公開日:2019年12月21日
最終更新日:2022年04月12日
ストックオプションとは、新株予約権のひとつです。新株予約権のうち「企業と雇用関係にある使用人のほか、企業の取締役、会計参与、監査役及び執行役に準ずる者」に対して、労働の対価として付与されます。
労働の対価として付与された株式を市場で売却すれば、売却価額から購入価額を差し引いた分が利益となります。
ストックオプションとは、新株予約権を労働の対価として与えるものをいいます。
通常は、新株予約権を取得するためにはお金を支払う必要がありますが、ストックオプションの場合には、会社に労働力を提供しその見返りとしてストックオプションを入手します。
購入した株式は市場で売れば利益を得ることができるので、付与された従業員にとっては会社の業績向上に対してモチベーションが高くなりますし、会社は資金を流出させることなく報酬を支払うことができることから、広く活用されています。
なお、ストックオプションは、従業員に労働の対価として付与する場合だけでなく、会社が受け取る財貨またはサービスの取得の対価として、従業員以外の者に付与するケースもあります。
先ほど「ストックオプションは、新株予約権の一種である」とご紹介しましたが、両者は同じ意味ではありません。
新株予約権は、発行した会社に対して権利を行使することで、あらかじめ定められた条件でその会社の株式の交付を受けることができる権利です。
一方、ストックオプションは、この新株予約権のうち、財貨またはサービスの対価として付与されるタイプのものです。つまり、「報酬として付与する新株予約権」ということができます。
・新株予約権 発行した会社に対して権利を行使することで、あらかじめ定められた条件でその会社の株式の交付を受けられる権利 ・ストックオプション |
新株予約権なのかストックオプションなのかは重要なポイントであり、会計処理を行う上でも大きく影響しますので、混同しないように注意しましょう。
従業員にとっては、報酬とストックオプションが連動されることで、金銭でもらう給与や賞与では得られないようなスケールの大きい収入を、自分の頑張り次第で手に入れる可能性があります。従業員が業績アップや株価を意識するようになるという大きなメリットがあります。
会社にとっても、ストックオプションは資金負担が伴わずに優秀な人材を確保できる可能性もあります。
ストックオプションは、場合によっては、株価の下落などの可能性があり、労働の対価として十分でなくなるリスクもあります。また付与のルールが明確でないと、付与された者とそうではない者の間で不公平感が生じ、それがモチベーションの低下につながるというリスクもあります。
したがって、付与のルールや制度設計については、このようなリスクを回避できるよう十分検討する必要があります。
上場を目指す会社の場合には、優秀な人材が欲しくても、まだそれほど資金がないというケースがあります。このような時に、会社が従業員にストックオプションを付与するという方法があります。上場達成後に権利を行使すれば、行使価格と株価の差額が従業員の利益になるので、高給を提示しなくても優秀な人材を確保することが可能となります。
従業員は、会社の業績を向上させれば株価が上昇してより多くの利益を得ることができるようになるので、会社の業績向上のために努力をするというわけです。
増資前に代表取締役にもストックオプションを付与しておけば、代表取締役の議決権比率の低下も防ぐことができます。
ストックオプションは、上場会社においても活用することができます。
企業価値の向上は上場会社の課題のひとつですが、企業価値を向上させるためには、長期的な業績向上のためのモチベーションを従業員に与えることが効果的です。
ストックオプションを活用することで、従業員が自ら業績を上げ、それに伴い株価が上がれば、ストックオプションの権利行使時の収入がそのまま従業員の利益につながります。
ただし、この時には従業員に金銭的な負担が生じないように注意する必要があります。
たとえば、株価が万が一下落すれば報酬額が減少してしまうことになります。そこで、報酬比率は一定以下にするなどの注意が必要です。
ストックオプションは、外部協力者に発行することで役務対価として活用することもできます。
2019年に施行された「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律」において、ストックオプションの付与対象者が拡大されました。
従来はストックオプションの対象は「取締役、執行役及び使用人」に限られていましたが、「一定の要件を満たす外部協力者」もストックオプションの付与対象者として認められるようになったのです。
たとえば上場を目指す会社が、コンサルタントにサポート業務を依頼した場合、成功報酬としてストックオプションを付与するのです。
コンサルタントの企業価値向上へのモチベーションもアップしますし、目標達成のための刺激策となり得ます。
これまでストックオプションの意味やメリット・デメリットについてご紹介してきましたが、それでは、ストックオプションを発行したり権利行使したりする場合には、どのような手続きが必要となるのでしょうか。
ここでは、発行手続きや権利行使を要求された時に必要な手続きについて、ご紹介します。
ストックオプションを発行するためには、まずストックオプションの目的に応じて内容や払込金額、払込をしない場合にはその事項、払込期日などの募集事項を決めなければなりません。
ストックオプションには、主に以下のような種類があり、目的に合わせて組み合わせていくことになります。
①株式報酬型ストックオプション 株式報酬型ストックオプションとは、役員や従業員への報酬が目的のストックオプションで、株式を報酬として受け取ることを目的とし、オプションの権利行使価額を低く設定して、実質的に株式と同等の価値を付与対象者に与えるものです。ここでは、役員や従業員の追加金銭負担が生じないようにする必要があります。 ②通常型ストックオプション ③有償ストックオプション |
ストックオプションについて権利行使をされたら、会社は株式を引き渡すことになりますが、この時には、新株発行だけでなく会社が所有している自社株式を交付することもできます。万が一株価が下落した時でも、、権利を行使しなければ損失はありません。
ただし、ストックオプションの権利を行使して多額の利益を得た後に、従業員がすぐに会社を辞めてしまうリスクがありますので、あらかじめ対策を立てておくことも必要です。
ストックオプションを付与したときは、役員報酬または給与を費用として計上し、対応する金額をストックオプションの権利行使または執行が確定するまでの間は、新株予約権として貸借対照表の「純資産の部」に計上します。
「ストックオプションを役員に対して付与した。ストックオプションの公正な評価額は、200万円である。」
ストックオプションを付与したときには、借方に役員報酬または給与を費用として計上します。貸方には「新株予約権」として計上し、権利行使または執行が確定するまでの間は、新株予約権として貸借対照表の「純資産の部」に計上されます。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
役員報酬 | 2,000,000 | 新株予約権 | 2,000,000 |
ストックオプションの費用計上額は、ストックオプションの公正な評価額のうち、「権利付与日」から「権利確定日」までの期間に対して、当期に発生したと認められる額です。
なお、「公正な評価額」は以下の計算式で計算します。
ストックオプションの公正な評価単価×ストックオプションの数 |
---|
※公正な評価単価
未上場の企業の場合には、公正な評価単価の見積が難しいことから以下の計算式で求める方法が認められています。
自社の株式の評価額-権利行使価格 |
---|
ご紹介してきたように、ストックオプションは、上場会社だけでなくベンチャー企業などの非上場会社でも活用することができます。十分な報酬・給与を支給する資金的な余裕がないなか、報酬・給与の補填的な意味合いでストックオプションを付与するわけです。
しかし十分な知識がないまま発行をしてしまうと、後々トラブルにつながることがあります。
ストックオプションの活用を検討する際には、税理士等に相談してアドバイスを受けてから発行するようにしましょう。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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