公開日:2021年08月20日
最終更新日:2024年02月13日
販管費(販売費及び一般管理費)は、損益計算書の売上総利益のすぐ下に表示されるものです。
会社が利益を獲得するためには、売上原価以外にも、人件費や広告宣伝費、交際費、水道光熱費、地代家賃などさまざまな費用がかかります。
販管費は、これらの売上原価以外の費用の総称で「営業費」と呼ばれることもあります。
販管費の豆知識
販管費とは、商品やサービスを販売したり本社を管理するための諸費用のことです。販売費及び一般管理費を略して販管費と呼ばれます。
販管費は、売上原価のように売上高に直接対応するものとして捉えることが難しいため、これらの費用が発生した事業年度の費用として認識されます。また、販管費についての具体的な勘定科目は、原則として会社に任されています。これは、販管費の科目が業種や企業の規模などの実体によって決まるもので、一律に決めることが難しいためです。
損益計算書の「営業利益」は、「売上総利益」から販管費を差し引いて求めますから、販管費でムダがあると営業利益を残せなくなります。
利益体質の会社とは、付加価値が高く優れた商品やサービスを扱うとともに、できるだけコスト削減に努めている会社です。
したがって、営業利益をアップさせるためには、売上総利益を確保するだけでなく、販管費を科目ごとに管理して削減できる余地がないか常にチェックすることが大切です。
販売費及び一般管理費とは、「販売費」と「一般管理費」がひとつになったもので、略して「販管費」と呼ばれます。
販売費及び一般管理費のうち、「販売費」は、商品や製品の販売業務に関して発生する費用のことで、営業部門の費用のことです。
そして「一般管理費」は管理業務に関連して発生する費用のことです。
販売費 営業職や販売職の給与手当 営業にかかる旅費交通費、通信費 支払運賃 広告宣伝費 販売手数料 など |
一般管理費 事務職などの給与手当 役員報酬 福利厚生費 事務にかかる減価償却費 消耗品費 交際費 など |
販管費の科目分類については、財務諸表等規則において「適当と認められる費用」とだけ規定されていて、具体的な勘定科目については会社の自由とされています。
ただし、一度決めた勘定科目は継続して使用することが大切です。継続して使用しないと、その勘定科目について前年比較などができなくなってしまうからです。
「販売費」は営業部門に関する費用で、「一般管理費」は管理業務に関する費用ですが、両者は厳密に区分することは実務上難しいことも多いものです。そこで損益計算書では、「販売費及び一般管理費」と一括して表示されています。
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損益計算書とは、収益と費用を対応させて記載し、それらの差額としての期間損益を報告するための計算書です。
収益から費用を差し引いたものが利益であり、この利益を5つに区分して上から順番に費用を差し引いて、「どのように利益をあげたのか」が分かる仕組みになっています。
収益 - 費用 = 利益 |
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売上高から売上原価を差し引いた利益は、①売上総利益です。
そして、この売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いたものが、②営業利益です。営業利益は、会社の本業である営業活動による儲けを表示します。
②営業利益に受取利息、受取配当金などの営業外収益をプラスし、銀行からの借入金に対する支払利子など営業外費用をマイナスしたものが③経常利益で、会社の経常的な活動による利益です。
③経常利益に臨時的に発生する特別利益、特別損失をプラスマイナスした利益が④税引前当期純利益です。
最後に④税引前当期純利益から法人税や事業税などの税金を差し引いたのが、⑤当期純利益で1年間の最終利益を表示します。
このように損益計算書では、企業活動の種類によって得られた利益を段階的にあらわすとともに、費用を発生原因別に区分して表示し、どのように利益あるいは損失を出しているのかといった、詳細な情報を読みとることができるようになっています。
販売費及び一般管理費は、営業活動や一般管理事務によって発生した費用であるのに対して、売上原価とは、簡単にいえば小売業の場合の商品の仕入にかかった費用のことをいいます。
それでは、なぜ販売費及び一般管理費と売上原価を別々に表示しているのでしょうか。
この2つの費用を区別して表示する理由は、損益計算書が売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益といった各段階による損益を正しく表示することを目的としているからであり、発生原因別に区分された費用を把握することができるようにするためです。
