税理士業務とは|税務業務の中身をわかりやすく

公開日:2019年03月18日
最終更新日:2024年01月31日

この記事のポイント

  • 税理士とは納税者の相談相手。税務書類の作成や税務調査の立会いなどを行う専門家。
  • 税理士は「税務の専門家」であり、税務申告以外の多様なシーンで相談できる。
  • 税理士を選ぶ際に最も大切な視点が「相性が合うかどうか」である。

 

税理士とは、税理士試験という国家試験の試験科目のうち5科目に合格し、さらに会計事務所等で実務経験を経て税理士として登録するとなることができる、税金に関する専門知識を持った有資格者です。

税理士の業務としては、納税者に代わって確定申告を行うなどの税務代理、申告書など税務署に提出する書類を作成したりする税務書類の作成などをイメージする人も多いと思いますが、他にも税理士に依頼できる業務は多々あります。

ここでは、税理士の業務や、税理士に依頼できる業務などについて、わかりやすくご紹介します。
 

顧問税理士の豆知識

税理士と顧問契約を締結すると、一定以上の顧問料を支払うことになりますが、得られる結果が顧問報酬以上になれば、それはコストではなく投資といえます。
たとえば、節税対策です。節税は中長期的戦略で考えることが重要で、決算前にあわてて対策を行っても、将来的にそれが負担となりキャッシュアウトするリスクがあります。たとえば今季利益が出たからといって、節税のために保険に加入すれば、翌年以降も保険料を支払い続けなければなりません。もし翌年に想定していた利益がでなければ、確実にキャッシュアウトしてしまいます。
したがって、節税については中長期戦略のもとに最適なタイミングで最適な方法で行わなければなりません。
また、融資を受けるには決算書の内容が良くなければ受けることができませんから、融資を受けたいなら業績が悪化する前に準備を始めるべきです。顧問税理士がいれば、「将来的に資金繰りが悪化する懸念があるので、今融資を受けておかないか」と、最適なタイミングで融資の提案をしてもらうことができます。
顧問税理士を選ぶ時には、「節税や融資について、最適なタイミングで提案してもらえるか」について聞いてみましょう。あわせて補助金申請への意識や体制、クラウド会計の導入、税務調査への対応などについても確認することをおすすめします。

税理士とは

税理士とは、納税者の相談相手となり、納税者に代わって確定申告、青色申告の承認申請、税務調査の立会いなどを行ったり、納税者に代わって確定申告書、青色申告承認申請書などの税務書類の作成を行ったりする専門家です。

税理士法は、税理士だけに以下の業務を行うことを認めています(独占業務)。「独占業務」とは、ある業務を行うためには、ある資格を有する必要があると規定されている業務のことです。
したがって、税理士資格を有しない人は、たとえ無償で行ったとしても、これらの業務を行うことは許されません。

①税務代理業務
税務署等には、確定申告書など決められた書類を期限までに提出する必要があります。税理士は、この業務の代理、代行を行うことができます。また、税務調査などがあった場合には、納税者に代わって税務署等に主張することができます。

②税務書類の作成業務
納税者の確定申告書等の作成も、税理士でないと行うことができません。
税理士でない人が、仮に無償で行ったとしても、法律違反です。

③税務相談業務
税務署等に提出する税務申告書を作成する際には、まずその税金の計算となる金額を計算することが必要です。この計算についての相談に対応する業務も、税理士でなければ行うことができません。

(1)税理士になる人はどんな人?

税理士になるためには、大きく分けて3つの方法があります。

一番多いのは、税理士試験に合格して税理士登録した人です。

次に多いのは、いわゆる試験免除組です。
大学院で税法科目、会計科目について、博士課程または修士課程を修了した人、事務所等に一定期間以上勤務して、一定の要件を満たした人です。

3番目は、公認会計士試験に合格して、公認会計士と兼業している人です。

(2)税理士と公認会計士ってどう違うの?

