公開日:2019年07月03日
最終更新日:2024年02月26日
税務調査で否認された内容が仮装隠蔽であるなど悪質だった場合には、重加算税が発生します。
この記事では、税務調査後に何を払うことになるのか、また、不服がある場合の対処法や税理士の活用法についてご紹介します。
重加算税の豆知識
一般的に税務調査で見られるのは3年分ですが、大きなミスがあると5年分に遡って調査されることがあります。脱税などがあると最大7年前までさかのぼることもあります。
そして、税務調査の罰金のなかでも特に重いのが重加算税です。本来支払うべき税金にプラスして課されるうえに延滞税もかかりますので、相当な金額になることもあります。
重加算税が課されるのは、隠ぺいなど悪質なケースと認められた場合で、代表的なのが二重帳簿を作成しているケースです。重加算税を避けるためのポイントは、自主申告です。
通常、税務調査は内部調査から始まり事前通知が行われ、臨場調査と進みます。このうち、実務上では臨場調査の前までは自主申告とされます。
しかし、臨場調査の前に自主申告すべきか否かはケースバイケースです。
したがって、税務調査の連絡が入ったら可能な限り税理士に連絡してアドバイスを求めましょう。
ちなみに、税理士に決算書や申告書を作成してもらい、税理士法33条の2による書面を添付してもらえば申告書の信頼性を向上させることができ、そもそも税務調査の対象となりにくいというメリットがあります。
重加算税とは、過少申告加算税などが課税される場合に、内容が仮装隠蔽であるなど悪質だった場合に、その過少申告加算税などに代えて課税される附帯税のことです。
加算税とは、申告納税義務および徴収納付義務の履行確保を図るために、行政上の制裁として加算される附帯税のことをいいます。
附帯税には、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税の4種が規定されています。
期限内に確定申告を行なわなかった場合や修正申告書の提出、更正処分となった場合、追加の本税とともに附帯税を納付しなければならなくなります。
これらの税金は、罰金的な意味合いがあるため、損金に算入することはできません。
※損金とは「法人税を計算する際に、収益(益金)から差し引くことのできる費用」のことをいいます。
たとえば税務調査が入り、ある経費200万円について損金性が認められず「これは経費ではない」と否認を受けることがあったとしましょう。
そうなると、この200万円に関する法人税等の本税が発生することになります。
また、この追加の本税について過少申告加算税や延滞税が追加されます。
さらに、否認を受けた内容が仮装隠蔽など悪質であると判断された場合には、重加算税が課されてしまいます。
重加算税は、過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%の税率で課されることになります。
納付税額 × 35%(40%)※5,000円未満不徴収 |
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過去5年内に、無申告加算税(更正・決定予知によるものに限る。)または重加算税を課されたことがあるときは、10%加算されます。つまり、繰り返し重加算税が課される場合の最高税率は、50%となってしまうので、このようなことがないようにしたいものです。
参照:国税庁「加算税の概要」
重加算税は、悪質な脱税や所得隠しと判断される場合に、罰金的な意味合いでかかる税金です。
たとえば、二重帳簿を作成した、帳簿書類の破棄、隠匿、改ざんをしていたというようなケースです。つまり、税金が減ると知りながら売上をごまかしたり経費を捏造したりといった不正行為がある場合です。
このほか、無申告の状態で税務調査に入られる場合も重加算税がかかります。
無申告とは脱税行為のようなものだからです。
重加算税を支払った法人は、税務調査の対象となる機会が多くなります。
また、隠ぺいが認められると、青色申告の取り消し、役員給与の損金不算入などのペナルティもあります。
また、重加算税は通常35%ですが、期限後申告等があって5年以内に同じ税目で重加算税を支払ったことがあると、税率が45%にアップしてしまいます。延滞税も含めると50%近くになってしまうため、大きな痛手となります。
追徴課税が支払えないと、まず税務署から督促状が届きます。そして財産調査が行われ、差押えの予告書が送付されます。そして、最終的には財産の差押え(強制執行)が実行されてしまいます。財産の差押えを受けると、預金口座や不動産、売掛金や給与から強制的に回収されます。
民事の差押えと異なり、裁判などの手続きがなく財産の差押えがされるうえに、罰金として年利7~14%程度の延滞税も発生してしまいます。
しかも、この延滞税は過去の申告についても発生します。
たとえば2年前の申告について重加算税が課された場合は、2年分の延滞税が発生しることになってしまいます。
重加算税について賦課決定通知書を受け取った場合には、その通知書が発せられた日の翌日から起算して1カ月を経過する日までに納付しなければならないとされています。
そして、重加算税を払わないでいると前述したとおり、最終的には財産の差押えが実行されてしまいます。
税務調査の結果としては、修正申告を行なう場合と更正処分を行う場合があります。
修正申告
税務調査の結果、誤りがあった場合、調査官から修正申告をするよう指示されます。
修正申告とは、すでに行った申告について税額が少なかった場合などに行う申告手続きです。税務調査によって誤りを指摘されて提出する場合だけでなく、自分で誤りを見つけて提出することもあります。修正申告は税務署から更正処分を受けるまではいつでも行うことができます。
税務調査官の言い分に納得がいかない部分があるという場合、修正申告を拒否することもできます。また、「Aの指摘部分は修正申告するが、Bの指摘部分については納得がいかないのでしない」と一部だけを拒否することも可能です。
拒否した場合には、税務署から更正処分(※後述)を受ける可能性があります。
税務調査によって修正申告する場合には、前述した過少申告加算税が課せられる可能性がありますが、自ら修正申告すればこれが免除されることになっています。
ただし修正申告をした場合には、申告書を提出した日が納期限となりますので、未納税額についてその日まで延滞税が発生することになります。
したがって、修正申告をすると決めた場合には、できるだけ早く手続きを行うことをおすすめします。
