費用とは|意味や具体例をわかりやすく

公開日:2022年02月13日
最終更新日:2022年03月20日

この記事のポイント

  • 費用=「損金」ではない。また、収益=「益金」ではない。
  • 費用は発生主義によって計上されるので、費用の計上時期と金銭の支出時期は必ずしも一致しない。
  • 費用として計上したものが、無制限に損金となるわけではない。

 

費用として計上したものが無制限に損金となるわけではありません。
一定の費用・損失を損金算入するためには、損金経理が条件とされることもあります。

費用とは

費用とは、経営活動によって費消された支出のことです。

たとえば、販売する商品の仕入や従業員に支払う給料など、収入を得るために使ったお金のことです。
商品の製造費用や仕入れ費用など本業のために使った費用や電車代、電話代などのいわゆる経費も費用です。また、事業に直接関係ないものでも、経営していくうえで必要な支出(借入金の利息や税金、取引先などとの飲食代など)も費用となります。

なお、今日の企業会計においては、費用は発生主義で計上されるので、費用の計上時期はかならずしも金銭の支出時期と一致するものではありません。

旅費交通費や寄付金などは、一般的には費用計上の時期と金銭の支出時期は一致しますが、減価償却費は、有形固定資産を購入したタイミングでは費用計上されず、この有形固定資産の耐用年数にわたって徐々に費用化されます。
また、負債性引当金の繰入のように、将来の支出に対して計上される費用もあります。

(1)費用と原価の違いとは

実務上は、「費用」と「原価」を厳密に使い分けていないケースも多々ありますが、「費用」とは損益計算書におけるマイナス部分の総称で、「原価」は費用の一部です。
「原価」とは、商品や製品に直接的に紐づけて把握することができる支出です。
ちなみにこの「原価」を英語で言ったものが、「コスト」ですが「コスト削減」と言ったりするときのコストは、費用全般の意味で使われることがほとんどです。

(2)費用と損金の違いとは

費用は原則として損金と一致しますが、かならずしも費用=損金ではありません。
損金とは基本的には、原価(売上原価)、費用(給与など)、損失ですが、この費用の額に法人税法の目的に応じて一定の調整を加えたものが損金となります。
そして、一定の費用・損失を損金に算入するためには損金経理が条件とされていることがあります。

損金経理とは、決算において費用または損失として処理することをいいます。
たとえば、減価償却は損金経理が条件となっていて、決算時に減価償却費を計上しなければ減価償却費を損金算入することが認められません。

また、業者に機械の修繕を依頼しその修繕が完了しないうちに決算期末を迎えたといった場合には、企業会計では修繕費を見積計上することができますが、税法ではこれを損金とは認めません。なぜなら「まだ修繕が完了しておらず、代金が決まっていない」、つまり債務が確定していないことになるからです。

(3)費用=損金とならないものとは

課税の公平を守るために、税法では別段の定めを規定しており、費用として計上していても、その全部または一部が損金とならないとしています。
これを「損金不算入」といいます。

全額が損金とならないもの
法人税・住民税、資産の評価損
一定の限度を超えた部分は損金とならないもの
減価償却費
過大役員給与
交際費
寄附金
引当金の繰入損
費用 損金算入・不算
売上原価 損金
営業費
支払利息
雑損失
資産の評価損 全額損金不算入
法人税・住民税
減価償却費 一定限度を超えたら損金不算入
過大役員給与
交際費・寄附金
引当金の繰入損

(4)費用はいつ計上するか

税法では、企業会計とほぼ同じような考え方で費用を計上します。
売上原価は売上高に対応する部分だけが損金となり、在庫となっている部分は損金とはなりません。
また、販売費及び一般管理費は、当期の期間に対応するものが損金となります。
なお、これらの費用について未払計上する場合には、税法では事業年度末日までに債務が確定していなければ、損金とは認められないことになっています。

通常、損金の額に含めるための「債務確定」となるためには、以下の3つの要件が必要です。

①事業年度末日までに、当該債務にかかる費用が成立していること(債務成立の要件)
②事業年度末日までに、その債務の原因となる事実が発生していること(給付原因事実の発生の要件)
③事業年度末日までに、その金額を合理的に算定することができること(金額の合理的算定の要件)

(5)費用のチェック方法

収益から費用を差し引くことで、利益の額を計算することができます。また、収益と費用を比較することで、効率よく稼いでいるのかを判断することができます。会社は、利益を増やすために活動していていますから、収益に対する費用の割合が多ければ、利益があまり出ていないことになり、残念ながら使った経費の効果が十分に結果に反映されていないことになります。

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費用と損金の基礎知識

費用にはさまざまなものがありますが、売上原価は売上高に対応する部分だけが損金となりますし、販売費及び一般管理費は、当期の期間に対応するものが損金となります。
ここでは、費用を計上する際に知っておきたい基礎知識についてご紹介します。

(1)【売上原価】売上高に対応する部分だけが損金

売上原価は、支出した費用のすべてが損金となるわけではなく、売上高に対応する部分だけが損金となります。
したがって、損金に算入される売上原価を計算するためには、期末商品棚卸高を確定する必要があります。

