公開日:2019年06月01日
最終更新日:2022年07月06日
これまで不動産や株式の名義変更や銀行口座の解約などの相続手続を行う際には、亡くなった方や相続する方の戸除籍謄本等の束を何度も収集し、手続きのたびに提出する必要がありました。
しかし、法定相続情報証明制度がスタートしたことで、法務局が発行する法定相続情報一覧図があれば、戸籍謄本の収集が必要なくなり、手続きを簡略化することができるようになりました。
ここでは、法定相続情報証明制度のメリットやデメリット、手続きの方法などについてご紹介します。
法定相続情報証明制度とは、平成29年(2017年)から始まった制度で、登記所(法務局)に戸除籍謄本等や法定相続情報一覧図を提出することで、その後の相続手続を簡略化する制度です。
この時認証文付法定相続情報一覧図の交付を受ければ、その後各種相続手続において大量の戸籍謄本の束を提出する必要がなくなり、相続手続をスムーズに進めることが可能となります。
相続した財産を相続人の名義に変更するためには、多くの戸籍謄本を収集し、手続きをする必要があります。
この戸籍謄本の束は、不動産の名義変更の際にも必要となりますし、銀行口座の解約などの相続手続を行う際にも必要になります。
銀行口座がいくつもあれば、その分の戸除籍謄本等の束を提出しなければなりませんし、さらに、集めた戸籍に過不足があれば、何度も窓口で手続きをしなければなりません。
法定相続情報証明制度は、これらの煩雑な相続手続きを簡略化するための制度です。
一度戸籍謄本等の必要書類を提出すれば、法務局が法定相続情報一覧図を発行して相続関係を証明してくれるので、何度も戸籍謄本を集める必要がなくなりました。
不動産の登記名義人(その土地などの所有者)が亡くなった場合には、所有権の移転登記(相続冬季)が必要です。しかし、この相続登記を行わないまま放置されている所有者不明土地や空き家が増えていることが社会問題となっています。
この相続登記の未了問題は、相続手続きの煩雑さが一因であることが指摘されていました。そこでこの煩雑な相続手続きを簡略化することを目的として、法定相続情報証明制度が創設されました。
法定相続情報証明制度は、相続の手続きをシンプルにすることを目的とした制度で、いくつものメリットがあります。
この制度がスタートしたことで、一度法務局に法定相続の情報を登録しておけば、相続手続きの際には、法務局が発行してくれる法定相続情報一覧図を提出すれば済むようになりました。
戸籍謄本を申請する際の手数料は、1通300~750円もかかります。
そして、これらの手数料は相続人が負担しなければなりませんでした。手続きのたびに戸籍謄本を申請しなければならないことも多く、これが相続人の大きな負担となり相続手続きが進まないケースも多々ありました。
しかし、法定相続情報証明制度は発行手数料が無料で、相続人の負担を軽減することが可能となりました。
法定相続情報証明制度は、5年間なら何度でも証明書の再発行が可能です。
不動産名義の変更や銀行の口座の解約など、何度も手続きを行わなければならない時にも、法務局が発行してくれる法定相続情報一覧図を提出すれば済むようになり、確認作業もスムーズに行われるようになりました。
なお、相続税の申告書に添付が必要だった戸籍謄本等も、この法定相続情報一覧図を添付すれば手続きを行うことができるようになりました。
法定相続情報証明制度では、登記官が戸籍の内容を確認してくれるので、自分で確認するより確実ですし、大きな時間短縮を実現することができます。
申請は、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士などの専門家に代理してもらうこともできます。外出が困難な高齢者の方などは、これらの専門家に依頼するのもよいでしょう。
法定相続情報証明制度は、郵送で申請をすることもできます。
郵送による申請を行う際には、をその旨を申出書に記入した上、返信用の封筒及び郵便切手を同封して郵送します。
多くのメリットがある法定相続情報証明制度ではありますが、いくつかのデメリットもあります。
法定相続情報証明制度は、従来の戸籍収集作業を簡略化するものですが、申請する際には従来どおり戸籍を集める必要があります。したがって、相続手続きが1カ所だけ(銀行だけなど)の場合には、あまりメリットはないということになります。
一部の銀行では法定相続情報証明制度に対応しておらず、従来通り戸籍の束が必要なこともあります。
その際には、戸籍を収集して窓口で手続きを行わなければなりません。
法定相続情報証明制度の申請の際には、戸籍や住民票を収集し、申出書を提出する必要があります。
法定相続情報証明制度の手続きをする際には、戸籍や住民票を収集する必要があります。必ず用意しなければならない書類は、以下の通りです。
①相続人(亡くなった方)の戸除籍謄本 出生から亡くなられるまでの連続した戸籍謄本及び除籍謄本が必要です。 ②被相続人(亡くなられた方)の住民票の除票 ③相続人の戸籍謄抄本 ④確認書類の提出 上記の他、各相続人の住民票記載事項証明書や、戸籍の附票が必要になることもあります。 |
収集した戸籍謄本から、「法定相続情報一覧図」という、家系図のようなものを作成します。
法務局のページでは、「配偶者・子(1人~4人まで対応)である場合」「子が多数であり,法定相続情報一覧図が複数枚にわたる場合」など、さまざまなケースを想定して法定相続情報一覧図の記載例が紹介されています。
法定相続情報一覧図 |
法務局が「法定相続情報一覧図」について正しいものとして証明します。
申出書を記入して、被相続人の本籍地や申出人の住所等を管轄する法務局に「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」を提出し、「法定相続情報一覧図」を請求します。
法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書
※クリックすると拡大表示されます。 |
不動産名義変更、銀行の預金払い戻し等、相続手続きの際には、「法定相続情報一覧図」の発行を受けて、それぞれの窓口に提出します。
以上、法定相続情報証明制度の5つのメリットと2つのデメリット、そして手続きの方法についてご紹介しました。
法定相続情報証明制度がスタートしたことで、これまで何度も戸籍謄本等を収集しなければならなかった相続手続きを効率よく進めることができるようになりました。
しかし、相続手続きは他にも多くの手続きが必要になります。相続税が発生する際には、申告・納付も行わなければなりません。
相続税の申告・納付は、相続開始後10カ月以内に行わなければなりませんが、その間に遺言書の確認、相続人や相続財産の調査、遺産分割協議等を行う必要があります。
相続手続きをスムーズに進めるためには、早めに弁護士や税理士、司法書士等の専門家のサポートを受けることが大切です。
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