公開日:2019年04月16日
最終更新日:2022年07月28日
年末調整とは、1年間で従業員が納めるべき所得税額と毎月の給与や賞与から控除した所得税額を比較して、その過不足を調整する作業です。
給与の支払者(会社)は、毎月の給与の支払いの際に所定の源泉徴収税額表によって、所得税および復興特別税の源泉徴収をすることになっていますが、通常納めなければならない税額と源泉徴収された1年間の税額の合計額にはズレ(過不足)が生じているケースがほとんどです。
年末調整とは、このような納税額のズレを精算するための手続きです。
給与の支払者(会社など)にとっても、給与所得者(サラリーマンなど)にとっても、大変重要な作業であり、11月の段階で計画的に準備をしておく必要があります。
年末調整とは、給与所得者の月々の給与から差し引かれている源泉所得税および復興特別所得税の総決算をする手続きです。
給与の支払者(会社など)は、毎月の給与の支払いの際に所定の源泉徴収税額表によって、所得税および復興特別税の源泉徴収をすることになっています。
しかし、この「毎月控除される所得税および復興特別税」は、年間を通じて給与額の変動があることを予定されて控除されているものではありません。また、1年の間には扶養家族などの数に変動があったなどの事情もありますが、それも考慮されていません。
したがって、納めなければならない税額と源泉徴収された1年間の合計額には、ズレが生じているケースがほとんどです。
年末調整は、これらの事情を考慮し、納税額の不一致を精算するための手続きです。
年末調整を行う時期は、「年末」のその文字の通り、通常は12月に本年の最後の給与を支払う時です。
したがって、本年最後に支払う給与が通常の給与であれば、その通常の給与を支払う時となり、年末手当等の賞与が最後の給与であれば、その賞与を支払う時となります。
年末調整の対象となる人
年末調整を行う際には、まず「誰が年末調整の対象となるか」を確認する必要があります。原則として、年末調整の対象となるのは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員です。
年末調整の対象となる人 | 年末調整の対象とならない人 |
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「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した人で以下に該当する人
①1年を通じて勤務している人 ②年の途中で就職し、年末まで勤務している人 ③年の途中で退職した人のうち ・12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人 ・パートとして勤務している人が退職した場合で、その年の間に支払いを受ける給与の総額が103万円以下である人 ④年の途中で海外支店へ転勤したなどの理由で、非居住者となった人 |
①年末調整をする人のうち、年間の給与等の総額が2,000万円を超えた場合
②「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を年末調整までに提出していない人(乙欄適用者) ③年の途中で退職した人で、左欄の③に該当しない人 ④災害によって、その年中の給与所得者に対する源泉所得税の徴収猶予または還付を受けた人 ⑤非居住者(左欄の④以外の人) ⑥継続して同一の雇用主に雇用されない日雇労働者など(丙欄適用者) |
年末調整は主に、以下の流れで行います。
年末調整の主な流れ
①年間の給与総額・徴収税額の確定 ②給与所得控除後の給与等の金額(調整控除後)の計算 ③各種控除後の控除 【各種控除のために回収する書類】 ④算出所得税額の計算 ⑤税額控除 ⑥年調年税額の計算 ⑦過不足の精算 |
年末調整で正しい税額を計算するためには、まず、1年間に支払った給与額や賞与額を確定する必要があります。そして、そのうえで扶養控除額等の検討や配偶者特別控除額の検討などを行っていきます。
そのために、事前に従業員から基礎資料となる各申告書を回収しましょう。
この作業を怠ると、年末調整の作業を正しく行うことができなくなってしまいます。
なお、上記の各種の控除額を確定させるために必要な申告書は以下のとおりです。
・扶養控除等(異動)申告書 ・給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書 ・保険料控除申告書 ・住宅借入金等特別控除申告書 |
したがって、以下のような事情に該当する従業員については、特に早めに控除額を確定するために必要な申告書の提出をするよう、指導するようにしましょう。
