SWOT分析とは|分析事例、やり方を分かりやすく

公開日:2021年10月25日
最終更新日:2022年03月23日

この記事のポイント

  • SWOT分析とは、自社の事業環境分析を行う際に用いられる手法である。
  • SWOT分析は、①強み(Strengths)・②弱み(Weaknesses)・③機会(Opportunities)・④脅威 (Threats)の各要素の頭文字をとったもの。
  • SWOT分析で各要素をクロス分析すると、そこから具体的な戦略を導き出すことができる。

 

SWOT分析とは、自社の事業環境分析を行う際に用いられる手法で、経営戦略のツールとして知られています。SWOT分析は理論や手法がシンプルで、中小企業には取り入れやすい手法です。
SWOT分析は、自社の経営戦略を策定する時だけでなく、金融機関から根拠のある経営改善計画書の提出を求められた時などにも、活用することができます。

SWOT分析とは

SWOT分析は、①強み(Strengths)・②弱み(Weaknesses)・③機会(Opportunities)・④脅威 (Threats)の各要素の頭文字をとったもので、事業環境分析を行う際に用いられる手法です。
環境を分析する時のSWOT分析は単一事業のケースで特に有効であり、大企業の経営戦略においては、現在はあまり使用されない手法です。

市場における自社の①強み(Strengths)、②弱み(Weaknesses)、環境変化による③機会(Opportunities)、環境変化によって④脅威 (Threats)となる要素を書き出して、それをもとにどう行動すればよいのかを考えるためのツールで、いわゆる経営戦略を考えるために活用されます。SWOT分析は、学派や流派によって意味するところは少しずつ異なります。ですから「これが、正しいSWOT分析」といえるものはありませんが、ここでは一般的なSWOT分析についてご紹介していきます。

①自社の内部要因である強み (Strengths)
②自社の内部要因である弱み(Weaknesses)
③外部環境で今後の可能性やチャンスを示す機会(Opportunities)
④外部環境で今後のリスクや厳しい状況を示す脅威 (Threats)

 

(1)SWOT分析の基本的な体系図

SWOT分析は、自社を取り巻く外部環境を「機会(Opportunities)」「脅威 (Threats)」で分析し、自社の内部要因を「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」で分析する手法ですがこの4つの要素を単に整理するだけでは、事業環境分析まで落とし込むことはできません。
そこで、各要素をクロス分析し、そこから具体的な戦略を導き出す「クロス分析」が有効とされます。

強み
Strengths
弱み
Weaknesses
自社において日頃から感じている「強み(今後の成長につながりそうな要因)」の整理 自社内において日頃から感じている「弱み(成長のネックになっている要因)」の整理
機会
Opportunities
機会×強み
=積極的戦略
機会×弱み
=改善戦略
自社における今後の「機会(ビジネスチャンス)」の整理 今後の可能性、チャンスに自社の強みを活かした具体策 今後の可能性があるのに「弱み」がそれを阻害している場合にそれを改善するための具体策
脅威
Threats
脅威×強み
=差別化戦略
脅威×弱み
=縮小戦略
自社における今後の「脅威」の整理 今後の脅威が想定される場合、自社の「強み」を活かした差別化を図るための具体策 今後の脅威につながりそうなリスクを打破するための具体策

上記のように、4つの要素をクロス分析し、強みが機会となる要素、強みが脅威となる要素、弱みが機会となる要素を記述することで、企業の特徴をより明確にした中長期の収支計画に落とし込むことができます。

(2)SWOT分析の目的

SWOT分析は、目的によって使い分けることでより具体的なSWOT分析を行うことができます。
通常の経営分析として行う場合には、まず外部要因の「脅威」を検討し、次に「機会」分析を行い、市場や消費動向、需要の動きなどを整理します。そして、内部要因である「弱み」分析をし、成長過程でネックとなっているポイントを整理します。そして最後に「強み」分析を行います。

通常の経営分析として用いるSWOT分析は、事業が多角化している事業であれば、その事業ごとにSWOT分析をすることで効果が期待できますが、事業が多角化されていない中小企業を全体像で分析してもあまり効果は期待できません。

そのような場合には、重点商材(取扱商品のなかで今後重点強化したい商材にターゲットを絞ったSWOT分析)や、重点顧客(主要顧客にターゲットを絞った顧客分析)、新規事業(計画段階で行うSWOT分析)などが有効です。
このように目的を明確にすることで、より具体的なSWOT分析が可能となり、実効的な計画書の策定が可能となります。

