公開日:2022年06月28日
最終更新日:2024年05月26日
事業譲渡とは、ある特定の事業部門だけを譲渡(売り渡すなど)することです。事業譲渡するためには、事業を買ってくれる相手を見つけ、秘密保持契約を締結し、交渉します。
交渉で合意がまとまると、事業譲渡契約を締結します。
事業譲渡の豆知識
事業譲渡とは、企業が事業の全部または一部を他社に譲り渡すことです。メリットとしては、買収企業は既存の事業資産やノウハウを迅速に取得できる点が挙げられます。また、売却企業は不採算部門の整理や資金調達が可能となります。
一方、取引関係や雇用関係、ノウハウなどの無形の財産の価値は、売り手と買い手の主観的な判断によるところが大きいため、従業員の雇用問題や文化の違いによる統合の難しさがデメリットとして挙げられます。また、譲渡手続きには多大な時間とコストがかかりますので、この点も注意が必要です。事業譲渡は、企業の戦略的な意思決定において重要な手段であり、慎重な検討と計画が必要です。
なお、税理士に相談すれば、事業の公正な譲渡価格を評価するための資産の評価や負債の整理を行ってくれるので、事業譲渡に伴う税務リスクを軽減させ、将来的な税務調査や紛争のリスクが軽減されるというメリットがあります。また、事業譲渡には多くの複雑な手続きが伴いますが、税理士に相談すれば弁護士等と連携してその手続きを円滑に進めるためのサポートをしてもらうことができます。
事業譲渡とは、ある特定の事業部門だけを譲渡(売り渡すなど)することです。その事業部門で営業に使っていた財産、取引先なども一緒に譲渡します。
事業譲渡は、会社を倒産から救うための手段として活用されますが、最近はM&Aの手法としても活用されています。
ここでいう「事業」について、判例では「一定の営業目的のために組織化され、有期的一体として機能する財産」と定義しています。
なぜなら、会社は、従業員、工場、取引先との関係性、金銭などさまざまな財産を組み合わせながら、1つのしくみとして機能させることで利益を生み出していると言えるからです。
事業譲渡は、会社の事業を他に譲渡(売却など)することであるのに対して、株式売却とは会社の株式を売却するものです。
事業譲渡の場合には、事業を譲渡しても会社の経営権に変更はありませんが、株式売却の場合は、会社の経営権、支配権を譲渡するものであることから、会社の経営権が変更されます。
事業譲渡について、会社法では、事業を譲渡する場合と事業を譲り受ける場合の両方について、一定の場合には株主総会の特別決議が必要であるとしています。(※後述)
事業譲渡については、①事業を全部譲渡する場合、②複数ある事業のうち重要な事業を譲渡する場合に、株主総会の特別決議が必要となります。
一方、他社から事業を譲り受ける場合には、事業の全部を譲り受ける場合に株主総会の特別決議が必要となり、事業の一部を譲り受ける場合には、株主総会の決議自体は不要となる場合があります。
事業譲渡は、不採算事業を譲渡することで、事業を再編することが期待できます。
事業を集中することで、今後の収益力を高め、譲渡代金を負債の返済に充てたり新たな投資に回したりすることもできます。
また、事業譲渡は会社の清算に活用することもできます。
事業を売却した売却益で、会社清算のための資金に充てることもできるからです。売却する事業の従業員も売却先に移ることになれば雇用を確保することができ、従業員を路頭に迷わさずに済むというメリットもあります。
事業譲渡は、事業を買ってくれる相手を見つけ、秘密保持契約を締結して交渉を行っていきます。
この交渉では、譲渡する事業の範囲を確定し、どの程度の売却代金が適当なのかを決める必要があります。
交渉で合意がまとまると、事業譲渡契約を締結し、取締役会決議や株主総会決議を経て権利移転の手続きを行います。
事業の売却先の候補を決めたら、交渉のルールを合意書として文書化した秘密保持契約を締結して、交渉を始めます。
