公開日:2023年04月19日
最終更新日:2024年06月19日
付加価値とは、その文字の通り、会社が外部から購入したモノやサービスに付け加えた価値をいいます。
付加価値は、企業が仕入れた原材料等から販売した製品・商品までに新たに生み出した金額を計算することで、数値に表すことができます。
この付加価値は、付加価値分析や労働生産性分析など、さまざまな分析に活用されます。
付加価値の豆知識
付加価値とは、企業が原材料等の仕入を行い、生産や販売を行って新たに生み出した価値です。要するに、その企業が生み出した経済価値を意味します。
付加価値の計算方法には、控除法と積み上げ法があります。
付加価値を計算することで、付加価値分析や労働生産性分析など、さまざまな分析を行うことができます。
たとえば付加価値率とは、売上高に対して付加価値がどの程度生み出されたのかを示す指標であり、以下の計算式で計算します。
付加価値率 = 付加価値売上高×100
付加価値率が高いと、税金や給与など外部への貢献度が高いと判断できます。
中小企業の付加価値率は全業種の平均が24.5%ですが、情報通信業、不動産業、宿泊業、飲料サービス等では高く、卸売業や小売業では低い傾向にあります。
参照:中小企業庁「中小企業の基礎データ」
ただし、付加価値には減価償却費や支払利息など必ずしも売上高とは比例しない金額も含まれているので、この点については注意が必要です。
付加価値とは、その文字のとおり新たに付加された価値です。
企業が仕入をして、生産・販売し新たに生み出した価値のことです。
たとえば、イタリア産のワインが欲しいと思っても、ワインショップのような小売業がなければ、イタリアまでわざわざ行かなければなりません。
しかし、ワインショップのような小売業が近くにあるおかげで、イタリアまで行かないでも、すぐ近くでイタリア産ワインを購入することができます。
このような価値が付加されているからこそ、原価よりも高い価格で売っても、顧客はそのイタリア産ワインを買います。
したがって付加価値を簡単に説明すると、「付加価値とは販売価格と原価の差額」ということになります。
この付加価値をきちんとした数値にあらわす計算方法としては、①控除法と②積上法(加算法)の2つの方法があります。
控除法とは、総生産高から外部購入価額を控除することで、付加価値を計算する方法です。
付加価値 = 総生産高 - 外部購入価額 |
外部購入価額とは、直接・間接材料費+買入部品費+外注加工費+運賃などです。販売業であれば、商品仕入額なども該当します。
たとえば、100円分の材料や燃料を外部から仕入、製品に加工して150円で売った場合には、150-100で、50円を付加価値とします。
外部購入価額のほとんどが売上原価である卸売・小売業であれば、付加価値額は売上総利益(売上高-売上原価)とほぼ同額となります。
一方、製造業の場合には、売上原価に材料費の他にも工場内での人件費も含まれることから、売上総利益と付加価値は一致しないことになります。
積上法は、加算法とも呼ばれるもので、付加価値が経営資源に分配される側面に注目する計算方法で、以下の計算式で計算します。
付加価値=人件費+金融費用+減価償却費+賃借料+租税公課+当期純利益 |
付加価値の中身を、会社の利益と人件費などの費用と考え、これらを積み上げていくことで、付加価値を計算していきます。
つまり積上法では、付加価値は税金を差し引かれたあと、ヒトには人件費、借りているカネには金融費用、所有しているものには減価償却費、借りているものには賃借料、そして所有している利益へと分配されており、これらを集計(積み上げる)すると考えます。
控除法と積上法の計算式で分かるように、何が外部購入価額なのか、何が会社が付加した価値なのかについては曖昧な部分があり、そのために計算結果に誤差が生じることが分かります。
たとえば、水道光熱費や通信費などは、控除法では付加価値額に含まれますが、積上法ではこれらの金額は付加価値額から除かれます。
さらに、財務諸表を利用して付加価値額を計算しようとすると、控除法と積上法のどちらを採用しても、それぞれ問題点があります。
控除法を採用すると、売上高から控除された費用の内訳情報が不十分であるため、控除すべき項目の金額が特定できないという課題が残ります。
また、積上法を採用しても、販売費及び一般管理費のなかの人件費を把握できても、売上原価に含まれる製造費用としての人件費を把握できないという課題が残ります。
どちらの計算方法も正しい主張を持っており、控除法と積上法のどちらを採用すべきかについては、各企業の状況に応じて最も合理的かつ誤差が生じる可能性の少ない方法を採用するべき、と言わざるを得ないことになります。
付加価値によって、経営力を判断する場合には、「いかに多くの付加価値を生み出すか」も重要ですが、「その生み出した付加価値を、どのように分配するか」という視点も非常に重要なポイントです。
せっかく高い付加価値を生み出しても、上手に分配できなければ、会社が発展するのは難しくなってしまいます。