税理士と公認会計士の違いについてですが、税理士の独占業務が「税務代理業務」「税務書類の作成業務」「税務相談業務」であるのに対して、公認会計士の独占業務は、「監査業務」です。

監査業務とは、企業の決算書が正しく作成されているかをチェックし監査報告書を作成して、監査意見を表明する業務です。

税理士の独占業務
…「税務代理業務」「税務書類の作成業務」「税務相談業務」

公認会計士の独占業務
…「監査業務」

公認会計士は税理士登録をすることも可能なので、公認会計士・税理士という肩書で業務を行っている人もいます。
一方、税理士は公認会計士試験に合格しない限りは、公認会計士業務を行うことはできません。

(3)税理士の年間スケジュールを知っておこう

日本では、多くの会社が3月末決算です。
これは国や地方公共団体の予算編成期間が4月から翌年3月末であるため、公共事業に関係する事業を行っている会社が、決算書等との整合性をとりやすく、また上場企業では、3月決算に集中することで株主総会の時期を合わせていることが、その理由です。
さらに12月は年末調整があり、3月には、3月15日期限の個人の所得税の確定申告があります。また、3月末決算の会社については、5月末が申告書提出期限です。

したがって、12月から5月末までの半年は、税理士の繁忙期ということになり、この時期に税理士に何らかの依頼を行うと、レスが遅くなる傾向があります。
そのため、特に会計期間にこだわりがなければ、会計事務所の閑散期に決算日を持ってくるのもよいでしょう。

(4)税理士の顧問料の相場を知っておこう

税理士の報酬は、大きく①月次顧問料、②決算報酬、③年末調整報酬、④相続報酬の4つに区分されます。

①月次報酬は、記帳代行や記帳指導などが主な業務内容で、月2~3万程度です。
②決算報酬は、毎月の顧問料の3カ月~5か月分で10万~20万程度のケースが多いようです。
③年末調整は、1人につき3,000円~5,000円程度、④相続報酬は、相続税の額や相続財産の額、数によって大きく異なります。

以前は税理士法によって報酬がある程度規定されていたので、どの税理士に依頼しても、金額はほぼ同じだったのですが、平成13年の税理士法改正によって、税理士報酬規程自体がなくなったことから、報酬については各税理士が自由に決めても良いことになりました。

(5)税理士と顧問契約を締結する際の注意点は?

税理士と顧問契約を締結する際には、報酬ばかりに気にする人がいますが、後から「うちの税理士は、税金の計算しかしてくれない」などの不満を感じるケースがあります。
このような不満を発生させないためには、契約締結時に依頼業務をしっかり確認することが大切です。

会計ソフトの発展により、記帳は自社で行い決算のみ税理士に依頼することができるようになりました。他方、自社で日々の経理業務を行うのは不安があり、すべての経理業務を税理士に依頼したいと思う人もいるでしょう。

またなかには、税理士には税金の計算以外に、財務全般に関するアドバイザーとしての役割も担ってもらい、コンサルティング業務を提供してほしいという場合もあるでしょう。

このように、それぞれ求める業務が異なれば、当然それぞれに報酬の額に差が出るものです。
報酬の額は、顧問契約を締結する際の重要な要素ではありますが、報酬の高い安いに気をとられて契約を決定するのは、危険です。高度な業務であれば、それなりの報酬が発生しますし、会社の資金繰りについてアドバイスをしてもらうのであれば、月額20万円を支払っても安いというケースもあります。

したがって、月次顧問料を支払っている場合には、それが「経理業務だけの報酬なのか」「毎月の経理業務から、決算業務、資金繰りの相談などの相談できるのか」「相談できる場合には別途報酬が発生するのか」など、しっかり確認することが必要です。

税理士業務|税務業務の中身


税理士には、税務代理業務や税務書類の作成などを依頼することができますが、事業が成長して利益が上がるのに伴い税負担が重くなった場合に、節税提案をして税負担を軽くして資金繰りを良好にするのも、税理士業務のひとつです。
この他、個人の相続対策のアドバイスをしたり、相続税の申告業務を行ったりする税理士事務所もあります。

