融資とは|融資の種類、融資の受け方、融資以外の資金調達法

公開日:2019年04月05日
最終更新日:2022年03月10日

この記事のポイント

  • 融資には、プロパー融資、保証協会付融資などさまざまな種類がある。
  • 融資を受ける際には、決算書や試算表、事業計画書などの提出が求められる。
  • 融資以外の資金調達の方法としては、資産売却、出資を受けるなどの方法がある。

 

新しい事業を開始したり現在の事業を拡大したりするためには、どうしてもまとまった資金が必要になります。
しかし事業収益を待ってから新規事業を開始すると、その分だけ事業のスタートが遅くなり、ビジネスチャンスを逃してしまうこともあります。

そのような時に先に資金調達ができれば、事業の収益で返済することが可能となります。
この記事では、資金調達の方法のうち特に「融資」の種類やポイントについてご紹介します。

融資とは

融資とは、その文字のとおり「お金を借りること」です。
資金調達の方法としては、この融資を受ける方法の他にも、出資を受けたり補助金を受給したりする方法などがあります。
また、ひとくちに融資といっても、融資にはさまざまな種類があります。
まず、実際に企業が利用する事の出来る融資制度は、大きく「公的融資」と「民間融資」の2つに分けることができます。

公的融資とは国や地方自治体などが行っている融資のことで、日本政策金融公庫の融資や商工組合中央金庫などがあります。

民間融資とは、銀行や信販会社や消費者金融会社など、民間の銀行から受ける融資のことをいいます。

(1)政府系金融機関からの融資

政府系金融機関とは、出資金のほとんどを政府が出資している金融機関のことです。
政府系金融機関は営利を目的としているわけではなく、民間の金融機関を補完することを目的としています。
したがって、銀行のプロパー融資(※後述)を受けられない場合には、政府系金融機関や信用保証協会保証付融資を活用することをまず検討しましょう。

特に、これから事業を始めるという場合には、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」がおすすめです。
日本政策金融公庫には、新創業融資制度の他にも、新規開業資金、女性・若者・シニア起業家支援資金などさまざまな融資制度があるほか、農業経営アドバイザーの制度やソーシャルビジネス支援などの経営に関するサポートが充実しているというメリットがあります。

(2)プロパー融資

プロパー融資とは、銀行による通常の融資のことをいいます。
一般に信用保証協会の保証がついた融資を「保証付融資」といい、そうでない融資を「プロパー融資」といいます。
通常、銀行から融資を受けるためには信用保証が求められますが、プロパー融資にはこの信用保証が不要です。その意味で、銀行から信用されている企業が受けられる融資ともいえます。プロパー融資の審査が通るなら、保証付融資よりもプロパー融資で融資を受けることになります。
プロパー融資を受けるためには、信用を得るための長期的な取引などが必要となりますし、短期間かつ高めの金利になることが多いというリスクもあり、起業して間もない企業の事業者が利用することは困難です。

(3)保証協会付融資(マル保)

保証協会付融資は、信用保証協会による保証がついた銀行から受ける融資です。
信用保証協会が連帯保証人となり、債務者が返済不能となった場合には、全額の80%を保証協会が銀行に対して支払うことになります。
プロパー融資と比較すると、保証協会付融資にはいくらかの手数料が必要になるという点がデメリットになります。
プロパー融資を受けられない場合や、プロパー融資の融資だけで足りない場合に使用するケースが多いでしょう。
なお、この信用保証協会付保証付で融資を受けることができるなら、後述するノンバンク保証付融資を使う必要はありません。

(4)ノンバンクの保証付融資

ノンバンクとは、いわゆる信販会社や消費者金融会社などのことで、銀行ではない金融機関です。
ノンバンクは、できるだけ使わないに越したことはありません。
しかし、決算書の内容が悪いなどの理由で、銀行からのプロパー融資や日本政策金融公庫からの融資が受けられない場合には、ノンバンクの保証を受けて融資を受けることを検討します。ノンバンクによる保証のため、保証料は保証協会よりも高めに設定されているケースがほとんどです。

(5)ノンバンクの無担保融資

ノンバンクの無担保融資には、企業向けに融資を行うノンバンクと個人向けに融資を行うノンバンクがあり、「事業者向けビジネスローン」などという名称が付されています。審査の時間が短いため、急な資金調達に利用するには便利ですが、利息が高めに設定されているのが特徴です。
ノンバンクから借入れを受ける際には、できるだけ会社でなく経営者個人で受けるのがおすすめです。会社で借りると、勘定科目内訳書でノンバンクから借入れを行っていることが分かってしまい、銀行からの評価が悪くなってしまうリスクがあるからです。
経営者個人の信用情報を見れば、ノンバンクからの借入をしていることは分かってしまいますが、そこまで確認されないケースも多いので、できるだけ対策をとっておくことをおすすめします。

