公開日:2019年12月16日
最終更新日:2020年03月02日
社会保険とは、憲法で定められた社会保障のひとつです。保険という制度を利用して、疾病、ケガ、出産、失業、障害、老齢、死亡、要介護といった保険事故が起きた場合に、その人やその家族に対して必要な給付を行い、その生活や医療を保障することを目的としています。
広義の社会保険とは、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険、国民健康保険、国民年金、各種共済組合のことをいいます。
また、狭義の社会保険として、健康保険と厚生年金保険を総称して社会保険ということもあります。
ここでは、会社で働く労働者が加入する社会保険である健康保険と厚生年金保険、労災保険、雇用保険についてご紹介します。
日本国憲法第25条では、以下のように社会保障制度について規定しています。
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。 |
上記日本国憲法第25条の社会保障のなかの重要な制度のひとつが、社会保険制度です。
社会保険制度は、大きく医療保険、年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険の5つに分類されます。
①医療保険 健康保険、国民健康保険、船員保険、各種共済組合 ②年金保険 ③雇用保険 ④労災保険 ⑤介護保険 |
社会保険は、働き方などによって加入する社会保険が異なります。
また、運営するために保険料を徴収したり保険給付を行ったりする運営主体や実際に業務を行う管轄先も以下のように異なります。
①労災保険 労働基準監督署 労災保険給付の申請や労働保険料の申告などは、管轄の労働基準監督署で行います。 |
②雇用保険 公共職業安定所(ハローワーク) 給付金の請求や助成金の申請、資格取得届の提出、資格喪失届の提出などは、管轄のハローワークで行います。 |
③健康保険 全国健康保険協会(協会けんぽ)、年金事務所、健康保険組合 健康保険の給付に関する手続きは、協会けんぽです。 健康保険の申請は年金事務所が窓口となります。 健康保険組合に加入している会社の健康保険の窓口は、健康保険組合が窓口となります |
④厚生年金保険 年金事務所 年金に関する諸手続きや相談は年金事務所が窓口です。 |
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労災保険とは、業務上または通勤の途中に発生したケガ、病気、障害、死亡という保険事故について、迅速かつ公正な保護をするために必要な給付を行うことを目的とした保険制度です。
労災保険は、従業員個々人に対して加入手続きをする保険ではありません。正社員、アルバイト、パートなどを1人でも雇用したら、強制的に労災保険に加入しなければなりません。
従業員を雇用したら、労働基準監督署で加入手続きを行います。
手続きには、法定の申請書類と会社の登記簿謄本(登記事項証明書)が必要となります。なお、労災保険手続きは、一度届出をすれば、次に従業員を雇用する時には手続きは不要です。
労災保険は、従業員が1人でもいる会社は強制加入となります。
はじめて従業員やアルバイト、パートなどを雇用した日が労災保険の加入日となります。そして、この日から10日以内に労働基準監督署で加入手続きを行います。
なお、会社に従業員がまったくいなくなった時には労災保険の脱退手続きを行うことになります。
なお、以下の事業については労働保険の適用除外となりますが、事業主の希望または従業員の過半数による希望があった場合、事業主が手続きをすることで任意加入することはできます。
①漁業、畜産業、養蚕業で常時従業員が5人未満の個人事業
②林業で従業員を常時使用しない(年間300人未満)の個人事業 ③総トン数5t未満の漁船による事業で5人未満の個人事業 |
労災保険は、傷病の状態によって受けられる給付の種類が異なります。
パートやアルバイト、正社員といった雇用形態による差はなく、同じ給付を受けることができます。
・療養(補償)給付 ・休業(補償)給付 ・傷病(補償)給付 ・障害(補償)給付 ・介護(補償)給付 ・遺族(補償)給付 ・葬祭料(補償)給付 ・二次健康診断等給付 ・社会復帰促進事業 |
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雇用保険とは、労働者が失業した場合や、労働者の雇用の継続が難しくなる事由が生じた場合、また労働者が自主的に職業に関連する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことを目的とした保険制度です。
雇用保険というと、失業した時の基本手当をイメージする人も多いと思いますが、能力開発といった面で失業者をバックアップして、失業者が早期に次の仕事に就けるようにすることも、大きな目的となっています。
雇用保険は、加入用件を満たす従業員を雇用するたびに手続きが必要となります。
「従業員が入社した時の労災・雇用・社会保険の手続きと必要書類」を読む
雇用保険は、一定の適用除外に該当する従業員を除いてはすべての従業員が対象です。
パートやアルバイトでも、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用されることが見込まれる場合には、雇用保険の対象となります。