事業譲渡は、売却する資産や負債を交渉次第で自由に決めることができますが、ノウハウ、従業員、取引先のリスト等も含めて交渉を行うことになりますから、慎重に交渉を重ねていくことが必要です。
譲渡する事業の範囲を決定したら、それがどの程度の価値のあるものなのかを計算するために、損益計算書などの財務書類を用意する必要があります。
交渉がまとまると、事業譲渡契約を締結します。
事業譲渡契約とは「利益を生み出すしくみである事業」を売買するための契約です。そのため、「○○の事業部門に関する営業」といった記載で、譲渡対象を特定します。譲渡する資産は、具体的に一覧表にしておく方がよいでしょう。また、事業を行う上で必要な許認可がある場合には、円滑に許認可を得られるように譲渡する企業が協力するといったことも明記する必要があります。
事業譲渡契約記載事項については、主に以下のような項目があります。
①事業譲渡する対象と内容 ②譲渡代金 ③表明保証 ④許認可関連事項 ⑤債務や係争の継承 ⑥競業禁止事項 ⑦秘密保持 ⑧譲渡会社に無断で権利の質入、事業譲渡することの禁止 ⑨契約の変更・解除の要件 ⑩損害賠償 ⑪協議事項 ⑫裁判管轄 |
会社法では、重要な財産の処分や重要な財産の譲受について、取締役会の決議が必要とされています。
そこで、事業譲渡や事業の譲受けが「重要な財産の処分や重要な財産の譲受」に該当する場合には、取締役会の決議が必要です。
重要な財産の処分でなければ、代表取締役の判断だけで譲渡を決定することができますが、取締役会を開催しておいた方が、後のトラブルを防ぐことができますので、無難です。
事業譲渡については、①事業を全部譲渡する場合、②複数ある事業のうち重要な一部の事業を譲渡する場合に、株主総会の特別決議が必要となります。
一方、事業を譲り受ける場合については、他社の事業を全部譲り受ける際に株主総会の決議が必要となります。
「事業の重要な一部」については、譲渡する資産の帳簿価額が譲渡会社の純資産額の5分の1を超えない場合には、「簡易事業譲渡」となり、株主総会の特別決議は不要とされています。
事業譲渡に反対の株主は、会社に株式の買取を請求する権利があります。
この権利を行使する場合には、あらかじめ株主総会で決議に反対する旨を書面で会社に通知する必要があります。
そのうえで、実際に株主総会で決議に反対する必要があります。
事業譲渡に反対する株主から買取請求をされた場合には、会社は公正な価格で株式を買い取らなければなりません。
事業譲渡の場合には、譲渡する事業に関連した資産について、個別に権利を移転させる手続きが必要となります。
したがって、譲渡する事業に関連した債務を移転するためには、債権者から個々に承諾を得ることが必要です。また、事業譲渡に伴い商号や役員を変更したり、不動産の譲受けが行われたりする場合には、その都度商業登記申請や不動産登記申請が必要になります。
事業譲渡とは、特定の事業部門だけを他の会社に売却する方法で、自社にとっては不採算部門である場合でも、相手方の会社からすれば、うまみがある場合には、事業譲渡を実現できることがあります。
また、事業譲渡は、M&Aによる事業承継でも活用されます。会社全体のM&Aがうまくいかなくても、事業譲渡であれば、買い手が見つかる可能性があります。
事業譲渡の手続きは、秘密保持契約を締結し、交渉を行い、株主総会を開催するなど、煩雑なこともありますが、事業承継を活用すれば、会社を倒産から救ったり、会社を清算する際の資金にしたり、M&Aに活用できたりといったさまざまなメリットがありますので、検討する場合には、早めにM&Aに精通した税理士やM&Aアドバイザ―等に相談することをおすすめします。
freee税理士検索では数多くの事務所の中から、事業譲渡について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
\ 事業譲渡について相談できる税理士を検索 /
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、相談することができます。