また財務諸表規則では、費用や収益について、以下に掲げる項目を示す名称を付した科目に分類して記載しなければならないとしています。
①売上高 ②売上原価 ③販売費及び一般管理費 ④営業外収益 ⑤営業外費用 ⑥特別利益 ⑦特別損益 |
営業利益は、売上総利益(売上高-売上原価)から販管費を差し引いた利益ですから、販管費が多ければ営業利益は少なくなってしまいます。
売上総利益(売上高-売上原価) - 販売費及び一般管理費 = 営業利益 |
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通常、売上が少なければ売上原価もそれに比例して少なくなりますが、販管費は売上があろうがなかろうが、一定の額で発生します。
したがって、売上総利益より販管費の方が大きくなれば、営業利益はマイナスになってしまいます。
販管費の勘定科目をどのようにつけて、どの費用をどの勘定科目にあてるのかについては会社に任されています。
たとえば、ガソリン代を「交通費」に入れても「車両費」に入れてもよいわけです。ただし、特別な名称をつけて混乱を招くようなことは避けるべきです。
また同じ費用については、同じ勘定科目を継続して使用することも大切です。
販管費を適切に管理し改善するためには前年比較等が必要ですが、同じ勘定科目を使用し続けないと、正しい管理ができなくなってしまいます。
以下に一般的な販管費の勘定科目を記載しますので、参考にしてください。
勘定科目 | 内容 |
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役員報酬 | 取締役、監査役に対する報酬 |
従業員給与 | 従業員に対する給与、賃金、各種手当 |
賞与 | 従業員に対するボーナス |
法定福利費 | 会社が負担する健康保険料、厚生年金保険料などの社会保険料など |
福利厚生費 | 従業員に対する慰安などを目的とした費用 |
販売手数料 | 販売促進等お目的として支出される手数料 |
広告宣伝費 | 不特定多数の人に対する宣伝効果を目的としてなされる商品、製品、サービスの広告、宣伝費用 |
旅費交通費 | 通勤や取引先との打ち合わせするための交通費、業務に必要な出張旅費など |
会議費 | 会議用のお茶、菓子、弁当、会場使用料、取引先との打ち合わせ費用 |
接待交際費 | 取引先など事業に関係のある人に対する接待、慰安、贈答などのための費用 |
通信費 | 切手、はがき、電話など |
消耗品費 | 事務用品など |
修繕費 | 有形固定資産の維持補修のための費用 |
地代家賃 | 建物、事務所、土地の賃借のための費用 |
貸倒損失 | 債務者の倒産などによって、売掛債権が回収不能となったために生じる損失 |
租税公課 | 印紙税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税など (法人税、法人住民税、事業税の所得割は含まれない) |
減価償却費 | 有形固定資産の減価償却費用 |
販管費は、営業利益に大きな影響を与えることから、適切に管理することが必要です。販管費は業種によってかなり違いがあることから、同業他社の販管費の占める割合と比較して、多すぎるようであれば改善策を検討しましょう。
売上高販管費率 = 販管費の合計売上高 × 100 |
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業種 | 売上高に占める販管費の割合 |
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建設業 | 17.6% |
製造業 | 18.3% |
情報通信業 | 39.8% |
小売業 | 29.1% |
不動産業,物品賃貸業 | 38.4% |
宿泊業,飲食サービス業 | 63.0% |
販管費を適切に管理することは、営業利益を増やすためにも大変重要です。
営業利益を増やすためには、売上原価の削減を検討することも必要ですが、売上原価を無理に削減すると、不良品の増加などかえってコストアップにつながることがあります。
そこで、販管費の各勘定科目を前年、前々年と比較して割合を確認し、増えているようであれば見直し、割合の大きい科目があれば削減できないかを細かく検討するようにしましょう。
売上高販管費率とは、売上高に対する販管費の比率で、下記の計算式で計算することができます。
売上高販管費率 = 販管費の合計売上高 × 100 |
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売上高販管費率は、勘定科目ごとに対売上高と金額の推移をチェックすることで、勘定科目ごとの課題をチェックすることができます。
