旅費規程で節税できる理由(サンプル付)

公開日:2023年10月02日
最終更新日:2023年10月02日

この記事のポイント

  • 旅費規程(出張旅費規程)で、日当を定めると損金にすることができる。
  • 旅費規程は、全社員を対象とする。役員だけ別規程とすることも可能。
  • 役員、一般社員など役職に応じて差をつけることもできる。

 

出張旅費規程で日当などを予め定めておくと、交通費や宿泊費などの実費に加えて、日当なども法人の損金とすることができます。

さらに受け取る側にとっても日当は給与ではないので非課税所得となり、社会保険料の負担も増加しません。

出張旅費規程は、法人にとっても受け取る個人にとっても嬉しい制度といえますから、ぜひ出張旅費規程を作成して節税につなげましょう。

旅費規程で節税する方法

出張の場合には、宿泊費や交通費のほかに、食事代や電話代など細かい経費がかかります。
そこで、このような場合に一定額支給しようというのが日当の考え方です。
したがって、日当の考え方は節税のためにあるものではありませんが、日当は交通費や宿泊代などの実費とは別に支給されるもので、法人の損金とすることができるため、結果的に節税につながります。

(1)出張旅費規程とは

出張日当を支給するためには、社内で出張旅費規程を作成する必要があります。
旅費規程とは、役員や従業員の出張に際して日当を支給する旨の規程で、適正金額の範囲内で支給することが条件となるほか、適用範囲や出張の定義を定めておく必要があります。

また、同規模・同業他社の支給額と比べて相当なものである必要があります。
また、出張精算書などで出張の事実を明らかにし、税務署から「カラ出張」とみなされないようにしておくことも大切です。

(2)旅費規程の作成ポイント

出張旅費規程では、以下の内容について定めます。

①規程の目的
出張旅費規程の目的を記載します。
一般的には「本規程は、役員または従業員が業務によって出張する場合の手続きおよび旅費に関して定める」とします。

②適用範囲
適用範囲は、全従業員です。
役員・管理職・一般従業員等の職位によって格差を設けることはできますが、役員だけ特に高く設定するなどは、認められない可能性があります。

③出張の定義
出張の定義を「移動距離50キロを超えるもの」などと定義します。
一般的には、「移動距離が片道100キロを超えるものを出張」と定義している会社が多いようですが、どこからが出張なのかは明確には決まっていません。
つまり「県外なら出張」「100キロを超えたら出張」など、明確な基準はありません。

④旅費の種類と金額
宿泊費、日当などの金額を定めます。交通費は実費精算です。
宿泊費は、一般的には実費精算ですが、定額支給とすることもできます。
宿泊費や日当は、国内・国外で区分することもできます。

(3)旅費規程のサンプル

下記は、一般的な出張旅費規程のサンプルです。
出張時の食費について、手当を支給するなどの項目を追加する会社もあります。
自社の状況に応じて長期の出張については減額することとしたり、宿泊費を定額支給としたりするなどすることもできます。

第1章 総 則

(目 的)
第1条 この規程は、○○株式会社(以下「会社」という。)の従業員が、会社の業務上の必要により国内出張する場合に支給する旅費に関して定めるものである。

2 従業員が出張のため旅行した場合には、この規程に定めるところにより、旅費を支給する。

(定 義)

第2条 この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1)出張…従業員が業務のため一時その勤務地を離れて旅行することをいう。

(2)国内出張…本邦(本州、北海道、四国、九州及びこれらに附属の島の存する領域をいう。以下同じ。)における旅行をいう。

(3)国外出張…本邦と外国(本邦以外の領域をいう。以下同じ。)との間における旅行及び外国における旅行をいう。

(4)外出…概ね行程8キロメートル未満、かつ5時間未満の出張をいう。

(5)在勤地…勤務地から半径8キロメートル以内の地域をいう。

(6)赴任…新たに採用された従業員がその採用に伴う移転のため住所若しくは居所から勤務地に旅行し、又は転勤を命ぜられた従業員がその転勤に伴う移転のため旧勤務地から新勤務地に旅行することをいう。

(出張命令)
第3条 出張のための旅行は、所属長による出張命令によって行う。ただし、業務の一環として日常的に行われる外出の場合には、適宜口頭によりこれを命ずることができる。

2 所属長は、電子メール、電話、郵便等の通信による連絡手段によっては業務の円滑な遂行を図ることができない場合で、かつ、予算上旅費の支出が可能である場合に限り、出張命令を行うことができる。

(出張命令の変更)
第4条 業務上の必要又は天災その他やむを得ない事情により、出張命令を受けた従業員が当該出張命令に従って旅行することができない場合には、あらかじめ所属長に出張命令の変更の申請をしなければならない。

2 外出の場合は、前項の申請は、口頭で行うことができる。

(出張計画)
第5条 出張(外出の場合を除く。次条において同じ。)をしようとする従業員は、出張計画及び旅程等を記載した会社が定める様式に旅程表を添付して、所属長に提出しなければならない。

