厚生年金保険とは|適用事業者・必要な手続き

公開日:2019年12月16日
最終更新日:2022年07月12日

この記事のポイント

  • 厚生年金保険は、会社員や公務員が加入する年金制度。
  • 一定の要件を満たす短時間労働者も厚生年金に加入する。
  • 厚生年金保険は、国民年金の上乗せ部分である。

 

厚生年金保険は、会社員や公務員が加入する年金制度です。
日本の公的年金制度には、国民年金と厚生年金があります。会社員は国民年金以外にも厚生年金保険に加入しています。
国民年金は全国民が加入している年金で、「基礎年金」と呼ばれています。そのうえに会社員や公務員の人が厚生年金保険に加入しています。
厚生年金保険は、健康保険と同じように被用者年金保険(会社に雇用されている人を対象としている保険)なので、被保険者に関する手続きなどは、健康保険と共通しています。

厚生年金保険とは

労働者は、老齢、障害、死亡によって働けなくなると、会社から報酬を受けることができなくなってしまいます。そこで、この報酬のなかから一定の保険料を国に納付することで、働けなくなった時には、国から給付金を受け取ることができます。この制度を「厚生年金保険」といいます。
保険料は、給与およびボーナスから徴収することになっています。また、会社員の配偶者で年収130万円未満の人は保険料の負担はありませんが、国民年金のみの加入となります。
また、一定の要件を満たす短時間労働者も、厚生年金・健康保険に加入します。

(1)厚生年金保険と国民年金との違い

年金制度では、制度自体を2階建てとして、国民年金が1階部分、厚生年金保険が2階部分であるとして「2階建て年金制度」と呼ばれたりします。
1階部分が、20歳以上60歳未満の国民が加入する国民年金(基礎年金)で、その上に2階部分として、労働者が加入する「厚生年金保険」が乗る形となっています。
つまり厚生年金保険は、国民年金の上乗せ部分ということができます。

(2)厚生年金保険の適用事業所

厚生年金保険は、厚生年金保険の適用事業所で働いている従業員が加入します。厚生年金保険も国民年金も、国籍を問わず加入対象です。また、正社員だけではなく一定の要件を満たしているパートタイマーや契約社員なども加入対象となります。

厚生年金保険の適用事業所とは、株式会社などの法人の事業所です。
また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所も、農林漁業、サービス業の一部などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります。

なお、令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大され、以下のように要件が変わりますので注意が必要です。

「特定適用事業所」の要件
(変更前)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所
(変更後)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所

「短時間労働者」の適用要件
(変更前)雇用期間が1年以上見込まれること
(変更後)雇用期間が2カ月を超えて見込まれること(通常の被保険者と同じ)

参照:日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」

また、令和4年10月から【法律・会計に係る業務を行う士業】に該当する個人事業所のうち、常時5人以上の従業員を雇用している事業所は、強制適用事業所に追加されます。

参照:日本年金機構「適用事業所と被保険者」

(3)厚生年金保険の保険料

厚生年金保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に、共通の保険料率をかけて計算されます。保険料は、加入者(従業員)と事業主(会社)とが半分ずつ負担します。
厚生年金保険の保険料率は、被保険者の種類によって異なっていましたが、現在は18.3%で固定されています。
事業主は、加入者(従業員)の毎月の給料または賞与から保険料を差し引いて、翌月の末日までに納めることになっています。

参照:日本年金機構「厚生年金保険料額表」

厚生年金保険の主な給付

厚生年金保険というと、会社を退職した後に受ける老齢厚生年金をイメージする人も多いと思いますが、厚生年金保険には、老齢厚生年金以外にも、障害者厚生年金、遺族厚生年金があります。

(1)老齢年金

老齢年金(老齢基礎年金)とは、原則として65歳以降、国民年金から終身にわたって受け取ることができる年金です。
一定の要件を満たす場合には、65歳になるまでの間、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます。
また、60歳から65歳までの間に繰上げて減額された年金を受け取る「繰上げ受給」や、66歳から75歳までの間に繰下げて増額された年金を受け取る「繰下げ受給」を選択することができます。

受給のためには一定の受給要件がありますが、保険料を納めた期間が長いほど老後に受け取る年金も多くなります。
厚生年金保険に加入したことがある方は「老齢厚生年金」が上乗せされます。

参照:日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」

(2)障害年金

障害年金(障害基礎年金)とは、病気やけがで障害が残ったときで一定の納付要件、受給要件を満たす場合に受け取ることができる年金です。
厚生年金保険に加入している場合は「障害厚生年金」が上乗せされます。年金額は、過去の報酬と加入期間などに応じて決まります。

参照:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」

(3)遺族年金

遺族年金(遺族基礎年金)とは、加入者が万が一亡くなった時、遺族が受け取ることができる年金です。
亡くなった方が厚生年金保険に加入していた場合は「遺族厚生年金」が上乗せされます。

なお、どの年金についても、年金を受給する時には自分で手続きに行かなければなりません。
受給できる年齢になったからといって、自動的に年金を受け取れるようになるわけではありませんので、その点については注意が必要です。

まとめ

厚生年金保険は、国民年金の上乗せ部分に該当し、株式会社などの法人の事業所は厚生年金保険の適用事業所となります。
また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所も、農林漁業、サービス業の一部などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります。
加入手続き事業所の所在地を管轄する年金事務所で、健康保険と同時に行います。
必要な書類や手続きについては、社会保険労務士に相談してサポートを受けると、スムーズに行うことができます。

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