事業承継(M&A)の相談先まとめ

公開日:2018年11月01日
最終更新日:2024年03月25日

この記事のポイント

  • M&A(企業の合併・買収)とは、第三者に事業を承継させる方法である。
  • M&Aは、大規模な企業だけでなく中小企業でも、大いに活用できる手段である。
  • M&Aの相談先として、士業、金融機関、事業承継・引継支援センター、M&A仲介業者などが有効である。

 

後継者が不在で、親族内承継や従業員などへの承継が難しい場合の選択肢のひとつがM&Aです。
これまでネガティブなイメージが強かったM&Aですが、最近は中小企業においても、売る側、買う側双方にメリットがある手法として、注目を集めています。

中小企業庁も、「10年間で60万(個人事業主を含む)の第三者承継実現」を目標としており、スモールM&Aの支援に積極的に取り組んでいます。

中小企業のM&Aを活用した事業承継を成功させるためには、相談先の選定が重要です。
自力で買い手を探そうとしても、買い手企業を探すのは容易ではありませんし、相手先の買収監査(デューデリジェンス)などへの対応は、想像以上に時間と労力がかかるものです。また、契約締結までは細かな条件交渉を行う必要もあります。

ここでは、M&Aの基礎知識や相談先について確認していきます。
 

事業承継の豆知識

最近は、従業員3、4人程度の小規模な会社でも、M&Aで会社を買いたいという相談が増えてきました。スモールM&Aと呼ばれる新しいかたちのM&Aです。スモールM&Aが増加している背景には、国が本腰を入れて支援制度を整備したことも一因とされています。また、コロナショックで1つの事業に集中することのリスクが露呈し経営の考え方が変わったことも一因といえるでしょう。買い手からすれば、自社の事業の拡大にかかる時間や費用を節約することができるといったメリットもあります。
スモールM&Aは、成約価格の1億円未満のケースが珍しくなく、なかには数百万というケースもあります。
スモールM&Aも、会社の丸ごとの売買(株式譲渡・譲受)と、事業の切り出しの売買(事業譲渡・譲受)に分かれます。後継者不在で悩んでいるなら株式譲渡、コア事業に集中するために他の事業を切り出して手放すのであれば、事業譲渡を選択することになりますが、どの方法を選択するにせよ、税務や会計・財務の面からのアドバイスが欠かせません。
M&Aで会社を買い取ってもらう場合には、中小企業の場合はいくらの値段がつくのか分からないケースが多いため、以下のような方法で目安となる金額を計算しなければなりません。
①現在会社が持っている財産の価値から株価を算出しようとする純資産法
②「将来にわたって会社がどの程度収益を上げることが見込まれるか」という点に着目して、株価を算出しようとする収益還元法
いずれの方法でも株価を高くするためには、価値がなるべく上がるように会社の実力をつける努力をすることが大切です。
焦ってM&Aを行なおうとすると、相手から足元を見られて低額な譲渡価額で対応しなければならないこともあります。具体的にどのような方法で価値を上げるかについては、十分な準備期間をとり、税理士等の専門家に相談しながら進めていくことが大切です。

M&Aによる事業承継とは

M&Aによる事業承継が、今注目を集めています。
今までは、後継者が見つからないと廃業せざるを得ないケースが多かった中小企業ですが、この後継者不在問題を解決するために、M&Aのメリットが見直されてきたのです。
ただ、ひとくちにM&Aといってもその方法はさまざまです。
中小企業で最もポピュラーなのは、株式譲渡または事業譲渡により実施されますが、その他にも株式交換、第三者割当増資などの方法もあります。
それぞれメリット・デメリットがありますので、自社の事情に沿って最適な方法を選択する必要があります。

M&Aのさまざまな手法

株式譲渡
株主譲渡とは、現株主の保有する株を、相手先企業に売却する方法です。
会社の株主が変わるだけで、資産や従業員、特許権などの知的財産などは会社に残りますので、今の事業を継続することができます。
現株主(現経営者など)は、株式の売却代金を得ることができるというメリットもあります。