日本税理士会連合会の「やさしい税金教室」では、以下のような場合に税理士に相談することができると紹介しています。

「事業を始めたい、会社を設立したい」
「個人事業を法人にしたいが」
「帳簿のつけ方がわからない」
「消費税の納税義務があるかどうかわからない」
「株式を売却して損が出たが」
「マイホームを手に入れた、不動産を買い換えたい」
「災害によりマイホームや家財に損害が出たが」
「子どもに住宅資金を出してやりたいが」
「孫に教育資金を出してやりたいが」
「そろそろ相続税対策を検討しなければ」
「親族が亡くなったが相続税はどうなるのだろうか」
「離婚で財産分与をするのだが」

引用:日本税理士会連合会「やさしい税金教室」

つまり、「税務の専門家」である税理士に依頼できる業務は税務申告にとどまらず、実に多岐にわたっているといえます。

(1)税務申告(法人・個人)

税理士は、納税者に代わって、確定申告、青色申告の承認申請などを行います。
そのほかにも、税務署の更正・決定などに不服がある場合に申立てたり、税務調査の対象となった時には、納税者に代わって税務署の対応を行ったりすることもあります。
さらに、税務調査が終了して「どうしても税務署の指摘に納得できない」という時に「不服申し立て」という制度を利用する時には、弁護士とともに税理士が補佐人として裁判所に出廷し、意見陳述することもあります。

(2)税務書類の作成

税理士は、納税者に代わって確定申告書、青色申告承認申請書、その他税務署などに提出する書類を作成します。
税務書類としては、所得税、消費税、法人税の確定申告書類、年末調整、法定調書の作成、相続税、贈与税の申告書類などがあります。

また、税務代理業務の付随業務として、会計帳簿の記帳代行、その他財務関係業務を行うこともあります。最近はクラウド会計ソフトの普及により、会計帳簿の記帳代行は自社で行い、税理士に記帳指導を受けるケースが増えています。

さらに税理士は、取締役と共同して決算書類を作成して、会社の株主・債権者の求めに応じて開示する会計参与としての役割を果たすこともあります。
会計参与制度とは、中小企業が作成する計算書類の信頼性を高めるために創設された制度です。会計参与になれるのは、税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人だけです。

(3)給与計算・年末調整

税理士業務に付随して、給与計算や年末調整の諸手続きなどを行っている税理士もいます。なかには、社会保険労務士の登録をして、社会保険手続き全般を担っている税理士もいます。

給与計算・年末調整においては、当然にミスは許されないうえに個人情報もからんできますし、また計算締め日から振込までの日数が少ないことから、税理士事務所が全般的に関わっているケースもあります。

(4)事業承継・M&Aに関するアドバイス

事業承継は、会社運営の問題と自社株移転に関して発生する税金の問題など、多方面から検討する必要があります。
事業承継とは、次の世代に向けて経営者が交代することだけを指しているのでありません。経営権の移動に合わせ、自社の株式や保有資産を承継し、経営理念や独自のノウハウ、ブランドといった経営資源や知的財産なども適切に引き継ぐことを意味します。
したがって、事業承継やM&Aに関する業務は、税理士のなかでもとくに豊富な経験と知識が必要とされます。
税理士は、経営分析、事業承継計画の作成、自社株対策など、事業承継に根幹に関わるコンサルティングを行います。

(5)資金繰りのアドバイス

税理士は、財務顧問のような立場で、資金繰りのアドバイス等を行うこともあります。
資金繰りを把握したうえで税金支払いを加味した資金繰りの予定を立て、資金調達のタイミングについてアドバイスを行ったり、資金ショートが懸念されるのであれば、借り換えやリスケジュール等の経営改善計画なども作成したりします。
なかには、商品別の売上データ、週ごとの売上データなどから、チラシデザイン作成まで踏み込み、どのように運用していくのかまで落とし込んだ売上アップコンサルティング業務を提供する税理士もいます。

