出張手当とは?勘定科目は?必要な要件は?税金はどうなる?

公開日:2022年06月04日
最終更新日:2024年04月03日

この記事のポイント

  • 出張が多い会社は、出張手当の支給で節税することができる。
  • 出張手当は、会社・従業員双方にメリットがある。
  • 出張手当を支給するためには「旅費規程」の作成が必要。

 

出張規程(旅費規程)を作成して従業員に出張手当を支払うと、その手当は会社の経費とすることができます。また、もらった従業員にとっても、所得税が課税されません。
出張の多い会社にとっては、出張手当は会社・従業員双方に大変メリットがありますので、ぜひ導入を検討しましょう。
 

出張手当の豆知識

業務に関連する移動手段等の支出は、旅費交通費という勘定科目で処理します。新幹線、バス、タクシー、駐車場代などのほか、宿泊費、日当、手当も旅費交通費で処理をします。
ただし、仕事に関連していればすべて経費で処理できるというわけではなく、旅費規程や出張規程を作成して、旅費精算が認められる距離や日当の金額などを定めておく必要があります。
なお、取引先の接待や慰安などに使った旅費や交通費は、税務上は交際費に含まれますので注意が必要です。
また、旅費規程を作成した場合には、税理士に規程の内容や、交通費、宿泊費の金額が妥当かチェックしてもらいましょう。税理士のチェックを受けていれば、仮に税務調査の対象になった場合でも税理士からきちんと説明してもらうことができます。
このような節税方法は、ここでご紹介する出張手当以外にもたくさんあります。しかし、中小企業の経営者は営業の知識は持っていても、経費削減や節税対策のノウハウをあまり知らないという人が多いものです。
しかし適切な節税対策を知っているかどうかで、会社に残る現金が増えたり減ったりするのですから、やはり適切な節税対策を行うことは大切です。
具体的な節税方法は個々の状況に応じて適切な方法は異なりますので、税理士に積極的に相談してみましょう。

出張手当とは

出張の際には、宿泊費や交通費のほかにも、食事代・電話代・取引先や職場へのお土産代など、さまざまな経費がかかるものです。
そこで、出張の目的・期間・相手先・出張者の地位などによって、一定額の支給を行うのが「出張手当」です。

つまり「出張手当」は、実際にかかった経費の実費弁済のような意味合いを持つものと言ってもよいでしょう。なお「出張手当」は、諸経費を精算した場合でも日当を支給することができます。

(1)出張手当のメリット【会社側】

会社は出張手当を支給すると、「その旅行について通常必要であると認められる部分」については、その支出を「旅費交通費」として損金に算入することができます。
この「その旅行について通常必要であると認められる部分」の範囲については、以下の所得税法基本通達9-3「非課税とされる旅費の範囲」の例によって判定します。

9-3 法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。(平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正)

①その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって、計算されたものであるかどうか。

②その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして、相当と認められるものであるかどうか。

引用:国税庁「法第9条《非課税所得》関係」

なお、出張旅費については、所得税における通勤手当のような非課税の上限額は設けられていません。

さらに、出張手当は、消費税の課税仕入れに該当するので、消費税の計算をするときには、出張手当にかかる消費税分を安くすることができます。
ただし、出張旅費、宿泊費、日当等のうち、課税仕入れにかかる支払対価に該当するのは、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額であるという点については、注意が必要です。

また、固定額を支払うことになるため、出張精算の手間を省くことができる(経理作業が効率化する)というメリットもあります。

(2)出張手当のメリット【社員側】

出張手当は、通常の給与と異なり、所得税の課税対象となりません。給与に含まれないので、社会保険料が上がることもありません。そのため、住民税の計算にも含まれません。
ただし、あくまでも業務遂行に関わる部分のみですので、個人旅行等が含まれる場合の日当は、給与認定されるという点については注意が必要です。

(非課税とされる旅費の範囲を超えるものの所得区分)
9-4 法第9条第1項第4号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な支出に充てるものとして支給される金品の額が、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲の金額を超える場合には、その超える部分の金額は、その超える部分の金額を生じた旅行の区分に応じ、それぞれ次に掲げる所得の収入金額又は総収入金額に算入する。(平元直所3-14、直法6-9、直資3-8、平22課個2-16、課法9-1、課審4-30改正)

①給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するためにした旅行:給与所得

②給与所得を有する者が転任に伴う転居のためにした旅行:給与所得

③就職をした者がその就職に伴う転居のためにした旅行:雑所得

④退職をした者がその退職に伴う転居のためにした旅行:退職所得

⑤死亡による退職をした者の遺族がその死亡による退職に伴う転居のためにした旅行 退職所得(法第9条第1項第16号の規定により非課税とされる。)

引用:国税庁「法第9条《非課税所得》関係」

(3)出張手当の注意点

前述したとおり、出張手当として所得税が非課税となるのは、その出張手当が「出張のために通常必要である」と認められる金額でなければならず、高額過ぎると給与として所得税が課税されてしまいますので、注意しましょう。
なお、海外出張のために支給する旅費、宿泊費および日当等は、原則として消費税の課税仕入れに係る支払対価には該当しないという点にも注意が必要です。