2 旅程は、最も効率的に目的を遂行でき、かつ、最も経済的な経路及び方法によるものとする。

3 所属長は、出張計画及び旅程等が適切なものであるかの確認を行い、不適切な場合は変更を命ずる。

(出張報告)
第6条 出張を終えた従業員は、2週間以内に、出張中の業務内容等を記載した会社が定める様式で所属長に提出しなければならない。

2 外出の場合は、日報をもって出張報告に代えるものとする。

(出張中の労働時間)
第7条 出張中は、通常の労働時間労働したものとみなす。ただし、出張中の労働時間の管理が可能な場合であって、所定労働時間を超えて労働したことが明らかな場合は、現に労働した時間を労働時間とする。

2 出張中において休日に労働した場合、出張終了後、2週間以内に代休を与えることがある。ただし、移動日(旅行中に業務に従事していない日をいう。)については、この限りでない。

第2章 旅費の計算等

(旅費の種類)
第8条 この規程により支給する旅費の種類は、鉄道賃、船賃、航空賃、車賃、日当、宿泊料、移転料及び着後手当とする。

2 鉄道賃は、鉄道旅行について、路程に応じ実費額等により支給する。
3 船賃は、水路旅行について、路程に応じ実費額等により支給する。
4 航空賃は、航空旅行について、路程に応じ実費額等により支給する。
5 車賃は、陸路(鉄道を除く。以下同じ。)旅行について、実費額又は路程に応じ1キロメートル当たりの定額により支給する。
6 日当は、業務のため、目的地内を巡回するときに要する諸雑費について、出張の日数に応じ1日当たりの定額により支給する。
7 宿泊料は、出張の夜数に応じ一夜当たりの定額により支給する。

(旅費の区分)
第9条 国内出張に関する旅費は、「在勤地外旅費」及び「在勤地内旅費」に区分する。

(旅費の計算の原則)
第10条 旅費は、最も経済的な通常の経路及び方法により旅行した場合の旅費により計算する。

ただし、業務上の必要又は天災その他やむを得ない事情により最も経済的な通常の経路又は方法によって旅行し難い場合には、その現によった経路及び方法によって計算する。
2 経路の距離数は、会社が定める様式に従い、会社が指定する路線検索アプリケーションを使用して計算する。ただし、会社の指定する旅行会社が旅程を作成したときは、この限りでない。

(路線検索アプリによる経路選択)
第11条 路線検索アプリによる経路選択については、出張に係る業務時間に照らして適切な出発時刻又は到着時刻を設定した上で検索し、路線検索アプリに代表的に表示される経路のうち、最も金額の安価な経路を選ぶものとする。

(私事滞在の場合等の経路)
第12条 私事のために居住地以外の地に滞在する者が、その場所から直接出張する場合については、当該滞在地から出張した場合と居住地から出張した場合を比較し、より安価な旅費を支給する。

(出張日数)
第13条 旅費計算上の出張日数は、出張のために現に要した日数による。ただし、天災その他やむを得ない事情により要した日数は除く。

(旅費の請求及び精算)
第14条 旅費(概算払に係る旅費を含む。)の支給を受けようとする場合、又は概算払に係る旅費の精算をしようとする場合には、会社が定める様式に必要な書類を添えて、これを出納責任者に提出しなければならない。

第3章 旅費の区分及び額

(在勤地外旅費)
第15条 在勤地外の出張の旅費は、鉄道賃、船賃、航空賃、車賃、日当及び宿泊料とする。

(在勤地内の旅費)
第16条 在勤地内の出張の旅費は、原則として、鉄道賃及び車賃とする。ただし、業務の必要上又は天災その他やむを得ない事情により宿泊する場合に限り宿泊料を支給することができる。

(鉄道賃)
第17条 鉄道賃の額は、次の各号に定めるところによる。
(1)鉄道を利用した場合…運賃の額
(2)急行料金を徴する列車を運行する鉄道を利用した場合…運賃、急行料金の額
(3)座席指定料金を徴する客車を運行する鉄道を利用した場合…運賃、急行料金、座席指定料金の額

(船 賃)
第18条 船賃は、フェリー等を利用した場合の、現に支払った運賃による。

(航空賃)
第19条 航空賃の額は、現に支払った運賃による。
航空賃については、当該旅行における用務の内容及び日程並びに当該旅行に係る旅費総額を勘案して、航空機を利用することが最も経済的な通常の経路及び方法であると命令権者が認める場合に支給することができる。

(車 賃)
第20条 車賃の額は、次の各号に定めるところによる。
(1)バス、軌道、ケーブルカー等を利用した場合…運賃の額
(2)タクシーを利用した場合…運賃の額。ただし、著しく高額な場合は、その一部を本人負担とすることができる。
2 外出の場合の車賃(バス利用の場合に限る。)は、IC乗車券又は回数券により支給する。この場合は、第14条(旅費の請求及び精算)の手続を要しない。

