公開日:2018年10月31日
最終更新日:2024年02月08日
資金調達の方法は大きく分けて、①銀行などの金融機関から借り入れる方法、②省庁や自治体などから助成金や補助金を受給する方法、③投資家やベンチャーキャピタルから出資を受ける方法の3つがあります。
なかでも最もポピュラーなのが、①の金融機関からの融資です。
中小企業の場合には、上場企業のような資本調達市場がありませんので、金融機関からの借り入れは大変重要です。そして、金融機関から融資を受ける際には、決算書の「見栄え」が大変重要です。
税理に相談することで、どのような決算書が融資を受けやすいのか、融資を受けるためにはどのような書類を提出すると有利になるのかなどについて、サポートを受けることができます。
融資の豆知識
融資を受ける際には、決算書や申告書を提出しなければなりません。上場している企業であれば会計監査を受けることができますが、中小企業の場合はそのような制度はありません。
そこで活用したいのが、中小企業にとって一番身近な専門家である税理士から申告書についてお墨付きをもらう方法です。
これは、税理士法第33条2項に規定されている制度で「書面添付制度」と呼ばれています。
書面添付制度とは、税理士が申告書の作成に関与したことを明らかにする制度で、「この申告書に税理士が関与し、適切に処理した」ことを税務署に表明する制度です。
この書面は税務署に対するものではありますが、金融機関においてもこの書面添付制度を重視しています。一部の金融機関では、この制度を利用している会社については有利な条件で融資を行うこともあります。
税理士は会計、税務の専門家です。
しかし、税理士に相談できるのは会計、税務の処理だけではありません。
金融機関が融資を行うか否かの判断材料とする決算書から、現状の会社の財務面を分析し、金融機関の担当が疑問を持つのはどこか、そしてそれを説明(または補完)するためには、どのような資料が必要になるかをアドバイスしてくれます。
また、融資において、経営者のパートナーとして、交渉を有利に進めてくれることもあります。税理士のなかには、事業計画書を作成し銀行に同行してくれる税理士もいます。
税理士に相談することで、融資担当者を納得させることができる効果的な事業計画書や資金繰り表を作成することができます。
これらの書類は、単に会計・税務の知識だけでなく、資金調達の経験から身につけた知識やノウハウが必要になってきます。
伝えるべき内容が記載されており、それと矛盾しない数字で計画書が作成されていなければ、どれほど素晴らしい事業計画書であっても、融資を受けることはできません。
銀行が事業計画書や決算書のどこをチェックするのか、どのような数字を算出すれば納得するのかを熟知している税理士に相談すれば、融資に必要な書類を揃えることができます。
多くの融資をサポートしてきた税理士は、金融機関度どのように交渉すれば有利な条件を引き出せるかを熟知しています。
融資審査の考え方や銀行と交渉する際の心構えはもちろん、「面接でどのようなことを質問されるのか」「どのように回答すればよいのか」といった具体的アドバイスは、資金調達の経験が豊富な税理士にしかできないことです。
とくに過去の実績のない会社の場合には、税理士の交渉力は心強い味方となるはずです。
ひとくちに金融機関といっても、都市銀行、地方銀行、政府系金融機関などによって特徴があります。
また、銀行の担当者が変わるだけで融資姿勢が大きく変化することがあります。
税理士に相談することで、このような金融機関の特徴を把握することができ、交渉を有利に進めることができます。
「○○銀行の支店長または営業マンと面識がある」「○○銀行は、融資の審査で何を重視する」など、具体的なアドバイスを受けることもできます。
銀行は、決算書の分析結果をもとにした評価を基準として、「融資を行うか」「行う場合には、どの程度の金利を設定するのか」を判断します。融資に精通している税理士は、会社の財務状況などから、金融機関がどの程度の条件を提案してくるか熟知していますので、前もって必要な書類を準備することができます。また、税理士から貸付条件の交渉を行ってもらうことで、会社に不利な条件を突きつけられることなく、有利に交渉を進めることが可能となります。
税理士は、会計、税務のスペシャリストとして、決算書を通して会社の財務状況を細かく分析することができます。
ですから会社として今後どのような判断をするべきか、どうすれば財務状況が改善していくのかといった経営アドバイスまでサポートしてもらうことが可能です。
融資にせよ補助金や助成金を受給するにせよ、お金を入れることがゴールではありません。
