公開日:2019年12月23日
最終更新日:2024年04月05日
限界利益とは、売上高から変動費を引いたものです。
通常の利益と異なり、売上高に比例して増減する利益となります。
この限界利益の売上高に対する割合を「限界利益率」といい、目標とする利益を出すための売上高を計算したりコストを見直したりするための指標とすることができます。
この記事では、限界利益の意味や計算方法、限界利益率(限界利益の売上高に対する割合)の計算方法や考え方について、ご紹介します。
限界利益の豆知識
限界利益とは、売上から変動費を差し引いた利益です。
限界利益=売上高-変動費
変動費とは、売上高の増減によって金額が変動するものですが、売上に対する比率は一定です。
一方、固定費は売上高の増減に関わらず一定額発生するもので、金額は固定ですが売上高に対する比率は変わります。
なお、売上高と総費用が一致して利益がゼロになる売上高を「損益分岐点売上高」といいます。この数字は、限界利益と固定費が同額になることを意味します。
たとえば、損益分岐点と同じ売上高であれば、固定費を上回る限界利益を稼ぎ出せなかったことを意味します。
また、売上高に対する限界利益の比率を「限界利益率」といいます。
売上高から変動費を差し引いた利益が限界利益ですから、変動費率(売上高に対する変動費の比率)と限界利益率の合計は100%となります。
販売単価と原材料などの変動費を分析したい場合には、限界利益への注目は不可欠です。たとえば、固定費には大きな変化がないのに原材料費が高騰している場合には、販売単価を上げて売上総利益を確保しなければなりません。これは、実質的には限界利益の向上を検討していることを意味します。
なお、限界利益を向上させるためには、より付加価値の高い製品に品種構成をシフトすることを検討することも大切です。
自社の状況を正しく分析するためには、限界利益や限界利益率の向上を検討するだけでなく、収益性、安全性、成長性、生産性の観点から分析することが大切です。
詳細については、経営コンサルに精通している税理士に相談することをおすすめします。
限界利益は、売上高から変動費を差し引いて計算します。
限界利益 = 売上高 - 変動費 |
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売上の増加に比例して発生する変動費を、売上高から差し引いて求めるので、単位当たりの売上高から、一単位売り上げるのに直接要した費用を差し引いた額ということになります。
ここから、固定費と変動費、限界利益の関係について説明していきます。
会社の経営に必要な費用は、変動費と固定費に分けることができます。
変動費とは、売上に連動して増減する費用で、仕入高や外注費などが該当します。
たとえば、ラーメン店に例えると、材料費はラーメン1杯で180円、2杯で360円、3杯で540円と売上が増えると連動して変動します。したがって変動費と呼ばれます。変動費には、このほか燃料費、外注加工費などが該当します。
一方、固定費とは、売上の変動に関わらず一定に出ていく費用で、人件費や地代家賃などが該当します。
たとえば、再びラーメン店に例えると、店舗の家賃や人件費、広告費や店舗維持費など、売上の大小にかかわらず毎月一定額がかかります。このように売上とは関係なく発生する費用を固定費といいます。
変動費の金額は変動しますが、売上に対する比率は一定ということになります。一方、固定費はまったく商品が売れない場合でも固定的に発生する費用であり、金額は固定でも、売上高に対する比率は変わります。
このように事業を行ううえでかかる費用を変動費と固定費に分けて、売上高から変動費を差し引いたものを限界利益といいます。
限界利益とは、会社の収益力のキーポイントとなる利益です。
先ほどご紹介したラーメン店の例でいえば、ラーメンを1杯売るごとに稼げる利益のことです。ラーメンが1杯600円であれば、材料費180円で、限界利益は420円ということになります。そして、この限界利益は、ラーメンを2杯売れば840円、3杯なら1,260円と、売上とともに増えていく利益です。
つまり、売上高-変動費=限界利益です。
理想的なのは、限界利益から会社が確保すべき経常利益を差し引いた金額を、固定費とすることです。
なぜなら、限界利益がそのまま会社の儲けとなるわけではなく、限界利益からその商品の販売にかかった人件費、店舗代、広告宣伝費などの固定費を差し引いて営業利益が求められるからです。
このように限界利益を求めることで、企業の売上状況を把握し、収益構造を改善するための指針とすることができるようになります。つまり、限界利益は、会社の儲けの基本となる値といえることになります。
そして、この限界利益の売上高に対する割合を「限界利益率」といいます。
限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高 |
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この限界利益率は、数値が高いほど収益力のある会社ということができます。
限界利益は販売価格や販売数量に大きく左右されるものであり、固定費は限界利益の多少にかかわらず一定金額が発生するものだからです。
限界利益率を高めるには、製造、仕入れ、営業のそれぞれの場面でコストを意識して数値を管理する必要があります。
変動損益計算書とは、通常の損益計算書とは違い、売上原価、販売費一般管理費を変動費と固定費に分類し、再集計した損益計算書のことをいいます。
変動費と固定費に分類した変動損益計算書を作成することは、経営者が会社の業績を正確かつ迅速に把握し、今後の経営方針を決定するために非常に有益です。
この変動損益計算書を作成して固定費と変動費がどれくらいかかっているのか、そして限界利益率がどれくらいなのかを見ることで、実にいろいろなことが分かります。
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(※損益計算書は、変動費・固定費という分け方をしていませんから、損益計算書の数字を組み替える必要があります。組み替えをした損益計算書を一般的には変動損益計算書 と呼ばれています。)
上記の表で見ると、売上高に対する限界利益率は35.6%です。そしてこの限界利益率で固定費をまかなえるようにすれば、経常利益がプラスになります。
また、このように変動費と固定費と分けることで、どこに手を付ければ利益を大きくできるのかが分かりやすくなります。
「売上-変動費」が限界利益なので、限界利益は「利益+固定費」ということもでき、売上高に比例して増減する利益となります。
限界利益は、販売価格や販売数量によっても大きく左右されますので、製造、仕入、販売の各担当者がコストを意識して目標を設定・管理する必要があります。
限界利益率が低ければ、仕入値を引き下げて変動費を下げるのか、人件費や地代家賃を引き下げて固定費を下げるのかなど、会社の経営方針を考えるうえで非常に重要な数値を視覚化することができます。
たとえば、これから経営拡大して従業員を増やそうとするのであれば、固定費である正社員ではなく、変動費となるアルバイトやパートを増やすなどの対策も検討することができます。
このように損益計算書から変動損益計算書に作り直してみると、会社の費用のうち、どこに手をつければ利益が増えるのかが分かりやすくなりますし、収益構造を改善する方針を立てるのに、非常に重要な役割を果たすことになるのです。
これまでご紹介してきたように、限界利益は、「売上高-変動費」であり「利益+固定費」です。そして、「限界利益÷売上」を限界利益率といい、この数値が高ければ高いほど収益力のある会社ということができます。
限界利益率を把握し、コスト改造をするためにはどの費用を見直すべきかが分かるだけでなく、さらに分析することで目標とする利益を出すための売上高を計算することも可能となります。
自社の決算書を分析して、収益構造を改善する方針を立てたい時には、決算書カウンセリングや経営コンサルタントに力を入れている税理士に相談することをおすすめします。
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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
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