・子どもが誕生したなど、扶養親族を有することになった ・扶養家族が増加することになった ・結婚し、控除対象配偶者を有することになった ・本人が障害者、寡婦または寡夫、勤労学生に該当することになった ・控除対象扶養親族であった人の就職、結婚などによって控除対象扶養親族の数が減少した |
年末調整を行うためには、まず従業員に支払った給与額を確定させます。1月1日から12月31日までに支払った給与や賞与が年末調整の対象となります。
次に、給与所得控除後の給与等の金額を計算し、各種控除額の控除を行います。
従業員が記入した「扶養控除等(異動)申告書」で、扶養親族の人数を確認します。12月31日時点の扶養親族の人数が、年末調整に反映される人数となります。
申告書を確認する際には、いわゆる内縁関係の人を控除対象配偶者として申告していないか、結婚、離婚、などによって控除対象配偶者を有することになったり、または有しないことになったりしたなどの点についても確認します。
また、子女の就職や結婚等といった事情で、控除対象扶養親族が増減した場合には、その事実が反映されているかも確認します。
扶養控除等(異動)申告書の内容を確認する際には、各従業員の源泉徴収簿の扶養控除等の申告欄に正しく記載されているかも確認します。
配偶者控除等申告書(兼用用紙)を提出している人については、配偶者の合計所得金額が95万円を超えている配偶者について源泉控除対象配偶者として申告していないか、チェックしましょう。
不要対象扶養親族の「所得の見積額」の欄には、合計所得が記入されているかもチェックします。扶養親族でも生年月日によって控除額が変わる場合もあるので、注意が必要です。
また、障がい者、寡婦、ひとり親、勤労学生の区分に該当するかもチェックします。
控除対象配偶者 | その年の12月31日時点で、合計所得が1,000万円以下の給与所得者の夫または妻で、年間の合計所得金額が48万円以下の人 …年末調整において、配偶者控除の対象となる配偶者のことです。 |
源泉控除対象配偶者 | その年の12月31日時点で、合計所得が900万円以下の給与所得者の夫または妻で、年間の合計所得金額が95万円以下の人 |
同一生計配偶者 | その年の12月31日時点で、給与所得者の夫または妻で、年間の合計所得金額が48万円以下の人 |
老人控除対象配偶者 | 控除対象配偶者のうち、その年の12月31日時点の年齢が満70歳以上の人 |
控除対象扶養親族 | 配偶者以外の16歳以上の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)で、年間の合計所得金額が48万円以下の人 |
特定扶養親族 | 扶養親族のうち、その年の12月31日時点で、現在の年齢が満19歳以上23歳未満の人 |
老人扶養親族 | 扶養親族のうち、その年の12月31日時点で、現在の年齢が満19歳以上23歳未満の人 |
同居老親等 | 老人扶養親族のうち、所有者またはその配偶者の直系の存続で、所得者またはその配偶者と常に同居している人 |
障がい者 | 身体上の障がいや精神上の障がい、知的障がいを持っている人で一定の要件に該当する人 |
特別障がい者 | 障がい者のうち、障がいの程度が重い人で、一定の要件に該当する人 |
同居特別障がい者 | 扶養親族のうち、特別障がい者に該当する人で、所得者またはその配偶者と同居を常況としている人 |
勤労学生 | 大学、高校、中学、小学校などの学生、生徒で、合計所得金額が75万円以下かつ給与所得以外の所得金額が10万円以下の人 |
寡婦 | 夫と死別または離婚してから結婚していない人で、一定の要件に該当し合計所得金額が500万円以下である人(ひとり親以外) |
ひとり親 | 現在結婚していない、または結婚歴がない人で、一定の要件に該当しその年の合計所得金額が500万円以下の人 |
16歳未満の扶養親族 | 扶養親族のうち、16歳未満の人(所得税の計算では扶養親族等の数に含まれない) |
参照:国税庁「令和4年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記載例」
「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」は、令和2年から創設された3つの申告書を兼ねた用紙です。
基礎控除は、基本的に年末調整をするすべての人に該当するので、全員に提出してもらいます。
基礎控除額は、令和2年分より、控除額が38万円から48万円に引き上げられました。しかし、合計所得が2,400万円を超えると、控除額が段階的に減っていき、2,500万円を超えると控除額がゼロになることとなりました。