なお、ノンバンクから借入れを行うことを検討する場合には、予め資金調達に精通している税理士に相談するようにしましょう。
資金調達に精通している税理士であれば、他の資金調達の方法を紹介してくれることもあります。

▶ 融資・資金調達について相談できる税理士をさがす

融資を受ける際のポイント

融資を受ける際には、日本政策金融公庫から借りるか銀行から借りるかノンバンクから借りるかで異なる点はありますが、ほとんどのケースで決算書や事業計画書などの提出が求められます。
ここではまず銀行から融資を受ける方法を例にとって、必要な手続きや書類についてご紹介します。

(1)銀行の姿勢を知る

銀行は、預金者から預金を集めて、企業や個人に融資を行い、融資を受けた企業などから利息を取って、収益にしています。
ですから返済能力がないと判断されてしまうと、融資をしてもらうことはできません。
銀行は、担保があるか否かを気にしているとイメージする人が多いですが、銀行が気にしているのは「調達したお金を何に使うのか」「どうやって返済するのか」という点です。
したがって銀行は、融資先に関する情報を極力多く正確に収集し「きちんとした返済能力がある」と判断するために、決算書や試算表、事業計画書などの提出を求めます。

(2)融資は「格付け」で決まる

次に知っておくべきなのは、銀行は融資を行うか否か、融資を行う場合には、どの程度の金利を設定するかについて独自の格付けを行っているという点です。
この格付けは、前述した返済能力を見るための評価です。このランキングは公開されていませんが、10段階程度に振り分けられるスタイルが多いようです。この格付けのランクが低いと融資を受けることができません。格付け方法は、各銀行によって異なりますが、基本的には決算書類を中心に審査されるといわれています。

また、銀行間で情報を共有する信用情報機関への登録状況も融資の審査の参考になるといわれています。融資が受けられるかどうか不安な場合は、信用情報機関の登録を見てみることもできます。
この銀行の格付けについては、以下の記事で詳しくご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

▶ 「格付け」とは|区分・内容・決められ方

(3)融資審査で必要な書類とは

融資を受けるためには、その銀行の審査を受ける必要があります。

決算書
そして、融資審査で必ず提出が求められる書類が決算書です。決算書の内容が悪ければ、それだけ融資審査は不利になってしまいます。
たとえば、貸借対照表では、まず純資産はプラスの状態でなければなりません。純資産は、「総資産-総負債」で計算されますが、これがマイナスとなるということは、債務超過ということだからです。
純資産の絶対額は、大きければ大きいほど、それだけ健全と見られます。

また、損益計算書では営業利益、経常利益は必ずチェックされます。
営業利益は、その会社が事業でどれだけ稼ぐかを見ることができますし、経常利益は、その会社が継続的にどれだけ稼ぐ力があるかを見ることができるからです。

試算表
決算日から時間が経っている場合や決算時点で赤字だったような場合には、試算表の提出も求められます。
決算書が1年の損益を見る書類であるのに対して、試算表はその途中経過をあらわす書類であるといえます。
試算表は、会社の最近の経営状況を把握することができますので、決算書と並んでよく提出が求められる書類です。仮に決算書類に赤字を計上されていても、現在の業績がよくなっている場合などは、この試算表を示してアピールすることが効果的です。

月次資金繰り表
月次資金繰り表とは、毎月の資金繰り予定を記載したものです。
月次資金繰り表を見れば、将来の資金繰りについてもだいたい予測することができるため、どのくらい資金が必要になるかなど記録をもとに把握することができるようになります。
資金繰り表は、まず経営計画を作成して1カ月ごとの損益の計画を立て、その入金予想と出金予想を基に作成していきます。

事業計画書
事業計画書とは、これまでどのような事業を行ってきたのか、その結果どんな実績になったのか、今後どんな事業がなされどのような実績が見込まれるかを計画した書類です。この事業計画書を元に、事業者は融資希望金額として提示していきます。希望金額とこの事業計画のつじつまが合わないとされてしまうと、融資を受けられない場合があります。