事例:重点商材(取扱商品のなかで今後重点強化したい商材にターゲットを絞ったSWOT分析)

強み
Strengths
弱み
Weaknesses
本商材を強化するうえでの強み 本商材を強化するうえでの弱み
機会
Opportunities
機会×強み
=積極的戦略
機会×弱み
=改善戦略
本商材が機会・チャンスにつながる根拠 積極的に商材に取り組むための具体策 マーケットの期待に対応できない自社の課題
脅威
Threats
脅威×強み
=差別化戦略
脅威×弱み
=縮小戦略
本商材が脅威につながる可能性 本商材の脅威を強みでカバーするための具体策 徐々に手を引く対策の検討

 
脅威:商材自体の市場でのマイナス要因を整理
機会:商材をどうすればさらに成長させることができるか整理
弱み:競合商品と比較したうえでの弱み
強み:競合商品と比較したうえでの強み

(3)SWOT分析は中小企業にこそ必要

SWOT分析は、自社独自にフォーカスすることができる経営分析の手法です。たとえ業界や業種が同じでも、独自の戦略をなしうることが可能である、というのがSWOT分析の基本的な理論です。自社のいる業界の常識や価値、自社の規模やレベルの課題点を一番よく知っている経営者が、SWOT分析を通じて「脅威」と「機会」を念入りに分析し、「マーケットに沿った強み」を整理することで、自社独自の経営戦略を立案することが可能となります。
その意味でSWOT分析は、中小企業だからこそ行うべき経営分析の手法であるということができます。

(4)SWOT分析を活用した経営計画書の作成ステップ

SWOT分析を活用した経営計画書の作成は、大きく6つのステップに区分することができます。なお、ご紹介するのは大まかなステップとその内容となりますので、自社の状況やニーズに合わせて適宜ステップを追加(省略)し工夫することが必要です。

工程 内容
第1ステップ SWOT分析の事前準備として、必要な売上、必要な利益をチェックし現在の業績と比較します。そして、必要な利益を得るためには、どのくらいの粗利を増やさなければならないのかを明確にします。
この時、場合によっては専用の人材確保が必要となるかもしれませんし、戦略によっては原価が変わることもあります。これらの要素もすべて加味して概算数値を出してみます。ただしこの時点では、あくまでも概算数値であるので、詳細な見積もりは必要ありません。
第2ステップ SWOT分析を実施します。
商材につながる「機会」を探り、潜在的な「強み」を探ります。
「積極戦略」で具体的な商材戦略やそれを開発するための戦略を検討します。
計画には、厳しい現実を見せる「脅威」を反映した現状推移も反映させます。
各商材の大まかな粗利を決定し、ターゲット顧客、販売チャネル、プロモーションを決定します。
第3ステップ 体系図を策定します。
まずSWOT分析で導き出した「積極戦略」「縮小戦略」「改善戦略」を記載します。次にそれらを3か年で構築する対策に分類し箇条書きにして、数値目標や戦略項目を記載します。
第4ステップ 中期経営計画を策定します。
SWOT分析の核戦略から3か年の売上、利益を予測します。
次の業績以外の重要な指標や目標を設定します。
「機会」と「脅威」の分析結果から、市場の予測をします。
「クロス分析」の結果から、どのような「事業展開」を行うのか「設備投資」はどうするか、「商品戦略」はどのように実施するかを記載します。
売上区分は、商材事でも顧客チャネルごとでも事業所ごとでもOKですが、販売費及び一般管理費は科目に合わせて変更していきます。
クロス分析で新規事業の売上を予定している場合には、それも追加します。
第5ステップ クロス分析の「戦略」を反映した中長期収支計画書を策定します。
前期業績を記入します。
現状推移で脅威を反映した場合の3年後の数値を記載します。
中期3カ年の売上と粗利を記載します。
戦略を実施するうえで必要となる原価、経費等もあわせて記載します。
中長期収支計画書は、その過程を年度ごとにある程度整理することが重要です。
たとえば、「1年目10件、2年目20件、3年目30件」といった曖昧で根拠のない目標を設定しても、ほとんど達成できません。そこで、詳細かつ理論的な対策を計画に盛り込む必要があります。