3 タクシーの利用は、次に掲げる事由がある場合、その他業務上の必要又は天災その他やむを得ない事情があると認めるときのみ、その利用を認める。この場合において、その理由について旅程表の備考欄にその旨を記載しなければならない。
(1)公共の交通機関がなく、徒歩による移動が困難な場合
(2)業務の緊急性や時間的な制約により、タクシー以外の公共の交通機関による移動では、業務に支障をきたす場合
(3)出張の目的又は用務の内容等により、タクシーを利用することが合理的である場合

(日 当)
第21条 日当の額は、別表第2の定額による。
2 前項の規定にかかわらず、次の場合は、日当を減額する。ただし、業務上の必要又はその他やむを得ない事情により宿泊した場合は、この限りでない。
鉄道100km未満、水路50km未満又は陸路25km未満の出張の場合の日当は2分の1に相当する額とする。

(宿泊料)
第22条 宿泊料の額は、宿泊先の区分に応じた別表第3の定額による。
2 前項にかかわらず、自宅宿泊等、宿泊料を必要としない場合は、宿泊料は支給しない。この場合は、出張先以外の自宅宿泊等に係る追加的な交通費は本人負担とする。

別表第2  日当(国内)

区 分 日 当

(1日につき)

役員 ○○○円
部長、課長 ○○○円
上記以外の者 ○○○円

別表第3 宿泊料の額(国内)

区 分 宿泊料(1夜につき)
政令指定都市 それ以外
役員 ○○○円 ○○○円
部長、課長 ○○○円 ○○○円
上記以外の者 ○○○円 ○○○円

(2)日当を「旅費交通費」で損金にできる

旅費規程に日当を定めておけば、この日当を損金とすることができます。
さらに、国内出張に関する日当は、消費税の課税取引となりますので、仕入税額控除の対象となります。

日当については、「旅費交通費」という勘定科目で処理をします。

「旅費規程により、出張旅費4万8,200円を現金で支給した。往復の新幹線の切手代3万円、ホテル宿泊費1万3,200円、日当5000円である。」

借方 貸方
旅費交通費 43,819 現金 48,200
仮払消費税等 4,381

(3)日当は非課税所得となる

日当は、受け取る個人にとっては給与ではなく、非課税所得となりますので、所得税の対象とはなりません。
給料ではないので、会社からお金をもらっているのに所得が増えないから税金も増えないということです。

(4)社会保険料の負担も増えない

日当は、社会保険の対象とはなりません。つまり、会社からもらうお金は増えるのに、日当が給料に該当しないことから、社会保険料の負担は増加しません。

(5)事務処理の効率化にもなる

出張旅費規程を定めておけば、これまで述べたような節税効果だけでなく、事務処理の効率化を図ることができます。
所定の様式を決めておいて、そこに必要な情報を記入するようにすれば、管理がしやすくなります。また、宿泊費を定額支給にすれば、宿泊費の領収証を確認する必要もなくなります。

(6)旅費規程以外の規程

出張旅費規程以外にも、さまざまな規程を作成することで、節税効果が期待できます。
たとえば社宅規程を作成して、1カ月当たり一定額以上の家賃を受けとっていれば、給与として課税されませんので、従業員の手取りを増やすことができますし、負担する家賃は損金となります。

たとえば、家賃が月額10万円の部屋を借り上げて社宅にして、従業員からは3万円を受領し、その分従業員の給与を7万円下げるケースで考えてみます。

会社側にとっては、従業員から3万円受け取るので、10万円-3万円=7万円の経費が発生します。しかし、従業員の給与が7万円下がるので、トータルで会社負担に変更はありません。
一方従業員にとっては、給与は7万円下がりますが、10万円の部屋に3万円で住めることになります。給与が7万円減った分、所得税・住民税・社会保険料が下がり、手取り額は結果として増えます。

まとめ

出張旅費規程を作成することで、今までなかった経費を新たに作り出すことができます。今まで役員報酬や給与として渡していたお金を出張手当として支出すれば、受け取る金額に変わりがなくても、所得とみなされないので、所得税や住民税、社会保険料が軒並み下がることになります。
出張旅費規程は、同規模・同業他社の支給額と比較して妥当な金額であることが必要ですし、確かに出張したという証明が必要です。
不明点等は早めに税理士に相談して、適切な方法で節税につなげることが大切です。

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・出張旅費規程による日当等の支給における領収書の扱いについて
「当社では出張旅費規定を作り、社員の出張に際して宿泊費と日当を定額支給しております。
・旅費規程について
「法人の旅費規程で、日当に交通費、宿泊費、出張先の会議費等を含め、まとめて金額設定しても問題ありませんでしょうか?
・出張手当について
「法人を設立し、出張旅費規程の導入を検討しています。法人から役員に支給した出張日当については確定申告不要という理解でよろしいでしょうか。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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