人事評価制度|評価制度・等級制度・報酬制度とは

公開日:2019年05月01日
最終更新日:2022年04月25日

この記事のポイント

  • 人事評価は、人材マネジメントの中心にあるもの。
  • 人事評価の主な目的は「公平感」「従業員の活用と育成」である。
  • 人事評価は、評価項目・基準・評価者などが公開されていることが大切。

 

人事の仕事の目的は、会社の経営資源である人を継続的に活用し、より大きな利益を生み出すことにありますが、その仕組みが「人事評価制度」ということになります。

人事評価制度を策定せずに昇給額や賞与額を決定してしまうと、優秀な従業員のやる気を失いかねません。また、仕事に対して人の能力のバランスがとれていないと、経営に大きな影響を及ぼすこともあります。

人事評価制度とは

人事評価制度とは、従業員の社内での位置づけを規定し、公正な評価と処遇を実現するなど、従業員の処遇に関する仕組みのことをいいます。
人事評価制度は、大きく「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の構成から成り立っていて、それぞれがバランスよく保たれることが大切です。


等級制度
等級制度とは、能力レベルや職務内容などを基準とした等級を規定し、従業員の社内での位置づけを決める仕組みです。
等級制度は人事制度全体の柱となるもので、これに基づいて評価内容や報酬などが決まります。

評価制度
評価制度とは、従業員の職務上の成果や能力発揮などを評価する制度です。人事考課・査定などとも呼ばれます。評価結果に基づいて、等級の昇格・降格、報酬の金額が決まります。

報酬制度
報酬制度とは、等級や評価結果に基づいて、従業員の給与、賞与、退職金などを決める制度です。

(1)評価制度を設計する際のポイント

人事評価制度においては、何を、どのような方法で評価するかという点について、特に公平性や合理性、透明性が求められます。
主に従業員の業績を評価するのであれば、成果主義型の報酬制度となりますし、従業員の能力を評価するなら、等級型の報酬制度と結びつけて設計していくことになります。

評価制度を設計する際には、まず目指す人材像を考え、評価の要素を固め、評価機関と評価者を作成する必要があります。そして、報酬や昇格・降格といった処遇に反映させるだけでなく、人材育成や配置などにも利用できるよう、工夫する必要があります。

(2)人事評価制度①「等級制度」

等級制度とは、従業員の能力や職務、期待する役割などに応じて適切な等級を設計して、従業員の社内での位置づけを決める制度です。等級に応じて人事評価を行い、評価結果が他の各要素に影響します。

従業員に対して期待する役割や応力を明確に伝えることで、従業員が納得できる評価を行い、処遇を決定することができます。
また従業員の成長目標が明らかになることで、従業員のモチベーションアップを期待できるなどのメリットがあります。

もともと、組織管理上は役職だけあれば、権限と責任の所在を明確に示すことができていましたが、中高齢従業員の増加に伴って相対的に役職の数が不足してくると、役職以外の基準によって処遇を決定する必要性が高まりました。
そこで、能力によって等級を決め、それとは別に組織管理上の役割によって役職を決める「職能資格制度」等が導入されるようになりました。

等級制度における昇格・昇進管理の仕事としては、まず部門責任者からの昇格者の申請に基づいて昇格基準に当てはめ、昇格・昇進の候補者を選出します。
昇格・昇進者が決定した場合には、上司および対象者に通知し、人事情報や給与データの更新を行うことになります。

等級制度には、「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」などの種類があります。

職能資格制度
仕事内容と能力で処遇を決定する制度です。
会社が成長ステージにある場合には、従業員の納得感が得られやすい制度といえるでしょう。ただし職能資格制度は、会社が成長し従業員の年齢が上がるとともに年功的に運用されることもあります。若手の従業員のモチベーションを下げることにも繋がりますので、この点に注意しながら運用する必要があります。

職務等級制度
職務や役割・給与が直結するため、従業員間の公平性を保ちやすいというメリットがあります。しかし、それぞれの職務を定義づけてから運用しなければならず、組織が改変するたびにこの職務の定義づけを改訂しなければならないというデメリットがあります。

役割等級制度
等級と職位が同じなので、評価の仕組みが明確で分かりやすい制度です。同一役割・同一成果を上げていけば、年齢やキャリアに関係なく、それに見合う処遇を得ることができます。ただし、役割等級制度は、それまでの標準形が存在しないため、設計するうえでも実際に運用するうえでも時間がかかるというデメリットがあります。

会社には組織上役職制度がありますので、この役職制度と等級制度をいかに連動させるかが、運用する際のポイントとなります。

(3)人事評価制度②「評価制度」

評価制度とは、人事制度の枠組みに応じて評価を行い、その評価を報酬に反映させる制度です。
従業員の活性化や成長を促す効果が期待できるほか、従業員の能力や成果を把握して、配置や異動の参考情報とすることができます。