会社を経営していくうえでは、そのお金をもとにして、さらに会社を発展させていくことが大切なのです。
経営者のパートナーとなってくれる税理士に出会い、そのサポートを受けることは、会社が有利に融資を受けるだけでなく、事業を進めていく上で欠かせないものといえるでしょう。
資金調達のなかで最もポピュラーな方法が、銀行や信用金庫などの金融機関からの融資を受ける方法です。
事業を進める上では、時に大きな資金が必要になる時がありますから、金融機関とは上手に付き合っていきたいものです。
ただ、金融機関といっても、政府系金融機関、都市銀行、地方銀行など、色々な種類があり、それぞれ役割が違います。
金融機関と上手に付き合っていくためには、それぞれの金融機関の特徴と役割を知ることが大切です。
銀行は株式会社であり、株主の利益を求める団体です。ですから、収益性を求める団体であり、付き合いのない中小企業だとどうしても返済能力の有無を判断しづらいため、中小企業に融資を行うことはあまりなく、取引先は大手企業が中心です。
したがって会社が小さいうちは、よほど利益が継続して確実に出ているなど特殊なケースを除いては、融資を受けるのが難しいでしょう。したがって、まずは地方銀行や信用金庫・信用組合と融資取引の実績を積んでいくことが必要です。
会社を経営していくうえでは、いずれ都市銀行でなければ融資してもらえないような額の運転資金や設備資金が必要になることがあります。そのような状況を見越して、その時が来たらスムーズに銀行から融資を受けられるようにしておくためにも、今のうちから準備を始めましょう。
たとえば都市銀行の融資審査は決算書が非常に重要ですから、税理士と相談し財務格付けを十分に考慮した決算書を作成できるように、決算前から決算予測をふまえ決算内容を検討するようにしましょう。
信用金庫とは、市区町村単位を中心とした、融資面での相互扶助を目的とした小規模の金融機関です。
営業エリアは狭く地域密着サービスを特徴としていて、主な取引先は中小企業や個人事業者となります。
小規模企業にもきめ細かいサービスを提供してくれるため、創業間もない時期の融資相談にも親身に対応してもらえます。
都市銀行や地方銀行と比べても、総合的な取引実績を重視する傾向が強く、長期間取引を続けることで柔軟な対応が期待できます。
ただ中小企業や創業間もない企業が融資を受ける場合には、基本的に保証協会付の融資になりますし、資金調達力は低いため金利が高めになることもあります。
地方銀行は、社団法人全国地方銀行協会などに加盟している銀行で、営業エリアは信用金庫・信用組合よりは広いものの、都道府県単位で活動しており全国展開はしていません。その都道府県内では店舗網が充実していて利便性も高いことから、都道府県単位で活動する会社にとってはメインバンクとして利用するのに適しているといえます。
地方銀行は信用保証協会との関係が密接なので、協会保証付融資に強いと言われています。同様に都道府県単位で設立されている信用保証協会とは取引関係が密接になることから、相互の情報交換は頻繁に行われています。
融資の豆知識
銀行・信用金庫などからの融資は、借入を行いたい事業者の財務状況や経営計画などを評価し、返済可能性を吟味し、融資を行うかどうかを判断することになります。
融資の種類としては「保証協会付融資」と「プロパー融資」があります。
○保証協会付融資 保証協会付融資:「マル保」とも呼ばれる融資の方法で、信用保証協会が連帯保証人となり、債務者が返済不能になった場合に、金額の80%を保証協会が銀行に支払う融資の方法です。 この信用保証制度は、中小企業のための精度で、常時使用する従業員の数や資本金について条件があります。 ○プロパー融資 プロパー融資:保証協会の保証を受けない融資のことです。 不動産を担保にした融資が一般的ですが、創業間もない企業がプロパー融資を受けるのは困難です。 |
日本政策金融公庫とは、100%政府出資の金融機関です。
とくに中小企業にとっては、活用する機会が多いといえるでしょう。
一般の金融機関が行う金融業務を補完し、資金調達サポートや国民生活の向上を目的としていますので、銀行や信用金庫などの各種金融機関から融資を受けられず、資金面で困っている事業者をサポートするために設立された金融機関であり、起業前または起業間もない中小企業への創業融資も積極的に行っています。
審査には時間がかかることもありますが通る可能性は高いですし、親身になってアドバイスをしてくれたり、さまざまなサポートを行ってくれたりする体制も整っています。
企業から融資の申し込みがあった時、銀行は融資を行うか否か、融資を行う際にはどの程度の金利を設定するかなどについて、「格付け」で判断をしています。