(4)銀行にとってのメリットを提示する

銀行の融資審査を受けると言うことは、自社をプレゼンすることでもあります。したがって、銀行に「自社と取引することが、いかに銀行にとってメリットがあるか」を提示する必要があります。要は、「自社は安定して取引を継続する相手であり、相応の収益をあげる企業である」ということをアピールするということです。
必要以上に銀行に媚びを売る必要はもちろんありませんが、銀行はビジネスパートナーでもあります。銀行との付き合い方を身につければ、資金調達は楽になります。

(5)融資担当への説明はていねいに

融資を受ける際には、先にご紹介したようなさまざまな書類をしっかり準備することが必要ですが、融資担当者とのコミュニケーションにも配慮する必要があります。
融資担当者とは、企業からの相談を受け稟議(書類を作成して関係者にまわし、文書で決裁・承認を得ること)を上げるまでを担当する人で、実際に稟議を承認するのは、決済担当者です。
したがって、この決済担当者から融資担当者が説明を求められた場合に、きちんと説明できるように、融資担当者に融資の必要性だけでなく、返済の見込みや事業計画にあたっての収益の見込みなどをていねいに説明しておくことも必要です。

融資以外の資金調達の方法

近年は銀行やノンバンクから融資を受ける以外の資金調達の方法が注目されています。そこでここでは、融資以外の資金調達の方法について、ご紹介します。

(1)VCから出資を受ける

VC(ベンチャーキャピタル)とは、未上場企業のいわゆるベンチャー企業への投資を中心に行っている投資ファンドです。
見返りに株式を引き受けることを要求され、出資した企業が上場する際にこの株式を売却しリターンを得ることで利益を上げることを目的としています。ハイリターンを目的にした投資になっているため、積極的に経営指導が実施されるケースがあります。

ベンチャーキャピタル(VC)からの出資について知りたい方は、下記記事もあわせてご覧ください。

▶ ベンチャーキャピタル(VC)が出資したい企業とは

(2)エンジェル投資家から出資を受ける

エンジェル投資家とは、もともとは裕福な個人投資家のことで、純粋に起業家を応援したいという精神から出資してくれるケースもありますが、ほとんどは投資の見返りとして、株式や社債を提供する必要があります。
エンジェル投資家は、自分自身が元々起業家や経営者である場合が多く、アドバイザーとして意見を聞くこともできるというメリットもあります。

エンジェル投資家からの出資について知りたい方は、下記記事もあわせてご覧ください。

▶ エンジェル投資家とは|出資を受けるためには何が必要か

(3)資産売却し資金調達する

資産売却とは、その文字のとおり資産を売却することをいいます。
不動産や株式などを事業主個人や会社で持っている場合には、これらの資産を売却して、得た利益を事業運営に充てる方法です。
ただし、資産を会社で所有している場合は、帳簿の処理が必要になります。売却で得た金銭なので、自由に使用することができますが経理処理が複雑になる場合があります。

(4)私募債などの新しい資金調達法もある

私募債とは、社債の一種で、通常は50名未満の特定少数の機関投資家などに引き受けを依頼する社債をいいます。通常の社債とは、広く一般の不特定多数の投資家から引き受けてもらいますが、50名未満の縁故者に社債の引き受けをしてもらう制度で、条件をクリアすれば比較的シンプルな取り扱いが可能です。私募債には、銀行の保証を利用する銀行保証付私募債や信用保証協会の保証を利用する信用保証協会保証付私募債などの種類があります。

このほか、コミットメントラインという調達方法も最近注目を集めています。
コミットメントラインとは、銀行融資の新しい形態で起業と金融機関との間であらかじめ融資枠(コミットメントライン)を設定し、契約期間内であればこの枠内でいつでも借入をすることができるという形態の資金調達方法です。

まとめ

以上、融資の種類や融資の受け方、融資以外の資金調達の方法についてご紹介してきました。
これまでご紹介してきたように、資金調達方法は、実に様々な方法があります。
したがって「銀行から融資を受けられなかったから、もう資金繰りが厳しい」と判断してしまうことはありません。その場合には他の資金調達の方法を検討すればよいのです。
資金調達に精通している税理士であれば、決算書のどの部分を良くすれば融資審査が通りやすくなるかといった点についてアドバイスをしてくれますし、融資以外のさまざまな資金調達の方法を提案してくれます。
資金調達を検討する際には、まず資金調達に強い税理士に相談するようにしましょう。

融資について相談する

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また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」もあるので併せてご利用ください。

税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

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監修:「クラウド会計ソフト freee会計」

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