人材育成を行うためには|計画の立て方から実施まで

公開日:2019年11月19日
最終更新日:2022年07月14日

この記事のポイント

  • 経営資源のなかで特に重要なのが、「人材」である。
  • 優秀な人材を採用・育成・活用していくことは、会社を発展させるために不可欠。
  • 優秀な人材を活用するためには、必要なキャリア開発や、能力開発を行うことが有効。

 

会社が将来に向かって発展していくためには、事業の現状、将来性や変化を読み取り、ニーズを先取りし、自社の経営資源を最大限に活用することが重要です。
そして、経営資源のなかで特に重要なのが「人材」です。「人材」は「人財」とも表現される重要な資源です。
優秀な人材を採用し、育成し、活用していくことは、会社を発展させるために不可欠なのです。

人材育成とは

会社は、一般的に経営理念や経営方針をもとにして、中長期的な目標と計画を立てます。そして、そのために何をすればよいかを「経営計画」として具体化します。
多くの会社は、この経営計画で掲げられた目標を達成するために活動することになります。
従業員教育・従業員研修は、この経営計画で掲げられた目標を達成するために必要な知識・能力・技術・態度などを従業員に身につけさせ、キャリア・能力・組織の3つを開発することを目的として行います。

・能力開発
教育研修や業務指導を通じて従業員に知識や技術を習得させることをいいます。

・キャリア開発
従業員一人ひとりに自分のキャリアの方向性を考えさせたり、さまざまな職務経験を積ませたりすることをいいます。

・組織開発
コミュニケーションの活性化などを通じて、組織の体質改善を図ることをいいます。

(1)人材育成①「能力開発」

能力開発とは、研修などを通じて従業員一人ひとりに必要な知識や技術を習得させることをいいます。
代表的なものにOJT(On the Job Training)と、Off-JT(Off The Job Training)があります。

OJT(On the Job Training)とは、仕事を通じてトレーニングする職場内研修です。
上司や先輩従業員が、日常の仕事を通じて、部下や後輩が職務を遂行するために必要な能力を計画的に身につけさせるために実施します。実務のなかで行われるため、実践的な内容を教えることができ、効率的で継続的な育成方法といえます。

一方、Off-JT(Off The Job Training)とは、日常業務から離れて行う社内の集合研修や外部研修、通信教育やインターネットを利用したeラーニングなどの職場外研修のことをいいます。
業務から離れて集中して学習することで知識やスキルだけでなく、ふだんの業務からは修得できないようなことを学ぶことができます。
ただし、研修は短期間で終了することが多いため、効果の確認や職場で身につけた知識をどう展開していくかは、実施後のフォローが大切ということになります。

OJTとOff-JTのメリット・デメリット

OJT Off-JT
メリット ・職場で手軽に実施できる
・費用がかからない
・実践的な内容を教えることができる
・専門的・理論的な内容を教えることができる
・職場を離れることによって、新たな気づきを与えたり社内外の人脈を広げたりすることができる
・集中して学習できる
・期間を設計できる
・テストやアンケートを実施することで、効果を測定できる
デメリット ・職場によっては、頻度・内容にバラつきがある
・専門的・理論的な内容を教えることができないケースがある
・計画的に実施することができない
・効果測定がしにくい
・時間や費用がかかる
・仕事にすぐに役立たないこともある

(2)人材育成②「キャリア開発」

キャリア開発とは、従業員一人ひとりに自分のキャリアの方向性を考えさせたり、さまざまな職務経験を積ませたりすることで、長期的な計画に基づいて従業員の能力を開発することをいいます。これをCDP(Career Development Program)といいます。
キャリア開発においては、従業員が職務レベルを高めていく道筋(キャリアパス)を示し、適性や希望を反映しながら教育と配属の機会を与えることがポイントとなります。

従業員が能力を向上させていく職務経験の道筋や会社が実施する教育研修を示し、これに基づいて配属や教育研修を実施することで、会社は求める人材を効率的に育成することができます。

CDPを運営するポイント
①従業員が職務レベルを高めていく道筋を示したキャリアパスとなっているか
②従業員の適性や希望を反映しながら、教育や配属の機会があるか
③キャリア情報が管理され、定期的なフォローアップのなかでキャリアを考えていけるよう配慮されているか