「格付け」のプロセスは、まずは、決算書の内容から評価する「定量評価」、そして、その他の情報からの「定性評価」、最後に返済の可能性を判断する上での「実態評価」に分けて、会社を判断します。
定量評価 | 定性評価 | 実態評価 |
決算書の分析結果をもとに、安全性・収益性・成長性・返済能力等の評価 | 経営者の姿勢、個人資産力、競合状態、経営方針、経営者などの数値化できない評価 | 定量評価や定性評価の評価対象には該当しないものの、融資の返済能力を左右する評価 |
・決算書の表示で、費用より収入が上回っているか ・役員借入金を固定負債に計上しているか ・定期預金を解約した後は、借入金と相殺しているか ・売掛債権を減らして運転資金の借入金残高を減らしたか ・増資を検討したか ・仮払金の残高を減らしたか ・役員貸付金を減らしたか |
・キャッシュ・フロー計算書を作成しているか ・決算科目内訳書を丁寧かつ正確に作成しているか ・事業計画書(来期予算表)を作成しているか |
・債務超過を解消できるよう努力しているか ・赤字を避けるよう努力したか |
定性評価や実体評価はあくまでも補完的な役割の評価であり、都市銀行などでは、ほぼ100%定量評価で判断されるといわれています。
定性評価で、経営者の人格がどんなに素晴らしいと判断されても、財務内容が悪ければ、格付けが上がりません。
そしてその格付けにより、債務者区分が決まります。
債務者区分は通常10つに分かれていて、正常先、要注意先、要管理先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先に振り分けられます。
それによって、新たな融資の可否や金利をどの程度にするかなどの条件、加えて、銀行の決算書上の貸倒引当金の金額などが定まることになります。
財務格付け | 債務者区分 | 債務者区分の内容 |
1 | 正常先 | 業績が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者 |
2 | ||
3 | ||
4 | ||
5 | ||
6 | ||
7 | 要注意先 | 金利減免、棚上げを行っているなど、貸出条件に問題がある債務者 |
8 | 要管理先:要注意先のうち3カ月以上延滞または貸出条件を緩和している債務者(債権の全部または一部が金融再生法に定める要管理債権である債務者) | |
9 | 破綻懸念先 | 現状経営破綻の状況にはないものの、経営難の状態にあり、経営改善計画の進捗状況も芳しくないなど今後経営破綻にお通り可能性が大きいと見られる債務者 |
10 | 実質破綻先 | 法的・形式的な経営破綻の事実はないものの深刻な経営難の状態にあり、債権の見通しがない状態にあるなど、実質的に経営破綻に陥っている債務者 |
破綻先:法的・形式的な経営破綻の状態にある債務者 |
銀行が融資を行う際に最も重視するのは、利益向上よりもリスク分散です。
したがって、決算書で確認する際にも、「返済能力の有無」を最も重視します。
貸借対照表でいえば、返済源となる純資産の金額を見ます。
ここがマイナスつまり債務超過であると、その企業の格付けは大きく下がり、融資を受けづらくなります。
また、現在の借入金と新たに融資を希望している借入金の合計額についてもチェックします。
そして、会社が毎月生み出すフローキャッシュフローを簡便に算出して、返済期間を算定します。
次に損益計算書で見るポイントですが、やはりここでも営業利益、経常利益から返済能力をチェックします。
これは会社の利益を獲得する力、つまり返済源を捻出する力を表す指標となりますので、しっかりチェックをします。
つまり、定量的評価を上げるためには、借入金などの負債を圧縮し、営業利益を増やし、自己資本比率を増やすなどがポイントとなってきます。
自己資本比率とは、貸借対照表の「総資本」のことで、自己資本が占めている割合をあらわしています。
自己資本は、自社の資本であり返済しなくてもよい資本なので、自己資本が多ければ多いほど、資金繰りに余裕があり、経営が安定し、返済能力が高いと判断されるわけです。
なお、同時に粉飾などもないかチェックします。売上の金額の正確性や、同時に計上されることが多い売掛金の回収可能性についても細かくチェックし、疑問や懸念があれば銀行は企業に質問して、納得のいく説明を求めてきます。
この時、企業が、その決算書の内容について十分に説明できなかったり、決算書の数値の根拠となる資料などを用意できなかったりした場合には、銀行の格付けは下がってしまい、融資は困難になります。
日本政策金融公庫を活用する最大のメリットはやはり、民間企業からはなかなか受けにくい創業時の融資についても、前向きに検討してもらえるというところです。