評価制度では、まず人事部が評価者(通常は、部署の直属の上司)に評価用紙を配布します。評価用紙には、評価項目と評価基準が記載してあり、評価者はその基準に基づいて評価を行い、評価用紙を人事部に提出します。
人事部は、これらの評価用紙を分析して評価を行い、必要に応じて部門間の調整を行います。

評価する方法が相対評価(従業員を比較し順位づけする)である場合には、「全員が同じくらいの能力・成果でも、無理に評価をしなければならない」等の問題があり、最近では絶対評価(あらかじめ定められた基準に従って評価点を算出する)を導入する会社が増えています。

評価制度には、大きく「年功制度」「職能資格制度」「職務等級制度」「成果主義制度」の4つに分けることができます。

年功制度
勤続年数を重視した評価制度

職能資格制度
等級ごとの達成度を重視する制度

職務等級制度
業務内容の達成度を重視する制度

成果主義制度
1年以内の短期的評価で行う制度

(4)人事評価制度③「報酬制度」

報酬制度とは、等級や評価結果に基づいて、従業員の給与、賞与、退職金などを決める制度です。
賞与は個人の業績の査定を行い、それに基づいて会社の業績に応じて支給額が決定されます。
退職金は、基本的に年功的な制度なので、基本給×勤続年数×係数で計算します。昨今は、退職金制度をもたない会社も増えていますが、その場合には退職金を支給しない代わりに基本給を高く設定しています。

報酬制度は、「年功制度」「職能資格制度」「職務等級制度」「成果主義制度」の4つがあります。従来は年功制度が主流でしたが、近年は成果主義制度が増加傾向にあります。これは、従業員のモチベーションを上げて競争意識を持たせる狙いで導入されており、多くの場合その狙いは達成されているといえますが、一方問題点も指摘されており、個々の会社の状況に応じて改変が加えられています。

年功制度
高度経済成長期では、年功制度が主流でしたが、この制度は勤続年数という本人の努力では変えることができないものを基準として賃金を決定するため、働く人の努力を否定することにつながるとして、次第に「職能資格制度」が採用されるようになりました。

職能資格制度
職能資格制度とは、働く人の能力を予めいくつかのレベルに分けて等級を設定し、その等級に応じた賃金を支給します。
会社側としては、人事異動を柔軟に行うことができますし、会社の成長や発展に担う体制を整備しやすいというメリットがあります。また、従業員にとっても、教育や育成を視野に入れた制度であることから、モチベーションアップにつながりますし、その職務に対する一定の責任感と安心感を持つことができるいうメリットがあります。

職務等級制度
職務等級制度とは、それぞれの職務の価値に応じて賃金を決める制度です。つまり同じ仕事なら同じ賃金という大変シンプルな制度です。仕事と賃金の関係が明確で、従業員の納得が得られやすく、人件費の予算も容易に把握することができます。
しかし、同じ仕事をしている限り昇給が期待できないとして、従業員のモチベーションを下げることにもつながりかねません。また、会社としても仕事と賃金が直結しているため、配置変えをしにくいというデメリットもあります。

成果主義制度
成果主義制度とは、その名のとおり、成果に応じて賃金を決定する制度です。
しかし現実は、適切な評価がなされず従業員の不満が増大したり、マイナス評価を避けるために最初から目標を下げようとする従業員があらわれたりするなどといったデメリットもあり、現在では、成果主義制度の一部だけを切り出して運用されているケースがほとんどです。

(5)中小企業は大企業と同じ制度ではダメ

これまでご紹介してきた人事評価制度は、主として大企業で導入されている制度ですが、中小企業においては、大企業と同じ人事評価制度をそのまま導入しても、効果が出ないケースがほとんどです。
たとえば、中小企業では、大企業と同じような充実した教育システムを導入することは難しく、それほど競争意識を必要としない職場環境である場合があるからです。
したがって、中小企業にはそれぞれの会社のステージや特徴に合ったアプローチが何より重要となります。

中小企業の場合には、経緯者の責任感が強く、1人ですべてを抱え込んでしまうケースが多くみられます。しかし、こうした状況が当たり前になってしまうと、従業員の意識の向上を奪い、能力が低下する…という悪循環に陥ることがあります。

このような状況で自社に適した人事評価制度を導入することができれば、経営者の思いつきで判断されていたような事項が、明確な基準とシステムによって判断されることになり、授業員の意識や能力の向上につながります。

経営者が本来の仕事に専念することができ、経営業績の向上が期待できるのです。

まとめ

以上、人事評価制度の概要についてご紹介しました。
人事評価制度は、会社のビジョンや経営目標を達成し、従業員の適性や能力を最大限に活用できる仕組みであることが必要です。
会社のビジョンや目標を達成するために従業員を成長させ、組織的な経営を行うためには、人事制度の構築が必須と言えます。
人事評価制度の設計にあたっては、「どのような役割や能力を従業員に求めるのか」「給与を中心に、人件費をどのように管理するか」などの方針を決める段階から、社会保険労務士などのアドバイスを受けることをおすすめします。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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