事業譲渡
事業譲渡とは、単一事業の全部あるいは複数ある事業の一部または全部を売却する方法です。業績の良い事業部門だけ切り離して売却する場合にも用いられる手法です。
従業員がいる場合には、いったん退職して新しい会社と雇用契約を締結し直すことになります。

株式交換
株式交換とは、相手先企業に自社の全株式を譲渡し、相手先企業から相手先企業の株式などを取得して、相手先企業の完全子会社になる手法です。

株式交換は、経営統合による企業グループ化や、企業グループ内における持ち株会社の設立のために利用されるスキームです。株式交換は、合併と比較し、元の企業は独立した完全子会社として残ることから、従業員の人事体系や社内規程などの統合を行う必要がない点がメリットとしてあげられます。

第三者割当増資
第三者割当増資とは、会社が新たに株式を発行し、それを相手先企業に引き受けてもらうという手法です。会社が新たに資金を注入する必要がある場合に利用されます。
相手先企業は、第三者割当増資によって大株主となり、持分が50%を超えれば、経営権を握ることになります。

(1)M&Aは廃業するより有利な選択肢

M&Aの最大のメリットは、言うまでもなく「事業を存続できること」です。

後継者不在という問題で廃業すれば、従業員は雇用を失いますし、取引先に大きな影響を与えることもあります。
また、単に廃業すれば会社や経営者が債務を抱えてしまうリスクもあります。
一方、M&Aを実現できれば、従業員の雇用も確保することができ、取引先も取引の継続ができることで安心することができます。

また、現経営者は株式の売却代金を得ることができますので、会社を清算するより金銭が手元に残る可能性が高くなります。

(2)小規模な「スモールM&A」も増加傾向

最近は、従業員3、4人の小規模な企業のM&Aの相談も増えています。こうした中小企業のM&Aは「スモールM&A」と呼ばれ、注目を集めています。
このような、スモールM&Aの普及を大きく増加させる理由のひとつが、国による強力なバックアップです。国は「事業承継・引継ぎ支援センター」を各都道府県に設置して、第三者承継を促してきたほか、日本政策金融公庫でも、独自の支援体制を構築しています。

参照:日本政策金融公庫「スモールM&A向け融資の活用法」

スモールM&Aでは、売上高が数千万から数億円程度であるケースも多く、買収する側にとってもM&Aについて検討するハードルが大きく下がったことになります。

(3)M&A成功の秘訣は会社の魅力

M&Aは、事業承継問題を解決する有効な手法であり、実際にスモールM&Aが成功するケースも増えていますが、すべての企業でM&Aがうまくいくというわけではありません。
債務超過だったり営業上の収支が赤字だったりすれば、会社の買い手が見つからないこともあります。

ただし、債務超過なら絶対にM&Aが無理であるというものでもありません。
その会社の技術力や開発力に魅力があれば、買い手が見つかる可能性は十分あります。
「赤字だし、M&Aなんてどうせ無理だろう」と最初から諦めてしまわずに、M&Aの専門家に相談してみることをおすすめします。

M&Aに関する相談先

M&Aを実行するためには、専門家のサポートが不可欠です。
たとえば、会社を売却するためには、買い手を探さなければなりませんし、買い手が見つかったら条件を交渉したり契約を締結したりする必要があるからです。
それでは、どのような相談先があるのでしょうか。

(1)税理士・公認会計士・弁護士

あらかじめ買い手が見つかっている場合には、弁護士や税理士に相談して、M&Aの具体的な条件交渉や契約内容について支援をしてもらいましょう。
M&Aにおいては、税務や会計・財務の面からのアドバイスが欠かせないからです。
また、後々のトラブルを回避するためにも、売却の条件などを明確にしたり、秘密保持契約、基本契約、本契約の内容について細かい精査をしたりすることも重要です。