しかし繰り返しますが、税務署の主張に納得がいかなければ修正申告をする必要はありません。
後述する更正処分を受けた場合には不服申立や税務訴訟を行うことができますが、修正申告書を提出すると、原則としてこれらの手続きを行えなくなってしまうからです。
更正処分
更正処分とは、提出された納税申告書に記載された税額等の計算が間違っているなどの時に、税務署長がその調査に基づき、申告書に関わる課税標準または税額等を修正するために行う税務当局側が行う処分です。
前述した修正申告も、「税額等を修正する」という内容は同じですが、修正申告は後で修正内容や税額について不満が生じた時に不服を申し立てることができませんが、更正処分は不服申立てができるという点で違いがあります。
これは、修正申告が納税者自ら行う手続きであるのに対し、更正処分は税務署が強制的に行う処分だからです。
更正処分後不服申立てをされると、担当調査官の説明不足などが指摘され、担当官の評価に関わることもあることから、税務署は修正申告をするよう求めてきますが、どちらを選ぶかは納税者が決めることなので、言いなりになる必要は全くありません。
更正処分と不服申立
修正申告を拒否して更正処分を受け、不服申立の手続きをとることになります。この不服申立の手続きには、期限の制限があり、通知を受けた日の翌日から1カ月以内となっています。
税務調査によって指摘事項が示された時に修正申告をするべきか、拒否して更正処分を受けるべきかについては、迷うところです。
時間も経費もかかりますが、どうしても指摘事項等に納得がいかない場合はとことん争うのも一つの手段でしょう。
「税理士に依頼しても、結局税務署に言いなりになるのではないか」と心配される人もいます。
しかし税理士は、税務に関する専門家として納税義務者の信頼にこたえ、納税義務の適正な実現を図ることを使命としています(税理士法1条)。
つまり、税理士は納税者の味方として仕事をしなければならないことになっているのです。
税理士は、納税者(会社や個人事業主など)の味方であるということを忘れず、タッグを組んで税務調査に対応することをおすすめします。
税務署は、税務調査を行う前にある程度申告に問題がありそうな会社を選定したうえで出向いています。したがって、最初から「この会社は怪しい」と思っているからこそ、時間と労力を使ってでも調査するのです。
したがって税務調査では、まさに重箱の隅をつつくような、細かい質問を次から次へとされることを覚悟しなければなりません。
ただし、これまで述べてきたように調査官が指摘したことをすべて認める必要はありません。指摘事項のなかには、単純に判断することができないような「グレーゾーン」といわれる事項もたくさんあるはずです。特に交際費や役員賞与などの科目については、何のために支出したのか、なぜ支出したのかという点を厳しく追及されることがあります。
しかし、調査官によって問題があると指摘した事項についても、見方によって問題なしとなる可能性も十分あります。
税理士が立ち会ったからといって指摘された事項をすべて拒否することは難しいかもしれませんが、このようなグレーゾーンの事項については、納税者の立場に立ってしっかりと主張してもらうことができます。
税務調査で否認された場合に課される税金としては、重加算税以外にもペナルティとして課される税金がいくつもあります。
法定納期限までに税金を納付しなかった場合に課税される附帯税です。
原則として、法定納期限後に納付した本税に対して、納期限の翌日から2カ月間は年7.3%、その後の期間は14.6%の割合で課税されます。
納付税額×年7.3%(2カ月以降は14.6%) |
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会計監査人の監査を受けなければならない等の理由で、申告期限を延長した場合に課税される附帯税です。附帯税は損金に算入されませんが、この利子税だけは損金に算入されます。
納税が延長された本税に対して、その延長された日数に応じて、原則として年7.3%の割合で課税されます。
延長した本税×原則年7.3% ※1,000円未満不徴収 相続税及び贈与税の利子税…相続財産の構成等により年1.2%~年6.6% |
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期限内に確定申告書を提出した後、修正申告書の提出または更正によって追加税額が生じた時に課税される附帯税です。
修正申告の提出をする場合には、税務調査によって更正があることを予想して修正申告書を提出した場合以外、過少申告加算税は課せられません。
原則として、その追加本税の10%が加算されます。
ただし、その追加税額のうち期限内確定申告額または50万円のいずれか多い金額を超える部分については、15%の割合で課税されます。
追加本税×10%((期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)※5,000円未満不徴収 |
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期限内に、確定申告書の提出がない場合で、納付すべき税額があった場合に課税される附帯税です。税額は納付税額の15%です。
ただし、更正または決定があると予想される前に申告した場合には、5%の割合で課税されます。
納税額×15%(納税額が50万円を超える部分は20%)※5,000円未満不徴収 |
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源泉徴収等による国税が、法定納期限内に完納されなかった場合に課税される附帯税です。税額はその納付税額の10%です。ただし、調査などが予想されその前に納付すれば5%の割合で課税されます。
納税額×10%(5%)※5,000円未満不徴収 |
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以上、重加算税の意味や税務調査における対応方法などについてご紹介しました。
税務調査に対応するためには、味方になってくれる税理士の存在が不可欠ですが、「顧問税理士がおらず、誰に頼めばいいのか分からない」ということもあるでしょう。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
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