出張手当を支払うための要件

出張手当を支給するためには、社内で出張規程(旅費規程)を作成する必要があります。そして、出張規程のなかで役員や従業員の出張について日当を支給する旨の規定を設け、適正金額の範囲内で支給することが必要です。

(1)出張(旅費)規程が作成されていること

出張規程では、対象者、出張の定義、旅費の種類、宿泊費の限度、日当の計算方法・精算方法などを決める必要があります。

出張手当の支給対象者
出張手当は、役員のみに支給するとすることは認められませんので、全従業員を対象とします。通常は、役員と正社員が対象です。

出張の定義
出張に該当するのは、どのくらいの距離からか規定します。
「出張とは、通常の勤務地から目的地まで、片道○○km以上の場所に移動して業務を遂行する場合をいう」などと決めておきます。日帰り出張と宿泊を伴う出張を分ける場合には、「日帰り出張の場合には、片道50km以上」「宿泊出張の場合は100km以上」というように、距離に差をつけて設定します。

旅費の種類
旅費の中には、通常、交通費、宿泊費、日当が含まれます。また利用することができる交通機関についても、あらかじめ規定しておきます。

宿泊費の限度額
役職等によって、上限を決めます。

日当の計算方法
役職によって金額を変える場合には、出発の日から帰省までの日数で計算します。

精算方法
出張旅費や精算期限、仮払いの申請方法など、必要に応じて規定します。
カラ出張とみなされないよう、出張精算書等で出張の事実を明らかにしておくようにしましょう。

(2)適正金額の範囲内であること

出張手当の支給額は、社内のすべての役職、従業員間で適正なバランスを保っていることが必要です。
役職・管理職・一般の従業員によって格差を設けることは問題ありませんが、役員だけが著しく高い場合には、認められない可能性があります。
また、同規模・同業他社の支給額と比較して、適正な金額であることも求められます。

出張手当の額は、交通費・宿泊費等の実費は、別途支給される場合のものとなっており、企業の規模や役職等によって異なりますが、国内の場合にはおおむね1,500円~5,000円のケースが多いようです。

日帰り日当 宿泊日当(国内) 宿泊日当(海外)
役員 3,000円 5,000円 1,0000円
管理職 2,000円 3,000円 5,000円
一般職 1500円 2,000円 3,000円

 

(3)出張旅費規程の記載例

出張旅費規程には、規程の対象者、出張の定義、旅費の種類や宿泊費の限度額などを記載します。精算期限や必要書類、仮払の申請方法など、個々の会社によって必要な事項についても、盛り込みます。

出張旅費

本規程は、役員および従業員が業務のための出張をする場合の旅費に関して定めるものである。
本規程は、役員および正社員に適用する。ただし、正社員以外であっても役員の承認を得ている場合には、本規程を適用することができる。

(出張)
第〇条 出張とは、業務のために会社を起点として直線距離で100km以上の地域に行くことをいう。
前項により出張とならない場合には、原則として交通費を支給し、宿泊を要した場合は実費を支給する。
第〇条 本規程の旅費の種類は、交通費、日当および宿泊費をいう。
利用する交通機関は、鉄道、船舶、飛行機、バス、タクシーとし、自家用車は事前に承認を得た場合のみ利用できる。

(宿泊出張)
第〇条 出張による1泊当たりの宿泊費の限度額は、役職により以下の通りとする。
・役員 15,000円
・管理職 10,000円
・一般社員 8,000円

(日当)
第〇条 日当は1日につき以下の金額とし、出発の日から帰省までの日数によって計算する。
・役員 5,000円
・管理職 4,000円
・一般社員 3,000円

(精算等)
出張に当たり、旅費の仮払が必要な場合には、「旅費仮払申請書」を提出し、承認を受けた場合に受けることができる。
出張業務が終了した場合には、帰省後1週間以内に「旅費精算書」をもって旅費精算を行う。

(4)出張手当・交通費の処理仕訳

出張手当は、旅費交通費という勘定科目で処理をします。
国内の出張または転勤のために役員や従業員に対して支給した出張旅費、宿泊費、日当は、通常認められる部分の金額は消費税の課税仕入になります。
海外への出張または転勤のために支給した出張旅費、宿泊費、日当は原則として課税仕入れになりません。

また、税込3万円以上の場合は、インボイス及び帳簿の保存が必要です。税込3万円未満の場合は「公共交通機関特例」が適用されるため、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除をすることができます。

参照:国税庁「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」

「出張旅費規程に基づいて、出張旅費を現金で支給した。
往復の新幹線等の乗車券は30,000円(うち、消費税は2,727円)、宿泊代金13,200円(うち、消費税は1,200円)、日当5,000円である。」

借方 貸方
旅費交通費 43,819 現金 48,200
仮払消費税 4,381

出展:勘定科目の実務処理ハンドブック(セルバ出版)P291

まとめ

出張手当は、個人の給与に含まれないので所得税の対象となりません。また、出張手当を支給した会社にとっても、損金に算入することができるので、節税効果があります。さらに国内の出張であれば、消費税の課税対象となりますから、消費税を節税することもできます。
出張手当は、出張が多い会社にとっては、会社にも従業員にもメリットのある制度なので、上手に活用していきたいものです。

出張手当について相談する

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、出張規程(旅費規程)の作成方法や出張手当の処理、その他の節税対策について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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