公開日:2019年04月12日
最終更新日:2022年06月14日
NPO法人は、営利目的でない事業については法人税や住民税の法人税割、事業税は課せられません。また、設立する際の登録免許税などもかかりません。
ただし、収益事業(物品販売業や製造業など、法人税法施行令の34業種)を行っていれば課税対象になります。
しかし、だからといって収益事業を行ったら必ず課税対象になるのか、というとそういうことでもなく、たとえば団体の本来の活動目的のための収益事業であれば、課税されないこともあります。
NPO法人は、収益事業の所得のみに法人税が課されます。
法人住民税は、すべてのNPO法人に課税されますが、法人税法上の収益を行っていない場合には、法人住民税の減免措置があります。
NPO法人の法人税は、収益事業を行う場合のみ課税されます。
収益事業に該当するかどうかの要件は、以下の3点から考慮されます(※後述)。
①34業種のいずれかに該当する場合 ②継続的に事業を行っている場合 ③事業場を設けて行っている場合 |
収益事業の課税所得が赤字であれば法人税額は発生しませんが、申告は必要です。収益事業を開始した際に、収益事業開始届出書を税務署へ提出し、都税事務所や市町村にも、その旨届け出る必要があります。なお、税務署へは、同時に青色申告の承認申請も行うことをおすすめします。最大10年間の赤字の繰り越しが認められるからです。
法人住民税とは、都道府県または市町村に事務所や事業所などがある法人に課される税金です。
法人住民税は、収益事業をしていなくても、法人になっただけで発生する税金ですから、NPO法人も、原則として設立後に都税事務所や市町村へ法人設立・設置届出書を提出して、法人住民税の課税対象となります。
ただし、NPO法人が収益事業を行わない場合には、ほとんどの自治体で法人住民税を減免しています。減免措置を受けるためには、減免申請書が必要となることが多いので、かならず減免申請書を提出しましょう。申請書や手続きの詳細については、各自治体に確認して下さい。
NPO法人の有給の職員へ支払う給与や、NPO法人のスタッフ等の原稿料や講演料等、NPO法人の協力者への報酬を支払う際には、所得税の源泉徴収が必要です。
また、給与を支払う職員の住民税について特別徴収を選択した場合は、その徴収を行うことも必要です。
※特別徴収とは 住民税の納付方法には、給与所得者の「特別徴収」とそれ以外の「普通徴収」の2つがあります。 普通徴収とは、市区町村から送られてきた納税通知書に基づいて納付する方法です。 一方「特別徴収」の場合には、勤務先のNPO法人や会社が毎月の給与の支払の際に住民税額を差し引いて、代わりに市区町村に納付する方法です。 |
消費税は、物やサービスを消費した人が負担する税金です。商品などが販売されるたびに販売価格に上乗せされていて、最終的に税を負担するのは消費者です。そして、事業者は「預かった消費税」と「支払った消費税」の差額を税務署へ納付しなければならないことになっています。
消費税は誰もが負担する税金であり、「預かった消費税」と「支払った消費税」の差額ですから、NPO法人でも、課税取引を行っていれば納税の義務があります。
しかし、消費税には基準期間(2年前)の課税売上が1,000万円以下であれば免税となる措置があります。
したがって、課税売上が1,000万円以下であるNPO法人は、消費税は免税されます。
免税点を超える場合には、税務署に各種の届出を行う必要がありますので、税理士に確認し適切な届出を行うようにしましょう。
相続税・贈与税は、いずれも個人から個人への財産の移転に対して、財産を受け取った側に課税する税金です。したがって、NPO「法人」が遺贈や贈与を受けても、原則として相続税・贈与税が課税されることはありません。
ただし、贈与を受けたNPO法人が、贈与者本人(贈った人)や贈与者親族(贈った人の親族)に特別の経済的利益を与えたといった特別な事情がある場合には、贈与者の税負担を不当に減少させると認められ、相続税・贈与税が課税されることがあります。なお、固定資産購入のための補助金・助成金・寄付金等について、相続税・贈与税が課税されることはありません。
NPO法人が発行する領収証には、たとえその領収書が収益事業に関する領収書であっても、印紙を貼る必要はありません(金額に関わりません)。これは、NPO法人の定款についても同様に非課税です。しかし、NPO法人が締結する契約書については、印紙税の免除の規定がないので、印紙の貼付が必要となります。
