公開日:2024年05月08日
最終更新日:2024年05月08日
変動損益計算書とは、費用を変動費と固定費に分けた損益計算書のことです。通常の会社の決算では、変動損益計算書を作成することはありませんが、この変動損益計算書を作成すると実にいろいろなことが分かります。
業績管理に役立つ情報が満載ですから、ぜひ活用しましょう。
変動損益計算書とは、費用を変動費と固定費に分類して作成する損益計算書です。
売上高、変動費、固定費、限界利益の関係を図に表すと、以下のようになります。
変動損益計算書を作るためには、費用を変動費と固定費に分ける必要があります。
変動費とは、販売業の仕入原価や製造業の原材料費のように、売上の変化に比例して変動する費用、固定費とは、従業員の給料のように、売上の変化に関係なく、一定の額に発生することが固定された費用です。
ただし、実際に変動費や固定費と分けようとするとなかなか難しいものです。変動費や固定費であることが明らかな場合はいいのですが、多くの費用は変動費部分と固定費部分があるので、正確にきっちり分けるのは不可能といってよいでしょう。
そこでまずは、ある程度大まかにやってみて、必要に応じて細かく見ていくという方法がおすすめです。
なお、変動費と固定費を区分する方法もいくつかありますが、まずは「勘定科目法」で区分します。
原材料や外注加工費、仕入原価、電気料や水道料のように変動費であることは明らかな場合は変動費とします。
このように費用を変動費と固定費に分類することを「固変分解」といいます。以下の記事では、業種別の固定費・変動費をご紹介しておりますので、参考にしてください。
なお、営業外収益の費用区分についてもいくつかの方法がありますが、営業外収益と営業外費用を相殺して、その差額を固定費とする方法がもっとも分かりやすくおすすめです。
変動損益計算書を作ると、変動費や固定費の変化で必要な売上高がどう変わるのか、どれだけ費用をかけると利益がどうなるのかが分かります。
売上高から変動費を差し引いたものが「限界利益」、限界利益から固定費を差し引いたものが利益です。限界利益とは、生産や販売が1個増加することによって増える利益を示します。
固定費は、生産や販売が増加しても増加しませんから、限界利益が増加すれば、そのまま経常利益が増加することになります。
そして、この限界利益から固定費を差し引いて、まだ余力があれば利益が出ます。限界利益が固定費を吸収できなければ、その分だけ赤字になります。
また、変動損益計算書から限界利益率や損益分岐点売上高、損益分岐点操業度、経営安全額などの指標を計算することもできます。
限界利益率:売上高が増減した時の利益が分かる。 損益分岐点売上高:利益を出すための売上高が分かる。 |
変動損益計算書の基本計算式は、「売上高-変動費-固定費=利益」でした。
この計算式を変形すると、「売上高-変動費=利益+固定費」となります。
そして、「売上高-変動費=限界利益」ですから、限界利益は「利益+固定費」となります。つまり、限界利益は、売上高に比例して増減する利益です。
限界利益の売上高に対する割合を「限界利益率」といい、以下の計算式で計算します。
限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高 |
限界利益率をアップさせることができれば、利益は増加するということです。
限界利益をアップさせるためには、販売価格に占める変動費の割合を下げること、販売価格を高角することなどを検討します。
損益分岐点とは、収益(売上高)と費用(変動費・固定費の合計)が等しくなる点、つまり利益も損失も生じない点です。
損益分岐点を上回る場合には利益が生じ、下回る場合には損失が生じることになります。
損益分岐点売上高は、売上高に占める変動費の構成比を変動費率と定義すると、以下のような計算式が成り立ちます。
売上高 - 変動費 - 固定費 = 利益 売上高(1 - 変動費率) - 固定費 = 利益 |
損益分岐点における利益はゼロであることから、損益分岐点売上高は以下の等式で表すことができます。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ {1 - (変動費率)} |
損益分岐点売上高は、販売価格や原材料価格の変動費率の変化や、減価償却費の増加による固定費の増加等によって変動します。
売上高が損益ゼロになる損益分岐点における売上高を超える金額が少なければ少ないほど、限界利益は少なくなりますから、経営状況は厳しくなります。
そこで、損益分岐点売上高と実際の売上高の比率である「損益分岐点比率」が低いほど、売上高の減少に耐えることができ経営は安定していると判断することができます。
損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100 |
損益分岐点比率は、業種によって異なるので、他社と比較する際には、同業他社と比較することが大切です。
さらに、中小企業庁の調査によれば、大企業の損益分岐点比率は2019年度時点で60.0%ですが、中規模企業では85.1%、小規模企業では92.7%となっており、企業規模によっても差があります。
参照:中小企業庁「中小企業の財務基盤・収益構造と財務分析の重要性」
変動損益計算書とは、すべての費用を変動費と固定費に分けて表示する損益計算書です。
変動損益計算書を作成すると、会社の損益構造を把握することができます。
固定費より粗利益が大きければ利益が出ますし、粗利益より固定費が大きければ損失となります。
変動損益計算書を作成する際には、変動費と固定費の区分が大変ですが、税理士に相談して最も効率の良い方法で作成することをおすすめします。
freee税理士検索では、数多くの事務所の中から、変動損益計算書について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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