ものづくり補助金とは|申請のための手続き・計画書

公開日:2019年12月28日
最終更新日:2022年06月23日

この記事のポイント

  • ものづくり補助金とは、新しいものづくりに挑戦する中小企業者等に交付される補助金。
  • 融資のように返済する必要がなく担保や保証人が求められることもない。
  • 設備投資や設備開発を行う中小企業や小規模事業者は、検討するのがおすすめ。

 

ものづくり補助金とは、中小企業庁が実施する補助金制度で「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」のことをいいます。メディアでも取り上げられることの多い補助金で、略して「ものづくり補助金」と呼ばれています。

中小企業・小規模事業者を対象として交付される補助金で、中小企業・小規模事業者が取り組む、生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するために事業を実施するのにかかった経費のうちの一部が交付されます。

補助金の上限額はその年によって異なりますが、1,000万円~1,500万円、補助率3分の2であるケースがほとんどです(令和2年度のものづくり補助金の上限は1,000万円、採択数は2,000超)。

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ものづくり補助金とは

ものづくり補助金とは、新しいものづくり(試作品開発・生産など)やサービス開発に挑戦する中小企業と小規模事業者を支援するために交付される補助金で、中小企業庁が実施する制度です。
なお、補助金とは、国や地方公共団体がその時の政権の政策目的に合った取り組みを支援するために提供する制度で、原則として返済する必要はありません。
融資のように担保や保証人が求められることもありませんし、もちろん金利もありません。

1件当たりの金額がそれほど高額ではないので、採択される数も多いのがこの補助金の特長です。設備投資や設備開発を行う中小企業や小規模事業者は、ぜひ補助金の申請を検討するとよいでしょう。

(1)ものづくり補助金の目的は「中小企業の経営力向上」

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者が取り組む生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うため、その設備投資等を支援することを目的としています。
したがって、本補助金の補助対象者は、日本国内に本社及び実施場所を有する中小企業者および特定非営利活動法人に限ります。

業種 資本金 従業員数
(常勤)
製造業、建設業、運輸業、旅行業 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
5,000万円 100人
小売業 5,000万円 50人
ゴム製品製造業
(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く)
3億円 900人
ソフトウェア業、情報処理サービス業 3億円 300人
旅館業 5,000万円 200人
その他の業種(上記以外) 3億円 300人

ただし、上記に該当しても、その直接または間接の構成員の3分の2以上が5,000万円(卸売業は1億円)以下の金額をその資本金の額もしくは出資の総額とする法人、または常時50人(卸売業、はサービス業については100人)以下の従業員を使用する中小企 業者などは、対象外となります。
応募要領で申請条件を満たすか、よく確認する必要があります。

参照:ものづくり・商業・サービス補助金事務局「令和元年度補正・令和二年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領」

(2)ものづくり補助金の「一般型」及と「グローバル展開型」

ものづくり補助金は、「一般型」および「グローバル展開型」の2つの類型に区分されます。

「一般型」は、中小企業者等が行う「革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援することを目的としたもので、補助金額は100万円~1,000万円です。

「グローバル展開型」は、中小企業者等が海外事業の拡大・強化等を目的とした「革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援することを目的としたもので、補助金額は1,000万円~3,000万円です。

参照:ものづくり・商業・サービス補助金事務局「令和元年度補正・令和二年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領」

(3)認定支援機関の確認書は不要に(2020年~)

かつて「ものづくり補助金」の申請には、認定経営革新等支援機関による確認書の添付が必要でした。 しかし2020年度実施分からは、申請手続き簡素化のため確認書の添付が不要になっています。
ただし、認定経営革新等支援機関や専門家等の外部支援を受けている場合には、支援者の名称、報酬、契約期間を必ず記載しなければなりません。

参照:ものづくり・商業・サービス補助金事務局「令和2年3月ものづくり・商業・サービス補助金事務局」

ものづくり補助金申請ポイント①「取組内容」

ものづくり補助金の審査は、技術面、事業化面、政策面などを中心に審査されます。
審査委員は、大学教授やコンサルタント、大企業の役員などの知識人です。

審査は、新製品、新サービスの設計、デザインの開発となっているかなどといった点を中心に審査されます。

ものづくり技術においては、「中小ものづくり高度化法」に基づく特定ものづくり基盤技術を活用した革新的な試作品開発・生産プロセスの改善を行い、3~5年計画で付加価値額+3%以上/年および給与支給総額+1.5%以上/年、事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円を達成する取り組みであることが必要です。

試作品等の快活における技術的課題は明確になっていることが必要であり、体制や技術的能力が十分であるか否かについても確認されます。
また、補助事業が適切に遂行できるための事業実施のための体制が整備されているかについても、審査されます。