(6)補助金・助成金・支援金のアドバイス

補助金・助成金・支援金とは、国や自治体が事業者に対して、原則として返済不要のお金を支給してくれる制度です。
一定の条件や申請、審査が必要にはなり、申請をする際には決算書や売上台帳などの必要書類が必要になります。
また、コロナ関連の支援金申請については、登録確認機関による事前確認が必要になることもあります。
補助金・助成金・支援金は、各省庁や自治体でさまざまな制度を用意しています。税理士に相談して、受給できそうなものがあれば、利用しない手はありません。

(7)その他税理士に相談できる業務

その他、海外進出支援、事業再生支援、創業支援等、税理士には、依頼した方がよい業務はたくさんあります。

海外進出支援とは、海外進出をする企業のサポートであり、資金面や人材面等のサポートを行うことであり、事業再生支援とは、経営の悪化した企業の経営の問題点を見つけて、その改善方法を検討して実行を支援する業務です。

また、創業支援においては、創業前から設立日や資本金の額等のアドバイスを行い、金融機関から開業資金の調達支援、経理事務支援などをいいます。

ぜひ上手に活用して、さまざまなアドバイスやサポートを受けるようにしましょう。

税理士を選ぶときのポイント

これまで、税理士の業務や税理士になるための資格などについてご紹介してきましたが、それでは実際に税理士を選ぶ際には、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

(1)相性が合うか

税理士を選ぶ際に最も大切な視点が「相性が合うかどうか」です。
「○○さんの紹介である」とか「ホームページが立派である」などは、全く関係ありません。税理士と付き合いも、つまるところは「人間同士の付き合い」なのですから、最も大切なのは「相性が合うかどうか」です。

したがって、税理士を選ぶ際には、電話やメールだけで済ますのではなく、事務所まで出かけて、実際に会って話してみることが大切です。
コロナ禍で対面での打ち合わせが難しいこともありますが、zoom等でも1時間ほど話せば「自分が話しやすいと思うかどうか」の判断はできるのではないでしょうか。

(2)業界に精通しているか

業界に精通しているかという点も、税理士を選ぶ際の重要なポイントです。
業界だけに通じる用語というものもありますし、業界特有の慣習もあります。
それらは、やはりその業界の顧問先を多く抱えているかどうかで、アドバイスの内容が変わってきます。

飲食店、美容院、クリニックなどの業種を専門にしている税理士もいますし、国際税務業務を中心に行っている税理士もいます。また、相続や企業買収などについては、弁護士と連携してトータルサービスを提供している税理士もいます。

依頼したい内容が特有である場合には、これらの専門分野にも注目して税理士を選ぶとよいでしょう。

(3)説明が分かりやすいか

どんなに肩書が立派でも、話している内容が理解できないのではコミュニケーションがとれているとは言えません。
聞き上手で経営者の悩みに寄り添い、丁寧に説明してくれる税理士には、経営者も悩みを相談しやすくなります。
そして経営者と税理士が痛みを共有することができるようになれば、力強い経営のパートナーとなってもらうことも期待できます。
税理士を選ぶ際には、「説明が丁寧か、分かりやすいか」といった視点も大切にしましょう。

まとめ

以上、税理士の業務や、税理士に依頼できる業務などについてご紹介してきました。
これまでご紹介してきたように、税理士は身近な税の専門家であり、相談できること、依頼できることは意外に幅広いものです。
税金に関すること、経営に関することはどんなことでも、気軽に税理士に相談してみましょう。

税理士をお探しの方

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「税理士に相談するべき内容なのか」と悩む人もいますが、その場合には、税理士が他士業と連携して対応してくれることもあります。

税理士は仕事上で知った秘密を守る義務がありますし、相談したからといって必ず依頼しなければならないというものでもありません。安心して、まずは問合せを行うことをおすすめします。

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税理士の費用相場については「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。

 

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