公開日:2019年12月13日
最終更新日:2022年07月12日
労働条件通知書とは、従業員を採用する時に会社と採用者の間で交わす契約書で、労働条件を明示したものです。労働契約書、雇用契約書と呼ばれることもあります。
労働条件通知書は、採用後のトラブルを防止するためにも、口頭ではなくきちんと書面で結びましょう。
ただし平成31年4月から、労働条件の明示方法については、労働者が希望する場合には、FAXやメールで送信してもよいということになりました。
労働条件通知書とは、賃金、労働契約の期間や、就業の場所、従事する業務の内容などの労働条件を書面にしたものです。
労働条件通知書は、正社員として採用する場合だけでなくアルバイトやパートに対しても書面で行う必要があります。
労働条件通知書は、労働契約の期間や就業の場所など、必ず明示をしなければならない事項と、臨時的に支払われる賃金や賞与など、規定がある場合には明示が必要な事項とがあります。
労働条件は、原則として書面で通知しなければなりません。
就業規則で適用される条件が具体的に記載されていて、どの部分が適用になるかを明らかにしてその就業規則を採用者に渡す場合には、労働条件通知書を省略することもできますが、後々のトラブルを防止するためにも、やはり書面で締結する方がよいでしょう。
労働条件通知書は、原則として書面で行わなければなりませんが、平成31年(2019年)に、労働基準法第15条の規定に基づく労働条件の明示の方法について、下記のように改正されました。
改正前 書面の交付 |
改正後 原則として、書面の交付 ただし、労働者が希望した場合は、以下のような方法で明示することができるようになります。※ただし、出力して書面を作成できるものに限られます。 |
参照:厚生労働省「平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります」
労働条件通知書は、採用する時に明示しなければならない労働条件に付いて記載したもので、契約期間や就業場所、業務内容などについて記載をする必要があります。
労働条件通知書には、必ず明示しなければならない事項と、会社で制度を設けている場合には、明示しなければならない事項があります。
労働条件通知書で、必ず明示しなければならない事項は、以下のとおりです。
(1)労働契約の期間 (2)有期労働契約の更新の基準 (3)就業場所等 (4)始業・終業時刻等 (5)賃金の決定・支払時期等 (6)退職(解雇含む)に関する事項 |
契約期間は、正社員の場合には、「期間の定めなし」としますが、「期間の定めあり」として雇用期間を定める場合には、原則として契約期間の上限は3年(一定の場合に上限は5年)です。
「一定の場合に上限は5年」となりますが、これは、以下の職種について雇用期間を定める場合に可能とされています。
①高度な専門的知識、技術、経験を有する労働者として認められたもの
・博士の学位を有するもの ②満60歳以上の労働者 ③一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約(有期の建設工事等) |
使用者は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示しなければなりません。
また、使用者が、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して、契約を更新する場合またはしない場合の判断の基準を明示しなければなりません。かならず自動更新ではないとわかるように記載しましょう。
さらに、有期労働契約の締結後に上記について変更がある場合には、使用者は労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければなりません。
就業場所については、入社直後に働く場所、入社直後に行う業務内容を明記します。「本社」「支社」だけでなく、住所も記載するようにします。
記載例
本社(東京都千代田区麹町1-2-3○○ビル5階) |
なお、将来の就業場所や従事させる業務をあわせて、網羅的に明示するのは差し支えありません。
始業・終業の時刻、休憩時間などは、具体的な条件を明示します。
変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制等の適用がある場合には、次の点に注意が必要です。
・変形労働時間制:
適用する変形労働時間制の種類(1年単位、1か月単位等)を記載します。
その際、交替制でない場合、「・交替制」を=で抹消します。
・フレックスタイム制:
コアタイム又はフレキシブルタイムがある場合はその時間帯の開始及び終了の時刻を記載します。コアタイム及びフレキシブルタイムがない場合、かっこ書きを=で抹消します。
・事業場外みなし労働時間制:
所定の始業及び終業の時刻を記載します。
・裁量労働制:
基本とする始業・終業時刻がない場合、「始業··を基本とし、」の部分を=で抹消します。
・交替制:
シフト毎の始業・終業の時刻を記載します。また、変形労働時間制でない場合、「()単位の変形労働時間制・」を=で抹消します。
所定休日について曜日又は日を特定して記載します。
記載例
土曜日、日曜日、国民の祝日、その他会社が定める日。 ※詳細は就業規則○条 |
年次有給休暇は6か月間勤続勤務し、その間の出勤率が8割以上であるときに与える休暇です。したがって、その付与日数を記載します。
時間単位年休は、労使協定を締結し、時間単位の年次有給休暇を付与するものですが、その制度の有無を記載します。
代替休暇は、労使協定を締結し、法定超えとなる所定時間外労働が1ヵ月60時間を超える場合に、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払に代えて有給の休暇を与えるものです。その制度の有無について記載します。その他の休暇については、制度がある場合に有給、無給別に休暇の種類、日数(期間等)を記載します。
記載例
年次有給休暇6カ月継続勤務の場合10日 ※詳細は就業規則○条 |
基本給等については、具体的な額を明記します。
ただし、就業規則に規定されている賃金等級等により賃金額を確定し得る場合、当該等級等を明確に示せばよいとされています。
なお、基本賃金や所定労働時間は、法律を下回ることはできませんので、注意しましょう。
記載例
基本賃金:時間給1,050円 賃金の改定;会社の業績、従業員の勤務成績・貢献度に応じて改定する。 |
定年制を設ける場合は、60歳を下回ってはなりません。また、65歳未満の定年の定めをしている場合は、高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の①から③のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じる必要があります。
・定年の引上げ
・継続雇用制度の導入
・定年の定めの廃止
記載例
定年制度有(60歳)再雇用あり |
社会保険の加入状況、雇用保険の適用の有無のほか、労働者に負担させるべきものに関する事項、安全及び衛生に関する事項、職業訓練に関する事項、災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項、表彰及び制裁に関する事項、休職に関する事項等を制度として設けている場合に記入します。
記載例
雇用保険(有)健康保険、厚生年金(有) 懲戒解雇の事由 更新時は、従業員の充足状態、本人の能力、勤務態度、健康状態、その他会社の経営状態や業務の都合等を勘案して更新するかどうか決定する。 退職金(無) 相談窓口 |
厚生労働省では、さまざまなパターンの、労働条件通知書のサンプルが提示されています。これらの労働条件通知書を参考にしながら自社の状況に応じて作成してください。
以下は、厚生労働省で提示されている労働条件通知書(一般労働者用)です。
以下は、厚生労働省で提示されている労働条件通知書(派遣労働者用)です。
外国人労働者の増加に伴い、外国人用の労働条件通知書のサンプルも提示されています。
韓国語版 |
英語版 |
タガログ語版 |
労働条件通知書は、会社と従業員がお互いに確認するための書類です。
従業員とトラブルになる原因は、労働条件通知書や就業規則を雇用時に明示していないケースです。
労働条件通知書や就業規則によって、労働条件や従業員としてのあるべき行動を明示することで、多くのトラブルを防ぐことができます。
労働条件通知書は、自社の事情に沿って独自に作成することができますが、法律の規定に従った内容とするためにも、社会保険労務士や弁護士などの専門家のアドバイスを受け、適切に作成するようにしましょう。
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監修:「クラウドfreee人事労務」
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