ものづくり補助金を申請する前には、まず以下の審査項目の内容を理解し、自社の申請内容や事業内容が、ものづくり補助金の基準に合致しているかを確認してください。

ものづくり補助金の審査項目

項目 内容
技術面 新製品・新技術・新サービスの革新的な開発となっているか。
事業化面 ① 補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込まれるか。

② 市場ニーズを考慮するとともに、ユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。クラウドファンディング等を活用し、市場ニーズの有無を検証できているか。

③ 補助事業の遂行方法及びスケジュールが妥当か。

④ 補助事業として費用対効果が高いか。

政策面 ① 地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の経済成長を牽引する事業となることが期待できるか。

② ニッチ分野において、差別化できるか。

③ 単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携することで、高い生産性向上が期待できるか。

④ 我が国のイノベーションを牽引し得るか。

加点項目 成長性加点:
「有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者」

政策加点:「創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)」
:「パートナーシップ構築宣言を行っている事業者」

賃上げ加点等:
:「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」、または、「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」

参照:ものづくり・商業・サービス補助金事務局「令和元年度補正・令和二年度補正
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領」

なお、申請書には、事業計画の概要、事業計画書の具体的な内容を端的に記載する必要があります。これまでに補助金や委託費を受けた実績がある場合には、その実績についても説明する必要があります。
なお、公募要領や申請書である書式類は、各都道府県の中小企業団体中央会の「ものづくり補助金」の特設ページに掲載されます。税理士等に早めに相談して、公募時期や必要書類について確認するようにしましょう。

申請書の最初には、事業計画名と概要を記載しますが、事業の新製品、新技術、新サービスがいかに革新的な開発であるかをイメージできるよう工夫します。革新的な開発であることが分かる事業は、それだけで審査委員から注目されることも期待できますので、細心の注意を払うようにして下さい。

(1)事業の現状

「現状この程度までの試作品ができているものの、今後の量産化や事業化に向けて、このような課題がある」といった、事業の現状を明確に示す必要があります。「この課題があるから商品化することができない。でも補助金を使ってこのようにテストを行い、設備を導入し、量産化することができる」という事実を審査員に分かりやすく伝えます。

(2)課題と解決策

「ものづくり補助金」は、経営革新を実現するための何らかの開発行為に対して交付される補助金です。そして、「技術の革新性」とは、「自社にはなく他社でも一般的ではない新しい取り組み」のことです。そこで、取り組み内容には、市場ニーズがあるか、技術的課題が明確か、そして課題の解決方法が明確か、補助事業を実施するための体制や技術的な能力が備わっているかなどを箇条書きに記載していきます。
記載欄はそれほど多くありませんので、長々と書くより論理的にシンプルに分かりやすく説明することの方が重要です。

~記載サンプル例~【試作品開発の内容】
○○によって、○○を開発する。これによりこれまで課題となっていた○○を解決する。【開発の手順】
1. ○○を試作する。
2. ○○を××で加工を行う。
3. ○○をさらに△△で加工し、機能性を確保、世界初のサービスを開発する。

なお、ここでいう「想定される課題」とは、補助金を使って何がしたいのかという視点から説明する必要があります。
「このような課題を解決するために、このような開発をしたい」「今後の量産化に向けて、このような課題がある」「この課題を解決するためには、どのような設備が必要だ」という点を明確に説明することが大切です。
なお、申請する段階で「現状ここまでの開発はできている」という試作品やデータがあれば、それを示す方が圧倒的に有利になります。
試作品やデータの画像と説明を、忘れずに掲載するようにしましょう。
専門用語や業界特有の慣習がある場合には、必ず注記を入れるようにします。

また、試作品がない場合でも、想定される商品やサービスの成果物のイメージがある場合には、「このような商品ができる」という写真を載せることで、説得力を増すことができます。

(3)スケジュールと実施体制

開発スケジュールは、無理のないよう確実に実現することがイメージできるスケジュールであることが必要ですが、かといって、だらだらと長い時間がかかるようなスケジュールも良くありません。事業に関わる担当の役割分担を明記しながら、納得感のあるスケジュールを立てるようにしましょう。

実施体制・参画する機関・事業者は、表を作成すると分かりやすくなります。
この時、各社の実績は必ず記載するようにします(大学などの公的機関などが実施体制に加わると信用性が高まることから、採択される可能性がアップするとも言われています)。

(4)「ガイドライン」との関連性に注意

ものづくり補助金は、応募する事業分野に応じて「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」または「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」に沿った取組みであることを説明する必要があります。

ガイドラインでは、大きく「付加価値の向上」と「効率の向上」という2つの要素に分解して、取り組みの指針が示されています。

参照:経済産業省「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」

参照:経済産業省「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」

モノづくり補助金の申請においては、この2つの要素に沿った記述が求められます。ただし、以下のものづくり12分野に該当する場合には、生産性向上に関する記述は求められず、12分野に該当することを明記することで条件が達成されます。