第6ステップ 今期の経営理念、重点具体策、アクションプランを決定します。
中期計画で初年度に実施する重点具体策を記載します。
アクションプランをモニタリングする期日やモニタリング項目を記載します。進捗状況から修正アクションプランの策定を行います。
これらのプランは、モニタリングによってより現実的なPDCAを回さなければなりません。

(5)SWOT分析のやり方・ポイント

SWOT分析は、「SWOT」だからといってこの順番で行う必要はありません。
とくに中小企業の場合では、まず「O(機会)」から始めるのがおすすめです。そして、「O(機会)」が使える「S(強み)」について議論します。
次に「「脅威 (Threats)分析」」「W(弱み)」の順番で行う「OSTW」の順で進めるケースもありますし、強み弱みに時間がかかることが予想される場合には、「TOWS」の順で進めるケースもあります。

SWOT分析①「強み (Strengths)分析」
SWOT分析における強みは、いわゆる「自社の良い点」という意味ではありません。良い点が戦略に活かせないなら、それは強みということはできません。つまり強みのポイントは、「戦略的に、それを活かすことができるか」つまり「生産性向上に使える具体的な経営資源といえるか」という意味です。
強みは、「強みにつながるサービス体制とは何か」「強みにつながる専門性、知識、熟練度は何か」強みにつながる対応力は何か」「強みにつながる意思決定のスピードはどうか」といったチェック項目に沿って検討します。
SWOT分析②「弱み (Weaknesses)分析」
SWOT分析における弱みは「事業の欠点」「改善点」ではなく、今後事業を成長させるうえでネックとなる事項、つまり「機会、可能性に使えない経営資源は何か」です。
「競合と比較して、自社が明らかに劣っているものは何か」「顧客開拓、企画力で弱みは何か」「顧客からのクレームで多い項目は何か」といったチェック項目に沿って検討します。
ただし、この「弱み」にはあまり時間をかけないことが大切です。時間をかけて追求し過ぎると、「できない理由」が正当化されてしまうリスクがあるからです。
SWOT分析③「機会 (Opportunities)分析」
機会とは、顧客ニーズやニッチな商品・サービスを見つけ、顧客が増えて儲かることです。
しかし中小企業の場合には、この「機会」がなかなか出てことがあります。

そのような場合には「タラレバ」の視点からポイントを整理すると、そこから新しい視点が生まれることがあります。
たとえば、「今後の社会的なニーズの変化で、何がチャンスとなり得るか」「SNS等を活用すれば、どのようなチャンスが現れるか」「WEBをどのように活用したら、どのようなエリア拡大が可能か」「顧客の不便さを解消する商材やサービスについては、どのような点を強調すれば販売増につながるか」といったチェック項目に沿って検討します。

SWOT分析④「脅威 (Threats)分析」
脅威とは、顧客が減って儲からなくなること、つまり「このままでは、どれくらいの数値的なマイナスが考えられるか」ということを議論することです。時代の流れ、商品サイクルから具体的に「何のせいで、どのくらい脅威になるのか」を検討します。「クラウド、SNS等の普及で、自社にどのような脅威が現れるか」「ライフスタイルの変化で脅威となるとしたら、どのようなことか」「競合の動きが、自社のマーケットにどのような脅威をもたらすか」といったチェック項目に沿って検討します。
SWOT分析⑤「機会」×「強み」:積極戦略
外部要因である「機会」と、内部要因である「強み」をどのようにリンクさせれば、具体的な戦略に結びつくかを整理します。積極戦略は、数値が入ったイメージがわくような戦略でなければならず、様々な視点から可能性を導き出していきます。
「視点を変えたら、自社保有の技術を求める業界・ユーザーはどこか」「同業他社がやっていないことで、自社が実際に続けていること、顧客評価が高いことは何か」「商品・サービスの特性から、自社にも提携先にもwin-winの関係性を築くことができる業界はどこか」といったチェック項目に沿って検討します。
SWOT分析⑥「弱み」×「脅威」:縮小戦略
外部要因である「脅威」と、内部要因である「弱み」は、ネガティブな戦略をイメージすると思いますが、実際にはそれだけではなく「このままでは大変なことになるから、大幅な経費削減を行う」「脅威を回避するために、緊急な取り組みを行う」など、迅速な戦略が明確になることが多くなります。
SWOT分析⑦「機会」×「弱み」:改善戦略
改善戦略は、「市場やニーズはあるのに、内部の弱みがネックとなって実現できないもの」の対策を検討することになりますので、中期計画が中心となります。
まずは、顕在化している弱みを改善する対策を中期計画に落とし込んでいきます。