売上原価=期首商品棚卸高+当期純仕入高-期末商品棚卸高

▶ 売上原価|意味・計算方法・業種別売上原価の内訳

参照:国税庁「売上原価等」

(2)【役員給与】過大役員給与は損金とならない

役員給与も費用ですが、損金と認められるためには、条件があります。
一般的な役員給与といえば、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与ですが、これらは原則として損金の額に算入することができます。
ただし税法では、役員給与のうち不当に高すぎる部分は損金とは認められません。
「不当に高すぎるか否か」は、実質基準と形式基準によって判断されます。

実質基準
給与の額は、業務の内容、収益の状況、使用人に対する給料の支給状況、同業他社の役員給与の支給状況などに照らして、その役員に職務について不当に高すぎるとみられる部分

形式基準
定款の規定、株主総会などの決議によって、給与として支給することができる限度額を超える場合には、その限度額を超える部分

参照:国税庁「過大な役員給与の額」

(3)【交際費・寄附金】限度額をオーバーすると損金とならない

交際費
交際費は原則として損金不算入です。
企業会計上は、交際費や寄付金の支出が費用となることについて、とくに問題はありません。これに対して税法上は、交際費および寄付金について本来損金算入すべきではないと考え、その全部または一部が損金不算入となる制度が設けられています。
資本金が1億円以下である中小法人等については、一定限度額まで交際費の損金算入が認められる特例措置があります。
平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に開始する事業年度において、交際費の金額が年間800万円未満の場合には、交際費の全額、800万円を超える時には800万円を損金算入するか、交際費の額のうち飲食費の部分×50%の選択適用となります。

ただし、資本金が1億円以下の会社でも、資本金5億円以上の会社に100%株式を所有されている場合や、資本金5億円以上の複数の会社に100%株式が所有されている場合には、この特例の適用はありません。

参照:国税庁「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」

寄附金
寄附金にも、損金算入には限度額があります。
企業会計上、寄付金は費用ですが、税法では限度額を超える部分について損金不算入となります。

寄附金は、①国や地方公共団体に対する寄附金、②財務大臣が指定した寄附金、③特定公益増進法人等に対する寄付金、④一般の寄付金に区分することができます。

このうち①国や地方公共団体、②財務大臣が指定した寄附金はその全額を損金の額に算入できます。また、③特定公益増進法人等に対する寄付金については、損金算入限度額を超える場合に、その限度額に相当する部分を損金算入できます。

参照:国税庁「寄附金を支出したとき」

(4)【減価償却費】原則として耐用年数に応じて費用化する

減価償却とは、使えば使うほど、時間が経てば経つほどその価値が目減りしていく資産について、その目減り分を見積って費用計上することをいいます。
たとえば、建物、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品などは、減価償却資産といい、それぞれの耐用年数に応じて費用化していきます。

ただし、その資産の取得価額が10万円未満の資産については、使用開始の時に1度に費用とすることが認められています。

また、10万円以上でも使用可能期間が1年未満のものであれば、一度に費用とすることが認められています。

20万円未満の減価償却資産については、耐用年数に基づいて計算するか、3年で均等償却するかいずれかを選択適用することができます。

取得価額 資産計上の金額基準
10万円未満 損金経理 左記を選択適用
資産計上して通常の減価償却を行う
資産計上して3年で均等償却を行う
10万円以上
20万円未満
資産計上して通常の減価償却を行う 左記を選択適用
資産計上して3年で均等償却を行う
20万円以上 資産計上して通常の減価償却を行う

また、青色申告をしている資本金1億円以下の中小企業者等については、平成18年4月1日から令和4年3月31日までの間に取得、製作などして事業の用に供した時には、取得価額30万円未満の減価償却資産について、損金経理することができます。

ただし、いる資本金1億円以下の中小企業者等でも、大規模法人にその株式の2分の1以上を所有されている会社、複数の大規模法人にその株式の3分の2以上を所有されている会社、常時使用する従業員が500人(令和2年3月31日以前は1000人)を超える会社については、適用はありません。

参照:国税庁「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

(5)【繰延資産】償却方法を選択できる

繰延資産とは、その支出の効果が1年以上に及ぶもののうち、固定資産の取得価額とならないもののことです。
会社法で繰延資産として計上することが適当であるとされているものは、創立費、開業費、開発費、社債発行費、株式交付費の5つがあります。税法では、これよりかなり広くなっていて、商店街のアーケードを設置するための費用やノウハウの提供を受けるために支出する頭金なども、繰延資産としています。

会社法で認められる繰延資産は、自由償却が認められていますが、税法でとくに決められている繰延資産については、その支出の効果の及ぶ期間に応じて償却できる金額を計算します。

当期の月数 /支出の効果の及ぶ期間の月数

まとめ

以上、費用の意味や費用と損金の違い、それぞれの費用の計上などについてご紹介しました。
費用とは、会社が事業活動を行っていくための商品の仕入や、従業員に支払う給料など、収入を得るために使ったお金のことをいいます。
費用はほとんどが損金ですが、なかには損金不算入となるものもありますので、注意が必要です。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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