合計所得 | 控除額 |
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2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」で、配偶者控除と配偶者特別控除について確認します。
・配偶者控除 配偶者控除とは、所得者(合計所得金額が1,000万円以下の人に限る)が、控除対象配偶者を有する場合で、控除を受ける年の配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与収入額103万円以下)という要件に該当する人が受けられる控除です。 ・配偶者特別控除 |
「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」では、所得金額調整控除についても確認します。
所得金額調整控除とは、給与等の収入金額が850万円を超えている人であっても、以下のいずれかに該当する場合には「所得金額調整控除」が給与所得控除後の給与等の金額から差し引かれるものです。
①23歳未満の扶養親族がいる ②本人が特別障がい者に該当する ③特別障がい者である扶養親族がいる ④特別障がい者である同一生計配偶者または扶養親族がいる |
所得金額調整控除額は、以下の計算式で計算されます。
所得金額調整控除額=(給与等の収入金額-850万円)×10% |
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「保険料控除申告書」で、各従業員が1年間に支払った保険料の額を確認します。
対象となる保険料は、1年に支払った生命保険料や社会保険料です。社会保険料には、国民年金保険料、年金基金の掛金、国民健康保険料などが含まれます。
この時、生命保険料は全額が控除されるわけではないという点には注意が必要です。
生命保険料の控除額は契約した時期や支払金額に応じて控除額が異なりますが、上限は12万円です。
生命保険契約や介護医療保険契約などが、控除の対象となる契約か、生命保険契約や介護医療保険契約等が、保険金受取人のすべてが本人または配偶者その他の親族となっているかどうかについても確認する必要があります。
「住宅借入金等特別控除申告書」で、控除額を確定させます。
従業員が住宅を購入したり増改築したりして、住宅借入金がある時には、その住宅借入金の年末時点での残高を基準にして算出された一定額が所得税額から控除することができます。
住宅ローン控除を受けようとする場合は、最初の年分については確定申告を行なう必要があります。しかし、最初の年以降の年分の控除については、年末調整の際に、各人から提出された「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」に基づいて、控除を行うことができるようになります。
したがって、この控除を受けようとする人に対しては、所要事項を記載した住宅借入金等特別控除申告書を提出するよう指導しましょう。
控除額の確認をしたあとは、最終的な年税額を計算していきます。
各種所得控除を合計し、給与所得控除後の給与等の金額から、所得控除の合計額を控除した額が「課税給与所得金額」になります。
そして、この課税所得金額から所得税額の速算表を使って計算した金額が、算出所得税額です。
算出所得税額から、住宅借入金等特別控除額を差し引くと、年調所得税額が計算されます。
この年調所得税額に102.1%(復興特別所得税)を掛けた税額は、本来納めるべき年調年税額となります。
その年の給与所得に対する年調年税額の計算ができたら、すでに徴収した徴収税額の合計額と比較して過不足額を求めます。
もし、徴収税額の合計額が、年調年税額より多い場合は、その差額は納めすぎということで、その差額をその従業員に還付します。
これに対して、もし徴収税額の合計額が年調年税額より少ない場合には、その差額は不足分として、その差額を従業員から徴収します。
以上、年末調整の意味や各控除額の確認、税額の計算方法についてご紹介しました。
年末調整は、そもそも年末調整の対象となる人は誰かを確認することはもちろん、事前に書類を回収するなどの煩雑な作業も必要となります。
「freee人事労務」を使えば、これまでのように紙を見ながらソフトに入力する必要もないので、スムーズに年末調整手続きを進めることができます。
従業員の計算ミスや申告に関する問い合わせが減りますし、税額は自動計算されますので、年末調整の作業負担が大幅に軽減されます。
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