起業家向けの融資についても、積極的に制度化していて、「新事業をサポートする」という公庫の理念を見られます。
金利も低く設定されることが多いため、創業時はぜひ活用したいものです。
日本政策金融公庫の創業融資のなかでも、代表的なものは、「新創業融資制度」と「新規開業資金」です。
新創業融資制度 融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)で、「無担保・無保証」で利用することができます。 この融資制度を申請するためには、次の要件すべて満たす必要があります。 ①新たに事業を始める、または事業開始後税務申告を2期終えていなこと。 |
新規開業資金 新規開業資金は、担保と保証人が必要ですが、最大で7,200万円(うち運転資金4,800万円)までの融資を受けることができます。 |
その他、事業開始後おおむね7年以内の女性の方、35歳未満か55歳以上の方を対象とした「女性、若者/シニア起業家支援資金」、廃業歴等のある方で創業に再チャレンジされる方を対象とした「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」などの制度があります。
日本政策金融公庫は営利を目的としていないので、多くの事業主が利用できるよう、事業計画をもとに実績のない企業への融資も積極的に検討してくれます。
しかし、日本政策金融公庫の融資を受けるためには、事業計画書を作成し、事業の将来性について担当者を納得させなければなりません。
事業計画書の作成を行うにあたり必要なことは、目標を数値として適切に設定すること、かつその数値を実現させるためにどのような行動をとっていくのかという点を具体的に説明していることです。
もちろん、経営者の情熱も必要ですが、それだけでは担当者を納得させることはできません。税理士のアドバイスを受け、担当者を納得させられる事業計画書、返済計画を立てて、説明できるよう準備しておくことが必要です。
なお、日本政策金融公庫の融資制度には、この経営革新等支援機関の指導や助言を受けていることが条件となっていることもありますので、その場合には、経営革新等支援機関の認定を受けている税理士に相談することが必要です。
経営革新等支援機関 経営革新等支援機関とは、中小企業・小規模事業者が安心して経営相談等を受けられるようにするために、専門知識や、実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定している支援機関です。 平成24年に「中小企業経営力強化支援法」が施行されたことを受けて導入された制度で、具体的には、商工会や商工会議所など中小企業支援者のほか、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等が主な認定支援機関として認定されています。 |
経営革新等支援機関の指導を受けることで、補助金を受給しやすくなるというメリットがあります。
経営革新等支援機関の指導は、「経営状況の把握」「事業計画の策定」「事業計画の実行支援」という流れで行っていきますが、その際に適切なレベルの計画を立てることになりますし、認定支援機関の推薦があると審査のうえで加点されることもあり、結果的に補助金を獲得しやすくなるのです。
さらに、認定支援機関は補助金獲得後の支援も強化するよう、国から要請を受けているので、補助金獲得後成果に結びつくまでのサポートを受けることもできます。
「融資を受けるために、何度か金融機関に足を運んだが断られてしまった…」そんな経営者も多いのではないでしょうか。
そんな時に活用したいのが資金調達に精通している税理士です。
資金調達を得意としている税理士に相談すれば、事業者の状況に沿った金融機関を勧めてもらうこともできますし、資金調達を成功させるための方法についてアドバイスを行ってもらえたりすることを期待できます。ぜひ資金調達が得意な税理士に相談してみましょう。
freee税理士検索では、数多くの事務所の中から融資について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
\ 融資について相談できる税理士を検索 /
監修:「クラウド会計ソフト freee会計」
クラウド会計ソフトの「クラウド会計ソフト freee会計」が、税務や経理などで使えるお役立ち情報をご提供します。
「クラウド会計ソフト freee会計」は、毎日の経理作業を最小限で終わらせることができるクラウド型会計ソフトです。疑問点や不明点は、freee税理士検索で税理士を検索し、質問することができます。