なお、NPO法人の法人登記に関する登録免許税は免除されますが、NPO法人の不動産登記については、登録免許税が課税されます。
NPO法人は、収益事業の所得のみに法人税が課されます。
収益事業に該当するかどうかの要件は、以下の3点を考慮され、要件全てに該当する場合に、収益事業とみなされます。
【収益事業の要件】 ①政令で定める34事業としての性質を有する ②継続して行われる規模である ③事業場を設けて行われる規模である |
収益事業の要件のうち、要件①の「政令で定める34事業」については、対象事業(34業種)が限定列挙されています。そのため、列挙されている事業に該当しない場合には収益事業とはなりません。
NPO法人については、本来の目的のために行う事業と、それに充てる資金を得るためだけに行うその他事業に分けますが、法人税法で定義する収益事業は、この目的とは全く関係ありません。たとえ公益事業であっても、要件に該当すれば法人税の課税対象となることもあります。「公益事業なら法人税はかからない」というイメージを持っている人もいますので、注意が必要です。
1 | 物品販売業 | 13 | 写真業 | 25 | 美容業 |
2 | 不動産販売業 | 14 | 席貸業 | 26 | 興行業 |
3 | 金銭貸付業 | 15 | 旅館業 | 27 | 遊技所業 |
4 | 物品貸付業 | 16 | 料理飲食業 | 28 | 遊覧所業 |
5 | 不動産貸付業 | 17 | 周旋業 | 29 | 医療保健業 |
6 | 製造業 | 18 | 代理業 | 30 | 技芸教授業 |
7 | 通信業 | 19 | 仲立業 | 31 | 駐車場業 |
8 | 運送業 | 20 | 問屋業 | 32 | 信用保証業 |
9 | 倉庫業 | 21 | 鉱業 | 33 | 無体財産権提供業 |
10 | 請負業 | 22 | 土石採取業 | 34 | 労働者派遣業 |
11 | 印刷業 | 23 | 浴場業 | ||
12 | 出版業 | 24 | 理容業 |
収益事業の要件のうち、要件②の「継続的に事業を行っている場合」とは、各事業年度の全期間を通じて行われるものの他、事業の性質上、全体として継続性があると認められる事業も含まれます。
「準備期間が相当長期にわたる事業」「定期的または不定期に反復して行われる事業」は、継続的に事業を行っていると認められます。
収益事業の要件のうち、要件③の「事業場を設けて行っている場合」とは、常設の店舗や事務所がある場合や、必要に応じて随時設置されるもの、既存設備を利用して事業活動を含むものとされています。
ここで言う「事業場」とは、事業を行うための物的施設を指していますが、移動式のものや既存の設備を利用して行われるものも事業場に該当すると見られます。
前述した34の対象業種に該当していても、障がい者や高齢者等が事業に従事する者の半分以上を占め、かつ、その事業が生活の保護に寄与していると認められる時には、収益事業から除外されます。
また、NPO法人が行っている業務が、法令の規定や行政官庁の指導、当該業務に関する規則、規約もしくは契約に基づき、その受ける対価が実費を超えないことが明らかな事業についても、収益事業の課税対象とはなりません。
この辺りは税務署の裁量次第で判断が異なるケースもあります。税理士等に相談し、どのような場合に収益事業となるのか、納税義務が発生するのかについて理解しておくことが必要です。
法人税法では「収益事業から生ずる所得に関する経理と収益事業以外の事業から生ずる所得に関する経理とを区分して行わなければならない」と規定されています。
そして、NPO法では「その他の事業に関する会計は、当該特定非営利活動法人の行う特定非営利活動に係る事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない」と規定されています。
それぞれは定義が異なることから、NPO法人では、一般企業より複雑な管理が求められます。
さらに、法人税や消費税の確定申告は、作業も煩雑となります。
不明点や、必要な申請、求められる管理については、必ず税理士に確認してアドバイスを受けることをおすすめします。
決算期の設定は、活動の繁忙期とずれるように設定し、税理士のサポートを受けながら計画をたてて準備をするとよいでしょう。
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