デザイン
情報処理
精密加工
製造環境
接合・実装
立体造形
表面処理
機械制御
複合・新機能材料
材料製造プロセス
バイオ
測定計測

ものづくり補助金申請ポイント②「将来の展望」

事業の市場、ユーザーなどについて記載し、当該事業によって、どのような市場においてどのような競争力・優位性が高まることを示します。
事業効果(見込)について、算出根拠を明確に示したうえで具体的な数字で記載することが大切です。

(1)市場のニーズ・市場規模

市場ニーズについては、「現顧客のニーズを捉え、そのニーズをとらえることで付加価値を付与する」という視点と「補助事業の成果が寄与するマーケットおよび市場規模」という視点からアピールすることが効果的です。

つまり、補助事業による成果を誰に提供しその市場動向がどうなっていくのかを客観的なデータをもとに説明します。公的な統計データを使用するのが一般的ですが、データの数をそのまま使用するわけにはいきません。

たとえば、「観光客が1000人いるので、1000個売れる」という説明では審査は通過しません。「観光客1000人のうち、○○を訪れるのは約1/3、そのうち1/3が購入するとして、150個売れる」といった見積になるように注意しましょう。

(2)技術の革新性・事業効果

ものづくり補助金の審査項目には、「新製品・新技術・新サービスの革新的な開発となっているか」という記述があります。つまり、当該事業が革新的であることが非常に重視されます。
技術の革新性といえるためには、「自社にもこれまではなく、また他社でも一般的ではない新しい取り組み」であることが必要です。
ここで大切なのは「革新性」に客観性を持たせることです。
したがって、「今まで不可能であった事例」を挙げつつ、「その理由(精度、コスト、ライセンス等)」を記述したうえで、「技術の革新性」を客観的に説明するようにしましょう。

(3)事業効果は数値で示す

事業効果は、極力数字で記載するのが重要です。
「数値による指標」の方が審査しやすいのは間違いないからです。
また数値を示す際には、「何故その目標値なのか」の説明もあわせて行うことが必要です。100%解決することは求められていませんので、あくまで実現可能な数値を示すようにしましょう。
なお、本事業計画で示された数値は、補助事業終了後も、毎年度の事業化状況等報告等において伸び率の達成状況の確認が行われますので、その点も留意しましょう。

(4)付加価値額が給与支給総額は数値で示す

ものづくり補助金については、補助対象事業の要件として以下が求められます。

以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定し、従業員に表明していること。

・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。
(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
・事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。

・事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加。

※付加価値額=営業利益、人件費、減価償却費

これらの数値は、客観的なデータと算出根拠を示したうえで、具体的な数値で示すことが必要です。
なお、補助事業実施期間に新型コロナウイルス感染症の影響を受けることを想定して、上記の賃上げ及び付加価値額増加の目標を据え置きし、その翌年度から3~5年の間にこの目標値を達成する計画とすることも可能です。
詳細は、ものづくり補助金の申請に精通している認定経営革新等支援機関に相談しましょう。

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(5)5カ年の事業計画

ものづくり補助金の事業計画を書く際には、分かりやすく数字の根拠をもって、説明することが必要です。
ものづくり補助金の審査をするのは、年齢も職業もさまざまな外部有識者ですから、どの審査員にとっても分かりやすく、かつ矛盾のない数値で説明できることが必要です。

5カ年の事業計画の例(様式集より抜粋)

  直近期末
[ 年 月期]
1年後
(補助事業 実施年度)
[ 年 月期]
2年後
[ 年 月期]
3年後
[ 年 月期]
4年後
[ 年 月期]
5年後
[ 年 月期]
① 売上高            
② 営業利益            
③ 営業外費用            
経常利益(②-③)            
伸び率(%)            
④人件費            
⑤減価償却費            
付加価値額(②+④+⑤)            
伸び率(%)            
⑥ 設備投資額            

 
参照:経済産業省「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金様式集」

まとめ

以上、ものづくり補助金の内容や要件、申請書を作成する際のポイントなどについてご紹介しました。
ものづくり補助金の応募申請書類の提出については、認定経営革新等支援機関による事業計画の実効性の確認が非常に重要です。

参照:中小企業庁「認定経営革新等支援機関による支援のご案内」

認定経営革新支援機関とは、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う機関で、税理士、公認会計士、弁護士などの各分野の有資格者が認定されています。

申請書の確認だけでなく、中小企業・小規模事業者の財務状況、事業計画の将来性までトータルでサポートをしてもらうことができますので、早めに問合せを行うようにしましょう。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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