(3)人材育成③「組織開発」

組織開発(OD:organization development)とは、従業員一人ひとりの能力を向上させ、組織力を向上させることをいいます。
経営計画で掲げた目標に沿う形で従業員の力量や組み合わせを考え、従業員を教育し、組織を構築・改善して、組織力を向上させることは、他社との差別化にもつながります。

具体的には、ナレッジ・マネジメント力の向上リーダーの継続的な輩出などを行うための施策を実行します。

組織開発(OD)組織開発(OD)を行うための施策

目標とするもの 施策事例
ナレッジ・マネジメント力 ・優秀な従業員のノウハウを取り入れ、業務マニュアル研修を行なう
リーダーの継続的な輩出 ・リーダーシップ研修を行い、リーダーとしてなすべきことを知る
交流分析 ・多様な人材を育成して、アイディアや方策を見出すためのセッションをおこなう

組織開発は、外国人従業員や高齢者など雇用の多様化が進み、職場内のコミュニケーションを活発化させる必要性が高まったことから、ますます重要視されています。

人材育成研修の立て方

人材育成研修には、新人研修、テーマ別研修などいろいろありますが、いずれの場合にもまずは研修の位置づけ、目標、研修方法などを決めておく必要があります。
また、会社の事業計画や昨年度の研修費用などを参考にして、研修予算を決定する必要があります。

ステップ1 研修の位置づけ、目標を設定する
ステップ2 研修方法と内容・講師を決める
ステップ3 研修の年間スケジュールの作成
ステップ4 研修の準備・実施
ステップ5 研修後の効果測定(アンケートの実施など)

(1)人材育成研修の位置づけ・目標の設定

研修や教育を行う際には、まずゴールの設定から始め、研修や教育のねらい、対象者を決め、研修後にどうなってほしいのか、何を学んでほしいのかを設定します。

(2)人材育成研修計画と内容・講師の決定

研修の位置づけ、目標を設定したら、研修の内容を決めます。
経営者や責任者から聴取したニーズ、他社事例などを参考にして、今年度実施すべき研修メニューを作成します。そしてメニューのなかから、研修予算などをふまえ実施可能なものを選択し、研修方法(個人ワーク、グループワークなど)を決めます。
さらに、研修の流れを決めたら講師を選定します。講師は研修目標の達成に大きく関わるので、場合によっては講師を先に決めてから研修方法や流れを決定することもあります。

(3)人材育成研修の年間スケジュール策定

研修の実施日を以下の順序で決定し、年間スケジュールを作成します。

①実施時期が決まっている研修(新入従業員研修、新任管理職研修など)
②重要度が高い研修(多くの従業員が参加できるように、繁忙期を避ける)
③その他の研修(研修の実施時期が、一時期に集中しないよう配慮する)

(4)人材育成研修の準備と実施

年間の研修計画は、決定次第、早めに社内に告知します。
研修会場を決めたら、会場内のレイアウトの設定、当日のアテンド内容(お世話)の決定、研修後のアンケートの作成、参加者への資料を作成します。

告知の方法は、参加予定者に直接知らせる方法のほか、掲示板などで掲示したり、上司を通じて伝えたりするなどの方法で行います。
実施日が複数ある場合には、参加者と調整して決めます。参加者と調整する際には「聞いていない」などの行き違いがないよう、注意しましょう。

社外の研修に参加させる場合には、研修パンフレットを入手し社内に案内し、参加者を取りまとめたら研修実施期間に申し込みをします。

研修は、連絡事項が多いので、あらかじめチェックリストを用意しておくとよいでしょう。

(5)実施後大切なアフターフォロー

研修後は、必ずアンケートを実施します。
アンケートは、研究の効果を測定する資料となりますし、次回以降の研修を行う際の指針にもなります。質問内容は、研修の内容や教材、講師に関するもの以外にも、会場の大きさ、空調設備、事務局の対応といった点について聞くとよいでしょう。

まとめ

以上、従業員教育・従業員研修の必要性や種類、実施方法などについてご紹介しました。
従業員教育・従業員研修を行いたいと思いながら、なかなか着手できないという場合には、社会保険労務士に相談するのがおすすめです。
人材活用に精通している社会保険労務士には、経営計画に沿ってどのような研修が必要なのか、その研修を行うためにはどのような準備が必要なのか、アドバイスをしてもらうことができますし、一定の要件に該当すると雇用保険から教育訓練給付金が受けられることもあります。
要件や手続きの最新の情報についても、社会保険労務士に相談するとよいでしょう。

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監修:「クラウドfreee人事労務」

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