労働力を提供してくれる従業員、租税公課、金融機関への支払利息など、それぞれの分配額は損益計算書に表示されますので、その割合が適切かについては、常に意識する必要があります。
また、株主も付加価値の分配を期待しているものですから、株主への配当が十分であるかという視点も大切でしょう。
どのようにして、より多くの付加価値を生み出し、これらの費用分配、利益分配を上手に行い、そのうえでいかに内部留保を行うかは、経営手腕が問われるポイントと言えるでしょう。
下記は、日本政策金融公庫が決算データをもとに小企業の収益性や生産性などの指標値を集計したものです。
細かい業種分類数値も掲載されていますので、参考にしてください。
従業者1人当たり 粗付加価値額(千円) |
粗付加価値額 対売上高比率 |
|
情報通信業 | 4,290 | 41.9% |
運輸業 | 4,219 | 45.6% |
卸売・小売業 | 3,763 | 20.5% |
飲食店,宿泊業 | 2,821 | 39.8% |
医療,福祉 | 3,581 | 65.7% |
教育,学習支援業 | 3,412 | 51.8% |
サービス業 | 4,116 | 4.20% |
建設業 | 5,052 | 31.5% |
製造業 | 4,403 | 38.5% |
参照:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査(2020年度・2021年度)」
付加価値分析とは、付加価値を利用してさまざまな分析を行うことをいいます。
付加価値は、企業が生み出した純粋な経済価値といえます。したがって、ここから企業の競争力を分析することができるというわけです。
主な付加価値分析としては、付加価値率分析、労働生産性分析などが挙げられます。
付加価値率とは、売上高に対して付加価値がどの程度生み出されたのかを見るための指標で、以下の計算式で計算します。
付加価値率 = 付加価値売上高×100 |
付加価値率が高いと、税金や給与などの外部への貢献度が高いと判定され、つまりは「売上高に対する、実質的な利益を付加できている」ことを示すことになります。
ただし、この付加価値には減価償却費や金融費用(支払利息など)といった、必ずしも売上高とは比例しない金額も含まれているため、その点については注意が必要です。
企業が新たに生み出した付加価値を、生み出す企業の努力を「生産性」と呼びます。
そして、労働生産性とは、人の生産性を判断するための指標です。
労働生産性は、付加価値の額を従業員数で割って求めます。つまり、1人当たり付加価値ということになります。
労働生産性 = 付加価値従業員数 |
労働生産性は、従業員1人が生み出す年間の付加価値額であり、この金額が大きければ大きいほど生産性の高い会社ということになります。
当期中に多くの従業員が退職して、採用数が多くなった場合などは、期末人数で計算しても正しい生産性を計算できなくなりますので、このようなケースの場合には、従業員数は期中平均人数を用います。
また、最近は派遣社員が主要な戦力となっている会社も多くなってきましたが、そのような会社では、人件費や従業員数に人材派遣費やその人数を時間によって換算して、その数値を加算した方が、より実態に即した数値を得ることができます。
労働生産性については、同業他社の数値と比較したいところですが、それが難しい場合には、自社の前期の労働生産性と比較する売上高付加価値率という指標で、自社の労働生産性を分析することができます。
売上高付加価値率 = 付加価値売上高 |
さらに、先ほどの労働生産性の計算式を分解すると、以下のようにあらわすこともできます。
労働生産性 = (付加価値/従業員数) × (付加価値/売上高) ↓ 労働生産性 = 1人当たりの売上高 × 売上高付加価値率 |
上記の計算式から分かるとおり、労働生産性を高めるためには、1人当たりの売上高を高め、付加価値の高い商品やサービスを売ることが必要となります。
労働生産性が前期より下がっている場合には、このように数値を分解して、1人当たりの売上高と売上高付加価値率のどちらが下がっているかを見極め、対策を講じることが大切です。
付加価値を高め、生産性を高めるためには、機械化による効率アップや1人当たりの売上高を高めるなどの努力が必要です。設備資産を有効活用し、価値を生み出せる人材が多く働いているかが、大きなポイントとなります。
機械化によって省力化できる事業を行っている場合には、設備投資を行い、1人当たりの付加価値額を高めることができないかを検討します。
また、コンサルティング業やソフト開発など、ノウハウを売り物にする事業であれば、1人当たりの売上高が大きく影響します。
従業員がやる気を出す制度や報奨金などのしくみづくりも必要となるでしょう。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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