても自己の財産を投げ打ってまで弁済をする必要もないということになります。
合同会社は、全員が有限責任社員です。
したがって、会社が破産などしても社員は自分が出資した金額の範囲内で責任をとればよいということになります。
合同会社も出資者全員が会社を代表して業務を執行しますが、社員が複数いる場合には、株式会社と同じように定款で代表者を定めることもできます。
合同会社は「日本版LLC」と呼ばれ、株式会社に限りなく近くさらに会社の設立費用も安く済むので、最近増えている会社形態です。
合同会社は、株式会社のように証券市場で上場することができないので、株式会社のような大規模な資金調達は難しいという側面がありますが、事業が軌道に乗って株式会社にしたくなった時には、いつでも株式会社に変更できることから、今後設立件数はますます増えると予想されています。
以上、持分会社の意味や株式会社との違い、持分会社のメリット・デメリットについてご紹介しました。
持分会社は、株式会社と比較すると設立にかかる費用も期間も半分ほどで済み、定款による自治運営(定款自治)が可能なので、柔軟な期間設計・損益分配が可能となるなど、多くのメリットがあります。
一方、無限責任社員となると、会社が倒産すると会社の債務を個人財産で返済しなければならないなどのデメリットもあります。
会社を設立する場合には、これらのメリット・デメリットについて十分理解し、事業の内容や個々の状況に合致した会社形態を選択するようにしましょう。
会社設立については、税理士に相談すれば開業届の手続きを含め、会社設立時から検討しておきたい節税対策や資金調達などについて相談することもできます。
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