公開日:2022年04月28日
最終更新日:2024年06月19日
埋没費用とは、事業や行為に投下した費用や労力のうち戻ってこない費用、つまり「意思決定」に影響を与えない費用、「考えても仕方のない費用」をいいます。
埋没費用は、英語表記をそのまま用いて「サンクコスト」と呼ばれることもあります。
サンクコスト(埋没費用)の豆知識
サンクコスト(埋没費用)とは、簡単に言うと「考えても仕方のない費用」のことです。過去にかかった費用は例外なくサンクコストとなります。
例えば、新しいパソコンを買ったばかりなのに、コストも性能も格段に優れたパソコンが発売されたとします。このとき、人はどうしても「買い換えるのはもったいない」と思ってしまいます。けれども、この「もったいない」という心情は意思決定において、意味はありません。いずれにせよ「使い続けるか」「買い換えるか」の2つの選択肢しかなく、どちらの選択肢でも、過去に支出した費用は返ってこないからです。
ビジネスにおいても、経営者はいくつもの岐路に立たされます。「あの時、あの設備投資をしなければ」などとと悔いることもあるでしょう。けれども、過ぎた過去を悔やむことは何の解決にもつながらず、「今後どうするか」と考えるしかありません。サンクコストという費用概念は、このようなビジネスの概念までを学ぶことができるのかもしれません。
埋没費用(サンクコスト)とは、すでに支払ってしまい取り返すことのできない費用や時間的・労力的なコストをいいます。
使ってしまったコストは、この先どのような選択しても同じようにかかる(既にかかっている)コストであり、現時点でどちらを選択しても関係ない、つまり選択肢から埋没している費用であることから「埋没費用」と呼ばれます。
過去に発生した費用は、例外なく埋没費用となります。
なぜなら、どんなに過去の費用を考えたところで、過去に起きた事実は変えようがなく、使ってしまったコストは返ってきません。したがって、過去の費用は埋没費用となり、取り返すことができないのだから「考えても仕方がない」、つまり意思決定に影響を与えない費用といえます。
ここでいう「意思決定」とは、選択肢を変えたところで、その費用が変化しないことをいいます。
固定費は、埋没費用となりやすい費用のひとつです。
固定費もさまざまではありますが、「どうしても発生せざるを得ない固定的な費用」であれば、それは選択肢を変えても変わることはないからです。
もちろん固定費であっても選択肢はいくつもあり、それを変更する権限を持つ人にとっては、埋没費用とはならないことがあります。
埋没費用は、「選択から埋没している費用」つまり「考えても仕方のない費用」ですが、具体的にはどのようなことなのでしょうか。
たとえば、ある設備Aを購入したばかりなのに、直後にもっとランニングコストがよく半値の同種の設備Bが発売されたとします。
このとき、「設備Aを購入したばかりだから、いくらランニングコストがよいとしても、設備Bに買い替えるのはもったいない」と考える人がいます。
しかし、実はこの「もったいない」という心情は、実は意思決定においては意味を持たないものです。
なぜなら、現在意思決定を行ううえで取り得る選択肢は「設備Aを使い続けるか」「設備Bに買い替えるか」の2つだけであり、どちらにせよ、設備Aを購入した費用は返ってこないからです。
つまり、今考えるべきなのは「設備Bを購入できる資金を用意できるか」「今後のランニングコストの削減額で、設備Bの購入資金を賄えるか」ということになります。
しかし実際には、途中まで使用した設備を放っておくことを「もったいない」と思って使おうとしてしまい、その結果より多くのコストがかかり、買い替えるより損失が多くなってしまうケースが多く見られます。
既に使ってしまった埋没費用にとらわれてしまうと、「もったいない」という意識が働いてしまい、間違った意思決定を行うリスクがあります。
購入した設備Aに投入した資金は今さらどうしようもないので、原則として意思決定に影響を与えるべきではありません。
確かに購入したばかりの設備を買い替えることは気が引けるものですが、設備Bの方が明らかにランニングコストがよいのであれば、設備Aを使い続けることで、さらに損失を生じるリスクがあります。
既に設備Aに投資してしまった金額はいったん横に置き、「これから先を考えた時には、設備Aと設備Bのどちらが、損が少ないか」「あるいは儲けが多くなるか」という視点で検討するべきなのです。
購入したばかりの設備Aを捨てることは、つい「もったいない」という気持ちが働きがちですが、すでに投資してしまってキャンセルできないものであれば、もう埋没費用だと割り切り未来志向で考え、無理に使おうとしてかえってもったいないことにならないように注意する必要があります。
東京オリンピックに向けた新国立競技場の建設においては、最初はイギリス人建築家の案に決まりかけていました。しかし、その後建築費が当初予算の1,300億円を大幅に上回る2,520億円まで膨れ上がることが判明しました。
この時「いちど決まったのだから」という理由で、そのまま推し進める空気もありましたが、結局白紙撤回となり、結果的に日本人建築家の案が採用されました。
実はこのとき、すでにイギリス人建築家には関連費含め59億円もが支払われていましたが、この費用はまさに埋没費用と考えることができるでしょう。
「一体、どういう選択プロセスで、イギリス人建築家が決まったのだ」「建築費が膨れ上がったのはどういう理由からだ」という事の経緯については、大いに反省すべきではありますが、これから取り得るいかなる選択肢でも、59億円は戻ってこないからです。
間違いは、間違いに気づいた時に正すべきであり、「もったいないから」「一度決まったから」という理由だけで事を推し進めると、思わぬ判断ミスをしてしまうリスクがあります。
過ぎた過去の費用を反省することは必要ですが、その費用が意思決定に影響を与えることは避けるべきです。将来の見通しが立たない場合には、途中で手を引き廃棄するということも、また1つの選択肢になるということです。
以上、埋没費用(サンクコスト)についてご紹介しました。
「もったいない」という意識から、投資した設備を使い続けたり、建設中の設備を無理に完成させたりしようとすると、かえって損が増える可能性があります。
これまでかけたコストは「埋没費用」ですから、その費用にとらわれず、「使い続けるべきか」「廃棄するべきか」「どちらが損か」「どちらが儲かるか」という視点で検討し、より儲かる方を選択することが重要といえます。
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