支店や営業現場においては、当初の予算を消化しないと損だという意識があることから、売上がダウンしているのに販管費だけが増えることがあります。
もし特別な理由がないのに、前期より10%以上も金額が増加している勘定科目がある場合には、注意が必要です。
できれば、月次決算ペースで細かく調査することが大切です。
人件費は、販管費のなかでも最も割合が大きいものです。また、人件費は売上高の増減によって変動するものではなく、固定的に発生します。
人を雇用すれば、給与や賃金、報酬だけでなく、通勤手当や社会保険料などの会社負担分などさまざまな費用が発生します。
たとえば、月給30万円の従業員を雇用すれば、社会保険料や退職金の引当額、福利厚生費などの費用が別途かかりますから、実際には月額約50万円近い費用負担となるのです。
しかし、業績が悪化し売上高がダウンしたからといって、給料や賞与などを一方的に引き下げることは許されません。したがってその他の販管費を見直し、労働生産性を高めるなどして、1人当たりの人件費を上げることができるよう、検討しましょう。
地代家賃は、削減できる可能性が高い勘定科目です。
テナント料は土地、建物、立地、周辺環境、同居テナントの質などによって決定されますが、建物自体は日々老朽化していることから、テナント料が下がる可能性があります。
そこで適正賃料を算出して、オーナーと交渉できないか検討してみましょう。
なかには、データをもとに数値的に適正賃料を算出して交渉まで行ってくれる会社もあります。依頼料を考えると「コストがかかる」と思うかもしれませんが、テナント料は人件費の次に大きなコストです。このような会社を活用することも、ひとつの手です。
通信費もコストカットの対象になります。
まずに考えなければならないのが、現在の利用状況の確認です。
携帯電話にムダなオプションはついていないのか、料金プランは利用状況と合致しているのか、メールを使用していないのにメールオプションがついていないかなど、細かく内容をチェックします。契約時の条件のままプランが見直されていないことも多いのですが、これらのプランを見直すだけでも、料金が大きく変わることがあります。
また、同一法人名義であれば従業員間通話無料オプションがないか、あわせて検討しましょう。
業者側が最適なプランを提案してくれるとは限らないので、細かいプランの内容については、自ら確認するべきです。
事務用品費は、ひとつひとつの単価はそれほどでもないことから軽視しがちですが、ロットとなれば大きな金額になります。
多くの企業がカタログ通販を利用していますが、一度その業者で定着してしまうと、その後業者の見直しをしない会社があります。
しかし、通販大手の代理店は値引き競争を行っています。上手に活用してコストダウンを図ることはできないか検討しましょう。
たとえわずかなコストダウンでも、年間で見れば大きな成果につながることがあります。
販売員から勧められるままに生命保険や損害保険に加入しているケースが多いかと思いますが、今一度加入している保険の内容が妥当なのかを確認してみましょう。
最近は、複数の保険商品から最適な商品を勧めてくれる会社もあります。このような会社を活用して、最適な保険契約を選択するようにしましょう。
また、保険料をクレジット払いすれば、ポイントが貯まります。保険料は額が大きくポイント数も期待できるので、払込方法についても見直しをしてみましょう。
テレビCM、新聞広告、ネット広告などの広告宣伝費も、コストカットしやすい勘定科目です。
広告宣伝費は、担当が決まっていてルーチン業務になっていることも多いのですが、こまめに費用対効果を検証してそれほど効果がないものについては、削減を検討しましょう。
また、本当に必要な広告なのか検討するとともに、最適な媒体なのかについて常に意識して、費用対効果をしっかり意識しましょう。仮に広告の対象がずれていれば、その広告宣伝費は全くのムダになってしまうからです。
以上、販管費の意味や損益計算書での表示、販管費に該当する勘定科目、販管費の削減方法などについてご紹介しました。
創業から2、3年であれば、売上に対する販管費がかかり過ぎてしまうこともありますが、会社の立ち上げ時でもないのに販管費がかかり過ぎていたら、要注意です。儲けるしくみが確立されていない状態が数年続けば、倒産するリスクが高くなります。
販管費は、勘定科目ごとに細かくチェックして削減するという地道な作業が必要です。
自社の販管費率が適切か、同業他社と比較してムダな販管費がないかについては、税理士等に相談しアドバイスを受けることをおすすめします。
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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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