公開日:2019年07月04日
最終更新日:2022年06月20日
会社を廃業する時には、解散・清算の手続きが必要です。
個人事業主を辞める場合にはそれほど面倒な手続きは必要ありませんが、会社の場合にはそういうわけにはいきません。
原則的には、法律に従って会社を解散・清算しなくてはならず、そのためにはさまざまな手続きが必要となります。この事務処理は手間がかかるので、税理士や司法書士などの専門家に任せることをおすすめします。
会社を廃業するためには、いかにダメージを少なくするかを検討することが大切です。また、会社を終わらせる方法は、廃業だけではなく破産や倒産までさまざまな形態がありますから、どのような方法をとるのが最善かという視点も必要です。
「業績は厳しいが、大きな負債を抱えているわけではない」という状況であれば、自主廃業は比較的簡単に進めることができますが、廃業をせずにM&Aを検討した方がよいケースもあります。
廃業を考える理由は、人によって様々です。
中小企業庁のデータによると、「業績が厳しい」が最も多く37.3%、次いで「後継者がいない」が、33.3%、「会社に将来性がない」が30.7%と続きます。
参照:中小企業庁委託「企業経営の継続に関するアンケート調査」(2016年11月、(株)東京商工リサーチ)
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ひと昔前は、後継者問題にそれほど悩むケースはありませんでしたが、経済が豊かになり職業の選択が広がったことから、子どもが「跡を継がない」というケースが増加したのです。また、少子化によってそもそも子どもがいないケースもありますし、能力的に後継者が継げないというケースも増えています。
個人事業主と変わらない程度の会社の規模であれば、比較的簡単に自主廃業をすることができます。
売掛金や買掛金も少額で、関係者の少ないケースが多いと考えられるからです。
したがって小規模な会社が廃業する際には、計画的に在庫を徐々に減らしながら、売掛金・買掛金を清算し、必要な手続きを行っていくことになります。
借入金の問題については、借入先と相談し少しずつ返済することが認めてもらえば、大きな問題にはならないでしょう。
銀行からの借入れがある場合や、取引先の数が多い場合には、それなりの手続きが必要となります。
取引先の数が多ければ、売掛金や買掛金の清算についても交渉が必要となりますし、オフィスやテナントからは保証金を変換してもらう必要があります。
さらに、従業員が多ければ、解雇予告手当などが必要になることもあります。
したがって、利害関係者が多い場合には、税理士や弁護士に相談してサポートをしてもらうことをおすすめします。
未返済の多額の借入金が残っている状態であれば、事業を単に止めるだけでは廃業することは難しくなります。
ただし、会社のある程度の資産があれば、清算は比較的簡単に進めることができます。
明らかに借入額が多いときなど、廃業ではなく倒産を選択すべきケースもあります。ときには、債権者側から破産などの倒産手続きを申し立てて、借入金の返済を確保しようと動く場合もあります。そうなると、事実上の廃業のように、廃業を行うか、いつ廃業するかなどを自由に決定することはできなくなります。
したがって、できれば借入額が増大する前に清算を検討することが、非常に重要となります。
後継者がいないケースでは、すぐに廃業を決めずにM&Aという方法について検討するのもひとつの手です。
会社を廃業すると、従業員の雇用も確保できなかったり取引先に影響が及んだりすることがあります。
しかしM&Aなら、従業員の雇用も継続することができ、経営者の手元にまとまった資金が入るので、その後の生活が安定するというメリットがあります。
業績が安定していて借入金などがない会社は、M&Aが成功するケースが多いので、顧問税理士やM&Aの仲介業者などの専門家に相談してみましょう。
会社や事業の今後の展開や、自分自身の人生を考えて、廃業を選ぶのも懸命な判断です。負債を払いきれずに倒産してしまうより、余力があるうちにやめることは失敗ではなく、将来を賢く見極めたともいえるのではないでしょうか。
通常の会社を解散・清算する手順は、大きく「解散」と「清算」の2つのステップが必要です。
【解散】 ①事業を縮小し、次の収入減を確保する。 株主総会による解散決議と解散登記を行う 【清算】 ②借入先と交渉する ③オフィス等の解約を行う ④廃業の30日前までに従業員に解雇通知をする (解雇予告手当の方法も検討する) ⑤売掛金・買掛金の清算 ⑥仕入れの停止 ⑦備品や在庫の売れ残りの処分 ⑧清算結了の登記 |
なお、これらの手続きの他、解散時と清算結了時の確定申告、残余財産確定事業年度の確定申告などの税務申告や社会保険などの手続きも必要になるので、解散登記から清算結了までの期間は2カ月以上かかることになります。
なぜなら、債権申出の公告の期間を2カ月以上とらなければならず、また登記の申請をしてもすぐに登記が完了するわけではないからです。
取引先が多かったり、固定資産などがあったりする場合には、解散・清算手続きに数年かかるケースも珍しくありません。
廃業手続きには、解散登記・清算人選任登記などの登記費用のほか、官報告知料金などもかかります。このほか、税理士や司法書士に手続きを依頼する場合には、その報酬もかかることになります。
項目 | 費用 | |
---|---|---|
登記費用 | 解散登記 | 3万円 |
清算人選任登記 | 9,000円 | |
清算結了登記 | 2,000円 | |
登記簿謄本(2通) | 1,200円 | |
印鑑証明書 | 450円 | |
官報公告料金 | 約3万2,000円 | |
合計 | 約7万2,560円 | |
項目 | 報酬 | |
司法書士 | 5万円~10万円 | |
税理士 | 20万円~30万円 | |
合計 | 25万円~40万円 |
以上、会社の廃業(解散・清算)の手続きについて、ご紹介しました。
ここでご紹介したように、会社の廃業手続きは、会社を設立する時の何倍も煩雑です。取引先や従業員のことも考えなければならない社長が1人で行うのは難しいため、登記手続きは司法書士、決算書の作成や税務署への届出などは税理士に依頼して、スムーズに廃業手続きを進めるようにしましょう。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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