雇用保険の適用除外者とは ・65歳に達した以降に雇用される者 ・1週間の労働時間が30時間未満で、正社員の1週間の所定労働時間に比べて短く、季節的に雇用される者、短期の雇用に就くことを常態とする者 ・4カ月以内の期間を予定して行われる季節的事業(スキー場、スケート場など)に雇用される者 ・日雇い労働者で、日雇い労働被保険者となる者以外 ・船員保険の被保険者 ・国、都道府県などの事業に雇用される者のうち、離職した場合にほかの法令などに基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、雇用保険の失業手当などの金額を超えると認められ者 |
主な雇用保険給付としては、以下のものがあります。
①基本手当 休職期間中に所得保障をします。 従業員が退職後、ハローワークで手続きをすることで受給することができます。 退職理由や雇用保険に加入していた期間によって、もらえる額や期間が変わってきます。 ②再就職手当 ③教育訓練給付 ④雇用継続給付 |
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健康保険とは、労働者の業務外の事由によるケガ、病気、障害、死亡、または出産、およびその人の家族の病気、ケガ、死亡または出産に関して保険給付を行うことを目的とした保険制度です。
労災保険が業務上のケガや病気の時に使う保険であるのに対して、健康保険は私生活上でのケガや病気に使う保険です。
健康保険の対象となるのは、一定の適用除外に該当する従業員を除いてはすべての従業員です。
パートやアルバイトに関しては、労働時間と労働日数が正社員の3/4以上だと加入対象となります。労働条件を確認してもれなく加入手続きを行うようにしましょう。
健康保険の適用除外者とは ・日雇いで雇用される人(ただし1カ月を超えて雇用されるようになったら加入しなければなりません) ・雇用契約期間が2カ月以内の人(雇用契約期間を越えて雇用されるようになったら加入しなければなりません) ・サーカスなどの事業所または事務所が一定しない事業に雇用される人 ・船員保険に加入している人 ・スキー場などの季節的事業に4カ月以内の期間を決められて雇用される人 ・博覧会などの臨時的な事業に6カ月以内の期間を決められて雇用される人 |
主な健康保険給付の種類は、以下のとおりです。
①療養の給付 ケガをしたり病気にかかったりした時に、病院で治療を受ける際に健康保険証を使います。もっともなじみのある健康保険給付です。 ②傷病手当 ③出産手当金 なお、健康保険は退職して健康保険の資格を喪失しても、一定の条件を満たすことで、傷病手当金や出産一時金、埋葬料などが支給されます。 |
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厚生年金保険とは、老齢、障害、または死亡について保険給付を行うことを目的とした保険制度です。
労働者やその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としています。
年金制度では、制度自体を2階建てとして、国民年金(※)が1階部分、厚生年金保険が2階部分とあらわされることがあります。
これは、厚生年金が国民年金の上乗せ部分ということができるからです。
※国民年金
国民年金は、年金制度の根幹をなすもので、20歳以上60歳未満であれば、加入して保険料を支払わなければなりません。また、国民年金を受け取るには、最低でも25年の加入期間が必要です。
厚生年金保険の対象は、会社に勤めている従業員ですが、すべての従業員ではなく、一定の適用除外となる従業員がいます。
厚生年金保険の加入基準や適用除外となる従業員は、健康保険と同じです。
また、加入手続きも健康保険と一緒に行います。
健康保険・厚生年金保険の適用除外者とは ・ 日雇いで雇用される人(ただし1カ月を超えて雇用されるようになったら加入しなければなりません) ・ 雇用契約期間が2カ月以内の人(雇用契約期間を越えて雇用されるようになったら加入しなければなりません) ・ サーカスなどの事業所または事務所が一定しない事業に雇用される人 ・ 船員保険に加入している人 ・ スキー場などの季節的事業に4カ月以内の期間を決められて雇用される人 ・ 博覧会などの臨時的な事業に6カ月以内の期間を決められて雇用される人 |
主な厚生年金保険の種類は、以下のとおりです。
厚生年金というと、会社を退職したあとにもらえる老齢厚生年金が印象的ですが、この他にも障害厚生年金や遺族厚生年金などがあります。
①老齢厚生年金 老後の生活を支える終身保障の年金で、公的年金に25年加入すると支給されます。 ②障害厚生年金 ③遺族厚生年金 |
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狭義の社会保険は、健康保険、厚生年金保険のことで、協議の社会保険と労災保険と雇用保険を含めて広義の社会保険といいます。
労災保険は、従業員をひとりでも雇用したら届出を行う必要があります。
雇用保険は、加入用件を満たす従業員を雇用するたびに届出が必要になります。
また、正社員はかならず健康保険、厚生年金保険に加入しなければならず、パートやアルバイトでも、勤務時間、勤務日数を基準として加入しなければならないケースがあります。
加入要件を満たす場合には、もれなく手続きを行うようにしましょう。
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