たとえば、弱みを克服するためには、社内の人材ではなく新規採用が必要となるのか、その場合賃金の問題で採用できないなら、給与体系の変更が急務となります。また、資金がネックになるのであれば、金融機関に交渉してリスケを行うなど資本強化対策等を検討することになります。

SWOT分析⑧「脅威」×「強み」:差別化戦略
差別化戦略は、市場やニーズが明らかに縮小しているといった脅威に対して、自社の強みをどう生かしていくかという戦略を検討することになります。撤退する同業者の吸収合併、他社とのコラボ、可能性のある分野へのシフトなどが考えられます。
この時には、市場の未来を冷静に分析する必要があります。可能性のある市場であれば、大手や競合が介入してくる可能性がありますし、かと言って衰退する市場であれば、その戦略が痛手となるリスクがあります。

ニッチな市場で他社が介入していないなかで事業展開すれば、このような事態を避けることができるので、十分な勝算が見込めるかもしれません。
いずれにせよ、市場分析は冷静に行うことが重要です。

(6)SWOT分析の事例

ここで、SWOT分析の事例をご紹介します。
SWOT分析は、まずはワークショップのような形で意見交換を行い、そのうえで課題を整理していくことからスタートします。

ここでは、分かりやすくホテル業を例にとります。
観光地としてあまり知名度が高くないエリアのホテルです。
ワークショップのような形で、従業員から強み・弱み・機会・脅威に関する意見を聞きます。

S(強み) W(弱み)
・首都圏から2時間弱という立地
・新しい施設
・サービス力の高さ
・美味しい食事
・レジャー施設が近い
・知名度が低い
・集客力がない
・広告予算がとれない
・高速のインターチェンジから遠い
・温泉施設などがない
O(機会) T(脅威)
・カヌーの川下りのイベント
・ウォーキング客の増加
・秋祭りの集客力
・登山コースの整備
・首都圏の日帰り客の増加
・近隣の観光地の知名度の高さ
・新型コロナによる景気悪化
・外国人観光客の減少
・近隣の新規ホテル
・コロナ後の海外旅行のニーズ

 
ここまで意見が出たら、次はホテルが提供する価値を考えてみます。
顧客は、なぜホテルにお金を払って泊まろうとするのでしょうか。「泊りがけでも見たいもの、体験したいものがあるから」でしょうか。それとも「ホテルに泊まること自体に価値があるから」でしょうか。
仮に「体験したいものがあるから」であれば、イベントが開催される時にはホテルをフル稼働させてその価値を提供します。また「ホテルに宿泊すること自体に価値があるから」であれば、「宿泊する」という最小限の価値のみを提供するという考え方ができます。また、日帰り客からのニーズに応えるための方法を検討することもできます。
このように、集めた情報から対策を検討していきます。

秋祭りのイベント開催時のホテルの「売り」を考える
・食事だけの提供はできないか
・弁当を売れないか
・イベントにちなんだ名産品を販売できないか
首都圏の日帰り客へホテルの「売り」を考える
・登山客の荷物を預かるサービスを提供できないか
・駐車場の提供、簡易休憩所の提供をできないか
イベントがない時の宿泊客を増やす方法を考える
・Webで集客する方法はないか
・旅行代理店に営業できないか

まとめ

以上、SWOT分析についてご紹介しました。
SWOT分析は、中小企業において活用される手法であり、厳密なルールなど知らなくても、おおよその意味さえ把握していれば、ある程度の対策を導き出せるというメリットがあります。
①強み(Strengths)・②弱み(Weaknesses)・③機会(Opportunities)・④脅威 (Threats)を書き出したら、それぞれをクロス分析して、
「強みを活かして、機会を利用できる施策はないか」
「強みを活かして、脅威に対抗できる施策はないか」
「弱みを理解して、機会に活かすことはできないか」
「弱みを理解して、脅威を避ける施策はないか」
を検討していきます。事業に関するアイディアはすぐには浮かばないものですが、SWOT分析を行うと、行動のアイディアが出やすくなります。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
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