(2)金融機関

地元の金融機関には、中小企業のM&Aを支援しているところがあります。
そのようなサポートを行っている金融機関が見つかれば、相談してみるのもよいでしょう

参照:みずほ銀行「M&Aアドバイザリー業務」

また、日本政策金融公庫(国民生活事業)では「スモールM&A向け融資制度」を通じて、スモールM&Aを支援しています。
①中期的な事業承継を計画し、現経営者が後継者と共に事業承継計画を策定している、②融資後おおむね7年以内に事業承継を実施することが見込まれる、など一定の要件に該当する場合には、低金利で融資をうけることができます。

参照:日本政策金融公庫「スモールM&A向け融資の活用法」

(3)事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターとは、中小企業庁が各都道府県に設置している機関で、事業承継に関するさまざまな相談に対応しています。
事業承継・引継ぎ支援センターでは、M&Aの相談も受け付けています。

参照:中小企業庁「事業承継・引継ぎ支援センター」」

2020年4月からは、後継者人材バンクにおいて後継者のいない小規模事業者や個人事業主と、創業を希望する個人をマッチングする事業がスタートしました。

創業希望者においては創業初期の困難な事業立ち上げを円滑に行うことが可能となり、後継者のいない小規模企業や個人事業主は、意欲ある後継者に事業を引き継ぐことで、事業承継を行うことができるというメリットが期待されています。

参照:事業承継・引継ぎ支援センター「後継者人材バンク」

(4)M&A仲介業者

M&Aの仲介業者に相談するという方法もあります。
最初の検討段階から相談することができ、買い手探しやマッチング、条件交渉、最終契約までトータルで支援を受けることができるというメリットがあります。
仲介業者には、譲渡する側と譲り受け側の双方と仲介契約を結ぶ「仲介者」と、どちらか一方とアドバイザリー契約を結ぶ「フィナンシャル・アドバイザー」に分けられます。
M&A仲介については、国も事業承継・引継ぎ支援センターとの連携を公募し、許諾が得られたものについては、M&Aマッチングプラットフォームに掲載できるようにして、連携を開始しています。この取り組みにより、仲介では買い手が見つけられなかった売り案件を、マッチングプラットフォームの掲載によって拾い上げるケースも増えています。

まとめ

以上、事業承継(M&A)の相談先について、ご紹介しました。M&Aにおいては、税務や会計・財務の面からのアドバイスが欠かせません。会社に顧問税理士がいる場合には、早めに相談をしましょう。
もし会社の顧問税理士がいない場合でも、M&Aを活用した事業承継をサポートしてくれる税理士に相談し、1日でも早く準備を開始することをおすすめします。
なお、2021年より中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」が開始されました。M&Aの仲介業務を行なっている、一定の要件を満たしたM&Aアドバイザーや士業事務所、金融機関等が登録されています。M&A支援機関によってM&Aの仲介がなされると、補助金の対象となるなどのメリットがあり、この中から探すことが近道です。

参照:中小企業庁「M&A支援機関」

M&Aについて相談できる税理士をさがす

freee税理士検索では数多くの事務所の中から、M&Aについて相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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この記事の監修者:InnOpe合同会社

監修者

藤山 祥紀ふじやま よしのり

InnOpe合同会社 代表
幅広いスキルセットで、お客様のM&Aを全力でサポートします

事業承継の際に発生する問題は、個々のケースによってさまざまです。
法律や税務の専門知識が必要となる課題も多く、これらに現経営者が1人で対応するのは困難です。
とくにM&Aによる事業承継は、会社の売買という大きな取引となりますから、将来のさまざまなシチュエーションを念頭に置いたうえで、細かい事項を慎重に検討する必要があります。
したがって、事業承継を進める際には、事業承継の相談機関を活用していくことが重要なポイントとなります
InnOpe合同会社は、M&Aにおけるさまざまな課題を整理し、適切な意思決定を行うためのアドバイスやサポートを行っております。
全国を対象にサービスを提供させていただいておりますので、まずはお気軽にお問合せください。

 

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